其日そのひ)” の例文
其日そのひ二人ふたりしてまち買物かひものやうとふので、御米およね不斷着ふだんぎへて、あつところをわざ/\あたらしい白足袋しろたびまで穿いたものとれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二三日にさんにちつて、とんさんにはなしをした。ちやう其日そのひおな白樺しらかば社中しやちうで、御存ごぞんじの名歌集めいかしふ紅玉こうぎよく』の著者ちよしや木下利玄きのしたりげんさんが連立つれだつてえてた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
行者に教へられた時、弥助夫婦はすぐに其日そのひつてみて、それが十三夜の前日に当ることをあらかじめ知つてゐたのである。
地震ぢしんがあってからちゃう最早もう十一年目ねんめ……わすれもしませぬ……一ねん三百六十にちうちで、はい、其日そのひ乳離ちばなれをなされました。
あとにて書生の語る所によれば、其日そのひ雨の降りしきれる時、世に云ふたつまきなるものありて、そのへびの如き細き長き物の天上するを見たりきといふ。
母となる (新字旧仮名) / 福田英子(著)
其日そのひはそれでわかれ、其後そのごたがひさそつてつり出掛でかけたが、ボズさんのうちは一しかないふる茅屋わらや其處そこひとりでわびしげにんでたのである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
やすんじけりさるにてもいぶかしきは松澤夫婦まつざはふうふうへにこそ芳之助よしのすけ在世ざいせときだに引窓ひきまどけぶりたえ/″\なりしをいまはたいかに其日そのひ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
丁度ちやうど其日そのひ夕方ゆうがた、ドクトル、ハヾトフはれい毛皮けがは外套ぐわいたうに、ふか長靴ながぐつ昨日きのふ何事なにごとかつたやうなかほで、アンドレイ、エヒミチを其宿そのやど訪問たづねた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、とうとう見切りをつけたのか、今では、もう次の職業を探すでもなく、文字通り何もしないで、面白くもない其日そのひ其日を送っているのでした。
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
こゝいてか滿座まんざこと/″\拍手はくしゆ喝釆かつさいしました、それはしん王樣わうさま其日そのひおほせられたうちもつとたくみみなるお言葉ことばでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
其日そのひれ、翌日よくじつきたつたが矢張やはりみづそらなる大洋たいやうおもてには、一點いつてん島影しまかげもなく、滊船きせんけむりえぬのである。
みぎ次第しだいにて大陰暦たいゝんれき春夏秋冬しゆんかしうとうせつかゝはらず、一年の日數ひかずさだむるものなれば去年きよねん何月何日なんぐわつなんにちと、今年ことし其日そのひとはたゞとなへのみ同樣どうやうなれども四季しきせつかなら相違さうゐせり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
くして翌朝よくあさ起出おきいでたときには、のう爽快さうくわいなることぬぐへるかゞみごとく、みがけるたまごとく、腦漿のうしやう透明たうめいであるかのやうかんじるので、きはめて愉快ゆくわい其日そのひ業務げふむれるのである。
よろこれいもそこ/\支度したくとゝの其日そのひ出立せしが日光と云は元來うそなれば夫より芝邊しばへんへ行て四五日
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
明日あすとも云わず其日そのひ即刻そっこく、京伝は使いを走らせて馬琴を家へ呼んで来た。
戯作者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
昔、紀州きしうの山奥に、与兵衛よへゑといふ正直な猟夫かりうどがありました。或日あるひの事いつものやうに鉄砲かたげて山を奥へ奥へと入つて行きましたがどうしたものか、其日そのひに限つてうさぎぴきにも出会ひませんでした。
山さち川さち (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
紛失の歌仙本は、遂に、其日そのひに至るも、下手人が知れなかった。
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして其日そのひから、彼は弁公の親分のもとに寄食する身となった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
あはれ、其日そのひ待つ當來たうらいいのちの呼吸、眼に見えぬ深きところ
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
れたる其日そのひ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
此冬このふゆになつて、ひるのうち炬燵こたつこしらえたのは、其日そのひはじめてゞあつた。よるうからもちひてゐたが、何時いつも六でふだけであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
床几しやうぎしたたはらけるに、いぬ一匹いつぴき其日そのひあさよりゆるもののよしやつしよくづきましたとて、老年としより餘念よねんもなげなり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
で、そう事が解って見ると、私は猶々なおなお怖く恐しく感じて、とてもここに長居する気がないから、其日そのひうち早々そうそうここを引払ひきはらって、再び倫敦ロンドン逃帰にげかえる。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いといつてくださるおひとるもなし、浮氣うはきのやうに思召おぼしめしましようが其日そのひおくりでござんすといふ、いや左樣さうはさぬ相手あいてのないことはあるまい
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
旧藩主M伯爵はくしゃく邸の小使こづかいみたいなことを勤めてかつかつ其日そのひを送っている、五十を越した父親の厄介やっかいになっているのは、彼にしても決して快いことではなかった。
夢遊病者の死 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そしているまで、あたり次第しだいなんでも御座ござれ、其日そのひるだけのこと一心不亂いつしんふらんなければならぬ。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかわたくしうまれた其日そのひより今日迄こんにちまでえず苦痛くつうめてゐるのです、其故それゆゑわたくし自分じぶん貴方あなたよりもたかいもの、萬事ばんじおいて、よりおほ精通せいつうしてゐるものとみとめてるです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
