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一面
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いちめん
ふりがな文庫
“
一面
(
いちめん
)” の例文
紅葉
(
もみぢ
)
の
美
(
うつく
)
しさは、
植物
(
しよくぶつ
)
そのものゝ
種類
(
しゆるい
)
と、その
發生
(
はつせい
)
の
状態
(
じようたい
)
とでそれ/″\
異
(
ちが
)
ひますが、
一面
(
いちめん
)
には
附近
(
ふきん
)
の
景色
(
けしき
)
にも
左右
(
さゆう
)
されるものです。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
前刻
(
さつき
)
、
菅
(
すが
)
さんに
逢
(
あ
)
つた
時
(
とき
)
、
私
(
わたし
)
は
折
(
をり
)
しも
紅
(
あか
)
インキで
校正
(
かうせい
)
をして
居
(
ゐ
)
たが、
組版
(
くみはん
)
の
一面
(
いちめん
)
何行
(
なんぎやう
)
かに、ヴエスビヤス、
噴火山
(
ふんくわざん
)
の
文宇
(
もんじ
)
があつた。
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
小六
(
ころく
)
は
何
(
なん
)
にも
答
(
こた
)
へなかつた。
臺所
(
だいどころ
)
から
清
(
きよ
)
が
持
(
も
)
つて
來
(
き
)
た
含嗽茶碗
(
うがひぢやわん
)
を
受
(
う
)
け
取
(
と
)
つて、
戸袋
(
とぶくろ
)
の
前
(
まへ
)
へ
立
(
た
)
つて、
紙
(
かみ
)
が
一面
(
いちめん
)
に
濡
(
ぬ
)
れる
程
(
ほど
)
霧
(
きり
)
を
吹
(
ふ
)
いた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
今年
(
ことし
)
みたいに、
紅白
(
こうはく
)
の
花
(
はな
)
がたんと
咲
(
さ
)
いた
歳
(
とし
)
は
無
(
な
)
い。
野
(
の
)
は
一面
(
いちめん
)
に
眼
(
め
)
が
覚
(
さ
)
めるやうな
色
(
いろ
)
だ。どこへ
行
(
い
)
つても
垣根
(
かきね
)
の
上
(
うへ
)
に
主
(
しゆ
)
の
御血潮
(
おんちしほ
)
は
煌々
(
ぴかぴか
)
してゐる。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
空にはうすい雲がすっかりかかり、
太陽
(
たいよう
)
は白い
鏡
(
かがみ
)
のようになって、雲と
反対
(
はんたい
)
に
馳
(
は
)
せました。風が出て来て
刈
(
か
)
られない草は
一面
(
いちめん
)
に
波
(
なみ
)
を立てます。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
▼ もっと見る
ふと目を上げるとはるか右手のほうに、たくさんの
電灯
(
でんとう
)
が、まるで野原
一面
(
いちめん
)
にさきみだれた花のようにきれいにともっているのが見えました。
あたまでっかち
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
空
(
そら
)
の
色
(
いろ
)
は
一面
(
いちめん
)
に
鉛色
(
なまりいろ
)
に
重
(
おも
)
く、
暗
(
くら
)
く、
濁
(
にご
)
っていて、
地平線
(
ちへいせん
)
に
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
したようにものすごく
見
(
み
)
えます。
風
(
かぜ
)
は
叫
(
さけ
)
び
声
(
ごえ
)
をあげて
頭
(
あたま
)
の
上
(
うえ
)
を
鋭
(
するど
)
く
過
(
す
)
ぎていました。
黒い旗物語
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
先刻
(
せんこく
)
瀧
(
たき
)
のやうに
降注
(
ふりそゝ
)
いだ
雨水
(
あめみづ
)
は、
