見上みあ)” の例文
「もう、これなら、だれにもけず、どんなところへでもんでいける。」と、すずめは、たかやま見上みあげて、ひとりごとをしました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨日きのふあさ千葉ちばわたしびまして、奧樣おくさまこの四五にちすぐれやう見上みあげられる、うぞあそばしてかと如何いかにも心配しんぱいらしくまをしますので
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「もう何時なんじ」とひながら、枕元まくらもと宗助そうすけ見上みあげた。よひとはちがつてほゝから退いて、洋燈らんぷらされたところが、ことに蒼白あをじろうつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みぎひだりけずったようなたかがけ、そこらじゅうには見上みあげるような常盤木ときわぎしげってり、いかにもしっとりと気分きぶんちついた場所ばしょでした。
と、山姥やまうばは木の上を見上みあげて、きょうだいをしかりました。そのこえくと、きょうだいはひとちぢみにちぢみがってしまいました。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうさんも馬籠まごめのやうなむらそだつた子供こどもです。山道やまみちあるくのにれてはます。それにしても、『みさやまたうげ』は見上みあげるやうなけはしい山坂やまさかでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
粗末そまつきれ下衣したぎしかてゐないで、あしにはなにかず、落着おちついてゐて、べつおどろいたふうく、こちらを見上みあげた。
吉野川よしのがはそばにある象山きさやまやまのま、すなはちそらせつしてゐるところのこずゑ見上みあげると、そこには、ひどくたくさんあつまつていてゐるとりこゑ、それがきこえる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
うなづいた。仰向あふむいてうなづいた。其膝切そのひざきりしかないものが、突立つツたつてるだいをとこかほ見上みあげるのだもの。仰向あふむいてざるをないので、しかも、一寸位ちよつとぐらゐではとゞかない。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ハテ品川しながは益田孝君ますだかうくんさ、一あたまが三じやくのびたといふがたちまふくろく益田君ますだくんと人のあたまにるとはじつ見上みあげたひとです、こと大茶人だいちやじん書巻しよくわんを愛してゐられます
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
なにはなし端緒いとぐちでももとめたいといふ容子ようすくりこずゑからだらりとたれてる南瓜たうなすしり見上みあげながらいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
道子みちこはし欄干らんかんをよせるとともに、真暗まつくら公園こうゑんうしろそびえてゐる松屋まつや建物たてもの屋根やねまど色取いろど燈火とうくわ見上みあげるを、すぐさまはしした桟橋さんばしから河面かはづらはううつした。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
混亂こんらん隊伍たいごなかおこつた。寢呆ねぼけて反對はんたい兵士へいしもゐた。ポカンとそら見上みあげてゐる兵士へいしもゐた。隊列たいれつ後尾こうびにゐた分隊長ぶんたいちやう高岡軍曹たかをかぐんそうぐにきしつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
『はい、けつして御無事ごぶじにはみません。』と、亞尼アンニー眞面目まじめになつた、わたくしかほ頼母たのも見上みあげて
いたのとあばれたので幾干いくらむねがすくとともに、次第しだいつかれてたので、いつか其處そこてしまひ、自分じぶん蒼々さう/\たる大空おほぞら見上みあげてると、川瀬かはせおと淙々そう/\としてきこえる。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
老人ろうじんだまってきいていました。それからながいあいだだまって海蔵かいぞうさんのかお見上みあげていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
けれどもあのヱヴェレストの頂上てうじやうだけは、見上みあげたゞけでもくらんで、何度なんどもそこまでんでようとしては、半分はんぶんもゆかないうちに、つかれてしまつたラランはゾグゾクしながら
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
雨は、羅生門らしやうもんをつゝんで、とほくから、ざあつと云ふ音をあつめて來る。夕闇は次第に空を低くして、見上みあげると、門の屋根が、斜につき出したいらかさきに、重たくうすくらくもを支へてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
陪審官等ばいしんくわんら身體からだふるえがとまるやいなや、ふたゝ石盤せきばん鉛筆えんぴつとをわたされたので、みんな一しんこと始末しまつしました、ひと蜥蜴とかげのみは其口そのくちいたまゝ、いたづらに法廷はふてい屋根やね見上みあげて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あたまのてッぺんからあし爪先つまさきまで、見上みあおろしながら、言葉ことばどもらせた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
滅多めつたわらつたこともない但馬守たじまのかみ今日けふこと機嫌きげんのわるい主人しゆじんが、にツこりとかほくづしたのを、侍女じぢよこつな不思議ふしぎさうに見上みあげて、『かしこまりました。』と、うや/\しく一れいしてらうとした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
かみさんはちらと見上みあげました。けれどこしてませんでした。そして
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
いまものうてくだされ、天人てんにんどの! さうしてたかところひかかゞやいておゐやる姿すがたは、おどろあやしんで、あと退さがって、しろうして見上みあげてゐる人間共にんげんども頭上とうじゃうを、はねのあるてん使つかひが、しづかにたゞよくもって
したから見上みあげてつてれば
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そら見上みあげちや真面目顔まじめがほ
