トップ
>
散
>
ち
ふりがな文庫
“
散
(
ち
)” の例文
家の中はまっ
暗
(
くら
)
で、しんとして
返事
(
へんじ
)
をするものもなく、そこらには
厚
(
あつ
)
い
敷物
(
しきもの
)
や
着物
(
きもの
)
などが、くしゃくしゃ
散
(
ち
)
らばっているようでした。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
しばらくすると、
此
(
こ
)
の
毛蟲
(
けむし
)
が、
盡
(
こと/″\
)
く
眞白
(
まつしろ
)
な
蝶
(
てふ
)
になつて、
枝
(
えだ
)
にも、
葉
(
は
)
にも、
再
(
ふたゝ
)
び
花片
(
はなびら
)
を
散
(
ち
)
らして
舞
(
ま
)
つて
亂
(
みだ
)
るゝ。
幾千
(
いくせん
)
とも
數
(
かず
)
を
知
(
し
)
らない。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
とねんをおして、四
人
(
にん
)
の
弟子
(
でし
)
は
散
(
ち
)
っていきました。かしらも、もうじっとしておれなくて、
仔牛
(
こうし
)
をひきながら、さがしにいきました。
花のき村と盗人たち
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
に
散
(
ち
)
らばつてゐる
書類
(
しよるゐ
)
を
一纏
(
ひとまとめ
)
にして、
文庫
(
ぶんこ
)
の
中
(
なか
)
へ
入
(
い
)
れて、
霜
(
しも
)
と
泥
(
どろ
)
に
汚
(
よご
)
れた
儘
(
まゝ
)
宗助
(
そうすけ
)
は
勝手口
(
かつてぐち
)
迄
(
まで
)
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
た。
腰障子
(
こししやうじ
)
を
開
(
あ
)
けて、
清
(
きよ
)
に
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
その足もとには、波がまっ白なあわをとばして、くだけ
散
(
ち
)
っています。ガンたちは、その
崖
(
がけ
)
めがけて、ま一
文字
(
もんじ
)
に飛んでいくのです。
ニールスのふしぎな旅
(新字新仮名)
/
セルマ・ラーゲルレーヴ
(著)
▼ もっと見る
美
(
うつく
)
しく
色
(
いろ
)
づいた
葉
(
は
)
も、だいぶ
散
(
ち
)
ってしまって、
林
(
はやし
)
の
中
(
なか
)
は、まばらに
枝
(
えだ
)
が
見
(
み
)
えていましたが、その
鳥
(
とり
)
の
姿
(
すがた
)
はよくわかりませんでした。
丘の下
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
窓外の地上に
落
(
おち
)
散
(
ち
)
っていたガラスの破片にさえ一つの指紋もなかった。この
一事
(
いちじ
)
を
以
(
もっ
)
てしても、賊が並大抵の奴でないことが分るのだ。
何者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
それで
其
(
そ
)
の一
町
(
ちやう
)
四
方
(
はう
)
は
晝間
(
ひるま
)
も
戸
(
と
)
を
締
(
し
)
めたといふほど、ひどい
臭氣
(
しうき
)
が、
其
(
そ
)
の
頃
(
ころ
)
の
腐
(
くさ
)
つた
人間
(
にんげん
)
の
心
(
こゝろ
)
のやうに、
風
(
かぜ
)
に
吹
(
ふ
)
かれて
飛
(
と
)
び
散
(
ち
)
つた。
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
その
岩
(
いは
)
が
父
(
とう
)
さんに、
彼處
(
あそこ
)
を
御覽
(
がらん
)
、こゝを
御覽
(
ごらん
)
、と
言
(
い
)
ひまして、
半分
(
はんぶん
)
土
(
つち
)
のついた
水晶
(
すゐしやう
)
がそこいらに
散
(
ち
)
らばつて
居
(
ゐ
)
るのを
指
(
さ
)
して
見
(
み
)
せました。
ふるさと
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
と、
自在鉤
(
じざいかぎ
)
の
掛
(
か
)
かっている下には、つい
昨夜
(
さくや
)
焚火
(
たきび
)
をしたばかりのように新しい
灰
(
はい
)
が
積
(
つ
)
もり、木の
枝
(
えだ
)
の
燃
(
も
)
えさしが
散
(
ち
)
らばっていた。
鬼退治
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
軟
(
やはら
)
かさに
滿
(
み
)
たされた
空氣
(
くうき
)
を
更
(
さら
)
に
鈍
(
にぶ
)
くするやうに、
榛
(
はん
)
の
木
(
き
)
の
花
(
はな
)
はひら/\と
止
(
や
)
まず
動
(
うご
)
きながら
煤
(
すゝ
)
のやうな
花粉
(
くわふん
)
を
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らして
居
(
ゐ
)
る。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
みるまにちょうど三、四十人、
蔦
(
つた
)
のかけ
橋
(
はし
)
を
踏
(
ふ
)
みわたって、あたかも
落花
(
らっか
)
の
散
(
ち
)
るように、咲耶子のいる向こうの
峡
(
かい
)
へ
馳
(
か
)
けてくる!
