)” の例文
自分じぶん真心まごころがいつか、にいさんにわかるときがあろう。」と、おとうとは、一粒ひとつぶのしいの裏庭うらにわめて、どこへとなくりました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さてけものはまへにもいへるごとく、初雪しよせつを見て山つたひに雪浅き国へる、しかれども行后ゆきおくれて雪になやむもあればこれをる事あり。
しかしながらわかしゆしようする青年せいねんの一勘次かんじいへ不斷ふだん注目ちうもくおこたらない。れはおつぎの姿すがたわすることが出來できないからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
もつとも、あれでしどつちかが斷然だんぜんつよくでもなつたとしたら、おそらくすゝまぬ方は憤然ふんぜん町内をつてつたかも知れない。くは原、くは原!
家人かじんのようすにいくばくか不快ふかいいだいた使いの人らも、お政の苦衷くちゅうには同情どうじょうしたものか、こころよく飲食いんしょくして早そうにった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
宿やどじつとしてゐるのは、なほ退屈たいくつであつた。宗助そうすけ匆々そう/\また宿やど浴衣ゆかたてゝ、しぼりの三尺さんじやくとも欄干らんかんけて、興津おきつつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
村長むらおさの話をきけば、数日前に、このうちへとまって飄然ひょうぜんったというみょうな老人というのこそ、どうやら果心居士であるような気がする。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
んぬる頃、日本長崎の「さんた・るちや」と申す「えけれしや」(寺院)に、「ろおれんぞ」と申すこの国の少年がござつた。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
令史れいしけたことおびたゞし。あきれてあかすに、やまふかうしてひとず。みちたづぬればいへることまさ八百里程はつぴやくりてい三十日さんじふにちからうじてかへる。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りながら仏のおしえは奇妙な仕置にて、大乗小乗と二つ分ちて、小乗はこんの人の教え、大乗は上根の人への教えと定めこれ有り候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
ガンたちは、オムベルイ地方ちほうって、イエータ運河うんがにそって東に飛びました。ここでは、夏のためのじゅんびをしていました。
一方では季題やきらいや打ち越しなどに関する連句的制約をある程度まで導入して進行の沈滞を防ぎ楽章的な形式の斉整を保つと同時に
俳諧瑣談 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
わたくしはもときょううまれ、ちち粟屋左兵衞あわやさひょうえもうして禁裡きんりつかえたものでございます。わたくし佐和子さわこ、二十五さい現世げんせりました。
夫人ふじん牢屋らうやる』とつて女王樣ぢよわうさま死刑執行者しけいしつかうしやに、『此處こゝれてまゐれ』そこ死刑執行者しけいしつかうしやごとはしりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鳥はみんなきょうをさまして、一人り二人り今はふくろうだけになりました。ふくろうはじろじろへやの中を見まわしながら
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ゆびくつしてると、當日たうじつ吾等われら海岸かいがんいへつてから、丁度ちやうど九日目こゝぬかめで、かね海底戰鬪艇かいていせんとうてい試運轉式しうんてんしきさだめられたる紀元節きげんせつ前日ぜんじつである。
され共東天やうやく白く夜光全くり、清冷の水は俗界のちりを去り黛緑たいりよくの山はえみふくんて迎ふるを見れば、勇気いうき勃然ぼつぜん為めに過去の辛苦しんくを一そうせしむ。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
すゝめもなさずるものは日々ひゞうとしの俚諺ことわざもありをだにれば芳之助よしのすけ追慕つゐぼねんうすらぐは必定ひつぢやうなるべしこゝろながくとき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よ、ほか人一個ひとひとりらぬ畑中はたなか其所そこにわびしき天幕てんとりて、るやらずのなかる。それで叔母達をばたちるとも、叔父をぢとも此所こゝとゞまるといふ。
(權三に蹴られて、彦三郎はつまづき倒れる。水の音。一同は見返りもせずに、綱をひいて上のかたへ引返してる。)
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
かれ微笑びせうもつくるしみむかはなかつた、輕蔑けいべつしませんでした、かへつて「さかづきわれよりらしめよ」とふて、ゲフシマニヤのその祈祷きたうしました。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それを考えると、この村をるのが残念ざんねんでたまりませんでした。わたしは打穀場だこくばのうらてをぬけてたにへくだり、れ地のほうへのぼって行きました。
晏子あんし莊公さうこうし、これこくしてれいしかのちるにあたつて、所謂いはゆる(七二)さざるはゆうもの
が、そのふゆってしまったとき、あるあさ子家鴨こあひる自分じぶん沢地たくちがまなかたおれているのにがついたのでした。
五合、三合、従前もとの通りになって、らば烟草の方はまぬむかしの通りにしようとしてもれも出来ず、馬鹿々々しいとも何ともけがわからない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
料理番れうりばんまをしつけて、玄竹げんちく馳走ちそうをしてらせい。もともに一こんまう。』と、但馬守たじまのかみは、こつならせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
明治めいぢ三十五ねんはるぐわつ徳島とくしまり、北海道ほくかいだう移住いぢゆうす。これよりき、四男しなん又一またいちをして、十勝國とかちのくに中川郡なかがはごほり釧路國くしろのくに足寄郡あしよろごほりながるゝ斗滿川とまむがはほとり牧塲ぼくぢやう經營けいえいせしむ。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
