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萬望
『もう
爲ないから、
萬望話して
頂戴な』と
愛ちやんは
極く
謙遜して、『二
度と
喙を
容れないわ。
屹度そんな
井戸が
一つ
位あつてよ』
愛ちやんは
頗る
失望して
誰かに
助けて
貰はうと
思つてた
矢先でしたから
兎が
傍へ
來たのを
幸ひ、
低い
怕々した
聲で、『
萬望、
貴方——』と
云ひかけました。
『
萬望、お
宥しを
願ひます』と
愛ちやんは
消魂しい
聲で
叫んで、
再び
手早く
彼等を
拾ひ
上げました。