あは)” の例文
いま苦勞くらうこひしがるこゝろづべし、かたちよくうまれたる不幸ふしやはせ不相應ふさうおうゑんにつながれていくらの苦勞くらうをさすることあはれさのまされども
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
結局けつきよく麻雀界マアジヤンかいから抹殺まつさつされるにいたつたなどははなは殷鑑ゐんかんとほからざるものとして、その心根こゝろねあはれさ、ぼくへてにくにさへならない。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
落し娘兩人は苦界へしづみ夫のみ成らで其身まで此世のえにし淺草なる此中田圃なかたんぼの露と共にきえて行身のあはれさはたとふるものぞなかりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
院長ゐんちやう不覺そゞろあはれにも、また不氣味ぶきみにもかんじて、猶太人ジウあといて、其禿頭そのはげあたまだの、あしくるぶしなどをみまはしながら、別室べつしつまでつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『おきぬさんは最早もうませんよ、』とてゝばた/\とげてつた。あはれなるかな、これがぼく失戀しつれん弔詞てうじである! 失戀しつれん?、失戀しつれんいてあきれる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
B それで其女そのをんなはね。わたしの一しんさゝげるひとはあなたよりほかにはないとかなんとかつてね。是非ぜひこのあはれなるもだえのすくつてくださいとかなんとかいたものだ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
かぜかれてた、のやうな旅人たびびとも、おのづからあはれをもよほし、挨拶あいさつまをすうちに、ついそのさそはれて。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しやあはれな勞働者は其の唄のをはらぬうち惡魔あくまのやうな機械の運轉うんてん渦中くわちう身躰からだ卷込まきこまれて、唄の文句もんくの其のとほり、ながくもない生涯しようがいをはりげたのではあるまいか。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
かれ例年いつになく身體からだやつれがえた。かさ/\と乾燥かんさうした肌膚はだへが一ぱん老衰者らうすゐしや通有つういうあはれさをせてるばかりでなく、そのおほきな身體からだにくおちてげつそりとかたがこけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このあはれなちひさなものは、あいちやんがつかまへたとき蒸氣じやうき機關きくわんのやうなおそろしい鼻息はないきをしました、それからわれとからだを二つにかさねたり、また眞直まつすぐばしたりなどしたものですから
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
カピ長 婚儀こんぎためにと準備よういした一さい役目やくめへて葬儀さうぎよういはひのがくかなしいかね、めでたい盛宴ちさう法事ほふじ饗應もてなしたのしい頌歌しょうかあはれな挽歌ばんか新床にひどこはなはふむ死骸なきがらようつ。
が、あのこひ秘密ひみつ私語さゝやいてゐるかとおもふと、腹立はらだゝしくもあつたが、あはれにもおもつた。あはれは崇高すうかうかんじを意味いみするので、つまむかし客観かくゝわんときであるのは、ふまでもない。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あはな聲を出して、やゝもすればおくれてしまひさうなお光は、高く着物を端折はしをり、絽縮緬ろちりめん長襦袢ながじゆばん派手はで友染模樣いうぜんもやうあざやかに現はして、小池に負けぬやうに、土埃つちぼこりを蹴立てつゝ歩き出した。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
たつとき事もあり、あはれなる事もあり、少しは空物語そらものがたりもあり、利口りこうなる事もありと前文ぜんぶんしるかれたり、竹取物語たけとりものがたり宇津保物語うつぼものがたりはなし父母ちゝはゝにして、それよりしもかたいたりては、ぢゞは山へ、ばゞは川へ洗濯せんたく
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
僕はこの死骸をものあはれに感じた。しかし妻にその話をしたら、「それはきつと地震の前に死んでゐた人の焼けたのでせう」と云つた。成程なるほどさう云はれて見れば、案外あんぐわいそんなものだつたかも知れない。
あはれ、そは三十路女みそぢをんなおももちのなにとなく淋しきごとく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いのちはてしひとり旅こそあはれなれ元禄げんろく曾良そらの旅路は
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
ぷぅんと鳴きついて あはれつぽく訴へでる
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
かくるゝ風情ふぜいあはれなり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
致しまことの修驗と相成て後當村へかへり其時にこそ師匠ししやう感應院の院を續度つぎたく存ずるなりあはれ此儀を御許おんゆるし下され度夫迄それまでの内は感應院へはよろしき代りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、日頃ひごろいかつい軍曹ぐんそう感激かんげきなみださへかすかににぢんでゐるのをてとると、それになんとないあはれつぽさをかんじてつぎからつぎへと俯向うつむいてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
あはれなる物語ものがたりおほけれども、このロミオとヂュリエットの戀物語こひものがたりまさるはないわい。
腹立はらだたしかほをしたものや、ベソをいたものや、こはさうにおど/\したものなぞが、前後ぜんごしてぞろ/\とふねからをかあがつた。はゝかれた嬰兒あかごこゑは、ことあはれなひゞき川風かはかぜつたへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
土瓶どびんれたみづつて墓參はかまゐりにつて、それから膳椀ぜんわんみなかへして近所きんじよ人々ひと/″\かへつたのち勘次かんじ㷀然けいぜんとしてふるつくゑうへかれた白木しらき位牌ゐはいたいしてたまらなくさびしいあはれつぽい心持こゝろもちになつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
