ひだり)” の例文
火事くわじをみて、火事くわじのことを、あゝ火事くわじく、火事くわじく、とさけぶなり。彌次馬やじうまけながら、たがひこゑはせて、ひだりひだりひだりひだり
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これからはいよ/\おたみどの大役たいやくなり、前門ぜんもんとら後門こうもんおほかみみぎにもひだりにもこわらしきやつおほをか、あたら美玉びぎよくきずをつけたまふは
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みぎひだりけずったようなたかがけ、そこらじゅうには見上みあげるような常盤木ときわぎしげってり、いかにもしっとりと気分きぶんちついた場所ばしょでした。
ひだりれたところに応接室おうせつしつ喫煙室きつえんしつかといふやうな部屋へやまどすこしあいてゐて人影ひとかげしてゐたが、そこをぎると玄関げんかんがあつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
とりわけひだりの手がみぎの手より四すんながかったものですから、みの二ばいもあるつよゆみに、二ばいもあるながをつがえてはいたのです。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あわれな母親ははおやは、二人ふたり子供こどもまわしていいました。そこで母親ははおやなかにして、あにひだりに、おとうと彼女かのじょみぎこしをかけたのであります。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
『もつとちかうおりなさい。それで檢死けんし役目やくめみますか。』とひ/\、玄竹げんちくくさつた死體したいみぎひだりに、幾度いくたびもひつくりかへした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
同月どうげつ二十八にちには、幻翁げんおう玄子げんしとの三にん出掛でかけた。今日けふ馬籠方まごめがた街道かいだうひだりまがつた小徑こみち左手ひだりてで、地主ぢぬしことなるのである。
いま彼女かのぢよかほをごりと得意とくいかげえて、ある不快ふくわいおものために苦々にが/\しくひだりほゝ痙攣けいれんおこしてゐる。彼女かのぢよつてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
旅亭やどや禿頭はげあたまをしへられたやうに、人馬じんば徃來ゆきゝしげ街道かいだう西にしへ/\とおよそ四五ちやうある十字街よつかどひだりまがつて、三軒目げんめ立派りつぱ煉瓦造れんぐわづくりの一構ひとかまへ
うたってしまうと、とりはまたんできました。みぎあしにはくさりち、ひだりつめくつって、水車小舎すいしゃごやほうんできました。
しか肝心かんじん家屋敷いへやしきはすぐみぎからひだりへとれるわけにはかなかつた。仕方しかたがないから、叔父をぢ一時いちじ工面くめんたのんで、當座たうざかたけてもらつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「それでもにいさんは、ただの二でも三でも、あたしのいたふみさえってけば、おかねみぎからひだりとのことでござんした」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
中根なかねだな、相變あひかはらず爲樣しやうのないやつだ‥‥」と、わたし銃身じうしんげられたひだりほほおさへながら、忌々いまいましさに舌打したうちした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
また今日こんにち下駄げたによく鼻緒はなをまへあな右足みぎあしひだりに、左足ひだりあしみぎにかたよつて出來できいし下駄げたることがあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
鬼怒川きぬがは徃復わうふくする高瀬船たかせぶね船頭せんどうかぶ編笠あみがさいたゞいて、あらざらしの單衣ひとへすそひだり小褄こづまをとつておびはさんだだけで、あめはこれてかたからけてある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
年頃としごろ廿一二の女惣身そうしん打疵うちきずおほくしてころし候樣子に相見申候尤も衣類いるゐ紬縞小袖つむぎじまこそで二枚を着し黒純子くろどんすりう模樣もやう織出おりだしの丸おびしめ面部めんぶまゆひだりの方にふるきずあと相見あひみえ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度こんどひだりはうかしぎさうになりました。はやみぎはういといてください。』とときには、とうさんはまたたことほりにみぎはういといてやります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そして、この門のまんなかに、ひだりてと右てには山をひかえ、うしろにはムンク湖、前にはヴェッテルン湖をのぞんで、エンチェーピング市があるのです。
『膝栗毛』に「拾うたと思ひし銭は猿が餅、右からひだりの酒に取られた」この狂歌は通臂の意を詠んだのだ。
をとこ道子みちこくちからまかせになにふのかといふやうなかほをして、ウム/\と頷付うなづきながら、おもさうな折革包をりかばんみぎひだりちかへつゝ、かれてはしをわたつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
むかし、三べう(七六)洞庭どうていひだりにし、(七七)彭蠡はうれいみぎにせしが、徳義とくぎをさまらず、これほろぼせり。
あるとき嘉十かじふは、くりからちて、すこひだりひざわるくしました。そんなときみんなはいつでも、西にしやまなかくとこへつて、小屋こやをかけてとまつてなほすのでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その実例はこれを他に求むるをたず、あるいは論者の中にもその身を寄する地位を失わざらんがために説をひだりし、また、その地位を得たるがために主義をみぎしたることもあらん。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
