病人びやうにん)” の例文
同伴者つれ親類しんるゐ義母おつかさんであつた。此人このひと途中とちゆう萬事ばんじ自分じぶん世話せわいて、病人びやうにんなる自分じぶんはらまでおくとゞけるやくもつたのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかしそのとき周圍しうゐ事情じじやうは、病人びやうにんをKうちかしてことゆるさないので、ぐに何處どこへか入院にふゐんさせなければならなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
まことに、つみな、まないことぢやあるけれども、同一おなじ病人びやうにんまくらならべてふせつてると、どちらかにかちまけがあるとのはなしかべ一重ひとへでも、おんなじまくら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
野田のだへはらせてくれめえか」といた。勘次かんじ近所きんじよもの卯平うへいらせることもわすれてたゞ苦惱くなうする病人びやうにんまへひかへてこまつてるのみであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いとまともならば彌々いよ/\病人びやうにん伯父おぢ心配しんぱいをかけ、痩世帶やせせたいに一日の厄介やくかいどくなり、其内そのうちにはと手紙てがみばかりをりて、此處こゝこゝろならずもおくりける。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あかるい燈火ともしびした三人さんにん待設まちまうけたかほはしたとき宗助そうすけなによりも病人びやうにん色澤いろつや回復くわいふくしてこといた。まへよりもかへつてくらゐえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私は家へかへつて来た。家の小路の両側りやうがは桃色もゝいろはなで埋まつてゐた。このたなびくはなの中に病人びやうにんがゐようとは、何と新鮮しんせんな美しさではないか。と私はつぶやいた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
はいはうから病人びやうにんなのですがな。』とハヾトフは小聲こごゑふた。『や、わたし聽診器ちやうしんきわすれてた、つてますから、ちよつ貴方あなた此處こゝでおください。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
千種屋ちぐさや出入でいりの大町人おほちやうにんそろひもそろつて出來でき病人びやうにんのことを、さま/″\にかんがへてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あはれみ給へ、收穫時とりいれどき病人びやうにんのやうに、小股こまたにて出て來る目付を。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
病人びやうにんはK夫人ふじんかほしたで、小兒こどものやうにあごうなづいてせた。うへはう一束ひとたばにしたかみが、彼女かのぢよを一そう少女せうぢよらしく痛々いた/\しくせた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
正午頃まひるごろだいホテル、秋冷あきひやゝかにしんとしたなかへ、騷々さう/″\しさ。病人びやうにん主人しゆじん、フトまどからしたのぞくと、きふまゆひそめて
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
看護婦かんごふだの巡査じゆんさだの役場員やくばゐんだのつちう奴等やつら病人びやうにんくちでもひねつてみつしりつてゞもんなくつちや商人あきんど駄目だめだよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
温泉宿をんせんやど欄干らんかんつてそとながめてひとしさうな顏付かほつきをしてる、軒先のきさき小供こどもしよつむすめ病人びやうにんのやうで小供こどもはめそ/\といてる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かれ普通ふつう場合ばあひやう病人びやうにんみやくつて、ながあひだ自分じぶん時計とけい見詰みつめてゐた。それからくろ聽診器ちやうしんき心臟しんざううへてた。それを丁寧ていねい彼方あちら此方こちらうごかした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
へば平常つねだてにるべきねがひとてうたがひもなく運平うんぺい點頭うなづきてらばきてくかへれ病人びやうにんところ長居ながゐはせぬものともにはなべなりとれてきなされと
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はあ、病人びやうにんしかなんにん狂人きやうじん自由じいう其處邊そこらへんあるいてゐるではないですか、れは貴方々あなたがた無學むがくなるにつて、狂人きやうじんと、健康けんかうなるものとの區別くべつ出來できんのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
平原へいげん病人びやうにん舍營しやえいあり
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
病人びやうにんは七てんたうして悲鳴ひめいげるのが、むすめ背中せなかへぴつたりとむねをあてゝかたおさへてると、我慢がまん出来できる、といつたやうなわけであつたさうな。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうちにも、病人びやうにん容態ようたいは、刻々こく/\險惡けんあくになつてゆくので、たうとう、そこからあまとほくない、府下ふか××むらのH病院びやうゐん入院にふゐんさせるより仕方しかたがなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
それでもしばらくすると病人びやうにん意識いしき恢復くわいふくして、びり/\と身體からだふるはせて、ふとなはでぐつとつるされたかとおもふやうにうしろそりかへつて、その劇烈げきれつ痙攣けいれんくるしめられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
友仙いうぜんおびぢりめんのおびあげも人手ひとでりずにばしこくめたる姿すがた不圖ふとたるには此樣このやう病人びやうにんともおもるまじきうつくしさ、兩親ふたおや見返みかへりて今更いまさらなみだぐみぬ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