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まだうらわかでありながら再縁さいえんしようなどというこころ微塵みじんもなく、どこまでも三浦みうら殿様とのさまみさおとうすとは見上みあげたものである。
「おじさんのたこ、一ばんだこになれる?」と、北風きたかぜかれながら、あくまであおれわたったそら見上みあげて、賢二けんじがいいました。
北風にたこは上がる (新字新仮名) / 小川未明(著)
其時そのとき野々宮さんは廊下へりて、したから自分の部屋ののき見上みあげて、一寸ちよつと見給へ藁葺わらぶきだと云つた。成程めづらしく屋根に瓦をいてなかつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いました。するともなくかきの木にはたくさんがなって、ずんずんあかくなりました。それを下からかには見上みあげて
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
世帶せたいじみたことをと旦那だんなどのが恐悦顏きようえつがほぬやうにしてつまおもて立出たちいでしが大空おほぞら見上みあげてほつといきときくもれるやうのおももちいとゞ雲深くもふかりぬ。
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しばらくすると見上みあげるほどなあたり蝙蝠傘かうもりがささきたが、えだとすれ/\になつてしげみなかえなくなつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『モリスざんでせう、わたくしはよつくおぼえてますよ。』とパツチリとした母君はゝぎみかほ見上みあげた。
「ほんとにあめやだな‥‥」と、わたしはシカシカするそら見上みあげた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
あたらしいにも、なんにも、もうすこしまえまで、かごのなかで、ぴんぴんはねていたのです。」と、おんなは、主人しゅじんかお見上みあげてこたえました。
女の魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
女はしたから見上みあげた儘である。手もさない。身体からだうごかさない。かほもとところに落ちけてゐる。男は女の返事さへくはねた。其時
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こと小半里こはんみち田舍ゐなかながら大構おほがまへの、見上みあげるやうな黒門くろもんなかへ、わだちのあとをする/\とくるまかくれる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたくし足元あしもときたり、その無邪気むじゃきな、ほがらかなかおみをたたえて、したからわたくし見上みあげるのでした。
牛若うしわかがいつものように僧正そうじょうたにへ出かけて剣術けんじゅつのおけいこをしていますと、どこからかはなのばかにたかい、見上みあげるような大男おおおとこが、手にうちわをもって、ぬっと出てました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
をんな暫時しばし恍惚うつとりとしてそのすゝけたる天井てんじやう見上みあげしが、孤燈ことうかげうすひかりとほげて、おぼろなるむねにてりかへすやうなるもうらさびしく、四隣あたりものおとえたるに霜夜しもよいぬ長吠とほぼえすごく
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日出雄少年ひでをせうねん海外かいぐわい萬里ばんりうまれて、父母ちゝはゝほかには本國人ほんこくじんことまれなることとて、いとけなこゝろにもなつかしとか、うれしとかおもつたのであらう、そのすゞしいで、しげ/\とわたくしかほ見上みあげてつたが
それですから、ほしあかつきとともにかくれてしまうまえ大急おおいそぎできて、そらかがやいている、さびしいあね姿すがた見上みあげることもありました。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無理むりこらへてうしろを振返ふりかへつてようといふ元氣げんきもないが、むず/\するのでかんがへるやうに、小首こくびをふつて、うながところあるごとく、はれぼつたいで、巡査じゆんさ見上みあげた。
迷子 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くら便所べんじよからて、手水鉢てうづばちみづけながら、不圖ふとひさしそと見上みあげたときはじめてたけことおもした。みきいたゞきこまかなあつまつて、まる坊主頭ばうずあたまやうえる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こまりきってしまって、二人ふたり大空おおぞら見上みあげながら、ありったけのかなしいこえをふりしぼって
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これやモウほどなく十になるがせきとまつてつていのかの、かへるならばかへらねばるまいぞといておやかほむすめ今更いまさらのやうに見上みあげて御父樣おとつさんわたくし御願おねがひがあつてたので御座ござります
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ああ、子供こども元気げんきでいいなあ。」と、おじいさんは、そら見上みあげました。そのおじいさんのかおて、太陽たいようは、にっこりとわらいました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
見上みあげますところすわつたなり、ひざつたつまをふはりとおとして、あを衣服きもの艷々つや/\として、すつと
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
するとある日さるて、すずなりになっているかき見上みあげてよだれをたらしました。そしてこんなにりっぱながなるなら、おむすびとりかえっこをするのではなかったとおもいました。
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
くしやりとくびつたなりうちかへつて、そのよるをつとかほさへ碌々ろく/\見上みあげなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さがしなされとふりはらへばまたすがりよしさまそれは御眞實ごしんじつかと見上みあぐるおもてにらみかへしてうそいつはりはおまへさまなどのなさること義理人情ぎりにんじやうのあるならよもやとおも生正直きしやうぢきからいぬ同樣どうやうひとでなしに
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)