𢌞まは)” の例文
母親のおとよ長吉ちやうきち初袷はつあはせ薄着うすぎをしたまゝ、千束町せんぞくまち近辺きんぺん出水でみづの混雑を見にと夕方ゆふがたから夜おそくまで、泥水どろみづの中を歩き𢌞まはつために
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
禮心れいごころに、あかりけておともをしませう……まち𢌞まはつて、かどまでおむかひにまゐつてもうござんす……には御覽ごらんなさいませんか。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さて空氣は、若しその𢌞まはることいづこにか妨げられずば、こと/″\く第一の囘轉とともに圓を成してめぐるがゆゑに 一〇三—一〇五
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ヂュリ おゝ、𢌞まは夜毎よごと位置ゐちかは不貞節ふていせつつきなんぞを誓言せいごんにおけなさるな。おまへこゝろつきのやうにかはるとわるい。
下谷したやから浅草あさくさ𢌞まはつて、それから貴方あなた本郷台ほんがうだいへかゝりました、それから牛込うしごめへ出まして、四谷よつやから麹町かうぢまち𢌞まはつてかへつてまゐりまして、いやもうがつかりいたしました。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
五百丁のともゑもぐさをホグして、祖母の背中の方へ𢌞まはると、小さい燭臺しよくだいへ蝋燭をたて、その火をお線香にうつして、まづ第一のお灸を線香でつらぬき、口の中でブツブツ言つて
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
笑つてあごをしやくると、玉ちやんはおかあちやんの背中せなか𢌞まはつて來て、博士に抱かれた。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
取り亂した化粧部屋にはただひとり三歳みつつ四歳よつつの私が𢌞まはりながら何ものかを探すやうにいらいらと氣をあせつてゐた。ある拍子に、ふと薄暗い鏡の中に私は私の思ひがけない姿に衝突ぶつつかつたのである。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
想ひ𢌞まはせば、はや半歳の昔となりぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
も添へてやりたし嗚呼此の脊に負はるゝ子あとより歩む娘今より十年の後はいかになりて在るや二十年の後は何となるべきや人生れて貧賤なればとて生涯それにてはつるにあらず𢌞まはり合せさへよくば富貴ふうきの者となりて雨に戀しきみのゝ國に昔し苦みし事を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ふり𢌞まはくはをよけながら、いや、おばあさんばかりぢやありません、みなつてるよ、とつてもつてるから承知しようちをしない。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
誰か彼がさちあれといひゐたるを疑はむ、そは尊き愛を開かんとて鑰を𢌞まはせる女のかたちかしこにあらはされたればなり 四〇—四二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かうふ時には酒がなくてはならぬと思つて、台所だいどころを探し𢌞まはつたが、女世帯をんなじよたいの事とて酒盃さかづき一ツ見当みあたらない。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と見てうちたちまち五六十りやう金子かね鵜呑うのみにしたからたまらない、悶掻もがき𢌞まはつて苦しみ出し。源
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
マーキュ おゝ、ても𢌞まはるわ、すんからしゃくびる莫大小口めりやすぐちとは足下おぬしくちぢゃ。
𢌞まはせ、𢌞まはせ、水ぐるま
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
別莊べつさうはずつとおく樹深きぶかなかつてるのを、わたしこゝろづもりにつてる。總二階そうにかい十疊じふでふ八疊はちでふ𢌞まはえんで、階下かいか七間なゝままでかぞへてひろい。
鳥影 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
舞台は相愛あひあいする男女の入水じゆすゐと共に𢌞まはつて、女のはう白魚舟しらうをぶね夜網よあみにかゝつて助けられるところになる。再びもとの舞台に返つて、男も同じく死ぬ事が出来できなくて石垣いしがきの上にあがる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
どうしたつてえぢやアえか、昨日きのふ年始𢌞ねんしまはりだ、あさうちを出て霊南坂れいなんざかあがつて、麻布あざぶへ出たんだ、麻布あざぶから高輪たかなわへ出て、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはつて神田かんだへ出て
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
𢌞まはせ、𢌞せ、水ぐるま
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
て、うなると、この教育けういくのあるむすめが、なにしろ恰好かつかうわるい、第一だいいちまたちやうがわるい、まへ𢌞まはしてひざつてなほせといふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えゝはじたくを出まして、それから霊南坂れいなんざかあがつて麻布あざぶへ出ました、麻布あざぶから高輪たかなわへ出まして、それからしばかへつてて、新橋しんばしを渡り、煉瓦通れんがどほりを𢌞まはりまして、京橋きやうばしから日本橋にほんばしから神田かんだへ出ましてな
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そん大木たいぼくのあるのはけだ深山しんざんであらう、幽谷いうこくでなければならぬ。ことにこれは飛騨山ひだやまから𢌞まはしてたのであることをいてた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
𢌞まは合羽がつぱかさいでかべにかけ、伝
不忍しのばずいけ懸賞けんしやうづきの不思議ふしぎ競爭きやうさうがあつて、滿都まんとさわがせたことがある。いけ内端うちわ𢌞まはつて、一周圍ひとまはり一里強いちりきやうだとふ。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、千助せんすけは、團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから、庭前ていぜん𢌞まはつた。座敷ざしき御新姐ごしんぞことを、あらかじつてのうへ
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
師走しはす算段さんだん𢌞まはつて五味坂ごみざか投出なげだされた、ときは、懷中くわいちうげつそりとさむうして、しんきよなるがゆゑに、路端みちばたいし打撞ぶつかつてあしゆび怪我けがをした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
