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病人
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びやうにん
然しその
時の
周圍の
事情は、
病人をK
氏の
家に
臥かして
置く
事を
許さないので、
直ぐに
何處へか
入院させなければならなかつた。
眞に、
罪な、
濟まない
事ぢやあるけれども、
同一病人が
枕を
並べて
伏つて
居ると、どちらかに
勝まけがあるとの
話。
壁一重でも、おんなじ
枕。
「
野田へは
知らせてくれめえか」と
聞いた。
勘次も
近所の
者も
卯平へ
知らせることも
忘れて
只苦惱する
病人を
前に
控へて
困つて
居るのみであつた。
お
暇ともならば
彌々病人の
伯父に
心配をかけ、
痩世帶に一日の
厄介も
氣の
毒なり、
其内にはと
手紙ばかりを
遣りて、
身は
此處に
心ならずも
日を
送りける。
明るい
燈火の
下に
三人が
待設けた
顏を
合はした
時、
宗助は
何よりも
先づ
病人の
色澤の
回復して
來た
事に
氣が
付いた。
立つ
前よりも
却つて
好い
位に
見えた。
私は家へ
帰つて来た。家の小路の
両側は
桃色の
花で埋まつてゐた。この
棚びく
花の中に
病人がゐようとは、何と
新鮮な美しさではないか。と私はつぶやいた。
『
肺の
方から
來た
病人なのですがな。』とハヾトフは
小聲で
云ふた。『や、
私は
聽診器を
忘れて
來た、
直ぐ
取つて
來ますから、
些と
貴方は
此處でお
待ち
下さい。』
千種屋と
出入りの
大町人に
揃ひも
揃つて
出來た
病人のことを、さま/″\に
考へてゐた。
憐み給へ、
收穫時の
病人のやうに、
小股にて出て來る目付を。
病人はK
夫人の
顏の
下で、
小兒のやうに
顎で
頷いて
見せた。
上の
方へ
一束にした
髮が、
彼女を一
層少女らしく
痛々しく
見せた。
正午頃の
大ホテル、
秋冷かに
寂とした
中へ、
此の
騷々しさ。
病人の
主人、フト
窓から
下を
覗くと、
急に
眉を
顰めて
看護婦だの
巡査だの
役場員だのつちう
奴等病人の
口でもひねつてみつしり
喰つてゞも
呉んなくつちや
商人は
駄目だよ
温泉宿の
欄干に
倚つて
外を
眺めて
居る
人は
皆な
泣き
出しさうな
顏付をして
居る、
軒先で
小供を
負て
居る
娘は
病人のやうで
背の
小供はめそ/\と
泣いて
居る。
彼は
普通の
場合の
樣に
病人の
脉を
取つて、
長い
間自分の
時計を
見詰めてゐた。それから
黒い
聽診器を
心臟の
上に
當てた。それを
丁寧に
彼方此方と
動かした。
請へば
平常の
氣だてに
有るべき
願ひとて
疑ひもなく
運平點頭きて
然らば
疾く
行きて
疾くかへれ
病人の
處に
長居はせぬもの
供には
鍋なりと
連れて
行きなされと
氣を
はあ、
病人、
然し
何百
人と
云ふ
狂人が
自由に
其處邊を
歩いてゐるではないですか、
其れは
貴方々の
無學なるに
由つて、
狂人と、
健康なる
者との
區別が
出來んのです。
病人は七
顛八
倒して
悲鳴を
上げるのが、
娘が
来て
背中へぴつたりと
胸をあてゝ
肩を
押へて
居ると、
我慢が
出来る、といつたやうなわけであつたさうな。
そのうちにも、
病人の
容態は、
刻々險惡になつてゆくので、たうとう、そこから
餘り
遠くない、
府下××
村のH
病院へ
入院させるより
仕方がなくなつた。
それでも
暫くすると
病人は
復た
意識を
恢復して、びり/\と
身體を
撼はせて、
太い
繩でぐつと
吊されたかと
思ふやうに
後へ
反つて、
其劇烈な
痙攣に
苦しめられた。
友仙の
帶に
緋ぢりめんの
帶あげも
人手を
借りずに
手ばしこく
締めたる
姿、
不圖見たる
目には
此樣の
病人とも
思ひ
寄るまじき
美くしさ、
兩親は
見返りて
今更に
涙ぐみぬ
『
病院です、もう
疾うから
