樣子やうす)” の例文
新字:様子
樣子やうすくと、汽船會社きせんぐわいしや無錢たゞ景物けいぶつは、裏切うらぎられた。うも眞個ほんたうではないらしいのに、がつかりしたが、とき景色けしきわすれない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つく/″\と小池は、田舍ゐなかの小ひさな町に住みながら東京風の生活にあこがれて、無駄な物入りに苦んでゐるらしい母子おやこ樣子やうすを考へた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
借る程の者なれば油斷ゆだんならざる男なりと言れし時三郎兵衞はギヨツとせし樣子やうすを見られしが又四郎右衞門は身代しんだい果程はてほどありこまつた事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ういふ樣子やうすのやうなことをいふてきましたかともひたけれど悋氣男りんきをとこ忖度つもらるゝも口惜くちをしく、れは種々いろ/\御厄介ごやつかい御座ござりました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その二尺にしやくほどした勾配こうばい一番いちばんきふところえてゐる枯草かれくさが、めうけて、赤土あかつちはだ生々なま/\しく露出ろしゆつした樣子やうすに、宗助そうすけ一寸ちよつとおどろかされた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『あゝ、みなわたくしわるいのだ、わたくし失策しくじつたばかりに、一同みんな此樣こん憂目うきめせることか。』とふか嘆息たんそくしたが、たちまこゝろ取直とりなほした樣子やうす
そして、ちよつといきれたやうな樣子やうすをすると、今度こんどはまたあたま前脚まへあしさかんうごかしながらかへしたつちあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
と、或朝あるあさはや非常ひじやう興奮こうふんした樣子やうすで、眞赤まつかかほをし、かみ茫々ばう/\として宿やどかへつてた。さうしてなに獨語ひとりごとしながら、室内しつないすみからすみへといそいであるく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もつと左樣さうするまへ老人らうじん小聲こゞゑ一寸ちよつ相談さうだんがあつたらしく、金貸かねかしらしい老人らうじんは『勿論もちろんのこと』とひたげな樣子やうすくびかたせてたのであつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
自分じぶんをつとは、そのころどんな樣子やうすをしてゐたらう。もしもそのときから二人ふたりあひになつてゐたならば、どうなつたらう。やはり夫婦ふうふになつたであらうか。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
地方ちはうより出でたる糸掛け石も形状けいじやう大さとも概ね此例このれいの如し。此石器せききの用は未だ詳ならざれども切り目の樣子やうすを見れば糸を以てくくりたるものなる事疑ひ無し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
石井三右衞門の邸は、大變な騷ぎになりましたが、まだ、正氣付いたばかりで、二人の醫者が詰め切りで樣子やうすを見て居る主人の三右衞門には聞かせるわけに行きません。
なんといふことのないかはつたてんもないくさはな、このいてゐる春景色はるげしき、とぱっとひろ樣子やうすあらはしてて、しもで、自分じぶんはどこにをつて、なにをしてゐるかといふことを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
バルタ いや、ぼくきませぬ。主人しゅじんわたくしをばはやんだとのみおもうてをられます。しも此處こゝとゞまって樣子やうすなどうかゞはうならば、斬殺きりころしてのけうと、おそろしい見脈けんみゃくおどされました。
子供こどもすこ見當けんたういたらしい樣子やうすで、「はむづかしくてわからないかもれませんが、その寒山かんざんひとだの、それといつしよにゐる拾得じつとくひとだのは、どんなひとでございます」とつた。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
樣子やうすあつて云ひかはせし、夫の名は申されぬが、わたし故に騷動起り、その場へ立合ひ手疵てきずを負ひ、一旦本復ほんぷくあつたれど、この頃はしきりに痛み、いろ/\介抱盡せどもしるしなく、立寄るかたも旅の空
近松半二の死 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
わたし雪籠ゆきごもりのゆるしけようとして、たど/\とちかづきましたが、とびらのしまつたなか樣子やうすを、硝子窓越がらすまどごしに、ふと茫然ばうぜんちました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
逆手さかてもちまゝうしなひてたふたりしかば是は何事なにごとならんと氣付きつけあたへて樣子やうすきく敵討かたきうちなりと申ゆゑ半左衞門はんざゑもんおほいに驚き早々さう/\町役人ちやうやくにん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
天下てんか役人やくにんが、みな其方そちのやうに潔白けつぱくだと、なにふことがないのだが。‥‥』と、但馬守たじまのかみは、感慨かんがいへぬといふ樣子やうすをした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
此時このときにふと心付こゝろつくと、何者なにものわたくしうしろにこそ/\と尾行びかうして樣子やうす、オヤへんだと振返ふりかへる、途端とたんそのかげまろぶがごとわたくし足許あしもとはしつた。
「さうですな、拜見はいけんてもうがす」とかる受合うけあつたが、べつつた樣子やうすもないので、御米およねはらなかすこ失望しつばうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もちひて浮々うき/\とせし樣子やうすさてまこと悔悟くわいごして其心そのこゝろにもなりぬるかと落附おちつくは運平うんぺいのみならず内外うちとのものもおなじことすこまくら
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
箱根はこね伊豆いづ方面はうめん旅行りよかうするもの國府津こふづまでると最早もはや目的地もくてきちそばまでゐたがしてこゝろいさむのがつねであるが、自分等じぶんら二人ふたり全然まるでそんな樣子やうすもなかつた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なに那樣そんなよろこぶのかわたくしにはわけわかりません。』と、院長ゐんちやうはイワン、デミトリチの樣子やうす宛然まるで芝居しばゐのやうだとおもひながら、また其風そのふうひどつてふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、そのあひだにもえず三にん樣子やうす警戒けいかいし、なほも二三蜘蛛くも死骸しがい存在そんざいをたしかめにつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
