芝居しばゐ)” の例文
はヽさまとならではおにもかじ、觀音かんのんさまのおまゐりもいやよ、芝居しばゐ花見はなみはヽさましよならではとこの一トもとのかげにくれて
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にしろよわつたらしい。……舞臺ぶたい歸途かへりとして、いま隧道トンネルすのは、芝居しばゐ奈落ならくくゞるやうなものだ、いや、眞個まつたく奈落ならくだつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いとはず出歩行であるくのみかむすめくまにも衣類いるゐの流行物櫛笄くしかうがひ贅澤ぜいたくづくめに着餝きかざらせ上野うへの淺草あさくさ隅田すみだはな兩國川りやうこくがは夕涼ゆふすゞみ或は芝居しばゐかはと上なきおごり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
をんなかたほヽをよせると、キモノの花模様はなもやうなみだのなかにいたりつぼんだりした、しろ花片はなびら芝居しばゐゆきのやうにあほそらへちら/\とひかつてはえしました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
芝居しばゐ土間どま煙草たばこつて、他人たにんたもとがしたものも、打首うちくびになるといふうはさつたはつたときは、皆々みな/\あをくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
なに那樣そんなよろこぶのかわたくしにはわけわかりません。』と、院長ゐんちやうはイワン、デミトリチの樣子やうす宛然まるで芝居しばゐのやうだとおもひながら、また其風そのふうひどつてふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひらけたツて、貴方あなた芝居しばゐらツしやいよ、一日おともいたしませう。岩「地獄ぢごく芝居しばゐありますか。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
れた樹木じゆもくかわいた石垣いしがきよごれた瓦屋根かはらやね、目にるものはこと/″\せた寒い色をしてるので、芝居しばゐを出てから一瞬間しゆんかんとても消失きえうせない清心せいしん十六夜いざよひ華美はでやかな姿すがた記憶きおく
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
周三は、一ヶつきばかり虚々うか/\と暮して了ツた。格別面白いといふ程の事は無かツたが、また何時まで頭に殘ツてゐる程の不快も感じなかツた。芝居しばゐには二度行ツた。寄席よせにも三ばんばかり行ツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
こゝろうちでは、そんなことをしてゐる寒山かんざん拾得じつとく文殊もんじゆ普賢ふげんなら、とらつた豐干ぶかんはなんだらうなどと、田舍者いなかもの芝居しばゐて、どのやくがどの俳優はいいうかとおもまどときのやうな氣分きぶんになつてゐるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
料理屋れうりや經營けいえいしたり、子供こども芝居しばゐしたり、大衆物たいしうものもかくし、現代物げんだいものもいゝし、戲曲ぎきよく將棋しやうぎ香合かうがふ女人藝術によじんげいじゆつ左傾さけい等々とう/\三上みかみ神出鬼沒しんしゆつきぼつが、辟易へきえきするくらゐに——世間語せけんごからいへば、わか
即ち或作品さくひんでは、例へば、「石にひしがれたる雜草」と云つたやうな作品では、主人公の心持の限界げんかいえて、作者の理智りちがお芝居しばゐをしぎて居る爲めに、その心持がどうしてもうなづけなくなつて來る。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
隨分ずゐぶん故郷こきようそらなつかしくなつたこと度々たび/\あつた——むかし友人ともだちことや——品川灣しながはわん朝景色あさげしきや——上野淺草うへのあさくさへん繁華にぎやかまちことや——新橋しんばし停車塲ステーシヨンことや——回向院ゑこうゐん相撲すまふことや——神樂坂かぐらざか縁日えんにちことや——よろづ朝報てうほう佛蘭西フランス小説せうせつことや——錦輝舘きんきくわん政談せいだん演説えんぜつことや——芝居しばゐこと浪花節なにはぶしこと
おな白石しろいし在所ざいしようまれなる、宮城野みやぎの信夫しのぶふを、芝居しばゐにてたるさへなにとやらむ初鰹はつがつをころうれしからず。
甲冑堂 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはもとよりうはさだけにとゞまつたが、それ以來いらい當分たうぶん芝居しばゐながら煙草たばこふものがほとんどなくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
へえー芝居しばゐにありさうですな、河竹かはたけしん七さんでも書きさうな狂言きやうげんだ、亀裂ひゞあかぎれかくさうめに亭主ていしゆくま膏薬売かうやくうり、イヤもう何処どこかたにお目にかゝるか知れません。
んだのではない、んだのではない、あれは芝居しばゐといふものだとはヽなみだをふいてくれた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
師走しはすそら芝居しばゐみるひとるをとおみねはまづなみだぐまれて、まづ/\かぜさむきにておいでなされませ、と堅燒かたやき薄蒲團うすぶとん伯父おぢかたせて、さぞさぞ澤山たんと御苦勞ごくらうなさりましたろ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ればかりでなく黒ずんだ天井てんじやう壁襖かべふすまかこまれた二階のへやがいやに陰気臭いんきくさくて、燈火とうくわの多い、人の大勢おほぜいあつまつてゐる芝居しばゐにぎはひが、我慢がまん出来できぬほど恋しく思はれてならなかつたのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
廉直れんちよくなる方針はうしん地方ちはう新聞紙しんぶんし芝居しばゐ學校がくかう公會演説こうくわいえんぜつ教育けういくある人間にんげん團結だんけつ是等これらみな必要ひつえうからざるものである。また社會しやくわいみづかさとつておどろくやうになければならぬとかなどとのことで。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
驚かせし事枚擧まいきよするにいとまあらざるほど多き物から中にも殊にすぐれたるは天一ばう裁判さいばんなり之は物の本にも作り又芝居しばゐにても脚色しくみ講談かうだん落語らくごは更にも言ず其他種々さま/″\の物にも見え其の筋に大同小異だいどうせういありと雖も其主意とする所は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
