途中とちう)” の例文
温泉をんせんかうとして、菊屋きくや廣袖どてら着換きかへるにけても、途中とちう胴震どうぶるひのまらなかつたまで、かれすくなからずおびやかされたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
砧村きぬたむら途中とちう磨石斧ませきふひろひ、それから小山こやまあがくちで、破片はへんひろつたが、此所こゝまでに五ちかあるいたので、すこしくまゐつてた。
はかは府にちかき四ツ辻といふ所に定め、 御くわんをいだしけるに途中とちうにとゞまりてうごかず、すなはちその所に葬り奉る、今の 神庿しんべう是なり。
郡奉行へ相談の上見知人みしりにんの爲江戸表へ連行つれゆく事と定めけれど老人らうじんなれば途中とちう覺束おぼつかなしと甚左衞門をも見知人みしりにんに出府致す樣申渡し直に先觸さきぶれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『あゝ、今迄いまゝでなん音沙汰おとさたいのは、稻妻いなづま途中とちうんでしまつたのでせう。』と、日出雄少年ひでをせうねん悄然せうぜんとして、武村兵曹たけむらへいそうかほながめた。
「ええ、馬鹿ばかつくせえ。なんとでもなるやうになれだ」と、途中とちうで、あらうことかあるまいことかをんなくせに、酒屋さかやへそのあしではいりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
さるさん、これは祖母おばあさんがおせんべつにれてよこしたのです。途中とちう退屈たいくつしたときにおあがりとつて、祖母おばあさんがれてよこした金米糖こんぺいたうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あの死骸しがいをとこには、たしかに昨日きのふつてります。昨日きのふの、——さあ、午頃ひるごろでございませう。場所ばしよ關山せきやまから山科やましなへ、まゐらうと途中とちうでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
... 貴樣達きさまたちつとるとほ中根なかねはあの行軍かうぐん途中とちうあやまつてかはちた‥‥」と、軍曹ぐんそうはジロりと中根なかねた。「クスつ‥‥」と、だれかが同時どうじした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「おつうもかくなつたな、途中とちうでなんぞ行逢いきやつちやわかんねえな、そんだがりや有繋まさかれこたわすれなかつたつけな」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
帰る途中とちうも不愉快でたまらなかつた。此間このあひだ三千代につて以後、味はう事を知つた心の平和を、ちゝあによめの態度で幾分か破壊されたと云ふ心持が路々みち/\募つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたし途中とちう宿やどちかくで自動車じどうしや乗棄のりすてた。そしてI宿やどつた。I洋服姿ようふくすがたひとりでゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
るにどくなるはあめなかかさなし、途中とちう鼻緒はなをりたるばかりはし、美登利みどり障子しようじなかながら硝子がらすごしにとほながめて、あれれか鼻緒はなをつたひとがある
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
茫漠ぼうばくたる原野げんやのことなれば、如何に歩調をすすむるも容易やういに之をよこぎるをず、日亦暮れしを以てつゐに側の森林中しんりんちうりて露泊す、此夜途中とちう探集さいしふせし「まひたけ」汁をつく
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
すこおもいけれど、かうしてあるけば途中とちう威張ゐばれて安全あんぜんだといふので、下男げなんいさつてあるした。るほどあふひもんと『多田院御用ただのゐんごよう』の木札きふだは、人々ひと/″\皆々みな/\みちゆづらせた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
山の中は歩きつけてります、またわたしは力がありますから、途中とちう追剥おひはぎが五人や六人出ても大丈夫でございます、富山とやま薬屋くすりや風呂敷ふろしきを前で本当ほんたうに結んではりませぬ、追剥おひはぎにでもふと
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
るのがうまいとしたから、ちることもよくちた。本郷ほんがう菊坂きくざか途中とちう徐々やは/\よこちたがてら生垣いけがき引掛ひつかゝつた、怪我けがなし。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はかは府にちかき四ツ辻といふ所に定め、 御くわんをいだしけるに途中とちうにとゞまりてうごかず、すなはちその所に葬り奉る、今の 神庿しんべう是なり。
致し罷り在候處さんぬる十二月中私し儀上野の大師へ參詣さんけい途中とちう上野車坂下にて大橋文右衛門にめぐり逢ひ夫れより同人宅へ參り樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「それだからね、はねよわいものやからだ壯健たつしやでないものは、みんな途中とちうで、かわいさうにうみちてんでしまふのよ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
途中とちう武村兵曹たけむらへいそう大得意だいとくいで、ヤンヤ/\の喝釆かつさい眞中まんなかつて、口沫こうまつとばして、今回こんくわい冐險譚ぼうけんだんをはじめた。
「どうせ此處ここらの始末しまつもしねえでつたんだから、一遍いつぺん途中とちうけえつてなくつちやらねえのがだからおなことだよ」勘次かんじはおしなのぞこむやうにしていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けれども、大体に於て、舞台にはもうあきてゐた。まく途中とちうでも、双眼鏡で、彼方あつちを見たり、此方こつちを見たりしてゐた。双眼鏡のむかふ所には芸者が沢山ゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それに蠻勇ばんゆうもつにんじてるので、一採集さいしふしたものは、いくら途中とちう持重もちおもりがしても、それをてるといふことぬ。かたほねれても、つてかへらねば承知しようちせぬ。
さむい、さむに、この生徒せいと遠路とほみちかよつてきますと、途中とちうらないおばあさんにひました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
今日けふ貴樣達きさまたち此處ここあつめたのはほかでもない。このあひだはら途中とちうおこつたひとつの出來事できごとたいするおれ所感しよかんはなしてかせたいのだ。それは其處そこにゐる中根なかね等卒とうそつのことだ。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
