かゝ)” の例文
鏡子は気にかゝ良人をつとの金策の話を此人にするのに、今日けふだ余り早すぎると下臆病したおくびやうな心が思はせるので、それは心にしまつて居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さくらうらを、ぱつとらして、薄明うすあかるくかゝるか、とおもへば、さつすみのやうにくもつて、つきおもてさへぎるやいなや、むら/\とみだれてはしる……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
此返事このへんじいて、むつとはらつた。頭巾づきんした剥出むきだして、血色けつしよく頸元えりもとかゝるとむかう後退あとすざりもしない。またいてた。
あみつたたか竹竿たけざをには鳥籠とりかごかゝつてました。そのなかにはをとりつてありまして、小鳥ことりむれそらとほたびこゑびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
けれども第一にこまつたのは、平岡の勝手もとの都合を、三千代のうつたへによつてつたとしては、三千代に迷惑めいわくかゝるかも知れない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たかえ」それでも卯平うへい呶鳴どなつてたが返辭へんじがない。卯平うへいくちうちつぶやいて裏戸口うらとぐちまはつてたら其處そこうちから掛金かけがねかゝつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それを石橋いしばしわたしとでしきり掘出ほりだしにかゝつた、すると群雄ぐんいう四方しはうよりおこつて、ひゞきの声におうずるがごとしです、これ硯友社けんいうしや創立さうりつ導火線だうくわせんつたので
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
茶の接待、水浴室の設備なども鄭重である。茶亭さていには花卉の鉢をならべ乃木東郷両大将の記念自署などが扁額としてかゝつて居た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
此方こなたには具足櫃ぐそくびつがあつたり、ゆみ鉄砲抔てつぱうなど立掛たてかけてあつて、ともいかめしき体裁ていさい何所どこたべさせるのか、お長家ながやら、う思ひまして玄関げんくわんかゝ
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「越前屋の先の女房の母親で、死んだお菊の祖母さんだが、かゝうどに違ひないから、後添ひの今の内儀おかみとは、どうもしつくり行かない樣子だ」
かたりと荷車にぐるまがとまりました。ぶたは、はつとわれ にかへつてみあげました。そこには縣立けんりつ畜獸ちくじう屠殺所とさつじよといふおほきな看板かんばんかゝかつてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
物語れば忠八はおどろたんじ此處に夫程御滯留ごたいりう有とも知らず所々方々尋ね廻りしこそ愚なれ併し今宵こよひ此家に泊らずば御目にもかゝらず江戸迄行んものを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫人ふじん屹度きつと無事ぶじであらうとはれたにかゝはらず、日出雄少年ひでをせうねんも、わたくしも、最早もはや貴女あなたとは、現世このよでおかゝこと出來できまいとばかり斷念だんねんしてりましたに。
なにない。——ないけれど面白おもしろい。疲勞ひらうしては天幕てんとり、菓物くわぶつひ、サイダをむ。いきほひをてはまたりにかゝるが、はなはだしくなにない。
パリス 侍童わらはよ、その炬火たいまつをおこせ。彼方あちて、つッとはなれてゐい。……いや、それをせ、人目ひとめかゝりたうない。
これは、ひと讀書どくしようへばかりではない。んでも、自己じここしゑてかゝらなければ、をとこでもをんなでも、一しやう精神上せいしんじやう奴隷どれいとなつてんでほかいのだ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
慌しく汽笛が鳴つて、ガタリと列車が動き出すと、智惠子はヨロヨロと足場を失つて思はず吉野にかゝつた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もと猿樂町さるがくてううちまへ御隣おとなり小娘ちいさいの追羽根おひばねして、いたしろ羽根はねとほかゝつた原田はらださんのくるまなかおちたとつて、れをば阿關おせきもらひにきしに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
思想しさう人間にんげん成熟せいじゆくたつして、其思想そのしさう發展はつてんされるときになると、其人間そのにんげん自然しぜん自分じぶんがもうすで輪索わなかゝつてゐるのがれるみちくなつてゐるのをかんじます。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『でも、可愛かあいいぬころだッたわね!』やすまうとして毛莨キンポーゲかゝつたときに、其葉そのはの一まいつてあふぎながらあいちやんがひました、『わたししそんなことをする年頃としごろならば、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
つゝがなくうまいでしといふやうに言問ことゝひの前の人の山をくぐいでて見れば、うれしや、こゝ福岡楼ふくをかろうといふに朝日新聞社員休息所あさひしんぶんしやゐんきうそくじよふだあり、極楽ごくらく御先祖方ごせんぞがた御目おめかゝつたほどよろこびてろうのぼれば
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
このあたりで女達をんなたち客引きやくひき場所ばしよは、目下もくか足場あしばかゝつてゐる観音堂くわんおんだう裏手うらてから三社権現じやごんげんまへ空地あきち、二天門てんもんあたりから鐘撞堂かねつきだうのある辨天山べんてんやましたで、こゝは昼間ひるまから客引きやくひきをんながゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
或日あるひ近所きんじよかはれふに出かけて彼處かしこふち此所こゝあみつてはるうち、ふと網にかゝつたものがある、いて見たが容易よういあがらないので川にはひつてさぐこゝろみると一抱ひとかゝへもありさうないしである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれ最後さいごの一まいかゝつたとき