病院びやうゐんです、もううから貴方あなたにもいたゞたいおもつてゐましたのですが……めう病人びやうにんなのです。』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
小六ころく藥取くすりとりからかへつてて、醫者いしやどほ服藥ふくやくましたのは、もう彼是かれこれ十二ちかくであつた。それから二十ぷんたないうちに、病人びやうにんはすや/\寐入ねいつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
半時間はんじかん以上いじやうたねば人車じんしやないといて茶屋ちやゝあが今度こんどおほぴらで一ぽんめいじて空腹くうふく刺身さしみすこしばかりれてたが、惡酒わるざけなるがゆゑのみならず元來ぐわんらい以上いじやうねつある病人びやうにん甘味うまからうはずがない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それといふのが、はじまりは嬢様ぢやうさまが、それ、馴染なじみ病人びやうにんには毎日まいにちかほはせるところから、愛相あいさうの一つも、あなたおいたみますかい、甚麼どんなでございます
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
庭口にはぐちぱなして、さぞかし貴郎あなたのおおこあそばしたことではかつたなれど、病人びやうにん見捨みすてゝかへこともならず、今日けふこのやうにおそくまでりまして、何處どこまでもわたしわろ御座ござんするほどに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これでは何方どつち病人びやうにんわからなくなつた。自分じぶん斷念あきらめてをふさいだ。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
三日目みつかめ午過ひるすぎ、やれかゆろの、おかう/\をこまかくはやせの、と病人びやうにんが、何故なぜ一倍いちばい氣分きぶんわるいと、午飯おひるべないから、打棄うつちやつてはかれない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
口惜くちをしげに相手あひてにらみしこともありしがそれは無心むしんむかしなり性來せいらい虚弱きよじやくとて假初かりそめ風邪ふうじやにも十日とをか廿日はつか新田につた訪問はうもんおこたれば彼處かしこにもまた一人ひとり病人びやうにん心配しんぱい食事しよくじすゝまず稽古けいこごとにきもせぬとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これだけの人參にんじん一人ちよつとさはつて一舐ひとなめしても大抵たいてい病人びやうにんたすかる。で、それだけ代物しろものる、合點がつてんか。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつそにかゝりしうへにてかくもせんとこゝろこたへて妻戀下つまこひしたとばかり當所あてどなしにこゝの裏屋うらやかしこの裏屋うらやさりとてはくもつかむやうなたづねものもおもこゝろがしるべにや松澤まつざはといふかなにらねど老人としより病人びやうにん二人ふたりありて年若としわか車夫しやふいへならば此裏このうら突當つきあたりから三軒目さんげんめ溝板どぶいたはづれしところがそれなりとまでをしへられぬとき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(おみちびきで來合きあはせたくすりはいでは、病人びやうにん心許こゝろもとない。おいたゞきなされぬと、後悔こうくわいをされうが。)
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これは彌六やろくといつて、與吉よきち父翁ちゝおや年來ねんらい友達ともだちで、孝行かうかう仕事しごとをしながら、病人びやうにんあんじてるのをつてるから、れいとして毎日まいにち今時分いまじぶんとほりがかりにその消息せうそくつたへるのである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
愛想あいそかさず、こいつを病人びやうにんあつかひに、やしき引取ひきとつて、やはらかい布團ふとんかして、さむくはないの、とそでをたゝいて、清心丹せいしんたんすゞしろゆびでパチリ……にいたつては、ぶんぎたお厚情こゝろざし
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いゝえこゝろざしです……病人びやうにんゆめてくれますでせう。……もし、恐入おそれいりますが、」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人あるじも、容體ようだいわる病人びやうにんで、うはずつて突掛つゝかゝるやうにまをしたさうです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
初手しよてわかをとこばかりにいたが、段々だん/″\老人としよりにもおよぼして、のちには婦人をんな病人びやうにんもこれでなほる、なほらぬまでも苦痛いたみうすらぐ、根太ねぶとうみつてすさへ、びた小刀こがたな引裂ひツさ医者殿いしやどの腕前うでまへぢや
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
樣子やうすを、間近まぢかながら、どくのある見向みむけず、呪詛のろひらしきしはぶきもしないで、ずべりとまど仰向あふむいて、やまひかほの、泥濘ぬかるみからげた石臼いしうすほどのおもいのを、ぢつとさゝへて病人びやうにん奇特きどくである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
淺草邊あさくさへん病人びやうにん見舞みまひに、あさのうちかけた家内かないが、四時頃よじごろ、うすぼんやりして、唯今たゞいまかへつた、見舞みまひつてた、病人びやうにんきさうな重詰ぢうづめものと、いけばなが、そのまゝすわつたまへかけのそばにある。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それもたゞ五六人ごろくにん病人びやうにんつた。あとへむらさきがついてりたのである。……どぢやう沼津ぬまづつた。あめふりだし、まだ眞暗まつくらだから遠慮ゑんりよをしたが、こゝでむらさき富士驛ふじえきひたい、——そのわかをんなりた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふうちに、そのつらふたつある病人びやうにんの、その臭氣にほひつたらない。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、病人びやうにんとあつて、蹌踉よろ/\にかいおりる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)