の一日前にちまへ暮方くれがたに、元二げんじ團右衞門方だんゑもんかた切戸口きりどぐちから庭前にはさき𢌞まはつた、座敷ざしき御新造ごしんぞことあらかじつてのうへで。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もんが、また……貴方あなたおもてでもなければくゞりでもなくつて、土塀どべいへついて一𢌞ひとまは𢌞まはりました、おほきしひがあります、裏門うらもん木戸口きどぐちだつたとまをすんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くろが、またしきりに元二げんじむつんで、ニヤゴー、とひる附添つきそひあるいて、啼聲なくこゑあいくるしくいて𢌞まはる。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……酒氣しゆき天井てんじやうくのではない、いんこもつてたゝみけこげをころ𢌞まはる。あつかんごと惡醉あくすゐたけなはなる最中さいちう
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかり一具いちぐすわつたやうに、あひけんばかりへだてて、薄黒うすぐろかげおとして、くさなかでくる/\と𢌞まはくるまがある。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
千助せんすけじゆんさかづき𢌞まはつてとき自分じぶん國許くにもとことなぞらへて、仔細しさいあつて、しのわかものが庄屋しやうや屋敷やしき奉公ほうこうして、つま不義ふぎをするだんるやうに饒舌しやべつて
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかり一具ひとつすわつたやうに、あひだ十間じつけんばかりへだてて、薄黒うすぐろかげおとして、くさなかでくる/\と𢌞まはくるまがある。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が、はずんでりて一淀ひとよどみして𢌞まはところから、すこいきほひにぶくなる。らずや、仲町なかちやう車夫わかいしゆが、小當こあたりにあたるのである。「まねえがね、旦那だんな。」はなはだしきはかぢめる。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
名物めいぶつかねく、——まへにも一度いちど神田かんだ叔父をぢと、天王寺てんわうじを、とき相坂あひざかはうからて、今戸いまどあたり𢌞まは途中とちうを、こゝでやすんだことがある。が、う七八ねんにもなつた。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……その玄關げんくわん六疊ろくでふの、みぎ𢌞まはえんにはに、物數寄ものずきせて六疊ろくでふ十疊じふでふつぎ八疊はちでふつゞいて八疊はちでふかは張出はりだしの欄干下らんかんしたを、茶船ちやぶね浩々かう/\ぎ、傳馬船てんま洋々やう/\としてうかぶ。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
帷子かたびらなんでござりますか、ぶわ/\したものをましたばうさんが、をかいて𢌞まはつてります。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
如何いか流言りうげんいたねずみでも、オートバイなどでひともなげに駈𢌞かけまはられてはたまらないとおもふと、どしん、どしん、がら/\がらと天井てんじやうつかけ𢌞まはし、どぶなかつてたふ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
兩親りやうしんあに意見いけんなどは、あしかぜほどもみないで、朋輩ほうばい同士どうしには、何事なにごとにも、きにの、おれおれががついて𢌞まはつて、あゝ、ならばな、と口癖くちぐせのやうにふ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
外面おもての、印度洋インドやういたはうの、大理石だいりせき𢌞まはえんには、のきからけて、ゆかく……水晶すゐしやうすだれに、ほし數々かず/\ちりばめたやうな、ぎやまんの燈籠とうろうが、十五、晃々きら/\いてならんでます。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
恍惚うつとりとものおもはしげなかほをしてをなよ/\とわすれたやうに、しづかに、絲車いとぐるま𢌞まはしてました。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
トタンに、背後うしろからわたし身體からだ横切よこぎつたのはれいのもので、其女そのをんなあしまへ𢌞まはつて、さきにえた。啊呀あなやといふうち引摺込ひきずりこまれさうになつたので、はツとするとまへたふれた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
孫一まごいち一人ひとりだつたの……ひとはね、ちゝなみだみなぎちる黒女くろめ俘囚とりこ一所いつしよに、島々しま/″\目見得めみえ𢌞まはつて、あひだには、日本につぽん日本につぽんで、見世みせものの小屋こやかれたこともあつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しづかにすゝんでれいをするとき牡丹ぼたんはしけたやうに、はななか𢌞まはめぐつて、おくつゞいた高樓たかどの廊下らうかづたひに、黒女くろめこしもと前後あとさきに三にんいて、淺緑あさみどりきぬおなをした……おもて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うそまことか、本所ほんじよの、あの被服廠ひふくしやうでは、つむじかぜなかに、荷車にぐるまいたうまが、くるまながらほのほとなつて、そらをきり/\と𢌞まはつたとけば、あゝ、そのうま幽靈いうれいが、くるま亡魂ばうこんとともに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
婦同士をんなどうし見惚みとれたげで、まへ𢌞まはり、背後うしろながめ、姿見すがたみかして、裸身はだかのまゝ、つけまはいて、黒子ほくろひとつ、ひだりちゝの、しろいつけぎはに、ほつりとあることまで、ようつたとはなし
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なあ、ばあさん。——あらものばあさんが、つてるんだ。椋鳥むくどり畜生ちくしやう、もの干棹ほしざを引掻ひきか𢌞まはいてくれようと、幾度いくど飛出とびだしたかわからねえ。たけえからとゞかねえぢやありませんかい。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
微笑ほゝゑんでせて、わかいのがそのすゞしめると、くるりと𢌞まはつて、そらざまにげた、おしなはすつとつて、しなやかにやなぎみきたゝいたので、蜘蛛くもみだれたうすいろ浴衣ゆかたたもと
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これにぎよつとしながら、いま一祈ひといのいのりかけると、そのきのこかさひらいてスツクとち、をどりかゝつて、「ゆるせ、」と𢌞まは山伏やまぶしを、「つてまう、つてまう。」とおびやかすのである。
くさびら (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)