現在げんざい)” の例文
私達はとてもあの人達のやうな自信じしんほこりを持つことが出來なかつた。決して現在げんざいの自らの心の状態を是認ぜにんすることが出來なかつた。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
あなたがたもいずれはこちらの世界せかい引移ひきうつってられるでしょうが、そのときになればわたくしどもの現在げんざい心持こころもちがだんだんおわかりになります。
結構けつこうらしい、ことばかりおもひます、左樣さういふことおもふにつけて現在げんざいありさまがいやいやで、うかして此中このなかをのがれたい、此絆このきづなちたい
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これおも東西線とうざいせん南北線なんぼくせんとに竝列へいれつしてゐるが、中央ちゆうおう交叉點こうさてんあた場所ばしよ現在げんざい活火口かつかこうたる中岳なかだけたか千六百四十米せんろつぴやくしじゆうめーとる)がある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
『ジャン・クリストフ』の作者さくしゃロマン・ローランは、西暦せいれき千八百六十六ねんフランスにまれて、現在げんざいではスウィスの山間さんかんんでいます。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
第二十八圖だいにじゆうはちず)そのとなりにあるは、現在げんざい南洋なんようにおいて實行じつこうしてゐる水上住居すいじようじゆうきよでありますが、いかにもよくてゐることがわかりませう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わたしは現在げんざいあらゆる危険きけんから庇護ひごされていることはわかっているのに、恐怖きょうふがいよいよつのって、もうふるえが出るまでになっている。
〔譯〕心は現在げんざいせんことをえうす。事未だ來らずば、むかふ可らず。事已にかば、ふ可らず。わづかに追ひ纔かに邀へば、便すなはち是れ放心はうしんなり。
自己じこ現在げんざいつて經濟界けいざいかいつと變化へんくわしてるにかゝはらずれにたいして充分じうぶん理解りかいのないのがむしろより重大ぢうだいなる原因げんいんである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
しか勘次かんじ自身じしんには如何どん種類しゆるゐものでも現在げんざいかれこゝろあた滿足まんぞく程度ていどは、うしなうたおしな追憶つゐおくすることからける哀愁あいしうの十ぶんの一にもおよばない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それはおそらくたゝかふ者の誇と名にかけて、または男の地にかけてであつたらう。が、現在げんざいでは對局たいきよくの陰に實際的じつさいてきな生くわつ問題もんだいまでふくまれて來たらしい。
そして其後そのご現在げんざいいたるまで、本統ほんたうのコスモポリニズムはわたし心中しんちうそうそう徹底てつていきたつてゐるのである。
きよこれを! いま現在げんざいわたしのために、荒浪あらなみたゞよつて、蕃蛇剌馬ばんじやらあまん辛苦しんくするとおなじやうなわかひとがあつたらね、——おまへなんふの!なんふの?