一同下るべし追て呼出すと申わたされければ其日そのひは一同に下りけりされ此度このたびの一けん大岡殿格別かくべつに力を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はなしあひだに、輕氣球けいきゝゆうは、かのおそろしきやまもりたにと、をしき——れどいまえうなき鐵檻車てつおりぐるまとをあとにして、かぜのまに/\空中くうちう飛行ひかうして、其日そのひ午後ごゞ四十ぷんごろ吾等われらふたゝ
去年きよねん彼岸ひがんが三月の二十一日なれば今年ことし彼岸ひがん丁度ちやうど其日そのひなり。かつ毎年まいねん日數ひかず同樣どうやうなるゆゑ、一年とさだめて約條やくでうしたること丁度ちやうど一年の日數ひかずにて閏月しゆんげつため一箇月いつかつき損徳そんとくあることなし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
其日そのひねむい所を無理に早くおこされて、寐足ねたらないあたまかぜかした所為せゐか、停車場にころかみの毛のなか風邪かぜいた様な気がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
... 手前等てまへらより役儀やくぎ申付まをしつさふらふこと、おやす御用ごようさふらふなにはしかれそのもくとやらむ御呼寄およびよせあひなるべし」「早速さつそく御承引ごしよういん難有候ありがたくさふらふ」と其日そのひやかたかへらせたまふ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さる子細しさいあればこそ此處こゝながれにおちこんでうそのありたけ串談じようだん其日そのひおくつてなさけ吉野紙よしのがみ薄物うすものに、ほたるひかりぴつかりとするばかりひとなみだは百ねんまんして
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
成程なるほど、今おせいを離別すれば、もんなしの書生っぽに相違ない彼女の相手と共に、たちまち其日そのひにも困る身の上になることは知れていたけれど、その憐みもさることながら
お勢登場 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれ何時いつ囚人しうじん出會でつくわせば、同情どうじやう不愉快ふゆくわいかんたれるのであるが、其日そのひまた奈何云どういふものか、なんともはれぬ一しゆ不好いや感覺かんかくが、つねにもあらずむら/\といて
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
みぎごと大陽暦たいやうれき日輪にちりん地球ちきうとをてらあはせて其互そのたがひ釣合つりあところもつて一年の日數ひかずさだめたるものゆへ、春夏秋冬しゆんかしうとう寒暖かんだん毎年まいとしことなることなく何月何日なんぐわつなんにちといへば丁度ちやうど去年きよねん其日そのひおな時候じこうにて
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
いしくも思い立ったので、其日そのひからただちに画筆えふでって下図したずとりかかった。
画工と幽霊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
櫻木大佐さくらぎたいさはなところによると、このから丁度ちやうど八日やうかまへばんすなは吾等われらいぬ使者ししやおくつた其日そのひよるである。)猛犬稻妻まうけんいなづますうしよきづひ、みてかへつてたので、はじめて吾等われら大難だいなんわか
きらひ向島か根岸邊へ隱居いんきよ致度いたしたきよしのぞみ候へども漸々やう/\すゝめ近所へ差置下女一人付置候ところ其日そのひ野州邊やしうへんより男女の旅人五六十人着し其外そのほかとまきやく大勢おほぜいこれあり凡百人ばかりゆゑ勿々なか/\まはり兼るに付隱居所の下女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
不愉快ふゆくわい人車じんしやられてびしい溪間たにまおくとゞけられることは、すこぶ苦痛くつうであつたが、今更いまさら引返ひきかへすこと出來できず、其日そのひ午後ごゝ時頃じごろ此宿このやどいた。突然とつぜんのことであるから宿やど主人あるじおどろかした。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其日そのひかぜが強くいた。かつくるしさうに、まへほうこゞんでけた。つてゐた代助は、二重のあたまがぐる/\回転するほど、かぜに吹かれた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其日そのひからかぞへて丁度ちやうど一週間前いつしうかんまへ夜學やがくかつたころで、晝間ひるま通學生つうがくせいかへつてしまひ、夕飯ふゆはんんで、わたし部屋へや卓子つくゑうへで、燈下とうか美少年録びせうねんろくんでた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つれなくへされなば甲斐かひもなきこと、兎角とかく甚之助殿じんのすけどの便たよきたしとまちけるが、其日そのひ夕方ゆふがた人形にんぎやうちて例日いつよりもうれしげに、おまへうたゆゑ首尾しゆびよくかち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし、不幸な私は、いずれの恵みにも浴することが出来ず、哀れな、一家具職人の子として、親譲りの仕事によって、其日そのひ其日の暮しを、立てて行くほかはないのでございました。
人間椅子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
かれ其日そのひ役所やくしよかへけに駿河臺下するがだいしたまでて、電車でんしやりて、いものを頬張ほゝばつたやうくち穿すぼめて一二ちやうあるいたのち、ある齒醫者はいしやかどくゞつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
だい腕車わんしやにん車夫しやふは、茶店ちやみせとゞまつて、人々ひと/″\とともに手當てあてをし、ちつとでもあがきがいたら、早速さつそく武生たけふまでも其日そのひうち引返ひつかへすことにしたのである。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
汚い下宿の四畳半にころがって、味気ない其日そのひ其日を送って行かねばならないのです。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
其日そのひにちものおほせられず、一にちおいてよりははしおろしに、此家このやしな無代たゞでは出來できぬ、しゆうものとて粗末そまつおもふたらばちあたるぞえとれの談義だんぎくるひとごとげられてわかこゝろにははづかしく
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
なほこゝろざ出雲路いづもぢを、其日そのひ松江まつえまでくつもりの汽車きしやには、まだ時間じかんがある。わたしは、もう一度いちど宿やどた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
書斎の椅子にもたれて、何心なく其日そのひとどいた郵便物を調べていた平田氏は、沢山の封書やはがきの中に混って、一通の、可也かなりみだれてはいたが、確かに見覚えのある手蹟で書かれた手紙を発見して
幽霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)