デミトリチのひだりほうとなりは、猶太人ジウのモイセイカであるが、みぎほうにいるものは、まるきり意味いみかおをしている、油切あぶらぎって、真円まんまる農夫のうふうから、思慮しりょも、感覚かんかく皆無かいむになって
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
なんなんでもいしはれませんよ。晩餉ごはんはまだなんですか。そんならおしへてげませう。此處こゝひだりまがつて、それからみぎれて、すこし、あんたと昨日きなふあつたみちのあの交叉點よつかどです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
こしに大小だいしょうかたなをさしているので、士族しぞく(さむらいのいえがら)のどもとすぐわかりますが、ふるぼけたふろしきづつみをひだりわきにかかえ、ちいさなとっくりをそのにさげています。
鳥は、「帝室御夜詰歌手長ていしつおんよづめかしゅちょう」の栄職えいしょくをたまわり、左側第一位ひだりがわだいいちいの高位にものぼりました。たいせつなしんぞうが、このがわにあるというので、皇帝は、ひだりがわをことにおもんぜられました。
わきれもず、みぎにもひだりにもローザラインばかりを懸較かけくらべておゐやったときには、うつくしうもえつらうが、その水晶すゐしゃう秤皿はかりざらに、今宵こよひわしするあるざましい美人びじんけて、さてのち
はじめのうち心後きおくれしてだまつてますと、二ひき動物どうぶつがそのそば近寄ちかよつてました、みぎひだりに一ぴきづゝくちとを開けるだけおほきくいて、でも、あいちやんは元氣げんきしてはなつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かほいろ淺黒あさぐろい、ひだり眼尻めじり黒子ほくろのある、ちひさい瓜實顏うりざねがほでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
みぎ手に*胸をかき開き、ひだりに乳房引き出し、 80
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
ひだりかけみきはしり、四面八角しめんはつかく縱横無盡じうわうむじんとひ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
つと取るや、ひとつて、ひだりより
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのひだりまがつた建物は何んです
片手づかいのひだり太刀
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みぎひだりにたちわか
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
左向ひだりむけ、ひだり
兵隊さん (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
おかしらのおにもおさかずきひだりの手にって、おもしろそうにわらいながらいています。その様子ようすすこしも人間にんげんちがったところはありません。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みぎひだりうで釣合つりあひわるかつたんべい。ほつぺたのにくが、どつちかちがへば、かたがりべいと不具かたわぢや、それではうつくしいをんなでねえだよ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから少時しばらくのち私達わたくしたちはまるでうまかわったような、にもうれしい、ほがらかな気分きぶんになって、みぎひだりとにたもとわかったことでございました。
輕氣球けいききゆううへでは、たちま吾等われら所在ありか見出みいだしたとへ、搖藍ゆれかごなかから誰人たれかの半身はんしんあらはれて、しろ手巾ハンカチーフが、みぎと、ひだりにフーラ/\とうごいた。
金色きんいろにかがやく、かんせた自動車じどうしゃは、ぬかるみのみちをいくたびか、みぎひだりにおどりながら、火葬場かそうじょうほうへとはしったのです。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこで、ひとりのにいさんは、みぎのほうへいきました。もうひとりのにいさんは、ひだりのほうへいきました。にいさんたちは、おばかさんをわらいました。
りやうさん今朝けさ指輪ゆびわはめてくださいましたかとこゑほそさよこたへはむねにせまりてくちにのぼらず無言むごんにさしひだりせてじつとばかりながめしが。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうして卯平うへい菓子くわしつたみぎひだり袖口そでくちからして與吉よきちせる、與吉よきちはふら/\とやうやあるいてつては、あたさう卯平うへいつかまつてたもとさがす。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
縁先えんさきみぎはう小六ころくのゐる六でふまがつて、ひだりには玄關げんくわんしてゐる。そのむかふをへいえん平行へいかうふさいでゐるから、まあ四角しかく圍内かこひうちつてい。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
千駄木せんだぎおくわたしいへから番町ばんちやうまでゞは、可也かなりとほいのであるが、てからもう彼此かれこれ時間じかんつから、今頃いまごろちゝはゝとにみぎひだりから笑顔ゑがほせられて
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何分なんぷんつた。突然とつぜん一人ひとり兵士へいしわたしからだひだりからたふれかかつた。わたしははつとしてひらいた。その瞬間しゆんかんわたしひだりほほなにかにやとほどげられた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ひだりはうには、六甲ろくかふ連山れんざんが、はるひかりにかゞやいて、ところ/″\あか禿げた姿すがたは、そんなにかすんでもゐなかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)