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一點
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いつてん
宗助が
霜を
踏んで、
此記念の
多い
横手へ
出た
時、
彼の
眼は
細長い
路次の
一點に
落ちた。さうして
彼は
日の
通はない
寒さの
中にはたと
留まつた。
吾等の
叫聲は
忽ち
怒濤の
響に
打消されてしまつたが、
只見る、
黒暗々たる
遙か/\の
沖に
當つて、
一點の
燈光ピカリ/\。
彼堆く
積める
蛇の
屍も、
彼等將に
去らむとするに
際しては、
穴を
穿ちて
盡く
埋むるなり。さても
清風吹きて
不淨を
掃へば、
山野一點の
妖氛をも
止めず。
もしそこに
火災を
起す
虞れが
絶對になかつたならば、この
問題の
解決に
一點の
疑問も
起らないであらう。
つゞゐて
鳥か
船か
見え
分かぬ
程、
一點ポツンと
白い
影、それが
段々と
近づいて
來るとそは
一艘の
白色巡洋艦であつた。
彼處に、
遙に、
湖の
只中なる
一點のモーターは、
日の
光に、たゞ
青瑪瑙の
瓜の
泛べる
風情がある。また、
行く
船の、さながら
白銀の
猪の
驅けるが
如く
見えたるも
道理よ。
實にこの
地震計の
發明は、それまで
極めて
幼稚であつた
地震學が
本當の
學問に
進歩した
基であるので、
單に
此一點からみても、
地震學は
日本に
於て
開けたといつても
差支へないくらゐである。
其日も
暮れ、
翌日は
來つたが
矢張水や
空なる
大洋の
面には、
一點の
島影もなく、
滊船の
煙も
見えぬのである。