堪忍かんにんをし、なんおもつても先方さき大勢おほぜい此方こつちみなよわいものばかり、大人おとなでさへしかねたにかなはぬはれてる、れでも怪我けがのないは仕合しあはせ此上このうへ途中とちうまちぶせがあぶない
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それは彼のあしを止めたところが郊外かうぐわいにあつたからで、そこは平野神社から銀閣寺へ途中とちうえる衣笠山のなだらかな姿がのきの下から望まれるやうな場所にある、まづしい家であつた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
途中とちう大なる蝮蛇まむしの路傍に蜿蜒えん/\たるあり、之をへば忽ち叢中さうちうかくる、警察署の小使某ひとり叢中にり、生擒せいきんして右手にひつさきたる、衆其たくふくす、此に於て河岸に出でて火をき蝮のかわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
きゝ與惣次は大いに喜び然ば御途中とちう待受まちうけて直に願はゞ萬一傳吉が助かることもあらんかかつはお專が氣をも取直とりなほさせんと其のことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
……此處こゝます途中とちうでも、しててばひとる……たもとなか兩手りやうてけば、けたのが一層いつそ一片ひとひらでも世間せけんつてさうでせう。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
運惡うんわるく、おまへ途中とちうんでしまつたなら、わたくし追付おつゝ彼世あのよで、おまへかほるやうになりませうよ。
うむ、そんなら貴樣きさまがこないだ途中とちうで、南京米なんきんまいをぬきつたのを巡査じゆんさげるがいいかとふんです
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
そらなあ、いくつとめたつて途中とちうだからなんてつちめえば、りただけ給金きふきんはみんなつくるえされんのよ、なあ、それからき/\もなくつちやなんねえのよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とうさんのおうちのおはか永昌寺えいしやうじまでのぼさか途中とちうひだりはうまがつてつたところにありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なにしろ腕力わんりよくがあるからかなひませんね。それに兇器きようきももつてゐるやうです。洋行やうかうするときの護身用ごしんようにとつたものです。一しよにあるいてゐると、途中とちう時々とき/″\ぬかれるんでね。あの無気味ぶきみです。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
其時そのときわたしは七つであつたれどうちうち樣子やうす父母ちゝはゝこゝろをもれてあるにおこめ途中とちうおとしましたとから味噌みそこしさげてうちにはかへられず、たつてしばらくいてたれどうしたとふてれるひともなく
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
べつなんでもありませんが、一寸ちよつと御注意ごちういまでにまをさうとおもつて、いまね、貴女あなたらつしやらうと病院びやうゐん途中とちうですがね。」
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
友達ともだちおもはずはくちくもらぬこと美登利みどりすこかんにさはりて、ようければちがふてもものいふたことなく、途中とちうひたりとて挨拶あいさつなどおもひもかけず、たゞいつとなく二人ふたりなか大川おほかわ一つよこたはりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まであんずることはあるまい。交際つきあひのありがちな稼業かげふこと途中とちうともだちにさそはれて、新宿しんじゆくあたりへぐれたのだ、とおもへばむのであるから。
夜釣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「はあ、……」と、くのにはひつたをんなかほは、途中とちう不意ふいかはつたかとおもふ、すゞしけれども五月ごぐわつなかばの太陽したに、さびしいかげした。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かはり、いまね、ながらほんんでて、面白おもしろことがあつたから、おはなしをしてげようとおもつて、故々わざ/\あそびにたんぢやないか。途中とちうさむかつたよ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今度こんど買物かひものときは、それにかんがみて、途中とちうからでは足許あしもとられるといふので、宿車やどぐるまつてうちした。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
途中とちうあつたとつて、吉井勇よしゐいさむさんが一所いつしよえた。これは、四谷よつや無事ぶじだつた。が、いへうら竹藪たけやぶ蚊帳かやつてなんけたのださうである——
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
書肆ほんや前借さきがり途中とちうででもあつてたがい、よわよめが、松葉まつばいぶされるくらゐになみだぐみもしかねまい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
太鼓たいこおとの、のびやかなあたりを、早足はやあしいそいでかへるのに、途中とちうはしわたつてきしちがつて、石垣いしがきつゞきの高塀たかべいについて、つかりさうにおほきくろもんた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
天利てんりにて、晝食ちうじき料理屋れうりやかどにて小杉天外氏こすぎてんぐわいしふ。それより函嶺はこねおもむ途中とちう電鐵でんてつ線路せんろまよあぶなはしわたることなどあり、午後四時半ごごよじはんたふさはちやく
熱海の春 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ことばしたより、其處そこに、はなし途中とちうから、さめ/″\といてをんなは、悄然せうぜんとして、しかも、すらりとつた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それからもしのお雑巾ざうきん次手ついでにづツぷりおしぼんなすつてくださるとたすかります、途中とちう大変たいへんひましたのでからだ打棄うつちやりたいほど気味きみわるうございますので
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
途中とちう納戸町邊なんどまちへんせまみちで、七八十尺しちはちじつしやく切立きつたての白煉瓦しろれんぐわに、がけちるたきのやうな龜裂ひゞが、えだつて、三條みすぢばかり頂邊てつぺんからはしりかゝつてるのにはきもひやした。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)