)” の例文
そして、大空おおぞらからもれるはるひかりけていましたが、いつまでもひとところに、いっしょにいられるうえではなかったのです。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しやうめいくるのにはすなは其家そのいへわすれ、ぐんのぞんで約束やくそくすればすなは其親そのしんわすれ、(一六)枹鼓ふこることきふなればすなは其身そのみわする。
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
湯治たうぢ幾日いくにち往復わうふく旅錢りよせんと、切詰きりつめた懷中ふところだし、あひりませうことならば、のうちに修善寺しゆぜんじまで引返ひきかへして、一旅籠ひとはたごかすりたい。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
って、あたりを見𢌞みまわしたとき袖子そでこなにがなしにかなしいおもいにたれた。そのかなしみはおさなわかれをげてかなしみであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
つぎゆふべ道子みちこはいつよりもすこ早目はやめかせ吾妻橋あづまばしくと、毎夜まいよ顔馴染かほなじみに、こゝろやすくなつてゐる仲間なかま女達をんなたち一人ひとり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
くりけた大根だいこうごかぬほどおだやかなであつた。おしなぶんけば一枚紙いちまいがみがすやうにこゝろよくなることゝ確信かくしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いろは以前よりうすかつた。くもから、落ちてる光線は、下界げかい湿しめのために、半ば反射力を失つた様に柔らかに見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「おばさんが、木挽町こびきちょうだなんて教えたから、とんだ廻り道をしちまったじゃないか。あそこは蔵屋敷くらやしきで、住居すまいは麻布村のくぼだぜ」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
眞中まんなかには庭園ていえんがあり、噴水ふんすいえずみづし、あたりには青々あを/\しげつた庭木にはきゑてあり、あつなつでもすゞしいかんじをあた
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
うしをたべてしまった椿つばきにも、はなが三つ四ついたじぶんの海蔵かいぞうさんは半田はんだまちんでいる地主じぬしいえへやっていきました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
風呂ふろびてれゆけばつきかけ下駄げたに七五三の着物きもの何屋なにやみせ新妓しんこたか、金杉かなすぎ糸屋いとやむすめう一ばいはながひくいと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こく——亞尼アンニーかほ——微塵みじんくだけた白色檣燈はくしよくしようとう——あやしふね——双眼鏡さうがんきやうなどがかはる/\ゆめまぼろしと腦中のうちゆうにちらついてたが
「やすみしし吾大王おほきみ、高耀ひか皇子みこきいます大殿おほとのの上に、ひさかたの天伝あまづたひ来る、雪じもの往きかよひつつ、いや常世とこよまで」
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「それからんだぜ。火がおこったら、ぐに行燈あんどん掃除そうじしときねえよ。こんなァ、いつもよりれるのが、ぐっとはええからの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
……玲瓏れいろうと云うか崇厳と云うか、とにかく、あれはもと秋津島あきつしまの魂の象徴だ。……儂はもう文麻呂の奴に早くみせてやりたくてな。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
しかたがありませんから、その中にはいって、あめやみになるのをっているうちに、いつかはとっぷりくれてしまいました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
人々ひとびと御主おんあるじよ、われをもたすたまへ。」此世このよ御扶おんたすけ蒼白あをじろいこのわが罪業ざいごふあがなたまはなかつた。わが甦生よみがへりまでわすれられてゐる。
つまり、一休いっきゅうさんは、かげのとなったわけで、そんなことから、大徳寺だいとくじ華叟禅師かそうぜんじのもとに弟子入でしいりし、仏門ぶつもんひととなったわけです。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
わたしこゝろむかへなければならなかつた……それはちからよわふゆだからだらうか? いや! どうして彼女かのぢよちからあなどこと出來できよう。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
兎も角その中橋南地なかばしなんちの猿若座の桝に納まったどんな客の中にも、お竹ほどのかがやかしい存在はたった一人も無かったことは事実でした。
それからといふもの、お月様つきさまおこつてれると、にはとりえぬやうにしてしまひました。それで「とりめ」になりました。
そのうち上座じやうざざう食事しよくじそなへていて、自分じぶんつて一しよにべてゐるのを見付みつけられましたさうでございます。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
僕の情念じょうねんを察して呉れたまえ。しかし僕は自分の任務をおろそかにはしない。この苦しき恋をはぐくんだもとの国を愛するが故に……
壊れたバリコン (新字新仮名) / 海野十三(著)
とおもふはなどいふ調子ちようしは、いかにもくらしかねてゐる退たいくつなひとのあくびでもしたいような氣持きもちがてゐるとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「ほんとにおめえには、気の毒だよ。遊びてえ盛りを、こうやっておいらといっしょに、がな一にち辻に立って、稼業しょうべえするんだからなあ」