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
爲しつゞ現在げんざい弟の千太郎の事を思ひて紙屑かみくづかふと迄に零落おちぶれても眞の人に成んと思ひ赤心こゝろの誤よりもいきの根の止たを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぼくちいさかったときには、ごんごろがねをずいぶんおおきいものとおもっていた。しかし国民こくみんねんにもうじきなろうという現在げんざいでは、それほどおおきいとはおもわない。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そのとき、ちょうど、過去かこ現在げんざい未来みらい、なんでもいてわからないことはないといううらなしゃがありました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
過去くわこひと姓名せいめい順位じゆんゐにならべ、現在げんざいひと逆轉ぎやくてんしてならべるといふがごときは勿論もちろん不合理ふがふりであるばかりでなく、實際じつさいにおいてその取扱とりあつかかたきうすることになる。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
二十年まえに離別りべつした人でこの家の人ではないけれど、現在げんざいお政の母である以上は、まつりは遠慮えんりょしたほうがよかろうと老人ろうじんのさしずで、忌中きちゅうふだを門にはった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
つよはげしいいのちきたと證劵しようけん飽迄あくまでにぎりたかつたかれには、きた現在げんざいと、これからうまれやうとする未來みらいが、當面たうめん問題もんだいであつたけれども、えかゝる過去くわこ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、あのぞろ/\とあるいてゐるひと一人一人ひとりひとり過去くわこ現在げんざい、また未來みらいのことをかんがへたらきつとおたがひになにかのつながりをつてるにちがいないといふやうながした。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
これなどはいかにも、旅行中りよこうちゆう新室にひむろえんらしく、あかるくてゆったりとした、よいおうたであります。現在げんざいかやが、むかうにえてゐる、とをしへてゐられるのではありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
しかしそのうつくしいつまは、現在げんざいしばられたおれをまへに、なん盜人ぬすびと返事へんじをしたか? おれは中有ちううまよつてゐても、つま返事へんじおもごとに、嗔恚しんいえなかつたためしはない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
時計とけいる。アンドレイ、エヒミチは椅子いす倚掛よりかゝりげて、ぢてかんがへる。さうしていまんだ書物しよもつうち面白おもしろ影響えいきやうで、自分じぶん過去くわこと、現在げんざいとにおもひおよぼすのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
現在げんざいおいては、九しう、四こくから、陸前りくぜん陸奧りくおく出羽でばはうまでけて三十五ヶこくわた發見はつけんされてるので、加之しかも横穴よこあなは一ヶしよ群在ぐんざいするれいおほいのだから、あなすうさんしたら
わたくしごと現在げんざいそのなんのぞんで、弦月丸げんげつまる悲慘ひさんなる最後さいごぐるまで、その甲板かんぱんのこつてつたは、今更いまさらその始終しじゆう懷想くわいさうしても彌立よだほどで、とてもくわしいこと述立のべたてるにしのびぬが
これは現在げんざいにあるれい説明せつめいしたら、いくらかわかりやすからうとおもつたからである。
寒山拾得縁起 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
現在げんざいうけひしはれにおぼえあれどなにれをいとことかは、大方おほかたまへきゝちがへとたてきりて、烟草たばこにふきわたしらぬとすましけり。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくしみぎ懐剣かいけん現在げんざいとても大切たいせつ所持しょじしてります。そして修行しゅぎょうときにはいつもこれ御鏡みかがみまえそなえることにしてるのでございます。
現在げんざいわがくににある博物館はくぶつかんはそのすうすくないばかりでなく、殘念ざんねんながら世界せかいしてすぐれた博物館はくぶつかんとはまをすことが出來できません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ほめざるはなし今菊が申す處は皆理の當然たうぜんにして汝等が申條は甚だ不都合なり現在げんざい母の三年越にわづらふを假令何程商賣が閙敷せはしくとて一度見舞しほか使つかひにても容體を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おんなは、さっそくそのうらなしゃのところへいって、自分じぶんんだ子供こどものことをばてもらいました。うらなしゃは、んだ子供こども過去かこ現在げんざい未来みらいかたりました。
