一面いちめん)” の例文
紅葉もみぢうつくしさは、植物しよくぶつそのものゝ種類しゆるいと、その發生はつせい状態じようたいとでそれ/″\ちがひますが、一面いちめんには附近ふきん景色けしきにも左右さゆうされるものです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
前刻さつきすがさんにつたときわたしをりしもあかインキで校正かうせいをしてたが、組版くみはん一面いちめん何行なんぎやうかに、ヴエスビヤス、噴火山ふんくわざん文宇もんじがあつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小六ころくなんにもこたへなかつた。臺所だいどころからきよつて含嗽茶碗うがひぢやわんつて、戸袋とぶくろまへつて、かみ一面いちめんれるほどきりいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今年ことしみたいに、紅白こうはくはながたんといたとしい。一面いちめんめるやうないろだ。どこへつても垣根かきねうへしゆ御血潮おんちしほ煌々ぴかぴかしてゐる。
空にはうすい雲がすっかりかかり、太陽たいようは白いかがみのようになって、雲と反対はんたいせました。風が出て来てられない草は一面いちめんなみを立てます。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ふと目を上げるとはるか右手のほうに、たくさんの電灯でんとうが、まるで野原一面いちめんにさきみだれた花のようにきれいにともっているのが見えました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そらいろ一面いちめん鉛色なまりいろおもく、くらく、にごっていて、地平線ちへいせんすみながしたようにものすごくえます。かぜさけごえをあげてあたまうえするどぎていました。
黒い旗物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
先刻せんこくたきのやうに降注ふりそゝいだ雨水あめみづは、艇底ていてい一面いちめんたまつてる、隨分ずいぶん生温なまぬるい、いやあぢだが、其樣事そんなことは云つてられぬ。兩手りようてすくつて、うしのやうにんだ。
入梅つゆになッてからは毎日まいにち雨降あめふりそれやつ昨日きのふあがツて、庭柘榴ざくろの花に今朝けさめづらしくあさひ紅々あか/\したとおもツたもつか午後ごゝになると、また灰色はいいろくもそら一面いちめんひろがり
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
はじめはゆめうつつでそのこえいていましたが、ふとがついて目をあけますと、もう一面いちめんくらやみで、はるかなそらの上で、かすかにほしが二つ三つひかっているだけでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
富士川の瀬を越す舟底の様にゆかおどる。それに樫の直ぐ下まで一面いちめん麦畑むぎばたけである。武蔵野固有の文言通もんごんどおり吹けば飛ぶ軽い土が、それ吹くと云えば直ぐ茶褐色の雲を立てゝ舞い込む。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
周圍の萬物ばんぶつこと/″\一面いちめんの鏡にむかひて
暖波一面花三面 暖波だんぱ一面いちめん はな三面さんめん
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
恐ろしき一面いちめんの壁のいろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はら一面いちめん雛菊ひなぎく
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
何人なんびと何用なにようありてひたしといふにや親戚しんせき朋友ほういう間柄あひだがらにてさへおもてそむけるわれたいして一面いちめんしきなく一語いちごまじはりなきかも婦人ふじん所用しよようとは何事なにごとあひたしとは何故なにゆゑ人違ひとちがひとおもへばわけもなければ彼處かしこといひ此處こゝといひまはりし方角はうがく不審いぶかしさそれすらこと不思議ふしぎなるにたのみたきことありあし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
もつともと一面いちめん竹藪たけやぶだつたとかで、それをひらとき根丈ねだけかへさずに土堤どてなかうめいたから、存外ぞんぐわいしまつてゐますからねと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
宵月よいづきころだつたのにくもつてたので、ほしえないで、陰々いんいんとして一面いちめんにものゝいろはいのやうにうるんであつた、かはづがしきりになく。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(イ)洪水こうずい豫防よぼう。 森林しんりんとはやまをか一面いちめんに、こんもりしげつて、おほきなふかはやしとなつてゐる状態じようたいをいふのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
むこうのぼんやり白いものは、かすかにうごいて返事もしませんでした。かえって注文ちゅうもんどおりの電光が、そこら一面いちめんひる間のようにしてくれたのです。
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それをどこまでもいくと、ひろはらっぱへでました。そこはかすみうらのふちで、一面いちめん夏草なつくさがはえしげっています。夏草には夜露よつゆがしっとりとおりています。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
周章狼狽あわてふためき戸外こぐわい飛出とびだしてると、今迄いまゝで北斗七星ほくとしちせい爛々らん/\かゞやいてつたそらは、一面いちめんすみながせるごとく、かぎりなき海洋かいやう表面ひやうめん怒濤どたう澎湃ぼうはい水煙すいえんてんみなぎつてる。
やっとおやしろまえまでたどりいてみますと、どうでしょう、そこらは一面いちめん気味きみわるいようなの川で、そこにもここにも、かみたおされた大きなさる死骸しがいがごろごろしていました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
恐ろしき一面いちめんの壁のいろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
まへにいつたその逗子づし時分じぶんは、うら農家のうかのやぶをると、すぐ田越川たごえがはながれのつゞきで、一本橋いつぽんばしわたところは、たゞ一面いちめん蘆原あしはら
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なつになるとコスモスを一面いちめんしげらして、夫婦ふうふとも毎朝まいあさつゆふか景色けしきよろこんだこともあるし、またへいしたほそたけてゝ、それへ朝顏あさがほからませたこともある。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「やりますとも、おっと沢山たくさん沢山。けれどもいくらこぼれたところでそこら一面いちめんチュウリップしゅの波だもの。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