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四
月
(
つき
)
すると、
木々
(
きぎ
)
の
梢
(
こずえ
)
が
青葉
(
あおば
)
に
包
(
つつ
)
まれ、
枝
(
えだ
)
と
枝
(
えだ
)
が
重
(
かさ
)
なり
合
(
あ
)
って、
小鳥
(
ことり
)
は
森
(
もり
)
に
谺
(
こだま
)
を
起
(
お
)
こして、
木
(
き
)
の
上
(
うえ
)
の
花
(
はな
)
を
散
(
ち
)
らすくらいに、
歌
(
うた
)
い
出
(
だ
)
しました。
杜松の樹
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
妻
(
つま
)
の
青
(
あを
)
ざめた
顔色
(
かほいろ
)
は
漸
(
やうや
)
く
花
(
はな
)
のためにやはらぎ出した。しかし、やがて、
秋風
(
あきかぜ
)
が立ち出した。
花
(
はな
)
々は
葉
(
は
)
を落す前に、その
花
(
はな
)
を
散
(
ち
)
らすであらう。
美しい家
(新字旧仮名)
/
横光利一
(著)
なんだか
背後
(
うしろ
)
で、ガーンという物の
壊
(
こわ
)
れる物凄い音を聞いたが、多分それは丘田医師の手を放れた鉢植が粉々に
砕
(
くだ
)
け
散
(
ち
)
った音だろうと思う。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
何
(
なん
)
といふ
靜
(
しづ
)
かさだらう!
絶
(
た
)
え
間
(
ま
)
もなく
庇
(
ひさし
)
から
露
(
つゆ
)
が
散
(
ち
)
る。
水晶
(
すゐしやう
)
が
碎
(
くだ
)
けて
落
(
お
)
ちるやうに、
否
(
いや
)
、
光
(
ひかり
)
そのものが
散
(
ち
)
つ
來
(
く
)
るやうに……。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
その声はもの考えする人の
神経
(
しんけい
)
をなやましそうな声であった。ほうきめのついてる
根元
(
ねもと
)
の
砂地
(
すなち
)
に、やや
黄
(
き
)
ばんだせんだんの
実
(
み
)
が
散
(
ち
)
り
乱
(
みだ
)
してある。
告げ人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
小石
(
こいし
)
が
床
(
ゆか
)
の
上
(
うへ
)
に
落
(
お
)
ち
散
(
ち
)
つた
時
(
とき
)
に、それが
殘
(
のこ
)
らず
小
(
ちひ
)
さな
菓子
(
くわし
)
と
變
(
かは
)
つたのを
見
(
み
)
て、
愛
(
あい
)
ちやんは
大層
(
たいそう
)
驚
(
おどろ
)
きました、が
又
(
また
)
同時
(
どうじ
)
に
好
(
い
)
い
事
(
こと
)
を
考
(
かんが
)
へつきました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
兎
(
と
)
ても角ても叶はぬ命ならば、御所の
礎
(
いしずゑ
)
枕
(
まくら
)
にして、
魚山
(
ぎよさん
)
の
夜嵐
(
よあらし
)
に
屍
(
かばね
)
を吹かせてこそ、
散
(
ち
)
りても
芳
(
かんば
)
しき
天晴
(
あつぱれ
)
名門
(
めいもん
)
の
末路
(
まつろ
)
なれ。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
馬鹿らしい
独言
(
ひとりごと
)
を云って机の上に
散
(
ち
)
らばった
原稿紙
(
かみ
)
や
古
(
ふる
)
ペンをながめて、誰か人が来て今の此の私の気持を
仕末
(
しまつ
)
をつけて呉れたらよかろうと思う。
秋風
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
今日という今日になって、御母堂の筋から、外科の施術をとりやめて
散
(
ち
)
らす方を考えよと、取次をもって仰せだされた。
玉取物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
張
(
は
)
ったばかりの
天井
(
てんじょう
)
にふんの
砂子
(
すなご
)
を
散
(
ち
)
らしたり、馬の
眼瞼
(
がんけん
)
をなめただらして
盲目
(
もうもく
)
にする
厄介
(
やっかい
)
ものとも見られていた。
蛆の効用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
こういって
散