星の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たとへば現在げんざい活動中かつどうちゆう火山かざん南北なんぼくアメリカしゆうでは西にしほう太平洋沿岸たいへいようえんがんだけに一列いちれつならんでをり、中部ちゆうぶアメリカ地方ちほうでは二條にじようになつてみぎ南北線なんぼくせんにつながつてゐる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すなはこれ實行じつかうせんとすれば現在げんざい國民こくみん消費せうひ相當さうたう程度ていど節約せつやくせしむるよりほかにないのである。くしてはじめ冗費じようひせつ無駄むだはぶかしむることが出來できるのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
かはれば現在げんざいをつとまへ婦人ふじん身震みぶるひして飛退とびのかうとするのであつたが、かる撓柔しなやかにかかつたが、千曳ちびきいはごとく、千筋ちすぢいとて、そでえりうごかばこそ。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時計とけいる。アンドレイ、エヒミチは椅子いす倚掛よりかかりげて、じてかんがえる。そうしていまんだ書物しょもつうち面白おもしろ影響えいきょうで、自分じぶん過去かこと、現在げんざいとにおもいおよぼすのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それも「常盤ときわ」の「しるこ」に匹敵ひつてきするほどの珈琲コーヒーませるカツフエでもあれば、まだ僕等ぼくら仕合しあはせであらう。が、かう珈琲コーヒーむことも現在げんざいではちよつと不可能ふかのうである。
しるこ (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ねんばかりまへのことである、まちは、まだ赤色あかいろのリボンをかけた少女せうぢよですこやかに自由じいう身體からだで、いま現在げんざいのやうな未來みらいることなどは、ゆめにもおもふことなくクローバーのはら
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
つきかゞやいてゐるそらひゞくおしろ太鼓たいこ。それは、もう門限もんげんだといふらせなのです。だがまうしばらく、つのをつてくれとかんじるのは、現在げんざい心持こゝろもちのなくなるのをしむこゝろなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
けれどもわたしの現在げんざい位置いちの重大なことが、わたしにそんな遊びをさせなかった。
かれ現在げんざい自分じぶんゆるかぎりの勇氣ゆうきひつさげて、公案こうあんむかはうと決心けつしんした。それがいづれのところかれみちびいて、どんな結果けつくわかれこゝろきたすかは、かれ自身じしんいへどまつたらなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
現在げんざいおいて、アイヌせつ代表だいひやうされる小金井博士こがねゐはかせアイヌせつ代表だいひやうされる坪井博士つぼゐはかせ此二大學説このにだいがくせつじつ尊重そんちやうすべきであるが、これ意外いぐわいろんじるほど材料ざいれうを、そもそ何人なんびとあつめつゝあるか
いまの現在げんざい位置いちすらも、そろそろゆれだしたような気がする。ものに屈託くったくするなどいうことはとんと知らなかった糟谷も、にわかに悔恨かいこんねんきんじがたく、しばしばられない夜もあった。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
天外てんぐわい萬里ばんり異邦ゐほうでは、初對面しよたいめんひとでも、おな山河やまかはうまれとけばなつかしきに、まして昔馴染むかしなじみ其人そのひとが、現在げんざいこのにありといてはたてたまらない、わたくしぐと身仕度みじたくとゝのへて旅亭やどやた。
むろん例外れいがいはありましょうが、現在げんざいでは数百年前すうひゃくねんぜん乃至ないしねん二千ねんぜん帰幽きゆうした人霊じんれいが、守護霊しゅごれいとしておもはたらいているように見受みうけられます。
現在げんざい野蠻人やばんじんなどが、これとおなじような器物きぶつ使つかつてゐるところからかんがへますと、この石匙いしさじけだものかはぐために使用しようしたものに相違そういありません。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
たゞ震災防止しんさいぼうしにつき、少年諸君しようねんどくしや現在げんざい小國民しようこくみんとしても、また他日たじつ國民人物こくみんじんぶつ中堅ちゆうけんとしても自衞上じえいじよう、はた公益上こうえきじよう必要ひつようくべからざる事項じこう叙述じよじゆつせんとするものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
受出し置其上夫婦になすべしと僞言ぎげんを千太郎は現在げんざいの伯父の申事故實情じつじやうと心得店の有金の内五十兩取出し長庵へ相渡し兩三日過て千太郎は長庵たくまゐり小夜衣の事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
現在げんざいるのに、看護婦かんごふさんにも、だれにもさへぎりません……うかすると、看護婦かんごふさんのしろ姿すがたが、まして、女性をんなの、衣服きものなか歴々あり/\けて歩行あるいたんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さりとてこのまゝさしかんに、内政ないせいのみだれ攻撃こうげきたねりて、あさからぬ難義なんぎ現在げんざいうへにかゝれば、いかさまにばやとてなやみぬ、わがまゝもそのまゝ、氣隨きずいそのまゝ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしながら、ぼくは、現在げんざいでも、みちをあるいているときとか、またぼんやり空想くうそうにふけっているときとか、そんなようなときに、どこからともなく、あにこえをきくことがあります。
兄の声 (新字新仮名) / 小川未明(著)