わたした、くさにも、しつとりともやふやうでしたが、そでにはかゝらず、かたにもかず、なんぞは水晶すゐしやうとほしてるやうに透明とうめいで。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兎角とかくするうちにつき滿ちた。いよ/\うまれるといふ間際まぎはまでつまつたとき、宗助そうすけ役所やくしよながらも、御米およねことがしきりにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのおほきな體躯からだすこかきかゝりながら、むねから脚部きやくぶまだらゆきびてた。荒繩あらなはかれけてよこ體躯からだえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
お富といふのは二十七八の平凡な女で、これは出戻りのかゝうど、皆んなと一緒に寶掘りをやつて居たといふだけのことです。
さても享保二年四月十八日越前守殿には今日村井長庵が罪科ざいくわ悉皆こと/″\調しらべ上んとや思はれけん此度の一件にかゝり合の者どもを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
敦賀から一人乗つた露西亜ロシアの汽船の中の様な心細さは無いが、矢張やはり気にかゝるのは東京に残して来た子供等のうへである。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
しきりに侍と亭主と刀の値段の掛引かけひきをいたして居りますと、背後うしろかたで通りかゝりの酔漢よっぱらいが、此の侍の中間ちゅうげんとらえて
其後そののち表面採集へうめんさいしふあるひ小發掘せうはつくつひとは、すくなくあるまいが、正式せいしき發掘はつくつかゝるのは我々われ/\が三番目ばんめあたるのだ。
朝早あさはやく、いそ投釣なげづりをしてゐるひとがありました。なかなかかゝらないので、もうやめよう、もうやめようとおもつてゐました。と一ぴきおほきなやつがかかりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
つぐみといふとりひわといふとりは、なんんでまゐりましても、みんなあみもちかゝつてしまひますが、私共わたしどもにかぎつて軒先のきさきしてくだすつたりをかけさせたりしてくださいます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
つめたいつきひかりされて、人目ひとめかゝらぬいしなか封込ふうじこめられた蟾蜍ひきがへるごとく、わがみにく鉱皮くわうひしためられてゐるとき、ほかのひとたちは清浄しやうじやう肉身にくしん上天じやうてんするのだらう。
べう、十べう大叫喚だいけうくわん、あはや、稻妻いなづま喰伏くひふせられたとおもつたが、このいぬ尋常じんじやうでない、たちまちむつくときて、をりからをどかゝ一頭いつとう雄獅をじゝ咽元のどもと噛付くひついて、一振ひとふるよとへたが
此處彼處こゝかしこ地圖ちづえれば、木釘きくぎには數多あまたかゝつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
うですね、年少としわか田舍ゐなか大盡だいじんが、相場さうばかゝつて失敗しつぱいでもしたか、をんな引掛ひつかゝつてひど費消つかひぎた……とでもふのかとえる樣子やうすです。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その鰹船かつをぶねひとづゝこの器械きかいそなけるやうになつたら、莫大ばくだい利益りえきだつてふんで、此頃このごろ夢中むちゆうになつて其方そのはうばつかりにかゝつてゐるやうですよ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
主人のをひ——と言つても義理の甥なんださうで、かゝうどの與茂吉、二十二三の良い若い者ですが、少しばかり學があつて、筆跡が良いから帳面を
なすよし女房は屏風を立廻たてまはし床にかゝありしが後の方に骨柳こり一ツ有しを夫を改めんとなすをつまは此品は不正ふせいものならずと手を出す役人共はらひ退て中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
女房にようばう横臥わうぐわすることも苦痛くつうへないで、んだ蒲團ふとんかゝつてわづかせつない呼吸いきをついてた。胎兒たいじかしめたみづ餘計よけいたまつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
先生しぇんしぇい此処こゝは天神前で、わしはおめえさんと喧嘩する事は、うなったからは私はひくに引かれぬから、お前さん方三人にかゝられた其の時は是非がえ事じゃが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うした地主ぢぬしにばかり出會であはしてれば文句もんくいなどたはむれつゝ、其方そのはう發掘はつくつかゝつたが、此所こゝだ三千年せんねんらいのつかぬところであつて、貝層かひそう具合ぐあひ大變たいへんい。
「ええ、うるせえ」とふよりはやくかゝりました。けれど四十からはもうどこにもえません。ちええ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
四方の壁に幾十の小さな額がかゝつて居るが、見渡した所すべてが近頃の親しい作家の絵ばかりであるのは一だ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
あのがくなかには『奉納ほうなふ』といふ文字もじと、それをげたひとうまれたとしなぞがいてあるのにがつきましたか。とうさんのおうちうらまつつてあるお稻荷いなりさまのやしろにも、あの繪馬ゑまがいくつもかゝつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
もんはなれて、やがて野路のみちかゝところで、横道よこみちからまへとほくるまうへに、蒋生しやうせい日頃ひごろ大好物だいかうぶつの、素敵すてきふのがつてた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
青山へて見ると、玄関にくるまが二台程あつた。供待ともまちの車夫は蹴込けこみかゝつて眠つた儘、代助の通り過ぎるのを知らなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かゝうどのお半といふのは無類のお人好しで、顏はまづいが氣立ての良い女だ。染五郎とお絹のことといふと夢中になる」