さいは)” の例文
さいはひお前の文身ほりものを洗ひ落すついでに、一皮いでやらうぢやないか、石原の利助を三助にするなんざア、お前に取つちや一代のほまれだ
近所きんじよ女房にようばうれたのをさいはひに自分じぶんあとからはしつてつた。鬼怒川きぬがはわたしふね先刻さつき使つかひと行違ゆきちがひつた。ふねからことば交換かうくわんされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
手本てほんもとにして生意氣なまいきにも實物じつぶつ寫生しやせいこゝろみ、さいは自分じぶんたくから一丁ばかりはなれた桑園くはゞたけなか借馬屋しやくばやがあるので、幾度いくたびとなく其處そこうまやかよつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
してたもれと言れて乳母うばにもと思ひしばし工夫にくれたり折柄をりから媒人なかうどの富右衞門來りしによりこれさいはひと乳母は彼の艷書を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さいはひに一人ひとりも怪我はしなかつたけれど、借りたボオトの小舷こべりをば散々にこはしてしまつた上にかいを一本折つてしまつた。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
が、あの盜人ぬすびとうばはれたのでせう、太刀たち勿論もちろん弓矢ゆみやさへも、やぶなかには見當みあたりません。しかしさいは小刀さすがだけは、わたしのあしもとにちてゐるのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
不幸ふかうなるちひさな甚公じんこうは、なんにも痕跡あとのこらぬのをつて、一本指ぽんゆび石盤せきばんくことをめました、ところで、そのかほからインキのれてるのをさいは
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しかしさいは美術びじゆつ自然科學しぜんかがくのおはなしは、べつ諸先生しよせんせいふでられてゐることゝおもひますから、わたし博物館はくぶつかんのうち考古學こうこがく博物館はくぶつかんのことだけをくことにし
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ロミオ さいはよるころもてゐる、見附みつけらるゝはずはない。とはいへそもじあいせられずば、立地たちどころ見附みつけられ、にくまれて、ころされたい、あいされぬくるしみをのばさうより。
しつ! だまつて/\と、くばせして、衣紋坂えもんざかより土手どてでしが、さいは神田かんだ伯父をぢはず、客待きやくまちくるまと、はげしい人通ひとどほり眞晝間まつぴるま露店ほしみせしろ西瓜すゐくわほこりだらけの金鍔燒きんつばやき
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さいはつまあに本國ほんこく相當さうたう軍人ぐんじんであれば、其人そのひと手許てもとおくつて、教育けういく萬端ばんたん世話せわたのまうと、餘程よほど以前いぜんからかんがへてつたのですが、どうもしか機會きくわいなかつた。
それから三代目だいめ代目だいめとは、無關係むくわんけいで、構内こうないへは一あし踏入ふみいれなかつたが、到頭たう/\その鷄屋とりやほろびてしまつたので、これをさいはひと佛骨子ぶつこつしをかたらひ、またすこつてた。
さいはあたまちがつて、身体からだの方は善くうごくので、代助はそこを大いに重宝がつてゐる。代助ばかりではない、従来からゐる婆さんも門野かどのの御蔭で此頃は大変助かる様になつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その時つい気のついたはむろさんからいたゞいて毒消どくけし御封ごふう、これさいはひと懐中ふところに手を入れましたがつゝみのまゝ口へれて雪をつかんでれてみましたが、毒消どくけし御利益ごりやく
さいは海軍かいぐん鳥居とりゐ知人ちじん素性すぜうるからで利發りはつうまれつきたるをとこあるよし、其方そなた異存いぞんなければれをもらふて丹精たんせいしたらばとおもはるゝ、悉皆しつかい引受ひきうけは鳥居とりゐがして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さいはひにたいしたことはございませんでしたけれど。」彼女かのぢよ内輪うちわはなすのであつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ところが丁度ちやうど玄竹げんちくつてさいはひなことには、多田院別當ただのゐんべつたう英堂和尚えいだうをしやう病氣びやうきになつて、開帳中かいちやうちうのことだから、はや本復ほんぷくさせないとこまるといふので、玄竹げんちくのところへ見舞みまひもとむる別人べつじんた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
くわふるに寒肌あはを生じ沼気沸々ふつ/\鼻をく、さいはひに前日来身躰しんたい鍛錬たんれんせしが為め瘧疫ぎやくえきかかるものなかりき、沼岸の屈曲くつきよく出入はじつに犬牙の如く、之に沿うてわたることなれば進退しんたい容易やうゐ捗取はかどらず
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
和尚おしよう如何どうだナなど扶持ふちでもしてくやうにはゞかせて、茶の呑倒のみたふしを、コレハ先生よくこそ御来臨ごらいりんさいはかたより到来たうらい銘酒めいしゆ、これも先生に口をきついただくは、青州せいしう従事じゆうじ好造化かうざうくわなどゝきゝかぢりと
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「それから、あの猫又法印は威張り返つて、自分の部屋の押入を開けさせませんよ。さいはひ、財布を投げ出してあつたので、念入りに調べましたが」
ほかものらはさいはひにれを坐布團ざぶとんにして其上そのうへ彼等かれらひぢせ、其頭そのあたまえてむかあはせになつてはなしてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
