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當所
卸して居られし
故忠右衞門
大聲にて
當所は
往古より
殺生禁斷の場所なれば
殺生する者あれば
搦捕るなりと呼はるを
仕たく思ふなり
太儀ながら天氣を
見定め遠く
江戸廻りして
貰たしといふ杢右衞門は
頭をかき是迄の
海上の
深淺は
能存じたれば
水差も入らざりしが是から江戸への
海上は
當所にて水差を
寧お
目にかゝりしうへにて
兎も
角もせんと
心に
答へて
妻戀下とばかり
當所なしにこゝの
裏屋かしこの
裏屋さりとては
雲掴むやうな
尋ねものも
思ふ
心がしるべにや
松澤といふか
何か
知らねど
老人の
病人二人ありて
年若き
車夫の
家ならば
此裏の
突當りから
三軒目溝板の
外れし
所がそれなりとまで
教へられぬ
時は