青磁せいじ赤江あかえ錦手にしきで皿小鉢さらこばちかど瀬戸せとものがきらりとする。横町よこちやうにはなゝめ突出とつしゆつして、芝居しばゐか、なんぞ、興行こうぎやうものの淺葱あさぎのぼりかさなつて、ひら/\とあふつてた。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんだらうと思つてすぐ飛出とびだして格子かうしを明けて見ますると、両側りやうがはとも黒木綿くろもめん金巾かなきん二巾位ふたはゞぐらゐもありませうか幕張まくはりがいたしてございまして、真黒まつくろまる芝居しばゐ怪談くわいだんのやうでございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ぼくれかくらしければと、おもふまヽを遠慮ゑんりよもなく可愛かあいさ、左樣さうおもふてくださるはうれしけれど、其樣そのやうのこと他人ひとふてたまはるなよ、芝居しばゐ花見はなみかぬのはわたしのきにて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
長吉ちやうきちは二度見る同じ芝居しばゐの舞台をば初めてのやうに興味深くながめた。れと同時に、今度はにぎやかな左右の桟敷さじきに対する観察をも決して閑却かんきやくしなかつた。世の中にはあんなに大勢おほぜい女がゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なしければこゝろあるひとみな爪彈つまはじきしてわらふ者多く此妻の渾名あだな一ツ印籠いんろうのおつねと云て世間せけんに誰知らぬ者も無りしとかやれば女の子は父親ちゝおやより母の教方をしへかたにて志操みさをうつくしかるべきにかゝはゝゆゑ幼少えうせうよりそだちもいやしく風俗ふうぞく芝居しばゐ俳優やくしや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
子供は芝居しばゐへゆくでなし
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
……妹背山いもせやま言立いひたてなんぞ、芝居しばゐのはきらひだから、あをものか、さかな見立みたてで西にしうみへさらり、などをくと、またさつ/\とく。おんやくはらひましよな、厄落やくおとし。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
師走しはすつき世間せけんたいものせわしきなかを、ことさららみて綾羅きらをかざり、一昨日おとゝひそろひしとそれ芝居しばゐ狂言けうげんをりから面白おもしろ新物しんものの、これをのがしてはと娘共むすめどもさわぐに、見物けんぶつは十五日
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
るかツて、えらいのがます、故人こじん高島屋たかしまや彦三郎しんすゐます、はんらうや、仲蔵なかざうなどもて、それに今度こんど訥升とつしやうそうらう這入はいつて大層たいそう芝居しばゐります。岩「成程なるほど此方こつちはうい。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
芝居しばゐごと
桜さく島:春のかはたれ (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
なにしろ、中京ちうきやう殖産工業しよくさんこうげふから、名所めいしよ名物めいぶつ花柳界くわりうかい一般いつぱん芝居しばゐ寄席よせ興行こうぎやうものの状態じやうたい視察しさつ
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たしとおもはゞかはごと芝居しばゐきもれかは苦情くぜうまをすべき、花見はなみ月見つきみ旦那だんなさまもよほてゝ、ともらぬるそでたのしみ、おかへりのおそとき何處どこまでも電話でんわをかけて、よるくるとも寐給ねたまはず
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あらうことか、奧方おくがたうづまきかゝる湯氣ゆげなかで、芝居しばゐ繪比羅ゑびらほゝをつけた。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふくんでこればかりはわたし幸福しあはせさりとて喧嘩けんくわするときもあり無理むり小言こごといはれまして腹立はらだふこともあれどあとさきもなし海鼠なまこのやうなとわらはれます此頃このごろ施療せれうひまがなうて芝居しばゐ寄席よせもとんと御無沙汰ごぶさたそのうちにおさそまをしますあにはおまへさまを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こゝは阪地かみがた自慢じまんする(……はしつわたりけり)のおもむきがあるのであるが、講釋かうしやく芝居しばゐで、いづれも御存ごぞんじの閻魔堂橋えんまだうばしから、娑婆しやば引返ひきかへすのが三途さんづまよつたことになつて——面白おもしろい……いや
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんとも思召おぼしめすまじけれどものごゝろ其頃そのころよりさま/″\のこと苦勞くらうにしてだしなみものまなれかれかおりたやかれまじとこゝろのたけは君樣故きみさまゆゑ使つかはれて片時かたときやすおもひもせずお友達ともだちあそびも芝居しばゐきもおきらひとれば大方おほかたことわりいふて僻物ひがものわらはれしはれのため
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
……たとひ、かうして、貴女あなたひろつてくださるのが、ちやんきまつた運命うんめいで、當人たうにんそれつてて、芝居しばゐをするで、たゞ遺失おとしたとおもふだけのことをしてろ、とはれても、可厭いやです。金輪際こんりんざい出來できません。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
最期さいご用意よういあはれみじかちぎりなるかな井筒ゐづゝにかけしたけくらべふりわけがみのかみならねばくとも如何いかゞしらかみにあねさまこさへてあそびしころこれはきみさまこれはわれ今日けふ芝居しばゐくのなりいや花見はなみはうれはしとたはむはせしそれひとつもねがひのかなひしことはなくまちにまちし長日月ちやうじつげつのめぐりれば果敢はかなしや
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さき二人ふたりあたまながいのと、なにかに黒髮くろかみむすんだのは、芝居しばゐ樂屋がくや鬘臺かつらうけに、まげをのせて、さかさつるした風情ふぜいで、前後あとさきになぞへにならんで、むかうむきにつて、同伴者つれの、うして立淀たちよどんだのをつらしい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)