(
ち
)
らかったおへやの中を
片
(
かた
)
づけはじめますと、
娘
(
むすめ
)
も小さなほうきを
持
(
も
)
って、お
庭
(
にわ
)
をはいたりしました。
松山鏡
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
みんなが
急
(
きゅう
)
に
散
(
ち
)
ったせいか、
水
(
みず
)
ッ
洟
(
ぱな
)
が
出
(
で
)
て
来
(
き
)
たぜ。
風邪
(
かぜ
)
でも
引
(
ひ
)
いちゃァたまらねから、そろそろ
帰
(
かえ
)
るとしべえかの
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
山間
(
さんかん
)
の
湖水
(
こすい
)
のように
澄
(
す
)
み
切
(
き
)
った、
気高
(
けだか
)
い
姫
(
ひめ
)
のお
顔
(
かお
)
にも、さすがにこの
時
(
とき
)
は
情思
(
こころ
)
の
動
(
うご
)
きが
薄
(
うす
)
い
紅葉
(
もみじ
)
となって
散
(
ち
)
りました。
私
(
わたくし
)
は
構
(
かま
)
わず
問
(
と
)
いつづけました。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
若
(
も
)
し
疑
(
うたが
)
うて
立戻
(
たちもど
)
り、
予
(
わし
)
が
所行
(
しょぎゃう
)
を
窺
(
うかゝ
)
ひなど
致
(
いた
)
さうなら、
天
(
てん
)
も
照覽
(
せうらん
)
あれ、
汝
(
おのれ
)
が四
肢
(
し
)
五
體
(
たい
)
を
寸々
(
すん/″\
)
に
切裂
(
きりさ
)
き、
飽
(
あ
)
くことを
知
(
し
)
らぬ
此
(
この
)
墓
(
はか
)
を
肥
(
こや
)
すべく
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らさうぞよ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
第四
角
(
コーナー
)
まで後方の馬ごみに包まれて、黒地に白い
銭形紋
(
ぜにがたもん
)
散
(
ち
)
らしの
騎手
(
きしゅ
)
の服も見えず、その馬に投票していた少数の者もほとんど
諦
(
あきら
)
めかけていたような馬が
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
国王はひどく
心配
(
しんぱい
)
しまして、なにか
面白
(
おもしろ
)
い
遊
(
あそ
)
びごとをすすめて、王子の気を
散
(
ち
)
らさせるにかぎると思いました。
強い賢い王様の話
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
昼過
(
ひるすぎ
)
から
少
(
すこ
)
し
出
(
で
)
て
来
(
き
)
た
生温
(
なまあたゝか
)
い
風
(
かぜ
)
が
稍
(
やゝ
)
騒
(
さわ
)
いで、
横
(
よこ
)
になつて
見
(
み
)
てゐると、
何処
(
どこ
)
かの
庭
(
には
)
の
桜
(
さくら
)
が、
早
(
は
)
や
霏々
(
ひら/\
)
と
散
(
ち
)
つて、
手洗鉢
(
てあらひばち
)
の
周
(
まはり
)
の、つは
蕗
(
ぶき
)
の
葉
(
は
)
の
上
(
うへ
)
まで
舞
(
ま
)
つて
来
(
く
)
る。
背負揚
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
屎
(
くそ
)
のようなのは酒に醉つて
吐
(
は
)
き
散
(
ち
)
らすとてこんなになつたのでしよう。それから田の畔を毀し溝を埋めたのは地面を惜しまれてこのようになされたのです」
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
僕
(
ぼく
)
は
直
(
す
)
ぐ
支度
(
したく
)
して
先生
(
せんせい
)
の
宅
(
うち
)
に
駈
(
か
)
けつけました、それが
朝
(
あさ
)
の
六時
(
ろくじ
)
、
山野
(
さんや
)
を
歩
(
ある
)
き
散
(
ち
)
らして
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
たのが
夕
(
ゆふべ
)
の
六時
(
ろくじ
)
でした、
先生
(
せんせい
)
は
夏期休業
(
なつやすみ
)
と
雖
(
いへど
)
も
常
(
つね
)
に
生徒
(
せいと
)
に
近
(
ちかづ
)
き
日の出
