故郷こきやう)” の例文
卯平うへい久振ひさしぶり故郷こきやうとしむかへた。彼等かれらいへ門松かどまつたゞみじかまつえだたけえだとをちひさなくひしばけて垣根かきね入口いりくちてたのみである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
またあきになつて、まち夫婦ふうふ去年きよねんとおなじやうに子供こどもてるとき食後しよくごなどは、しみ/″\と故郷こきやう追憶つひおくにふけるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
年とつた良寛さんは、五合庵ごがふあんといふ小さないほりに住むことになつた。その庵は、故郷こきやう出雲崎いづもざきから少し離れた、国上くがみといふ山の中腹にあつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
今度こんどたびは、一體いつたいはじめは、仲仙道線なかせんだうせん故郷こきやういて、其處そこで、一事あるようすましたあとを、姫路行ひめぢゆき汽車きしや東京とうきやうかへらうとしたのでありました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あづけ置て立出たちいでしが其後一向に歸り來らず然に昨年祖母ばば病死びやうしし殘るは私し一人と成りせめては今一度對面たいめんし度と存ず夫故に伊勢參宮より故郷こきやう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下宿屋げしゆくや下婢かひかれあざけりてそのすところなきをむるや「かんがへることす」とひて田舍娘いなかむすめおどろかし、故郷こきやうよりの音信いんしんはゝいもととの愛情あいじやうしめして
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
もなく自分じぶん志村しむら中學校ちゆうがくかうることゝなり、故郷こきやう村落そんらくはなれて、けん中央ちゆうわうなる某町ぼうまち寄留きりうすることゝなつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
このをんなにはうま故郷こきやうみづが、しやうはないのだらうと、うたぐればうたぐられるくらゐ御米およね一時いちじなやんだこともあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さへりあげもせず錦野にしきの懇望こんまうあたかもよしれは有徳うとく醫師いしなりといふ故郷こきやうなにがしにはすくなからぬ地所ぢしよ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「む、どこつて、おいらの故郷こきやうへよ。おもしろいことが澤山たんとあるぜ。それからお美味いしいものも——」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
しかきみわたしなにもワルシヤワへ必要ひつえういのだから、きみ一人ひとりたまへ、さうしてわたし何卒どうぞさき故郷こきやうかへしてください。』アンドレイ、エヒミチは哀願あいぐわんするやうにふた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ける銃架じうか。おういへはなれてむすねむりのうちに、かぜ故郷こきやうのたよりをおまへつたへないのか
ねんはんまへといへばわたくしがまだ亞米利加アメリカ大陸たいりく滯在たいざいしてつた時分じぶんことで、隨分ずいぶんふる新聞しんぶんではあるが、ふるくつてもんでもよい、故郷こきやうなつかしとおもふ一ねんに、はなたずんでゆくうち
此間このあひだ望蜀生ばうしよくせい故郷こきやうかへり、活東子くわつとうしまたふるはず。幻花子げんくわし相變あひかはらず。それと玄川子げんせんし相手あひてにぼつ/\つて、到頭たうとう鷄屋とりやへいしたまですゝんで、なつころには場所ばしよくなつた。
胡場こば北風ほくふういなゝき、越鳥ゑつてう南枝なんしくふ、故郷こきやうわすれがたきは世界の人情にんじやう也。
いかなれば故郷こきやうのひとのわれにつら
じつは、故郷こきやうへの往復わうふくに、ころ交通かうつう必要上ひつえうじやうむを幾度いくど長途ながみちくるまにたよつたため、何時いつとなくるのにれたものであらうとおもふ。……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
させるのは親の本意と思はねど身に替難かへがた年貢ねんぐ金子かねゆゑ子にすくはるゝのも因果いんぐわなり娘のつとめは如何ならんさぞ故郷こきやうの事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
安井やすゐわらひながら、比較ひかくのため、自分じぶんつてゐるある友達ともだち故郷こきやう物語ものがたりをして宗助そうすけかした。それは淨瑠璃じやうるりあひ土山つちやまあめるとある有名いうめい宿しゆくことであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おもへば頼母たのもしいやうにもあり故郷こきやうかへるといふからしておやことおもはれますとうちしほるればそれ道理ことわりわたしでさへも乳母うばことすこしもわすれずいま在世いたならあまへるものを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そしてとほとほいその故郷こきやうのおうちへかえるには、それはそれはながたびをしなければならないの。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
故郷こきやう風景ふうけいもととほりである、しか自分じぶん最早もはや以前いぜん少年せうねんではない、自分じぶんはたゞ幾歳いくつかのとししたばかりでなく、かう不幸ふかうか、人生じんせい問題もんだいになやまされ、生死せいし問題もんだい深入ふかいりし
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