艇底
(
ていてい
)
に
一面
(
いちめん
)
に
溜
(
たま
)
つて
居
(
を
)
る、
隨分
(
ずいぶん
)
生温
(
なまぬる
)
い、
厭
(
いや
)
な
味
(
あぢ
)
だが、
其樣事
(
そんなこと
)
は云つて
居
(
を
)
られぬ。
兩手
(
りようて
)
に
掬
(
すく
)
つて、
牛
(
うし
)
のやうに
飮
(
の
)
んだ。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
入梅
(
つゆ
)
になッてからは
毎日
(
まいにち
)
の
雨降
(
あめふり
)
、
其
(
それ
)
が
辛
(
やつ
)
と
昨日
(
きのふ
)
霽
(
あが
)
ツて、庭
柘榴
(
ざくろ
)
の花に
今朝
(
けさ
)
は
珍
(
めづ
)
らしく
旭
(
あさひ
)
が
紅々
(
あか/\
)
と
映
(
さ
)
したと
思
(
おも
)
ツたも
束
(
つか
)
の
間
(
ま
)
、
午後
(
ごゝ
)
になると、また
灰色
(
はいいろ
)
の
雲
(
くも
)
が
空
(
そら
)
一面
(
いちめん
)
に
擴
(
ひろ
)
がり
虚弱
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
初
(
はじ
)
めは
夢
(
ゆめ
)
うつつでその
声
(
こえ
)
を
聞
(
き
)
いていましたが、ふと
気
(
き
)
がついて目をあけますと、もう
一面
(
いちめん
)
の
真
(
ま
)
っ
暗
(
くら
)
やみで、はるかな
空
(
そら
)
の上で、かすかに
星
(
ほし
)
が二つ三つ
光
(
ひか
)
っているだけでした。
殺生石
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
富士川の瀬を越す舟底の様に
床
(
ゆか
)
が
跳
(
おど
)
る。それに樫の直ぐ下まで
一面
(
いちめん
)
の
麦畑
(
むぎばたけ
)
である。武蔵野固有の
文言通
(
もんごんどお
)
り吹けば飛ぶ軽い土が、それ吹くと云えば直ぐ茶褐色の雲を立てゝ舞い込む。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
周圍の
萬物
(
ばんぶつ
)
皆
悉
(
こと/″\
)
く
一面
(
いちめん
)
の鏡にむかひて
エロディヤッド
(旧字旧仮名)
/
ステファヌ・マラルメ
(著)
暖波一面花三面
暖波
(
だんぱ
)
は
一面
(
いちめん
)
花
(
はな
)
は
三面
(
さんめん
)
矢はずぐさ
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
恐ろしき
一面
(
いちめん
)
の壁の
色
(
いろ
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
原
(
はら
)
一面
(
いちめん
)
に
雛菊
(
ひなぎく
)
や
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
何人
(
なんびと
)
が
何用
(
なによう
)
ありて
逢
(
あ
)
ひたしといふにや
親戚
(
しんせき
)
朋友
(
ほういう
)
の
間柄
(
あひだがら
)
にてさへ
面
(
おもて
)
背
(
そむ
)
ける
我
(
われ
)
に
對
(
たい
)
して
一面
(
いちめん
)
の
識
(
しき
)
なく
一語
(
いちご
)
の
交
(
まじ
)
はりなき
然
(
し
)
かも
婦人
(
ふじん
)
が
所用
(
しよよう
)
とは
何事
(
なにごと
)
逢
(
あひ
)
たしとは
何故
(
なにゆゑ
)
人違
(
ひとちが
)
ひと
思
(
おも
)
へば
譯
(
わけ
)
もなければ
彼處
(
かしこ
)
といひ
此處
(
こゝ
)
といひ
乘
(
の
)
り
廻
(
まは
)
りし
方角
(
はうがく
)
の
不審
(
いぶか
)
しさそれすら
事
(
こと
)
の
不思議
(
ふしぎ
)
なるに
頼
(
たの
)
みたきことあり
足
(
あし
)
を
別れ霜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
尤
(
もつと
)
も
元
(
もと
)
は
一面
(
いちめん
)