と、彼女かれはいつも、そのころ自分じぶん樣子やうすやいろ/\こまかい出來できごとまで思浮おもひうかべながらつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
うですね、年少としわか田舍ゐなか大盡だいじんが、相場さうばかゝつて失敗しつぱいでもしたか、をんな引掛ひつかゝつてひど費消つかひぎた……とでもふのかとえる樣子やうすです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ハテ、めうことをんなだとわたくしまゆひそめたが、よくると、老女らうぢよは、何事なにごとにかいたこゝろなやまして樣子やうすなので、わたくしさからはない
目懸惡漢共に付込れし所僥倖さいはひ貴公樣あなたさま御庇蔭おかげを以て一命を無難に助かり候事呉々有難く候と涙を流してかたりければ旅の武士は始終しじう樣子やうす
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やうや醫者いしやたときは、はじめてけたやう心持こゝろもちがした。醫者いしや商買柄しやうばいがらだけあつて、すこしも狼狽うろたへた樣子やうすせなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
らうかたかはこゝろなければ、一日も百ねんおなおくれども其頃そのころより美尾みを樣子やうすかくあやしく、ぼんやりとそらながめてものにつかぬ不審いぶかしさ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれども校長かうちやうかれたいする樣子やうす郡長樣ぐんちやうさんたいするほど丁寧ていねいなことなので、すで浮世うきよ虚榮心きよえいしんこゝろ幾分いくぶんめられてぼくにはまつたあやしくうつつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれ其後そのご病院びやうゐんに二イワン、デミトリチをたづねたのでるがイワン、デミトリチは二ながら非常ひじやう興奮こうふんして、激昂げきかうしてゐた樣子やうすで、饒舌しやべことはもうきたとつてかれ拒絶きよぜつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
百姓ひやくしやうれ、町人ちやうにんれ、同船どうせんゆるす。』と、手招てまねきした。天滿與力てんまよりきがすご/\とふねからるのに、ざまアろとはぬばかりの樣子やうすれちがつて、百姓ひやくしやう町人ちやうにんはどや/\とふねつてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
武生たけふ富藏とみざう受合うはあひました、なんにしろおとまんなすつて、今夜こんや樣子やうす御覽ごらうじまし。ゆきむかまぬかが勝負しようぶでござります。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今宵こよひもちひだけありしか如何いかに、さらでも御不自由ごふじいうのお兩親ふたり燈火ともしびなくばさぞこまはやかへりて樣子やうすりたきもの
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一日いちにちまた一日いちにちはたらいておいいたるのをすこしもかんじない樣子やうすです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
いや、とき手代てだい樣子やうすが、井戸ゐどおとしたおとのやうで、ポカンとしたものであつた、とふ。さて/\油斷ゆだんらぬなか
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
朝之助とものすけころんで愉快ゆくわいらしくはなしをかけるを、おりきはうるさゝうに生返事なまへんじをしてなにやらんかんがへて樣子やうす、どうかしたか、また頭痛づゝうでもはじまつたかとかれて
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてせがれからふだけの仕送しおくりをもらつてる樣子やうすである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
なんとなく浮世うきよからはなれた樣子やうすで、滅多めつたかほせない女主人をんなあるじが、でも、端近はしぢかへはないで、座敷ざしきなかほどに一人ひとりた。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さしもあやふくおもひしことりとはことなしにおはりしかと重荷おもにりたるやうにもおぼゆれば、産婦さんぷ樣子やうすいかにやとのぞいてるに、高枕たかまくらにかゝりて鉢卷はちまきにみだれがみ姿すがた
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それはむかしのまゝだつたが、一棟ひとむね西洋館せいやうくわんべつち、帳場ちやうば卓子テエブルいた受附うけつけつて、蔦屋つたや樣子やうすはかはつてました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なんだか可笑をかしな樣子やうすだねわたしことなにかんにでもさはつたの、それならそのやうにつてれたがい、だまつて其樣そんかほをしてられるとつて仕方しかたいとへば
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは、此方こちらとはちがつて、はじめから樣子やうすのよかつたのが、きふへんがかはつておなくなりになりました。死骸しがいは、あけがた裏門うらもんきました。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
我身わがみうへにもられまするとてものおもはしき風情ふぜい、おまへ出世しゆつせのぞむなと突然だしぬけ朝之助とものすけはれて、ゑツとおどろきし樣子やうすえしが、私等わたしらにてのぞんだところ味噌みそこしがおち
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一時餘いつときあまりちぬれどもでよとはのたまはず、はただしたまふべき樣子やうすもなし。彼者かのもの堪兼たまりかねて、「最早もはや御出おだくださるべし、御慈悲ごじひさふらふ」とたてまつる。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
我欲がよく目當めあてがあきらかにえねばわらひかけたくちもとまでむすんでせる現金げんきん樣子やうすまで、度〻たび/\經驗けいけん大方おほかた會得えとくのつきて、此家このやにあらんとにはかねづかひ奇麗きれいそんをかけず
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
濱野はまのさんは、元園町もとぞのちやう下宿げしゆく樣子やうすつてた。——どくにも、宿やどでは澤山たくさん書籍しよせき衣類いるゐとをいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えぬなはにつながれてかれてゆくやうなれをば、あなたはしんところなにともおもふてくれねば、勝手かつてにしろといふふうれのこととてはすこしもさつしてくれる樣子やうすえぬ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)