手前てまへ)” の例文
此上このうへにおたのみは萬々ばん/″\見送みおくりなどしてくださるな、さらでだにおとこ朋友ともだち手前てまへもあるになにかをかしくられてもおたがひつまらず
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「えゝ、れが矢張やはり手前てまへこゝろから仕方しかたがないのでござりまして、以前いぜん、おうちりました時分じぶんから、うもわるいので、」
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ロレ 手前てまへこそは、力量りきりゃういっ不足ふそくながら、ときところ手前てまへ不利ふりでござるゆゑ、このおそろしい殺人ひとごろしだいばん嫌疑者けんぎしゃでござりませう。
寂しいから、夜だけは義雄の方へとまりに來て呉れろと頼んだが、それも人の手前てまへ、をかしく思はれるからいやだと云つた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
と、五六けん手前てまへからしかり付けた。唖者をし子等こらは人の気勢けはひおどろいて、手に手にあか死人花しびとばなを持つたまヽはたけ横切よこぎつて、半町も無い鹿しヽたにの盲唖院へ駆けて帰つた
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
便たよりて參り候はゞかくまひもいたすべけれども未だ手前てまへへは參り申さず主税之助方よりは昨日さくじつ尋ね參り候間右のむね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
番兵殿ばんぺいどの手前てまへをもう一らうへおもどしを願ひます。—余程よほど不作ふさくと見えまする。それたお話がございます。
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
妻籠つまご吾妻橋あづまばしといふはし手前てまへまできますと、鶺鴒せきれいんでました。その鶺鴒せきれいはあつちのおほきないはうへんだり、こつちのおほきないはうへんだりして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
蓮池れんち手前てまへからよこれる裏路うらみちもあるが、このはう凸凹とつあふおほくて、れない宗助そうすけにはちかくても不便ふべんだらうとふので、宜道ぎだうはわざ/\ひろはう案内あんないしたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はい、あの死骸しがい手前てまへむすめが、片附かたづいたをとこでございます。が、みやこのものではございません。若狹わかさ國府こくふさむらひでございます。金澤かなざは武弘たけひろとしは二十六さいでございました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
あなの二三ずん手前てまへりたはちは、やがてあたま前脚まへあし蜘蛛くも死骸しがいあなふかみへしてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
くりかげ勘次かんじはだん/\といくらづゝでも洪水こうずゐはなし興味きようみかんじてもたし、それから假令たとひどうでもたづねてあね挨拶あいさつもせぬのは他人たにん手前てまへ許容ゆるさないのでやうやつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
じつ今日けふねがひがあつてお邪魔じやまました。これは手前てまへ愚息せがれ御座ございます、是非ぜひ貴樣あなたのお弟子でしになりたいと本人ほんにんのぞみですからつれまゐりましたが、ひと試驗しけんをしてくださいませんか。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
開卷第一かいかんだいゝちに、孤獨幽棲こどくゆうせい一少年いつしようねん紹介しようかいし、その冷笑れいしようその怯懦きようだうつし、さらすゝんでその昏迷こんめいゑがく。襤褸らんるまとひたる一大學生いつだいがくせい大道だいどうひろしとるきながら知友ちゆう手前てまへかくれするだんしめす。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
さくらといふところに、つくつてあるところへ、つるいてわたつてく。その手前てまへにあるあゆちがた。そこはしほ退いてゐるにちがひない。それであゝいふふうに、つるわたつてくのだ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かく手前てまへたくくださいといふので、二人ふたりはのこ/\いてつた。
だまつてては際限さいげんもなくつのつてれはれはくせつて仕舞しまひます、だい一は婢女をんなどもの手前てまへ奧樣おくさま威光ゐくわうげて、すゑには御前おまへことものもなく
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほかことでもござりませんが、手前てまへ當年たうねんはじめての御奉公ごほうこうにござりますが、うけたまはりますれば、大殿樣おほとのさま御誕生ごたんじやう御祝儀ごしうぎばん、お客樣きやくさまがお立歸たちかへりにりますると
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
も見ずに迯行にげゆきしが殘りし二人は顏見合せこはい者見たしのたとへの如く何樣どんな人やらよくんと思へば何分おそろしく小一町手前てまへたゝずみしがつれの男は聲をかけいつその事田町とほりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……そこにおにゃったるロミオこそはヂュリエットがたゞしいをっと、またそこにおにゃったるヂュリエットこそはそのロミオが貞節ていせつなる宿やどつま二人ふたりめあはしたは手前てまへ
吾妻橋あづまばし手前てまへかはおほきいとおもひましたら、木曽川きそがははそれよりもおほきなかはでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
役所やくしよ病氣びやうきになつて十日とをかばかりやすことにした。御米およね手前てまへ矢張やは病氣びやうきだとつくろつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