貴方にも
見て
頂き
度と
思つてゐましたのですが……
妙な
病人なのです。』
小六が
藥取りから
歸つて
來て、
醫者の
云ひ
付け
通り
服藥を
濟ましたのは、もう
彼是十二
時近くであつた。それから二十
分と
經たないうちに、
病人はすや/\
寐入つた。
半時間以上待たねば
人車が
出ないと
聞いて
茶屋へ
上り
今度は
大ぴらで一
本命じて
空腹へ
刺身を
少ばかり
入れて
見たが、
惡酒なるが
故のみならず
元來八
度以上の
熱ある
病人、
甘味からう
筈がない。
其といふのが、はじまりは
彼の
嬢様が、それ、
馴染の
病人には
毎日顔を
合はせる
所から、
愛相の一つも、あなたお
手が
痛みますかい、
甚麼でございます
庭口も
明け
放して、
嘸かし
貴郎のお
怒り
遊した
事と
氣が
氣では
無かつたなれど、
病人見捨てゝ
歸る
事もならず、
今日も
此やうに
遲くまで
居りまして、
何處までも
私が
惡う
御座んするほどに
これでは
何方が
病人か
分なくなつた。
自分も
斷念めて
眼をふさいだ。
三日目の
午過ぎ、やれ
粥を
煮ろの、おかう/\を
細くはやせの、と
云ふ
病人が、
何故か
一倍氣分が
惡いと、
午飯も
食べないから、
尚ほ
打棄つては
置かれない。
口惜しげに
相手を
睨みしこともありしがそれは
無心の
昔なり
我れ
性來の
虚弱とて
假初の
風邪にも
十日廿日新田の
訪問懈れば
彼處にも
亦一人の
病人心配に
食事も
進まず
稽古ごとに
行きもせぬとか
これだけの
人參、
一人觸つて
一舐めしても
大抵な
病人は
助かる。で、それだけ
代物が
減る、
合點か。
寧お
目にかゝりしうへにて
兎も
角もせんと
心に
答へて
妻戀下とばかり
當所なしにこゝの
裏屋かしこの
裏屋さりとては
雲掴むやうな
尋ねものも
思ふ
心がしるべにや
松澤といふか
何か
知らねど
老人の
病人二人ありて
年若き
車夫の
家ならば
此裏の
突當りから
三軒目溝板の
外れし
所がそれなりとまで
教へられぬ
時は
(お
導きで
來合はせた
藥を
買はいでは、
病人が
心許ない。お
頂きなされぬと、
後悔をされうが。)
これは
彌六といつて、
與吉の
父翁が
年來の
友達で、
孝行な
兒が
仕事をしながら、
病人を
案じて
居るのを
知つて
居るから、
例として
毎日今時分通りがかりに
其消息を
傳へるのである。
愛想も
盡かさず、こいつを
病人あつかひに、
邸へ
引取つて、
柔かい
布團に
寢かして、
寒くはないの、と
袖をたゝいて、
清心丹の
錫を
白い
指でパチリ……に
至つては、
分に
過ぎたお
厚情。
「
否、
志です……
病人が
夢に
見てくれますでせう。……もし、
恐入りますが、」
主人も、
容體の
惡い
病人で、
氣が
上ずつて
居て
突掛るやうに
申したさうです。
初手は
若い
男ばかりに
利いたが、
段々老人にも
及ぼして、
後には
婦人の
病人もこれで
復る、
復らぬまでも
苦痛が
薄らぐ、
根太の
膿を
切つて
出すさへ、
錆びた
小刀で
引裂く
医者殿が
腕前ぢや
此の
樣子を、
間近に
視ながら、
毒のある
目も
見向けず、
呪詛らしき
咳もしないで、ずべりと
窓に
仰向いて、
病の
顏の、
泥濘から
上げた
石臼ほどの
重いのを、ぢつと
支へて
居る
病人は
奇特である。
淺草邊へ
病人の
見舞に、
朝のうち
出かけた
家内が、
四時頃、うすぼんやりして、
唯今と
歸つた、
見舞に
持つて
出た、
病人の
好きさうな
重詰ものと、いけ
花が、そのまゝすわつた
前かけの
傍にある。
それもたゞ
五六人。
病人が
起つた。あとへ
紫がついて
下りたのである。……
鰌の
沼津と
言つた。
雨ふりだし、まだ
眞暗だから
遠慮をしたが、こゝで
紫の
富士驛と
言ひたい、——その
若い
女が
下りた。
と
言ふうちに、その
面二つある
病人の、その
臭氣と
言つたらない。
で、
病人とあつて、
蹌踉と
樓を
下る。