やがて彼れ衣嚢かくしを探りいとふとやかなる嗅煙草かぎたばこの箱を取出とりいだし幾度か鼻に当て我を忘れて其香気をめずる如くに見せかくる、れど余はかねてより彼れに此癖あるを知れり
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
老人らうじんかした言葉ことばんなものでありました。そして權藏ごんざうふるつて老人らうじんもとつたのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ときにはわざと背中合せなかあわせにすわる場合ばあいもままあったが、さて、吉次きちじはやがて舞台ぶたいて、子役こやくとしての評判ひょうばん次第しだいたかくなった時分じぶんから、王子おうじったたがいおや
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「右の者んぬる六月十五日本所北割下水大伴蟠龍軒方へ忍び込み、同人舎弟を始めほか四人の者を殺害せつがい致し候者也そうろうものなり」と読むより、なきだに義気に富みたる文治
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
国許くにもとともおそばらずだったが、そのとき展墓てんぼのため(理由はほかにあった)帰国したといい、兄の和兵衛を訪ねて来たついでに、出三郎の住居をのぞいたのである。
艶書 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
発車の笛、寒きゆふべの潮風に響きて、汽車は「ガイ」と一とりして進行を始めぬ、駅長は鞠躬如きくきゆうぢよとして窓外に平身低頭せり、れど車中の客は元より一瞥いちべつだも与へず
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ロミオは汝等おぬしらをば寢室ねまへの通路かよひぢにせうとおおもやったに、わし志望おもひげいで、處女をとめのまゝでるのぢゃ。さ、つなよ。さ、乳母うばよ。これから婚禮こんれいとこかう。
「いよいよ、いつぞやの約束やくそくたす日がた。わたしたちは今夜限こんやかぎりこのろうとおもう。」
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かれ処女作しよぢよさく市場しぢやうたとき、まだとしすくないこの天才てんさい出現しゆつげんおどろかされて、あつまつておほくの青年せいねんも、そろ/\かれ実質じつしつうたがはれてたやうに、二人ふたりり三にんはなれして
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
何かをソッとうかがっているという様子だ。いやに眼を光らせているのだ。そして、おれが降りて来たのを見ると、ハッとした様に、なく部屋の中へはいってしまった。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
毎号まいがう三千さんぜんづゝもるやうなわけで、いまつとめて拡張かくちやうすれば非常ひじやうなものであつたのを、無勘定むかんじやう面白半分おもしろはんぶんつてために、つひ大事だいじらせたとはのちにぞ思合おもひあはされたのです
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
んぬる正平しょうへいの昔、武蔵守むさしのかみ殿(高師直こうのもろなお)が雲霞うんかの兵を引具ひきぐして将軍(尊氏たかうじ)御所を打囲まれた折節、兵火の余烟よえんのがれんものとその近辺の卿相雲客けいしょううんかく、或いは六条の長講堂
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
りながらこの問題もんだいじつ哲學てつがく領分れうぶんぞくするもので、容易ようゐ解決かいけつされぬ性質せいしつのものである。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
追分の供養塔などの立ち竝んだ村はづれ——北國街道と中山道とのれ——に立つて眞白な花ざかりの蕎麥畑などの彼方に眺めやつてゐると、いかにも穩かで、親しみ深く
初秋の浅間 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
三ヶげつばかりぎると、彼女かのぢよ國許くにもとかへつて開業かいげふするといふので、あたらしいわかをつとともに、この土地とちるべくさま/″\な用意よういりかゝつた。彼女かのぢよつてゐるものをみなさゝげた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
これに觀察かんさつ阿蘇山あそざん嘉元三年かげんさんねん三月三十日さんがつさんじゆうにち西暦せいれき千三百五年せんさんびやくごねん五月二日ごがつふつか)の午後四時頃ごごよじごろ地中ちちゆうから太陽たいようごと火玉ひだまみつそらのぼり、東北とうほくほうつたといふことがある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
祖父おほぢ播磨はりま一四赤松に仕へしが、んぬる一五嘉吉かきつ元年のみだれに、一六かのたちを去りてここに来り、庄太夫にいたるまで三代みよて、一七たがやし、秋をさめて、家ゆたかにくらしけり。
モロッコのマグラ市近き野に獅が多いが極めて怯懦きょうだで、小児が叱ると狼狽
もうつてくれ、無邪氣むぢやきないたづらをして、そのへんをかきみだすのは辛抱しんぼうするが、不潔ふけつなことをするおそれがある、つてもらない、そのまゝ默認もくにんしてゐるうちに、とこに、またたれた。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
雨戸あまど引きあけると、何ものか影の如くった。白は後援を得てやっと威厳いげんを恢復し、二足三足あとおいかけてしかる様に吠えた。野犬が肥え太った白を豚と思って喰いに来たのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
チラリと私の顔を盗み見たようであったが、間もなくない口調で答えた。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すべてのよろこび満足まんぞく自負じふ自信じゝんも、こと/″\く自分をツてしまツて、かはり恐怖きようふが來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
しかるに今の天下の形勢は枝葉しえふんでゐる。民の疲弊ひへいきはまつてゐる。草妨礙くさばうがいあらば、またよろしくるべしである。天下のために残賊ざんぞくを除かんではならぬと云ふのだ。そこで其残賊だがな。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)