あるひ)” の例文
あるひ屹度きつと、及第の通知が間違つてゐたのではないかと、うつたへるやうにして父兄席を見ると、木綿の紋付袴もんつきはかまの父は人の肩越しに爪立つまだ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
ぼくおもふに、いつたい僕等ぼくら日本人にほんじん麻雀マージヤンあそかた神經質しんけいしつぎる。あるひ末梢的まつせうてきぎる。勿論もちろんあらそひ、とらへ、相手あひてねら勝負事しようぶごとだ。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれ生活せいくわつかくごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかへてちやみ、れから書齋しよさいはひるか、あるひ病院びやうゐんくかである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
(ハリスを英人だと言へばあるひおこり出すかも知れない、生れは愛蘭アイルランドで今は亜米利加アメリカにゐるが、自分では巴里人パリジヤンの積りでゐるらしいから)
第六 毎日まいにち一度いちど冷水ひやみづあるひ微温湯ぬるゆにて身體からだ清潔きれいぬぐひとり、肌着はだぎ着替きかへべし。入浴ふろは六七日目にちめごとなるたけあつからざるるべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
すなは一時いちじ活動かつどうしたのちは、暫時ざんじ休息きゆうそくして、あるひ硫氣孔りゆうきこう状態じようたいとなり、あるひ噴氣孔ふんきこうとなり、あるひはそのような噴氣ふんきまつたくなくなることがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
と、あはれや夕飯ゆふめし兼帶けんたいだいざるはしげた。ものだと、あるひはおとなしくだまつてたらう。が、對手あひてがばらがきだからたまらない。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昨七日さくなぬかイ便の葉書にて(飯田町いいだまち局消印)美人クリイムの語にフエアクリイムあるひはベルクリイムの傍訓有度ぼうくんありたくとのげんおくられし読者あり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
しかし特に下婢かひなどのすくない、あるひまつたそれ等の者を有して居ないところの一婦人に於て家庭の仕事を節減する方法がうして有りませうか。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
然うしたら社會の人として、あるひ安楽あんらく生活せいくわつるかも知れない。しかし精神てきには、まつたんで了ツたのもおなじことなんだ!
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
うはさがきか、あるひ事實じじつきか——それはとにかくがさしたのだと彼女かのぢよはあとでぢつゝかたつた——もなく彼女かのぢよ二人ふたり子供こどもとも
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
魚雷は発射されてから、命中するまで、やゝ長い時間がかゝるので、その間に敵が気づいて、ふねむきを変へたら、あるひれるかも知れない。
怪艦ウルフ号 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
しからば、天下てんかひんなんだ。まアいです』となぐさめたが、あるひまた兒島氏こじまし大瀧氏おほたきしところにも、天下てんかぴんとゞいてはせぬか?
あるひはまた西洋においでになる時にも門司もじでお逢ひになつた妹さんの口から何事もあなたへ伝へられなかつたかも知れません。
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
毎年まいねんれがすむと、やはりいへつくりかへ、あるひ屋根やねへたりして、おなじく、新室にひむろのうたげをおこなひました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
唐土もろこしには此火を火井くわせいとて、博物志はくぶつしあるひ瑯瑘代酔らうやたいすゐに見えたる雲台山うんたいさんの火井も此地獄谷の火のごとくなれども、事の洪大こうだいなるは此谷の火にまさらず。
あるひは夫婦づれの、或は独身者らしいすね一本の労働者が、青服の着流しで、手荷物を振分に背負つて、ぼつ/\桟橋さんばしから上陸して来るのを見ると
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
巻中の画、老人が稿本かうほん艸画さうぐわしんにし、あるひは京水が越地にうつし真景しんけい、或里人さとびとはなしきゝに作りたるもあり、其地にてらしてあやまりせむることなかれ。
表坊主に横井榮伯があつて、氏名がやゝ似てゐるが、これは別人であらう。あるひは想ふに、永井氏は諸侯のかゝへ醫師もしくは江戸の町醫ではなからうか。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
小賢こざかしいからすはそれをよくつてゐました。それだから、そのあたまかたうへで、ちよつとはねやすめたり。あるひは一宿やどをたのまうとでもすると、まづ
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
あるひはラブがなかつたせいかもれぬ。つましんからわたしれてるほど、夫婦ふうふ愛情あいじやうあぶらつてないせいかもれぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
解禁後かいきんご爲替相場かはせさうばは四十九ドルぶんの一かあるひは四十九ドルぶんの三であらうから、これにらぶれば一わりさがつて
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
それ以来、月に数回、あるひは一二回ぐらゐづつお邪魔に参上して先生から教を受け、終戦の年までつづいたのであつた。
露伴先生 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
すると、裁縫さいほうほんとか、料理れうりほんとか、あるひまた育兒いくじくわんするほんとかいふものがある。ほどこれは、大抵たいてい場合ばあひ婦人ふじんのみにようのある書物しよもつである。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
しかあるひはこれがぼくさいはひであるかもれない、たゞぼくいまこゝろたしかに不幸ふかうと感じてるのである、これをさいはひであつたと知ることは今後こんごのことであらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
かうした淋しいやうな、なつかしいやうな、一種絶望的な、あるひは落ちつき払つた考が私の心を私の歩みにつれていた。次第に私の眼には涙が浮んだ。
愛は、力は土より (新字旧仮名) / 中沢臨川(著)
