見事みごと)” の例文
もっとも、かようにおほきいものは、さうたくさんはありませんが、そのうちもっとも見事みごとなのは、北朝鮮きたちようせん平安南道へいあんなんどうにあるものです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
其処そこけては我等わしらふなぢや。案山子かゝしみのさばいてらうとするなら、ぴち/\ねる、見事みごとおよぐぞ。老爺ぢい広言くわうげんくではねえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つづいて同じようにおどりかかっていったホールも、ものの見事みごとげとばされ、こしほねをしたたかうって起きあがれなくなった。
で、わたくしおもってそのもんをくぐってきましたが、門内もんない見事みごと石畳いしだたみの舗道ほどうになってり、あたりにちりひとちてりませぬ。
大佐閣下たいさかつか鐵車てつしや見事みごと出來できましたれば、ぜんいそげでいまからぐと紀念塔きねんたふてに出發しゆつぱつしては如何どうでせう、すると晴々はれ/″\しますから。
だれにいうともない独言ひとりごとながら、吉原よしわらへのともまで見事みごとにはねられた、版下彫はんしたぼりまつろうは、止度とめどなくはらそこえくりかえっているのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
たなうへ見事みごとしろ牡丹ぼたんけてあつた。そのほかつくゑでも蒲團ふとんでもこと/″\綺麗きれいであつた。坂井さかゐはじくら入口いりくちつて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れど瀧口、口にくはへし松が枝の小搖こゆるぎも見せず。見事みごと振鈴しんれいの響に耳をまして、含識がんしきながれ、さすがに濁らず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
この男は村一番の強者つわもので、ある時村の一番強い牛と喧嘩けんかをして、その牛の角をへしり、あばらぼね蹴破けやぶって見事みごとたおしてしまったことのある男であった。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そしていかにも易々やすやすあししたみずけて、見事みごとおよまわるのでした。そしてあのぶきりょうな子家鴨こあひるもみんなと一緒いっしょみずに入り、一緒いっしょおよいでいました。
マーキュ 昔話むかしばなし猫王チッバルトぢゃとおもうたらあてちがはう。見事みごと武士道ぶしだう式作法しきさはふ精通せいつうあそばしたお達人たつじんさまぢゃ。
二人ふたり關係くわんけい眞相しんさうが、どんなものであつたかはたれらない。おそらくは彼女自身かのぢよじしんにもわからなかつたことであらう。彼女かのぢよ見事みごと誘惑いうわくあま毒氣どくけめしひたのである。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
其れについて幸い木目もくめ見事みごと欅板けやきいたがあるので、戦役記念の題字を書いてくれと先日村の甲乙たれかれが彼に持込んで来たが、書くが職業と云う条あまりの名筆故めいひつゆえ彼は辞退した。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こうって、魔女まじょはラプンツェルのうつくしいかみつかんで、ひだりへぐるぐるときつけ、みぎ剪刀はさみって、ジョキリ、ジョキリ、とって、その見事みごと辮髪べんぱつ
馬にむちうち全速力で狼群の中を駈け抜けて逃れたが、そのとき、李陵の馬のしりに飛びかかった一匹を、後ろに駈けていた青年左賢王が彎刀わんとうをもって見事みごと胴斬どうぎりにした。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
はか這入はいるまで八ゑん月給げつきうではるまいとおもひますに、其邊そのへん格別かくべつ御心配ごしんぱいなくと見事みごとへば、母親はゝおやはまだらにのこくろして、るほど/\立派りつぱきこえました
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『ほう、ほう!』と彼等は叫びました、『あいつはメヅサの蛇に見事みごとに咬まれてしまうぜ!』
噴煙ふんえん間歇的かんけつてきおこると、時々とき/″\見事みごと煙輪えんわ出來できる。丁度ちようど石油發動機せきゆはつどうき煙突上えんとつじようるように。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なん此程これほど見事みごとものがあらうぞや。それからまた——「フイと恁麽こんなになつたのも——」そんなになるはづはないが、え、なつたのではなからうが?』と女王樣ぢよわうさままをされました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
がつゆき綿わたのようにまちて、一晩ひとばんのうちに見事みごとけてゆくころには、袖子そでこいえではもう光子みつこさんをこえこらなかった。それが「金之助きんのすけさん、金之助きんのすけさん」にわった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
このひとうたは、自然物しぜんぶつうつ場合ばあひにも、自分じぶん感情かんじようべる敍情詩じよじようしといふものゝ場合ばあひにも、じつ見事みごと出來できてゐるので、どちらがよいといひることは出來できませんが、世間せけんでは
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
今日のお働き実に見事みごと。まさに大円満の明鏡はみがき出されんとす。さりながら血気にはやる暴勇。功を急ぐの短所。ともすると一点の瑕瑾かきんたらんかをおそる。自愛一層の精進せられよ。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつ見事みごとにはなりましたがまたおかしかったのです。第一だいいち萱がたおれていましたしきのこのちぎれた脚も見えていました。私どもは笑って見ていますと黒服の役人がむずかしい顔をして云いました。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見物人達は、余りに見事みごとな不具者の演戯に、暫くはため息をつくばかりだった。当の手品使いさえもが、目をみはって、声を呑んでいた。が、やがて、ワーッというときの声が、小屋をゆすった。
踊る一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
