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三條
途中お
納戸町邊の
狹い
道で、
七八十尺切立ての
白煉瓦に、
崖を
落ちる
瀑のやうな
龜裂が、
枝を
打つて、
三條ばかり
頂邊から
走りかゝつて
居るのには
肝を
冷した。
白い
手が、ちら/\と
動いた、と
思ふと、
鉛を
曳いた
絲が
三條、
三處へ
棹が
下りた。
「
夫で
何處に」と
宗助が
聞いたとき、
彼は
自分の
今泊つてゐる
宿屋の
名前を、
宗助に
教へた。それは
三條邊の三
流位の
家であつた。
宗助は
其名前を
知つてゐた。
二人は
毎晩の
樣に
三條とか
四條とかいふ
賑やかな
町を
歩いた。
時によると
京極も
通り
拔けた。
橋の
眞中に
立つて
鴨川の
水を
眺めた。
東山の
上に
出る
靜かな
月を
見た。