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一點
宗助が
霜を
踏んで、
此記念の
多い
横手へ
出た
時、
彼の
眼は
細長い
路次の
一點に
落ちた。さうして
彼は
日の
通はない
寒さの
中にはたと
留まつた。
吾等の
叫聲は
忽ち
怒濤の
響に
打消されてしまつたが、
只見る、
黒暗々たる
遙か/\の
沖に
當つて、
一點の
燈光ピカリ/\。
ひとへに
寄縋る、
薄暗い、
消えさうに、ちよろ/\またゝく……
燈と
言つては
此一點で、
二階も
下階も
臺所も
内中は
眞暗である。