けつ)” の例文
そらくもくした! うすかげうへを、うみうへう、たちままたあかるくなる、此時このときぼくけつして自分じぶん不幸ふしあはせをとことはおもはなかつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
機械きかいとどろき勞働者ろうどうしや鼻唄はなうた工場こうばまへ通行つうかうするたびに、何時いつも耳にする響と聲だ。けつしておどろくこともなければ、不思議ふしぎとするにもらぬ。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しかしながら大地震だいぢしんになると、初期微動しよきびどうでもけつして微動びどうでなく、おほくのひとにとつては幾分いくぶん脅威きよういかんずるようなおほいさの振動しんどうである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
けつして安泰あんたいではない。まさつめぎ、しぼり、にくむしほねけづるやうな大苦艱だいくかんけてる、さかさまられてる。…………………
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と忽ち心一けつ爲し久左衞門はやがて江戸へと久八を連て下り弟六右衞門にあひて事の仔細を委敷くはしく話し頼み置つゝ歸りけりよつて六右衞門所々しよ/\
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
大概たいがいのことでは一かうさわがぬやうなかれ容子ようすほかからではさうらしくもえるのであつた。も一つは服裝ふくさうけつしてくずさぬことであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たゞ同棲後どうせいご彼女かのぢよは、けつして幸福かうふくではなかつた。おそらく彼女かのぢよもさう運命うんめいつかまうとおもつて、かれのところへたのではなかつたであらう。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
いや阿關おせきこうふとちゝ無慈悲むじひ汲取くみとつてれぬのとおもふからぬがけつして御前おまへかるではない、身分みぶん釣合つりあはねばおもこと自然しぜんちがふて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
多少たせうはヒステリーの所爲せゐかともおもつたが、全然ぜんぜんさうともけつしかねて、しばらく茫然ぼんやりしてゐた。すると御米およねおもめた調子てうし
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてお前さんに会うて話と謂ふは、けつして身勝手な事を言ひに来たぢやない、やはり其方そちらの身の上に就いて善かれと計ひたい老婆心切ろうばしんせつ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
畢竟ひつきやうにんいろで、けつして一りつにはかぬものでしよく本義ほんぎとか理想りそうとかをいてところ實際問題じつさいもんだいとしてはあまやくたぬ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
わたしが悪う御座いました。堪忍して下さい。もうこれからけつして貴婦人にならうとは思ひませぬ。金剛石ダイヤモンド貴方あなたわたしあひだを割く悪魔でした。」
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
なかで、内安堂寺町うちあんだうじまち町醫まちい中田玄竹なかだげんちくだけが、ひどくつて、但馬守たじまのかみこゝろ玄竹げんちくまるあたまなければ、けつしてうごくことがなくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
窮理きゆうりけつしてなるにあらず実践じつせんなんあさしと云はんや。魚肴さかな生臭なまぐさきがゆゑやすからず蔬菜やさい土臭つちくさしといへどもたふとし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
さいごの“けつ”は、やはり高時に仰ぐわけなので「——ともあれ、ご参籠さんろう先の江ノ島へ、早舟でお知らせだけでも」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに、あのかはけつしてあさくはなかつた。ながれもおもひのほかはやかつた。次第しだいつてはいのちうばはれんともかぎらなかつた。その危急ききふさい中根なかねはどうことをしたか。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
太平洋艦隊司令長官「いがみ合いは、もうよそうではないか。そしてここでけつを取ろう。同時作戦では攻撃目標は一つだ。日本本土攻略か、それとも比島奪回だっかいか」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
それはある場合ばあひ、あるこゝろ状態じやうたいの時には、さういふことも考へないではなかつたけれど、離婚りこんをもつてそのくいつぐなふものだとはけつして思はなかつたらうと思ひます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
こんなあかはげやまは、やまとしてはけつして立派りつぱなものとはいへません。人間にんげんでいへばからだばかりおほきくてとく智慧ちえもないとすれば、ひととしててんで品位ひんいがないのとおなじです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
穰苴じやうしよすなはへうたふ(一二)ろうけつし、りてぐんめぐへい(一三)ろくし、約束やくそく(一四)申明しんめいす。約束やくそくすでさだまる。夕時せきじ莊賈さうかすなはいたる。穰苴じやうしよいはく、『なんすれぞおくるる』
けっきょく、夜の明けるのを待って、さがしなおすほかはないと一けつしました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そして病院びやうゐんがいふには、入院料にふゐんれうつてないかぎり、けつして屍體したいわたさないと。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
そののまんなかには、さつきの嘉十かじふとち団子だんごがひとかけいてあつたのでしたが、鹿しかどものしきりににかけてゐるのはけつして団子だんごではなくて、そのとなりのくさうへにくのになつてちてゐる
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
転変てんぺんはげしきはしと某老人ぼうらうじん申候まうしそろ其訳そのわけ外充内空ぐわいじうないくう商略せふりやくにたのみて、成敗せいはい一挙いつきよけつせんとほつそろ人の、其家構そのいへかまへにおいて、町構まちかまへにおいて、同処どうしよ致候いたしそろよりのことにて、今も店頭てんとううつたかきは資産しさんあら
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
おぢさん「一度いちどそんなことがあるとけつしてわすれません」
それで他國たこく立派りつぱ堂々だう/\たる小學校せうがくかうきふ其樣そんなすぼらしい學校がくかうぼく子供心こどもごころにもけつして愉快ゆくわい心地こゝちなかつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