吾人は断言せんと欲す、いはく、世に罪過なくして不幸の末路に終るものは之れなしと。人あるひは曰はん、キリストは罪過なくして無惨の死を遂げたりと。
罪過論 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
かたをはると、三人みたりあるひおどろあるひはよろこび。大佐たいさ相變あひかはらず鼻髯びぜんひねりつゝ。豪壯がうさうなる濱島武文はまじまたけぶみむねたゝいて
瓦解ぐわかいさい駿府すんぷげなかつたんだとか、あるひげてまたたんだとかことみゝにしたやうであるが、それは判然はつきり宗助そうすけあたまのこつてゐなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
(四二)あるひいはく、(四三)天道てんだうしんく、つね善人ぜんにんくみすと。伯夷はくい叔齊しゆくせいごときは、善人ぜんにんものか。じんおこなひいさぎようし、かくごとくにして餓死がしせり。
あるひは余りに自己を説くに急なるふしもありしならん、或は辞藻やゝ繁くして、意義明瞭ならざるふしもありしならん、いづれは予が筆の至らざる所とりやうし給ふべし。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
それよりのち鹿野武左衛門しかのぶざゑもんといふ者が、鹿しか巻筆まきふでといふものをこしらへ、また露野五郎兵衛つゆのごろべゑといふものがて、露物語つゆものがたりでござりますの、あるひつゆ草紙さうしといふものが出来できました。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ブラ/\と面白おもしろき空想をつれにしてどて北頭きたがしら膝栗毛ひざくりげあゆませながら、見送みおくはててドヤ/\と帰る人々が大尉たいゐとしいくつならんの、何処いづこ出生しゆつしやうならんの、あるひ短艇ボートこと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
よろしい、御飯を食べるのは生きてゐる証拠、てば泣くのは、神経のある証拠。あるひは大和尚になるかも知れない。ここへれていらつしやい。わたしの弟子にしてあげる。」
愚助大和尚 (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
あるひは何処へも抜けられず行止ゆきどまりになつてゐるものか否か、それは蓋し其の路地に住んで始めて判然するので、一度や二度通り抜けたくらゐでは容易に判明すべきものではない。
路地 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
礼助は京見台からの目が、の程度の大きさに、あるひは小ささに、京の町町を見得るのかをも知らないうちから、実枝の日傘だけははつきりと見える気がしてならなかつた。
曠日 (新字旧仮名) / 佐佐木茂索(著)
あるひ其頃そのころ威勢めをひ素晴すばらしきものにて、いまの華族くわぞくなんとして足下あしもとへもらるゝものでなしと、くちすべらしてあわたゞしくくちびるかむもをかし、それくらべていま活計くらしは、きえしもおなじことなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ほりにはうごかないみづそらうつしてたゝへてところがある。さうかとおもへばあるひみづは一てきもなくてどろうへすぢのやうにながれたすなあとがちら/\とはるわづか反射はんしやしてところがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
文句もんく色々いろ/\へて、あるひつよく、あるひよわく、あるひのゝしり、あるひはふざけ、種々樣々しゆ/″\さま/″\こといてやつた。中途ちうとへたたれてはまつたてき降伏かうふくするわけだから、れい持藥ぢやくのつもりで毎日まいにちいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
自然界しぜんかい現象げんしやうると、るものは非常ひぜううつくしく、るものは非常ひぜうおそろしい。あるひ神祕的しんぴてきなものがあり、あるひ怪異くわいいなものがある。これにはなにそのおく偉大ゐだいちからひそんでるに相違さうゐない。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
かつまたこれまでのこよみにはつまらぬ吉凶きつきやうしる黒日くろび白日しろびのとてわけもわからぬ日柄ひがらさだめたれば、世間せけんこよみひろひろまるほど、まよひたねおほし、あるひ婚禮こんれい日限にちげんのばし、あるひ轉宅てんたくときちゞ
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
古墳こふんからどうつくつたかゞみがたくさんますが、ことにふる時代じだい古墳こふんには多數たすうかゞみかんなかれてあるのでありまして、ときにはひとつの古墳こふん十枚じゆうまい二十枚にじゆうまいあるひはそれ以上いじようあることもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
つて村田君が持つて行つた「街の手品師」や、松竹の「萩寺心中」が巴里で上映され、あるひは、岡本綺堂氏の「修善寺物語」がそのまゝに日本劇として向うの劇場に、上演されたのに
日本趣味映画 (新字旧仮名) / 溝口健二(著)
必然ひつぜんあく」を解釋かいしやくして遊歩塲いうほぢやう一少女いつせうぢよ點出てんしゆつしかの癖漢へきかん正義せいぎ狂欲きやうよくするじやうえがき、あるひ故郷こきやうにありしときのあたゝかきゆめせしめ、生活せいくわつ苦戰塲くせんぢやうりて朋友はうゆう一身いつしんだんずるところあり。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
是より水上にいたらば猶斯の如き所おほきやひつせり、此に於て往路をりてかへり、三長沢口にはくし徐計をなすべしと云ひ、あるひただちに此嶮崖けんがいぢて山にのぼり、山脈をつたふて水源にいたらんと云ひ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
但馬守たじまのかみ流石さすがに、そんな些事さじたいして、一々死刑しけいもちゐることは出來できなかつたが、掏摸すりなぞは從來じうらい犯以上ぱんいじやうでなければ死刑しけいにしなかつたのを、れは二はんあるひことによると初犯しよはんからてて
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あるひあいちやんはものうをんだかもれませんでした
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
女童めわらはに目もくれずとふ男童をわらべあるひはほのに何かおそれし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あるひけだしわが口は、身に迫り來る不思議をも
あるひはわが行きて長久とこしへの眠に朽ち果つる所は
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)