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
犬はもちろん口で言えないから、木ぎれが
残
(
のこ
)
らず草の上にまき
散
(
ち
)
らされると、かれは前足で、言われた文字をその中から拾い出して来なければならなかった。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
すると、こちらでもちゃんと手くばりをして待ちかまえておりまして、それッというなり、ちょうどあしの花が飛び
散
(
ち
)
るように、もうもうと
矢
(
や
)
を
射
(
い
)
出
(
だ
)
しました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
とは
知
(
し
)
らぬので
貝
(
かい
)
を
揚
(
あ
)
げるのに
邪魔
(
じやま
)
だから、
其所
(
そこ
)
を
退
(
ど
)
いて
呉
(
く
)
れなんて
威張
(
ゐば
)
り
散
(
ち
)
らして、
後
(
あと
)
で
地主
(
ぢぬし
)
と
分
(
わか
)
つて、
有合
(
ありあは
)
せの
駄菓子
(
だぐわし
)
を
出
(
だ
)
して、
機嫌
(
きげん
)
を
取
(
と
)
つた
事
(
こと
)
などである。
探検実記 地中の秘密:02 権現台の懐古
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
私共
(
わたしども
)
が
石器時代
(
せつきじだい
)
の
遺蹟
(
いせき
)
を
探
(
さが
)
すには、
石器
(
せつき
)
に
眼
(
め
)
をつけるよりも、
田圃
(
たんぼ
)
の
中
(
なか
)
に
散
(
ち
)
らばつてゐる
土器
(
どき
)
の
破片
(
はへん
)
を
見
(
み
)
つけることが
一番
(
いちばん
)
の
早道
(
はやみち
)
だと
思
(
おも
)
はれるくらゐであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
封
(
ふう
)
じ
目
(
め
)
ときて
取出
(
とりいだ
)
せば
一尋
(
ひとひろ
)
あまりに
筆
(
ふで
)
のあやもなく、
有難
(
ありがた
)
き
事
(
こと
)
の
數々
(
かず/\
)
、
辱
(
かたじけ
)
なき
事
(
こと
)
の
山々
(
やま/\
)
、
思
(
おも
)
ふ、
戀
(
した
)
ふ、
忘
(
わす
)
れがたし、
血
(
ち
)
の
涙
(
なみだ
)
、
胸
(
むね
)
の
炎
(
ほのほ
)
、
此等
(
これら
)
の
文字
(
もじ
)
を
縱横
(
じゆうわう
)
に
散
(
ち
)
らして
軒もる月
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ホールは、きょろきょろとあたりを見まわし、
机
(
つくえ
)
のうえいっぱいに、むずかしそうなこまかい
数字
(
すうじ
)
をかきこんだ
紙
(
かみ
)
が
散
(
ち
)
らばっているのをみると、ばかにしたようすで
透明人間
(新字新仮名)
/
ハーバート・ジョージ・ウェルズ
(著)
だん/\
緑
(
みどり
)
の
色
(
いろ
)
が
黄色
(
きいろ
)
に
變
(
かは
)
り、やがて
冬
(
ふゆ
)
の
寒
(
さむ
)
い
風
(
かぜ
)
の
吹
(
ふ
)
く
頃
(
ころ
)
はさら/\と
落
(
お
)
ち
散
(
ち
)
るものもあります。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
自分の頭上の真黄いろな楡の木の葉がさらさらと音を立てながら絶えず私の肩のあたりに
撒
(
ま
)
き
散
(
ち
)
らしている細かい日の光をなんて気持がいいんだろうと思っているうちに
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
あしひきの
山
(
やま
)
さへ
光
(
ひか
)
り
咲
(
さ
)
く
花
(
はな
)
の
散
(
ち
)
りぬるごとき
吾
(
わ
)
が
大
(
おほ
)
きみかも 〔巻三・四七七〕 大伴家持
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
其建物
(
そのたてもの
)
をいへば
松田
(
まつだ
)
は
寿仙
(
じゆせん
)
の
跡也
(
あとなり
)
常磐
(
ときは
)
は
萬梅
(
まんばい
)
の
跡也
(
あとなり
)
今この
両家
(
りやうけ
)
は
御
(
ご
)
一
人
(
にん
)
前
(
まへ
)
四十五銭と呼び、五十銭と呼びて、ペンキ
塗
(
ぬり
)