先方せんぱうではおほい恐縮きようしゆくして、いろ/\相談さうだんすゑ名高なだか針醫はりいなくなつて、藥箱くすりばこ不用ふようになつてゐたのをり、それを療法れうはふれいとしておくつてたのが、この藥箱くすりばこで、見事みごと彫刻てうこくがしてあつて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
見事みごと見事みごととほめそやし
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
とこにも座敷ざしきにもかざりといつてはいが、柱立はしらだち見事みごとな、たゝみかたい、おほいなる、自在鍵じざいかぎこひうろこ黄金造こがねづくりであるかとおもはるるつやつた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昨夜さくや以來いらいわが朝日島あさひじま海岸かいがんは、およかぎ裝飾さうしよくされた。大佐たいさいへ隙間すきまもなくまる國旗こくき取卷とりまかれて、その正面せうめんには、見事みごと緑門アーチ出來できた。
『まあ見事みごと百合ゆりはな……。』わたくしおぼえずそうさけんで、巌間いわまからくびをさししていた半開はんかい姫百合ひめゆり手折たおり、小娘こむすめのように頭髪かみしたりしました。
「此はお嬢様に」と婦人が取出とりだしたのは、十七八ずつもった丹波酸漿たんばほおずきが二本。いずれもあかいカラのまゝ虫一つ喰って居ない。「まあ見事みごとな」と主婦が歎美の声を放つ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
見事みごと圖星づぼし射中いあてたといふ弓取ゆみとりのキューピッドになんとか綽號あだなでもけさっしゃい。
火口近かこうちかくにゐてこの波動はどう直面ちよくめんしたものは、空氣くうきおほきなつちもつなぐられたことになるので、巨大きよだい樹木じゆもく見事みごとれ、あるひこぎにされて遠方えんぽうはこばれる。勿論もちろん家屋かおくなどは一溜ひとたまりもない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
前達まへたちはそこいらにはちにはなぞへんではなしべたりはいつたりするのをかけるでせう。それからあの黄色きいろふたのしてあるはち見事みごと出來できたのをかけることもるでせう。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
三十ゑんどりの會社員くわいしやゐんつま此形粧このげうそうにて繰廻くりまわしゆくいゑうちおもへば此女このをんな小利口こりこう才覺さいかくひとつにて、良人おつとはくひかつてゆるやららねども、失敬しつけいなは野澤桂次のざわけいじといふ見事みごと立派りつぱ名前なまへあるをとこ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いかりにもえた声がして、警官けいかんはものの見事みごとに、その場になぐりたおされた。
其内そのうちうすしもりて、うら芭蕉ばせう見事みごとくだいた。あさ崖上がけうへ家主やぬしにははうで、ひよどりするどいこゑてた。夕方ゆふがたにはおもていそ豆腐屋とうふや喇叭らつぱまじつて、圓明寺ゑんみやうじ木魚もくぎよおときこえた。ます/\みじかくなつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おはもじながらここもとは、そもじおもうてくびッたけ、からすかぬはあれど、そもじつかれぬ。雪駄せったちゃらちゃら横眼よこめれば、いたさくら芙蓉ふようはなか、さても見事みごと富士ふじびたえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
見事みごとな、い——ごとな肉汁スープ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
見事みごと、斬るか』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ると、うしたことかさ、いまいふそのひのきぢやが、其処そこらになんにもないみち横截よこぎつて見果みはてのつかぬ田圃たんぼ中空なかそらにじのやうに突出つきでる、見事みごとな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
見事みごと! 見事みごと! イヤじつおどろ大發明だいはつめいだよ。』とわたくしひざすゝむをおぼえなかつた。兵曹へいそうなほ威勢ゐせいよく
寸志の一包と、吾れながら見事みごとに出来た聖護院しょうごいん大根だいこを三本げて、挨拶に行く。禾場うちばには祝入営の旗が五本も威勢いせいよく立って、広くもあらぬ家には人影ひとかげ人声ひとごえが一ぱいに溢れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
パリス ひめよりもわかうて、見事みごと母親はゝおやになってゐるのがござるのに。
それは丁度ちょうど人間にんげん平地へいちけるとおなじく、指端ゆびさきひとれずに、大木たいぼくみきをばって、そらけてあがるのでございますが、そのはやさ、見事みごとさ、とてもふで言葉ことばにつくせるわけのものではありませぬ。
見事みごとな、見事みごとな、肉汁スープ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おほきはまぐりウばかり。(ちう、ほんたうは三個さんこ)として、しゞみ見事みごとだ、わんさらもうまい/\、とあわてて瀬戸せとものをかじつたやうに、おぼえがきにしるしてある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かねちから權威けんゐもつて、見事みごともの祕藏ひざうすべし、ふたゝこれ阿母おふくろ胎内たいないもどすことこそかなはずとも、などかすべのなからんや、いで立處たちどころしるしせう。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それよりも、見事みごとなのは、釣竿つりざを上下あげおろしに、もつるゝたもとひるがへそでで、翡翠かはせみむつつ、十二のつばさひるがへすやうなんです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わかいものをそゝのかして、徒労力むだぼねらせると何故あぜふのぢや。御坊ごばう飛騨山ひだやま菊松きくまつが、烏帽子えばうしかぶつて、向顱巻むかふはちまき手伝てつだつて、見事みごと仕上しあげさせたらなんとする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たけよりたかい一めん雑草ざつさうなかに、三本みもと五本いつもとまた七本なゝもとあはむらさきつゆながるゝばかり、かつところに、くきたか見事みごと桔梗ききやうが、——まことに、桔梗色ききやういろいたのであつた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)