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医者殿
一
体は
医者殿、
手のつけやうがなくつて、
身の
衰をいひ
立てに一
日延ばしにしたのぢやが三
日経つと、
兄を
残して、
克明な
父親の
股引の
膝でずつて、あとさがりに
玄関から
土間へ
初手は
若い
男ばかりに
利いたが、
段々老人にも
及ぼして、
後には
婦人の
病人もこれで
復る、
復らぬまでも
苦痛が
薄らぐ、
根太の
膿を
切つて
出すさへ、
錆びた
小刀で
引裂く
医者殿が
腕前ぢや