競争
(
きやうそう
)
硝子張
(
がらすはり
)
競争
(
きやうそう
)
軒
(
のき
)
ランプ
競争
(
きやうそう
)
に
火花
(
ひばな
)
を
散
(
ち
)
らし
居
(
を
)
り
候由
(
そろよし
)
に
候
(
そろ
)
。
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
荷車が驚いて
道側
(
みちばた
)
の
草中
(
くさなか
)
に
避
(
よ
)
ける。
鶏
(
にわとり
)
が
刮々
(
くわっくわっ
)
叫んで
忙
(
あわ
)
てゝ
遁
(
に
)
げる。
小児
(
こども
)
の
肩
(
かた
)
を
捉
(
とら
)
え、女が眼を
円
(
まる
)
くして見送る。
囂々
(
ごうごう
)
、
機関
(
きかん
)
が
鳴
(
な
)
る。
弗々々
(
ふっふっふっ
)
、
屁
(
へ
)
の如く
放
(
ひ
)
り
散
(
ち
)
らすガソリンの
余煙
(
よえん
)
。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
そのうち
秋
(
あき
)
が
来
(
き
)
て、
森
(
もり
)
の
木
(
き
)
の
葉
(
は
)
はオレンジ
色
(
いろ
)
や
黄金色
(
おうごんいろ
)
に
変
(
かわ
)
って
来
(
き
)
ました。そして、だんだん
冬
(
ふゆ
)
が
近
(
ちか
)
づいて、それが
散
(
ち
)
ると、
寒
(
さむ
)
い
風
(
かぜ
)
がその
落葉
(
おちば
)
をつかまえて
冷
(
つめた
)
い
空中
(
くうちゅう
)
に
捲
(
ま
)
き
上
(
あ
)
げるのでした。
醜い家鴨の子
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
そういう関係から蓮華は、日本人の生活のすみずみに行きわたるようになった。ただに食器に
散
(
ち
)
り
蓮華
(
れんげ
)
があるのみでない。蓮根は日本人の食う野菜のうちのかなりに多い部分を占めている。
巨椋池の蓮
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
今
(
いま
)
から
丁度
(
ちやうど
)
四
年
(
ねん
)
前
(
まへ
)
、
季節
(
せつ
)
は
櫻
(
さくら
)
散
(
ち
)
る
五月
(
ごぐわつ
)
中旬
(
なかば
)
の
或
(
ある
)
晴朗
(
うらゝか
)
な
日
(
ひ
)
の
正午
(
せうご
)
時分
(
じぶん
)
であつた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
春も
初春
(
しょしゅん
)
でもなければ中春でもない、晩春の相である、丁度
桜花
(
さくら
)
が爛熳と咲き乱れて、
稍々
(
やや
)
散
(
ち
)
り
初
(
そ
)
めようという所だ、遠く霞んだ
中空
(
なかぞら
)
に、美しくおぼろおぼろとした春の月が照っている晩を
余が翻訳の標準
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そのくせ女先生が話しかけようとして近づくと、やっぱり雀のようにぱあっと
散
(
ち
)
ってしまう。しかたなく職員室にもどると、たったひとりの
同僚
(
どうりょう
)
の男先生は、じつにそっけない顔でだまっている。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
麦倉
(
むぎくら
)
の婆の茶店にももう縁台は出ておらなかった。
栃
(
とち
)
の
黄
(
き
)
ばんだ葉は小屋の屋根を埋めるばかりに
散
(
ち
)
り
積
(
つ
)
もった。農家の庭に忙しかった
唐箕
(
とうみ
)
の音の絶えるころには、土手を渡る風はもう寒かった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
植ゑし植ゑば
秋
(
あき
)
なき
時
(
とき
)
や
咲
(
さ
)
かざらんはなこそ
散
(
ち
)
らめ
根
(
ね
)
さへ
枯
(
か
)
れめや
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
そのなかに桐は
散
(
ち
)
る……
Whisky
(
ウイスキイ
)
の強きかなしみ……
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
散
常用漢字
小4
部首:⽁
12画
“散”を含む語句
散々
散歩
散乱
散財
散策
散髪
飛散
散在
吹散
散亂
取散
発散
閑散
逃散
散布
散三
散文的
打散
散歩道
散目鋸
...