憎み給ふゆゑどうさいはひのあるべきやさてまた庄兵衞しやうべゑ傘谷からかさだに桂山道宅かつらやまだうたくと云醫師ありて毎日雇れ居たり此醫者隨分小金をもつたる樣子を見うけうばひ取んとこゝ惡念あくねん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こゝも生活くらしにはこまつてゐたので、はゝ食料しよくれうをかせぐため、丁度ちやうど十八になつてゐたのをさいはひ、周旋屋しうせんや世話せわで、そのころあらたにできた小岩こいは売笑窟ばいせうくつ身売みうりをしたのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
わたし眞鍮しんちう迷子札まひごふだちひさなすゞりふたにはめんで、大切たいせつにしたのを、さいはひにひろつて、これをたもとにした。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
與吉よきちさいはひにぐつたりとつておふくろふところからはなれるのもらないのでおつぎがちひさないた。おしな段々だん/\身體からだあたゝまるにれてはじめて蘇生いきかへつたやうに恍惚うつとりとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このはかかたちおほきくたいさう岩乘がんじようつくられてありますから、千年せんねん二千年後にせんねんご今日こんにちまで、さいはもとのまゝでのこつてゐるものがたくさんあり、ふる日本人につぽんじんんでゐたところは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しか自分じぶんいまかつ參禪さんぜんといふことをした經驗けいけんがないと自白じはくした。もしくはしいはなしきたければ、さいは自分じぶんあひによく鎌倉かまくらをとこがあるから紹介せうかいしてやらうとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
アヽやつ屹度きつとものはうとするとボーと火かなに燃上もえあがるにちげえねえ、一ばん見たいもんだな、食物くひものからもえところを、ウム、さいはかべが少し破れてる、うやつて火箸ひばしツついて、ブツ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
やしき彼方かなた建築たてられしをさいはひ、开處そこ女中頭ぢよちうがしらとしてつとめは生涯しようがいのつもり、おひらくをもやしなふてたまはるべき約束やくそくさだまりたれば、此地このちにはませぬ、またことがあらば一ぱくはさせてくだされ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはすこぶ失望しつばうしてだれかにたすけてもらはうとおもつてた矢先やさきでしたからうさぎそばたのをさいはひ、ひく怕々おど/\したこゑで、『萬望どうぞ貴方あなた——』とひかけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「私の部屋に逃げ込んだのをさいはひ、道づれになつて、親分の氣をらせようとしましたが、親分の目は一刻半刻も、六千兩の荷から離れることではございません」
きらひて幼年なれば今四五年も相待あひまつべしととゞめ候故本意ほんいなくは思へども師匠の仰せ默止難もだしがたく是迄は打過うちすぎ候なり此度こそさいはひに日頃の宿願しゆくぐわんはたすべき時なり何卒此儀このぎ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
さいは美少年録びせうねんろく見着みつからず、教師けうし細君さいくんれて別室べつしつり、おとそれきりきこえずにんだ。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卯平うへいなつになれば何處どこでもいそがしい麥扱むぎこき陸稻をかぼ草取くさとりやとはれた。かれ自分じぶん村落むらはなれて五も六とまつてかへらぬことがある。卯平うへいにはさきからさきあるいてることがかへつさいはひであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
家内うち/\もめるにそのやうのこと餘地よちもなく、つて面白おもしろくない御挨拶ごあいさつくよりかだまつてはうがよつぽど洒落しやれるといふくらゐかんがへで、さいはひに賄賂わいろけがれはけないでんだけれど
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お福が江戸一番の蓮葉娘で、大勢の馬鹿な男に騷がれて居るのをさいはひ、親分に頼んで見代りの聟を仕立てて貰ひ、俺はそつと此處へ來て、お福を殺す工夫をした。
れば度胸どきようゑて、洒落しやれてる。……しつはいづれも、舞臺ぶたいのない、大入おほいり劇場げきぢやうぐらゐにんでたが、さいはひに、喜多八きたはち懷中くわいちうかるければ、かるい。荷物にもつはなし、おまけ洋杖ステツキほそい。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さいはひの巡査おまわりさまにうちまでいたゞかば我々われ/\安心あんしん此通このとほりの子細しさい御座ござりますゆゑすぢをあら/\をりからの巡査じゆんさかたれば、職掌しよくしようがらいざおくらんとらるゝに、いゑ/\おくつてくださらずともかへります
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さいはひ、主人、大場石見は大の馬好き、近頃手に入れた『東雲しのゝめ』といふ名馬、南部産八寸やきに餘る逸物いちもつに、厩中間うまやちうげんの黒助といふ、若い威勢の好い男を附けて貸してくれました。
……たとへば、地震ぢしんから、水道すゐだう斷水だんすゐしたので、此邊このへんさいはひに四五箇所しごかしよのこつた、むかしの所謂いはゆる番町ばんちやう井戸ゐどへ、家毎いへごとからみづもらひにむれをなしてく。……たちまをんなにはませないとやしき出來できた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さいはひ行き止りの二方口の部屋ですから、廊下には信用の出來る子分を二人張り込ませ、自分は日本橋からやつて來た大番頭の嘉七、寮の番人夫婦などと一緒に、次の部屋に陣取つて
般若湯はんにやたうすこしばかり、さいはなまぐさくちにせぬ場合ばあひで、思出おもひだすにちやうい。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)