必然ひつぜんあく」を解釋かいしやくして遊歩塲いうほぢやう一少女いつせうぢよ點出てんしゆつしかの癖漢へきかん正義せいぎ狂欲きやうよくするじやうえがき、あるひ故郷こきやうにありしときのあたゝかきゆめせしめ、生活せいくわつ苦戰塲くせんぢやうりて朋友はうゆう一身いつしんだんずるところあり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
二人ふたりは、そんなはなしをして、つまらなそうにわらつた。そして、なんとなくあきらしいそらのいろと、着物きものはだざわりとにがつくと、やはり二人ふたりえがたいやうに故郷こきやう自然しぜん思浮おもひうかべるのであつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
かれ故郷こきやう幾年目いくねんめかでついでもあるし、さいは勘次かんじのことは村落むらうちつてたから相談さうだんをしててやらうといつた。卯平うへい近頃ちかごろ滅切めつきりくぼんだ茶色ちやいろしかめるやうにしながらかすかなゑみうかべた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
新婚當時しんこんたうじ四五年しごねん故郷こきやうかへりみなかつた時分じぶん穗科閣下ほしなかくかは、あゝ糠鰊こぬかにしんひたいな、と暫々しば/\つて繰返くりかへした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うた敏速さそくの寶澤は空泣そらなきしてさても私しの親父おや養子やうしにて母は私しが二ツの年病死びやうしし夫より祖母ばば養育やういく成長ひとゝなりしが十一歳の年に親父ちち故郷こきやうの熊本へ行とて祖母ばばに私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
書生しよせい千葉ちばいとゞしうおそりて、これはうも、これはとかしらげるばかり、故郷こきやうりしときあねなるひとはゝかはりて可愛かわゆがりてれたりし、其折そのをり其頃そのころありさまをおもおこして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それはね……さあ、なんつたらいいでせう。あんたたちがはやくおほきくなると、くににさむいさむいかぜいたり、ゆきがふつたりしないうちにとほとほ故郷こきやうのおうちへかえるのよ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ところ自分じぶんの二十のときであつた、ひさしぶりで故郷こきやう村落そんらくかへつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おなじとしふゆのはじめ、しも緋葉もみぢみちを、さわやか故郷こきやうから引返ひつかへして、ふたゝ上京じやうきやうしたのでありますが、福井ふくゐまでにはおよびません、わたし故郷こきやうからはそれから七さきの
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
假初かりそめならぬ三えんおなじ乳房ちぶさりしなり山川さんせんとほへだたりし故郷こきやうりしさへひがしかたあしけそけし御恩ごおん斯々此々かく/\しか/″\はゝにてはおくりもあえぬに和女そなたわすれてなるまいぞとものがたりかされをさごゝろ最初そも/\よりむねきざみしおしゆうことましてやつゞ不仕合ふしあはせかたもなき浮草うきくさ孤子みなしご流浪るらうちからたのむは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やまうへなるたうげ茶屋ちややおもす——極暑ごくしよ病氣びやうきのため、くるまえて、故郷こきやうかへみちすがら、茶屋ちやややすんだときことです。もん背戸せど紫陽花あぢさゐつゝまれてました。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、たすはづだつた女房にようばうおぶつてなら……ふもと温泉をんせんまではおろかこと百里ひやくり二百里にひやくり故郷こきやうまでも、東京とうきやうまでも、貴様きさまからすくふためには、んでもかへるつもりでた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それ東京とうきやう出來できなかつたら、故郷こきやう住居すまひもとめるやうに、是非ぜひ恰好かつかうなのを心懸こゝろがける、と今朝けさ從※いとこふから、いや、つかまつりまして、とつい眞面目まじめつて叩頭おじぎをしたつけ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところで——ちゝの……危篤きとく……生涯しやうがい一大事いちだいじ電報でんぱうで、とし一月いちぐわつせついまだ大寒たいかんに、故郷こきやう駈戻かけもどつたをりは、汽車きしやをあかして、敦賀つるがから、くるまだつたが、武生たけふまででれた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
故郷こきやう歸省中きせいちう青年せいねんやまふもとかはつて、下流かりうはうくるまはしらしてかへつてた。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ごろには、それとなくかぜのたよりに、故郷こきやう音信いんしんいて自殺じさつしたあによめのおはるなりゆきも、みな心得違こゝろえちがひからおこつたこといてつてたので、自分じぶん落目おちめなら自棄やけにもらうが
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……すなはかぜこゑなみおとながれひゞき故郷こきやうおもひ、先祖代々せんぞだい/\おもひ、たゞ女房にようばうしのぶべき夜半よは音信おとづれさへ、まどのささんざ、松風まつかぜ濱松はままつぎ、豐橋とよはしすや、ときやゝるにしたがつて、横雲よこぐもそら一文字いちもんじ
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其處そこには、金澤かなざはひと多人數たにんずう移住いぢうしたるゆゑ、故郷こきやうにて、(加州金澤の新堅町の云々うんぬん)とふのが、次第しだいになまりて(かしや、かなざものしんたてまつる。)るべし、民謠みんえうちう愈々いよ/\不可ふかなること。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)