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虚實
聞れ其方共顏を上よと有しに兩人は恐る/\少し
面を
上る時
駕籠の中より
熟々と見らるゝに(此時は
所謂誠心の
虚實眞僞面に
表るゝを見分る
緊要の場なりとぞ)
覺悟次第に
斷念もつくべし、
今一
度此文を
進げて、
明らかのお
答へ
聞いて
給はれ、
夫れ
次第にて
若樣にもお
別れに
成るべければと
虚實をまぜて、
子心に
哀れと
聞くやう
頼みければ
ドスト
氏は
躬ら
露國平民社界の
暗澹たる
境遇を
實踐したる
人なり、
而して
其述作する
所は、
凡そ
露西亞人の
血痕涙痕をこきまぜて、
言ふべからざる
入神の
筆語を
以て、
虚實兩世界に
出入せり。