武村兵曹たけむらへいそう此時このとき大佐たいさ許可ゆるして、つぎへやから一面いちめん製圖せいづたづさへてて、卓上たくじやう押廣おしひろ
ですから地球ちきゆうが、かりにやまがなくて一面いちめん平地へいちであつたならば、それらのみどり地帶ちたいは、赤道せきどう中心ちゆうしんにこれに並行へいこうして、きたみなみとへうつくしいをえがいて、地球ちきゆういてゐるはずですが
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
かえってると、みんなはちかまえていて、つなをとりまきました。そしてかりの下へあつまっておにうでをみました。うであかさびのしたてつのようにかたくって、ぎんのような一面いちめんにはえていました。
羅生門 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
恐ろしき一面いちめんの壁のいろ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
のぞくと、やまさかひにした廣々ひろ/″\としたにはらしいのが、一面いちめん雜草ざつさうで、とほくにちひさく、こはれた四阿あづまやらしいものの屋根やねえる。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
女は黙ってむこうをむく。川縁かわべりはいつか、水とすれすれに低く着いて、見渡す田のもは、一面いちめんのげんげんでうずまっている。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何の返事へんじも聞えません。黒板こくばんから白墨はくぼくこなのような、くらつめたいきりつぶが、そこら一面いちめんおどりまわり、あたりが俄にシインとして、陰気いんきに陰気になりました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
銀の光が一面いちめん
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
若草わかくさながら廣野ひろの一面いちめん渺茫べうばうとしてはてしなく、かすみけてしろ/″\と天中そらつきはさしのぼつたが、葉末はずゑかるゝわればかり、きつね提灯ちやうちんえないで
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
えきのどの家ももう戸をめてしまって、一面いちめんの星の下に、棟々むねむねが黒くならびました。その時童子はふと水のながれる音を聞かれました。そしてしばらく考えてから
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
練兵場のよこを通るとき、おもくもが西で切れて、梅雨つゆにはめづらしいせき陽が、真赤まつかになつてひろはら一面いちめんらしてゐた。それがむかふくるまあたつて、まはたび鋼鉄はがねの如くひかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
徐大盡じよだいじん眞前まつさきに、ぞろ/\とはひると、くらむやうな一面いちめんはじ緋葉もみぢもゆるがごとなかに、紺青こんじやうみづあつて、鴛鴦をしどりがする/\と白銀しろがねながしてうかぶ。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
知らない草穂くさほしずかにゆらぎ、少し強い風が来る時は、どこかで何かが合図あいずをしてでもいるように、一面いちめんの草が、それ来たっとみなからだをせてけました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼はせいの慾望と死の圧迫の間に、わが身を想像して、未練みれんに両方に往つたりたりする苦悶を心にゑがき出しながらじつすはつてゐると、脊中せなか一面いちめんかは毛穴けあなごとにむづ/\してほとんどたまらなくなる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて足駄あしだ引摺ひきずつて、つい、四角よつかどると、南寄みなみよりはうそら集團しふだんひかへて、ちかづくほどはゞひろげて、一面いちめんむらがりつゝ、きたかたすのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうかと思うと水色のほのおが玉の全体ぜんたいをパッと占領せんりょうして、今度こんどはひなげしの花や、黄色のチュウリップ、薔薇ばらやほたるかずらなどが、一面いちめん風にゆらいだりしているように見えるのです。
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ると……見渡みわたすと……東南とうなんに、しば品川しながはあたりとおもふあたりから、きた千住せんぢう淺草あさくさおもふあたりまで、大都だいと三面さんめんつゝんで、一面いちめんてんである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつかきりがすうっとうすくなって、お日さまの光が黄金色きんいろすきとおってきました。やがて風がきりをふっとはらいましたので、つゆはきらきら光り、きつねのしっぽのような茶色の草穂くさぼ一面いちめんなみを立てました。
樣子やうすでは、其處そこまで一面いちめん赤蜻蛉あかとんぼだ。何處どここゝろざしてくのであらう。あまりのことに、また一度いちどそとた。一時いちじぎた。爾時そのときひとつもえなかつた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのばんゆめ奇麗きれいなことは、黄やみどりの火が空でえたり、野原のはら一面いちめん黄金きんの草にかわったり、たくさんの小さな風車がはちのようにかすかにうなって空中をんであるいたり、仁義じんぎをそなえたわし大臣だいじん
貝の火 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
兩側りやうがは大藪おほやぶがあるから、ぞくくらがりざかとなへるぐらゐたけそらとざして眞暗まつくらなかから、烏瓜からすうりはな一面いちめんに、しろほしのやうなはなびらいて、東雲しのゝめいろさつす。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「おや、どうしたんだろう。あたり一面いちめんまっ黒びろうどの夜だ」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
一面いちめんくさしげつて、曠野あらのつた場所ばしよで、何故なぜ一度いちど人家じんかにはだつたか、とおもはれたとふのに、ぬま眞中まんなかこしらへたやうな中島なかじまひとつたからです。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)