ある)” の例文
四国しこくしまわたって、うみばたのむら托鉢たくはつしてあるいているうちに、ある日いつどこでみち間違まちがえたか、山の中へまよんでしまいました。
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんなきんぼうでも、おばあさんだけは、るほど、かわいいとみえて、きんぼうのあとから、どこへでもついてあるきました。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くはかついで遺跡ゐせきさぐりにあるき、貝塚かひづかどろだらけにつてり、その掘出ほりだしたる土器どき破片はへん背負せおひ、うしていへかへつて井戸端ゐどばたあらふ。
で、「眞平まつぴら御免ごめんなさい。」とふと、またひよろ/\とそれを背負しよつてあるく。うすると、その背後うしろで、むすめは、クツクツクツクツわらふ。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝかしこにたくさんにありますから、これひととほり見物けんぶつしてあるくだけでも、ロンドンで一週間いつしゆうかんぐらゐは、大丈夫だいじようぶかゝるでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「おい、ぼやぼやするな。しっかりと荷物にもつをかかえてあるけ。そのノートはだいじなんだ。なくすんじゃないぞ、しっかり持ってろ!」
ミハイル、アウエリヤヌイチは一人ひとりして元気げんきよく、あさからばんまでまちあそあるき、旧友きゅうゆうたずまわり、宿やどには数度すうどかえらぬがあったくらい
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もう加減かげんあるいてつて、たにがお仕舞しまひになつたかとおも時分じぶんには、またむかふのはう谷間たにま板屋根いたやねからけむりのぼるのがえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あたしゃみじかいから、どこへくにしても、とてもあるいちゃかれない。千きちつぁん、ぐに駕籠かごんでもらおうじゃないか」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
よる戸毎こごと瓦斯がす電燈でんとう閑却かんきやくして、依然いぜんとしてくらおほきくえた。宗助そうすけこの世界せかい調和てうわするほど黒味くろみつた外套ぐわいたうつゝまれてあるいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
若い人は、いせいよく声をかけながら、新しい麻裏あさうらぞうりで要吉のまいた水の上を、ひょいひょいとひろあるきにとんでいきました。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ひとひととのあひだすこしでも隙間すきま出来できるとるとあるいてゐるものがすぐ其跡そのあと割込わりこんで河水かはみづながれと、それにうつ灯影ほかげながめるのである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
王子おうじはこういうあわれな有様ありさまで、数年すうねんあいだあてもなく彷徨さまよあるいたのち、とうとうラプンツェルがてられた沙漠さばくまでやってました。
うかすると自分のいてゐる草履がペツタ/\いふのに、飛上るやうに吃驚びつくりして冷汗ひやあせを出しながら、足の續く限り早足にあるいた。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ひとりでみちをあるきながら、海蔵かいぞうさんはおもいました。——こりゃ、ひとにたよっていちゃだめだ、じぶんのちからでしなけりゃ、と。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
平生へいぜいは一ぽんきりしてゐないけれども、二本帶ほんさしてある資格しかくつてゐて、與力よりき京武士みやこぶしあとまはらなくてもいいだけの地位ちゐになつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ロミオ いや/\、滅相めっさうな。足下きみ舞踏靴をどりぐつそこかるいが、わしこゝろそこなまりのやうにおもいによって、をどることはおろか、あるきたうもない。
よるになると方々ほう/″\あるまはつて、たけのこ松茸まつたけいもいね大豆等だいずなど農作物のうさくぶつをあらしたり、ひ、野鼠のねずみうさぎなどもとらへて餌食ゑじきにします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
浪打際なみうちぎわあるいたようにかんじたのはホンの一瞬間しゅんかん私達わたくしたちはいつしか電光でんこうのように途中とちゅうばして、れいのおみや社頭しゃとうっていました。
甚あわれになった。天狗犬は訴うる様な眼付めつきをしてしば/\彼を見上げ、上高井戸にってかえるまで、始終彼にくっついてあるいた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
フランスのある学者が『若し倒立さかだちしてあるくことが「流行モード」となつたとしたら、欧羅巴の婦人は些の躊躇もなく、みなそれを真似るだらう』
東西ほくろ考 (新字旧仮名) / 堀口九万一(著)
はなさないでもおまへ大抵たいていつてるだらうけれどいま傘屋かさや奉公ほうこうするまへ矢張やつぱりれは角兵衞かくべゑ獅子しゝかぶつてあるいたのだからとうちしをれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもむきを如何どういふふういたら、自分じぶんこゝろゆめのやうにざしてなぞくことが出來できるかと、それのみにこゝろられてあるいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
夜中よなか彼等かれらつた。勘次かんじ自分じぶんいそぐし使つかひつかれたあしあるかせることも出來できないのでかすみうら汽船きせん土浦つちうらまちた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おなじ宿場しゅくばのきをながしていた坂東巡礼ばんどうじゅんれいの三十七、八ぐらいな女——わが子をたずねて坂東めぐりをしてあるくおときという女房にょうぼう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
