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虚實
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きよじつ
聞れ其方共顏を上よと有しに兩人は恐る/\少し
面を
上る時
駕籠の中より
熟々と見らるゝに(此時は
所謂誠心の
虚實眞僞面に
表るゝを見分る
緊要の場なりとぞ)
覺悟次第に
斷念もつくべし、
今一
度此文を
進げて、
明らかのお
答へ
聞いて
給はれ、
夫れ
次第にて
若樣にもお
別れに
成るべければと
虚實をまぜて、
子心に
哀れと
聞くやう
頼みければ
ドスト
氏は
躬ら
露國平民社界の
暗澹たる
境遇を
實踐したる
人なり、
而して
其述作する
所は、
凡そ
露西亞人の
血痕涙痕をこきまぜて、
言ふべからざる
入神の
筆語を
以て、
虚實兩世界に
出入せり。
企つるには
金子なくては
叶ふまじと此度金七百兩を
掠め取り
出奔なし船頭
杢右衞門を
誑りて天神丸の
上乘し
不慮の難に
遇て此處まで來れる事の
一伍一什を
虚實を
交へて語りければさしもの兩人も舌を
何と心得居る
虚實は此の方にて
聞分けるぞ
爰な
横道者めと大聲に
叱られしかば大膽不敵の久兵衞も
威光に恐れ
一縮みと成て
控へ居るに大岡殿コリヤ民其方久兵衞より
貰ひし百兩は如何致せしやと有りければお民は久兵衞の
方を