火山かざん地震ぢしん安全瓣あんぜんべんだといふことわざがある。これには一めん眞理しんりがあるようにおもふ。勿論もちろん事實じじつとして火山地方かざんちほうにはけつして大地震だいぢしんおこさない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
おつぎはけつして卯平うへい滿足まんぞくさせることとはおもはなかつたが、かれべてようといへばかゆにでもいてやらうとおもつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いまのバラツクだて洋館やうくわんたいして——こゝに見取圖みとりづがある。——ことわるまでもないが、地續ぢつゞきだからといつて、吉良邸きらていのではけつしてない。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
先生だつてかへせればとうにかへすんだらうが、月々余裕が一文いちもんないうへに、月給以外にけつしてかせがない男だから、つい夫なりにしてあつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
げてのわびごとなんとしてするべきならずよしやひざげればとて我親わがおやけつしてきゝいれはなすまじく乞食こつじき非人ひにん落魄おちぶるとも新田如につたごときに此口このくちくされてもたすけを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れはかね/″\書物しよもつんで、磔刑はりつけ獄門ごくもん打首うちくび、それらの死刑しけいけつして、刑罰けいばつでないといふことをかんがへてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
すれば師匠感應院の後住ごぢうにせんと村中相談一けつしたり左樣に心得こゝろえべしと申渡せば寶澤はうたくつゝしんで承はり答へけるは師匠感應院の跡目あとめ相續致し候樣と貴殿きでん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しよく本義ほんぎついて、生理衞生せいりえいせい學理がくり講釋かうしやくしたところで、けではけつして要領えうれうられない、なんとなれば、しよく使命しめい人身じんしん營養えいやうにあることは勿論もちろんであるが
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
さりながら人気じんき奴隷どれいとなるも畢竟ひつきやう俗物ぞくぶつ済度さいどといふ殊勝しゆしようらしきおくがあればあなが無用むようばゝるにあらず、かへつ中々なか/\大事だいじけつして等閑なほざりにしがたし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
けつして不眞面目ふまじめではなかつた。かれ實際じつさいまつ正直しやうぢきに「天子樣てんしさま御奉公ごほうこうする」つもりで軍務ぐんむ勉強べんきやうしてゐたのである。が、かれうまれつきはどうすること出來できなかつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「ただいまのこと、一同評議ひょうぎ結果けっか、これはやはり御岳みたけ神慮しんりょにおまかせいたすのがとうぜんであろうという意見いけんに一けつしたが、双方そうほうごいぞんはないであろうか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けつして超凡の人では無い………としたら、北側きたがわのスリガラスの天井てんじやうから射込さしこむ柔かな光線………何方かと謂へばノンドリした薄柔うすぐらひかりで、若い女の裸體を見てゐて
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
たぬき毛皮けがは大變たいへんやくつもので、値段ねだんたかいのです。きつねたぬきむかしひとばかすものとしんじられたりしましたが、けつしてそんなばかげたことがありるわけもありません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ぼくはね竹村氏たけむらしけつして悲観ひくわんして洋行やうかうするんぢやないんですよ。」かれ弁護べんごした。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
わたし間違まちがつたことひますれば、其處そこます師匠ししやう沙汰さたをしますはずともつてつてりますうへは、けつして相違さうゐないとぞんじます。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふところには小錢こぜにたくはへてくことも出來できるのであつたがかれくコツプざけかたむけたのでかれふところけつして餘裕よゆうそんしてはなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其時そのとき宗助そうすけこれはならんとおもつた。けれどもはたして刄物はものもちひて、かたにくいていものやら、わるいものやら、けつしかねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とにかく人畜じんちくまれる程度ていどおいて、大地だいち開閉かいへいするといふことは、わがくにおいてはけつしておこない現象げんしようてよい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
さくらかはむかされては大變たいへんと、兒童こども早速さつそく親父おやぢとほりになつてその翌日よくじつから平常いつもごと學校がくかうふううちた。けれどもけつして學校がくかうにはかない。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其處そこをよくわきまへて、たゞしくはたらいてもらひたい。つめあかほどでも、不正ふせいがあつたら、この但馬たじまけつしてだまつてゐない。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
左樣さうであらう、校内かうないいちひとだとおまへつねめたではないか、其人そのひとであるからけつしておまへうらんでぬ、其樣そんことはあるはずがない、いきどほりは世間せけんたいしてなので
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我が抜苦ばつく与楽よらく説法せつぱううたがふ事なく一図いちづありがたがツて盲信まうしんすれば此世このよからの極楽ごくらく往生おうじやうけつしてかたきにあらず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
たい中根なかね平素へいそけつして成績佳良せいせきかりやうはうではなかつた。おれ度度たびたびきびしい小言こごとつた。が、人間にんげん眞面目しんめんもく危急ききふさいはじめてわかる。おれ中根なかね眞價しんか見誤みあやまつてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
送りけるが此喜八もとより實體じつていなる者故にこまればとて人に無心合力がふりよくなどはけつして云し事なくかすか渡世とせいにても己れが果福くわふくなりと斷念あきらめ其日を送りけるされば喜八は吉之助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)