三人は順々じゅんじゅんにならんで、ばってねりあるき、めいめい自分の行進曲マーチをもっていた。もちろん、いちばん立派りっぱなのがクリストフのものだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そこで嘉十かじふはちよつとにがわらひをしながら、どろのついてあなのあいた手拭てぬぐひをひろつてじぶんもまた西にしはうあるきはじめたのです。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
『オヤ、其處そこれの大事だいじはなあるいてつてよ』通常なみ/\ならぬおほきな肉汁スープなべそばんでて、まさにそれをつてつてしまつたのです。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
二人ふたりは、子供こどもいてあかるいとほりかられて、くらみちあるいた。くらいところても、銀座ぎんざあかるみをあるひと足音あしおときこえた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「はあ」とつて、りよ二足ふたあし三足みあしあるいてからうた。「それから唯今たゞいま寒山かんざんおつしやつたが、それはどうかたですか。」
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
母馬おやうまうるささにがつかりして歸路きろにつきました。まちはづれまでくると、仔馬こうまきふあるきだしました。はやくいへへかへつておちゝをねだらうとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
まず、自分は右か左かに、どのくらいまがるくせがあるか、それをたしかめて、それから目かくしをした時は、それだけぎゃくにまがる気持きもちあるく……。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
このにぎやかな町にはいってから、五、六ちょうあるくうちに清造はどこの店も、自分にはまるでようのないものだということを、小さな頭にさとりました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
指揮刀しきたうさや銀色ぎんいろやみなかひらめかしてゐる小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐさへよろけながらあるいてゐるのが、五六さきえた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わがはちやうど蝗虫いなごのやうだ、こゝよ、かしこよと跳回はねまはる、うなつてあるく、また或時あるとき色入いろいりはねひろげて、ちひさなくびきとほつて、からところをみせもする。
伯母は臺所に何か働いて居つたので、自分が『何處の女客ぞ』と怪しみ乍ら取次に出ると、『腹が減つて腹が減つて一足ひとあしあるかれなエハンテ、何卒どうかなにか……』
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
乗物のりもの支度したくもなかつたので、私達わたくしたちはぞろ/\打揃うちそろうてそとた。そしてえんタクでもとおりかゝつたらばとおもつて、さびしいNまちとおりを、Tホテルのほうへとあるいた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
蚯蚓みヽずが土を出て炎天の砂の上をのさばる様に、かんかんと日の照るなかあるいてづぶ濡れに冷え切つた身体からだなり心なりをかせ度く成つたので、書院の庭の
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
余は之を以て極めて大なる足跡そくせきの如きもの即ち竪穴に類したるものとなす。余は釧路貝塚の近傍に於て實に大人のあるきたる跡とも形容けいようすべき數列の竪穴を見たり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
こうのとりはながあかあしあるきまわりながら、母親ははおやからおそわったみょう言葉ことばでおしゃべりをしていました。
このスクナビコナの神のことを申し上げたクエ彦というのは、今いう山田の案山子かかしのことです。この神は足はあるきませんが、天下のことをすつかり知つている神樣です。
そしてくらがりからあかるくなつてて、いままであるいてゐたみちのほとりに、つる寢泊ねとまりしてゐた沼地ぬまちのようなものゝあつたことに、のついた樣子ようすが、あきらかにかんぜられます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いくらひとあるきをさせてある妹だからといって、顔面かお粉砕ふんさいしてはいるが、身体の其の他の部分に何か見覚えの特徴があったろうし、また衣類や所持品が同じだといっても
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私はまたいろいろの小さなびいどろ罎に薄荷や肉桂水を入れて吸つてあるいた。またい液は白紙に垂らし、柔かに揉んでしめした上その端々はしばしを小さく引き裂いては唇にあてた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
一日いちにち四方八方しほうはつぽうはしあるいたためひどつかれてかへつてて、わたくしひざもたれたまゝ二人ふたりそら景色けしきながめてころ櫻木大佐さくらぎたいさ武村兵曹たけむらへいそうほか一隊いつたい水兵すいへい今日けふしごとをはつて
かべの向こうでは、ママが早く家を出ようと思って、せかせかとあるまわっているおときこえる。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
大きい人たちは、つまりおにいさんたちなんですから、ってやればいいのに、エチエンヌの足にあわせてあるいてやればいいのにと思うでしょう。ところがそれは駄目だめなのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
村人の為に使つかあるきや物の取片付けや、火の番や、うでぷしの強いものならば泥棒に対する警固やなどの如き、村人のいやがる職務を引受けて、生活の資を求めて行くに至るのは
ある地方ちはう郡立病院ぐんりつびやうゐんに、長年ながねん看護婦長かんごふちやうをつとめてるもとめは、今日けふにち時間じかんからはなたれると、きふこゝろからだたるんでしまつたやうな氣持きもちで、れて廊下らうかしづかにあるいてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
あのをとこうまつたをんなと一しよに、關山せきやまはうあるいてまゐりました。をんな牟子むしれてりましたから、かほはわたしにはわかりません。えたのはただ萩重はぎがさねらしい、きぬいろばかりでございます。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)