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
さてくれなんとするにいたれば、みな水面すゐめんにおちいりてながれくだる、そのさま白布しらぬのをながすがごとし。其蝶のかたち燈蛾ひとりむしほどにて白蝶しろきてふ也。
田圃たんぼが広々と開かれて好い樹蔭こかげがなくなると、家が近ければつじにはかえってきて、昼間の食事だけは家でする風習も生じたのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人間にんげん死体したいよりさきに、金魚きんぎょんだことをにした平松刑事ひらまつけいじは、有頂天うちょうてんになつてよろこんで、そのしょ早帰はやがえりしてしまつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
ちょっと小言は云ったものの大して叱りもしなかったが、今から思えば縮尻しくじりだった……と、あくは帯を貰う。その翌る日はかんざしを貰う。……
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すると、こちらからはべつなんともおねがいしたわけでもなんでもないのに、ある突然とつぜん神様かみさまから良人おっとわせてやるとおおせられたのでございます。
お島はその一夜ひとよは、むかし自分の拭掃除ふきそうじなどをした浜屋の二階の一室に泊って、あくは、町のはずれにある菩提所ぼだいしょへ墓まいりに行った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
其翌五日そのよくいつか奮然ふんぜんとしてたゞ一人ひとりつた。さむいかぜき、そらくもつた、いやであつたが、一人ひとりで一生懸命しやうけんめいつたけれど、なにぬ。
「そら、ね。いいぱんだろう。ほしぶどうがちょっとかおをだしてるだろう。はやくかばんへれたまえ。もうおさまがおでましになるよ。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この子家鴨こあひるくるしいふゆあいだ出遭であった様々さまざま難儀なんぎをすっかりおはなししたには、それはずいぶんかなしい物語ものがたりになるでしょう。
そうして、諭吉ゆきちがかんがえていることのあらわれるが、にみえないところで、すすんでいました。時代じだいおおきくうごいてきていたのです。
撰び結納持參なす可き所ろ思ひたつ吉日きちにちと主人も申し候へば差附さしつけがましく候へど今日品々しな/″\持參したれば何卒お受取うけとり下されと水引掛し目録書もくろくがき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さてこの夫婦ふうふうちまえにわに、一ぽん杜松としょうがありました。ふゆのことでしたが、おかみさんはこのしたで、林檎りんごかわいていました。
あつすぐねむくなつたり、懵然ぼんやりするものだから一しんに)こゝろうちかんがへてゐますと、突然とつぜん可愛かあいをした白兎しろうさぎが、そのそばつてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ある午後ごゞ。ぱちツと不思議ふしぎをとがしました。さやけたのです。まめみゝをおさえたなり、べたにころげだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
その後も主水之介が毎日にちを、どんなに生欠伸なまあくびばかり連発させて退屈していたか、改まって今更説明する必要がない位のものでしたが、しかし
すでぼつした。イワン、デミトリチはかほまくらうづめて寐臺ねだいうへよこになつてゐる。中風患者ちゆうぶくわんじやなにかなしさうにしづかきながら、くちびるうごかしてゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
しからば何ゆえにこの例を掲げたかというに、ごろの行状をつつしみ、日常の信用をあつうするだけの慎みをなさねばならぬことを勧めたいからである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
また二人ふたり内祝言ないしうげんはチッバルトどのゝ大厄日だいやくじつ非業ひごふ最期さいごもととなって新婿にいむこどのには當市たうしかまひのうへとなり、ヂュリエットどのゝ悲歎ひたんたね
暮方くれがたの町のにぎわいが、晴れやかに二人の周囲まわりを取り巻いた。市中一般に、春のもたらした喜びがひろがっていて、それが無意識に人々に感ぜられると見える。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
僕はそのぜんを前に、若槻と献酬けんしゅうを重ねながら、小えんとのいきさつを聞かされたんだ。小えんにはほかに男がある。それはまあ格別かくべつ驚かずともい。
一夕話 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
すなわちこの様に解釈してこそこの歌、すなわち、「いもすがりにきし山路やまぢどひくらしつ」
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いま社會しやくわいは一回轉くわいてんした。各個人かくこじん極端きよくたん生命せいめいおもんじ財産ざいさんたつとぶ、都市としは十ぶん發達はつたつして、魁偉くわいゐなる建築けんちく公衆こうしゆ威嚇ゐかくする。科學くわがくつき進歩しんぽする。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
りにおれ地位ちゐつたとしてかんがへてても、事柄ことがら如何いかんかゝはらず、毎日まいにち葉書はがきなんのかのとつてられたにや、實際じつさいやりれまいとおもふよ。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
著者ちよしや想像そう/″\では、かり地震豫報ぢしんよほう出來できても、それは地震ぢしんおこりそうなある特別とくべつ地方ちほう指摘してきるのみで
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)