えへゝゝ御冗談ごじようだんばかり、おからかひは恐入おそれいります、えゝ始めまして……(丁寧ていねい辞儀じぎをして)手前てまへ当家たうけ主人あるじ五左衛門ござゑもんまういたつて武骨ぶこつもので、何卒どうか拝顔はいがんたく心得こゝろえりましたが
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「こつちのおとつゝあん、れわし役場やくばからさがつたのつてたんだが一つけてもらつたらようがせう、滅多めつたねえあぢのもんだから」おつぎが先刻さつきしまふことを勘次かんじうながされてもおつたの手前てまへ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其處そこちまして、手前てまへ了簡れうけんで、なんと、今年ことしひとつ、おもむきをかへて、おさけ頂戴ちやうだいしながら、各々めい/\國々くに/″\はなし土地とちところ物語ものがたりふのをしめやかにしようではあるまいか。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手前てまへぬからとて乞食こじきにもなるまじく太吉たきち手足てあしばされぬことはなし、けてもれてもれがたなおろしかおりきへのねたみ、つくづくきてもうやにつた
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
只今たゞいま此處これにてのろはるべくもあり、ゆるさるべくもある手前てまへ所行しょぎゃう告發こくはつもし、辯解べんかいつかまつりませう。
知らせてれ己はすぐに茂助と共に三五郎を討取んと云ふに藤兵衞きゝて先生私しも一所にゆかんと申を否々いや/\夫では親分の死骸を無宿むしゆくにされては成らぬ是非々々手前てまへは此場の始末しまつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其一枚が何かの拍子に半分はんぶから折れて、くきを去る五寸ばかりところで、急にするどさがつたのが、代助には見苦しく見えた。代助ははさみつて椽に出た。さうして其んだ手前てまへから、つて棄てた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
月夜つきよなんざ、つゆにもいろそまるやうに綺麗きれいです……おかげかうむつて、いゝ保養ほやうをしますのは、手前てまへども。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
れに邪心じやしんなきものとおぼせばこそ、幼稚えうちきみたくたまひて、こゝろやすく瞑目めいもくたまひけれ、亡主ばうしゆなん面目めんぼくあらん、位牌ゐはい手前てまへもさることなり、いでや一對いつつゐ聟君撰むこぎみえらまゐらせて
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いか御恩ごおんかうむりましたに、いざおいへが、ところには、ろく暑寒見舞しよかんみまひにも御伺おうかゞひいたしません。手前てまへ不都合ふつがふ料簡方れうけんがたと、おいへばちで、體裁ていさいでございます、へい。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
馬鹿野郎ばかやらうよばはりは太吉たきちをかこつけにれへのあてこすり、むかつて父親てゝおや讒訴ざんそをいふ女房にようぼう氣質かたぎれがおしへた、おりきをになら手前てまへ魔王まわう商買人しようばいにんのだましはれてれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほかことでもござりませんが、手前てまへ當年たうねんはじめての御奉公ごほうこうにござりますが、うけたまはりますれば、大殿樣おほとのさま御誕生ごたんじやうのお祝儀しうぎばん、お客樣きやくさま御立歸おたちかへりにりますると、手前てまへども一統いつとうにも
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そゝいでぎられしあとまた人音ひとおとこのたびこそはとれげなさけなし三軒許さんげんばかり手前てまへなるいへりぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(はい、つぢ手前てまへ富山とやま反魂丹売はんごんたんうりひましたが、一あしさき矢張やツぱりこのみちはいりました。)
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うちにのら/\としてれば、兩親りやうしんもとより、如何いかひといわ、とつてあにじやひと手前てまへ据膳すゑぜん突出つきだして、小楊枝こやうじ奧齒おくば加穀飯かてめしをせゝつてはられぬところから、いろツぽくむねおさへて
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところ發頭人ほつとうにん手前てまへ出來できませぬまでも、皮切かはきりをいたしませぬと相成あひなりませんので。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なにりませんが、たまらないほど可厭いやなお心持こゝろもちらしくうかゞはれますね……では、大抵たいていわかりました……手前てまへにおたのみとふのは、あの……ちん、ちんのきこえないやうに、むしつかまへて打棄うつちやるか
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それつゝかけに夜昼よるひるかけて此処こゝまでたなら、まだ/\仕事しごと手前てまへやまにもみづにも言訳いひわけがあるのに……彼方あつち二晩ふたばん此方こつち三晩みばんとまとまりの道草みちくさで、——はなにはくれなゐつきにはしろく、処々ところ/″\温泉をんせん
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところ發頭人ほつとうにん手前てまへ出來できませぬまでも皮切かはきりをいたしませぬと相成あひなりません。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手前てまへども一統いつとうにも部屋へや御酒ごしゆくださりまするとか。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手前てまへどもでございます。」
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「いゝや、手前てまへこそ。」
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)