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杢右衞門
掛んも
計難し然ば一先
遠く
江戸表へ
赴きて事を
計ふに如ずと思案し
杢右衞門に向申けるは我
種々と
思案せしが當時大阪よりは
江戸表の
方繁昌にて諸事
便利なれば一先江戸を
廻りて
商賣を
欺き天神丸の
上乘して
上方筋へ
赴かんと
胸に
巧み足を早めて西濱に
到ければ天神丸ははや
乘出さん時なり吉兵衞は
大音上オヽイ/\と船を
招けば
船頭杢右衞門が聞つけ何事ならんと
端舟を
卸して
漕寄見れば當時
本店にて日の出の
番頭吉兵衞なれば
杢右衞門は
慇懃に是は/\番頭樣には
何御用にて御
出成れしやと尋ければ吉兵衞
答て
御前方も兼て知らるゝ如く此吉兵衞は是迄
精心を