物のあはれをしみじみと思ひ知るらむ、淺艸の秋の匂に。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
あはれなるたびをとこ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
屋根やねあり、天井てんじやうあり、かべのあるとふばかり、野宿のじゆくつゆあはれさにまさつて、それはつめたいなさけない、こぼれるなみだこほらぬが不思議ふしぎ御座ござります。
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たのめば和尚は大膳に向ひ拙寺せつじ檀家だんかの者共天一坊樣御暇乞おいとまごひ御尊顏ごそんがんはいし奉り度由あはれ御聞屆ねがはんと申上れば是迄の知因よしみに御對面たいめん仰付らるゝとて御座の間のみす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かかるのとある梢あはれその空に星の見えつ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
霜夜しもよふけたるまくらもとにくとかぜつまひまよりりて障子しようじかみのかさこそとおとするもあはれにさびしき旦那樣だんなさま御留守おんるす
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あはれまたひとつ星、見もあへぬ闇のかなたに
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うで幾代いくだいものうらみを背負せおうわたしなればだけことはしなければんでもなれぬのであらう、なさけないとてもれもあはれとおもふてくれるひとはあるまじく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなあはれ、明日あすも亦にぶき血のどくをや吐かむ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
漸々やう/\ふかくならんとす人影ひとかげちらほらとまれになるをゆきはこゝ一段いちだんいきほひをましてりにれどかくれぬものは鍋燒饂飩なべやきうどんほそあはれなるこゑおろ商家しやうかあらたかおと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あはあはれあらぬ谷にいとくらたまや落つる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
三日みつかともかぞへずしておどろくばかりになりぬ、あきかぜすこしそよ/\とすればはしのかたより果敢はかなげにやぶれて風情ふぜい次第しだいさびしくなるほどあめおとなひこれこそはあはれなれ
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなあはれ、今日けふもまたあかがねの雲をぞ生める。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おちたるもおちたるもした敷石しきいし模樣もやうがへのところありて、ほりおこしてみたてたる切角きりかど頭腦づのうしたゝかちつけたれば甲斐かひなし、あはれ四十二の前厄まへやく人々ひと/″\のちおそろしがりぬ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あなあはれ、きその日もあかがねのなやみかかりき。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いま松野まつのてゝ竹村たけむらきみまれれにまれ、开所そこだめなばあはれや雪三せつざうきやうすべし、わが幸福かうふくもとむるとて可惜あたら忠義ちうぎ嗤笑ものわらひにさせるゝことかは
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
嗚呼さみし、あはれさみし。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
うしろの土手どて自然生しぜんばへおとゝ亥之いのをつて、びんにさしたるすゝきまね手振てぶりもあはれなるなり。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三日みつかりても音沙汰おとさたきにさとしこヽろもだえ、甚之助じんのすけるごとにれとなくうながせば、ぼくもらつてりたけれど姉樣ねえさまくださらねばと、あはいたばさみにりてこまりしてい
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるとき婦女おんなどもにかたをたゝかせて、こゝろうかれるやうこゑのはなしなどさせてくに、ひとあごのはづるゝ可笑をかしさとてわらけるやうらちのなきさへ、には一々あはれにて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あめ何時いつあはれなるなかあきはましてにしむことおほかり、けゆくまゝに灯火ともしびのかげなどうらさびしく、られぬなれば臥床ふしどらんもせんなしとて小切こぎれたる畳紙たゝうがみとりだし
雨の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
果敢はかなのやとうちあふげばそら月影つきかげきよし、ひぢせたる丸窓まるまどのもとにんのさゝやきぞかぜをぎともずり、かげごとかあはれはづかし、見渡みわた花園はなぞのるのにしきつきにほこりて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
覺悟かくご次第しだい斷念あきらめもつくべし、いま此文これげて、あきらかのおこたいてたまはれ、次第しだいにて若樣わかさまにもおわかれにるべければと虚實きよじつをまぜて、子心こごヽろあはれとくやうたのみければ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なみだをかくしてうつあはれさ、うちにはちゝ咳拂せきばらひのれもうるめるこゑなりし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
きに月日つきひながからんことらや、何事なにごともさらさらとてヽ、からず面白おもしろからずくらしたきねがひなるに、春風はるかぜふけばはなめかしき、枯木かれきならぬこヽろのくるしさよ、あはつききか此胸このむねはるけたきにと
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)