の
竹藪
(
たけやぶ
)
だつたとかで、それを
切
(
き
)
り
開
(
ひら
)
く
時
(
とき
)
に
根丈
(
ねだけ
)
は
掘
(
ほ
)
り
返
(
かへ
)
さずに
土堤
(
どて
)
の
中
(
なか
)
に
埋
(
うめ
)
て
置
(
お
)
いたから、
地
(
ぢ
)
は
存外
(
ぞんぐわい
)
緊
(
しま
)
つてゐますからねと
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
宵月
(
よいづき
)
の
頃
(
ころ
)
だつたのに
曇
(
くもつ
)
てたので、
星
(
ほし
)
も
見
(
み
)
えないで、
陰々
(
いんいん
)
として
一面
(
いちめん
)
にものゝ
色
(
いろ
)
が
灰
(
はい
)
のやうにうるんであつた、
蛙
(
かはづ
)
がしきりになく。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
(イ)
洪水
(
こうずい
)
の
豫防
(
よぼう
)
。
森林
(
しんりん
)
とは
山
(
やま
)
や
丘
(
をか
)
の
一面
(
いちめん
)
に、こんもり
木
(
き
)
が
生
(
は
)
え
茂
(
しげ
)
つて、
大
(
おほ
)
きな
深
(
ふか
)
い
林
(
はやし
)
となつてゐる
状態
(
じようたい
)
をいふのです。
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
向
(
むこ
)
うのぼんやり白いものは、かすかにうごいて返事もしませんでした。
却
(
かえ
)
って
注文
(
ちゅうもん
)
通
(
どお
)
りの電光が、そこら
一面
(
いちめん
)
ひる間のようにしてくれたのです。
ガドルフの百合
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それをどこまでもいくと、
広
(
ひろ
)
い
原
(
はら
)
っぱへでました。そこは
霞
(
かすみ
)
ガ
浦
(
うら
)
のふちで、
一面
(
いちめん
)
に
夏草
(
なつくさ
)
がはえしげっています。夏草には
夜露
(
よつゆ
)
がしっとりとおりています。
あたまでっかち
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
周章狼狽
(
あわてふためき
)
戸外
(
こぐわい
)
に
飛出
(
とびだ
)
して
見
(
み
)
ると、
今迄
(
いまゝで
)
は
北斗七星
(
ほくとしちせい
)
の
爛々
(
らん/\
)
と
輝
(
かゞや
)
いて
居
(
を
)
つた
空
(
そら
)
は、
一面
(
いちめん
)
に
墨
(
すみ
)
を
流
(
なが
)
せる
如
(
ごと
)
く、
限
(
かぎ
)
りなき
海洋
(
かいやう
)
の
表面
(
ひやうめん
)
は
怒濤
(
どたう
)
澎湃
(
ぼうはい
)
、
水煙
(
すいえん
)
天
(
てん
)
に
漲
(
みなぎ
)
つて
居
(
を
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
やっとお
社
(
やしろ
)
の
前
(
まえ
)
までたどり
着
(
つ
)
いてみますと、どうでしょう、そこらは
一面
(
いちめん
)
、
気味
(
きみ
)
の
悪
(
わる
)
いような
血
(
ち
)
の川で、そこにもここにも、かみ
倒
(
たお
)
された大きな
猿
(
さる
)
の
死骸
(
しがい
)
がごろごろしていました。
しっぺい太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
恐ろしき
一面
(
いちめん
)
の壁の
色
(
いろ
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
前
(
まへ
)
にいつたその
逗子
(
づし
)
の
時分
(
じぶん
)
は、
裏
(
うら
)
の
農家
(
のうか
)
のやぶを
出
(
で
)
ると、すぐ
田越川
(
たごえがは
)
の
流
(
なが
)
れの
續
(
つゞ
)
きで、
一本橋
(
いつぽんばし
)
を
渡
(
わた
)
る
所
(
ところ
)
は、たゞ
一面
(
いちめん
)
の
蘆原
(
あしはら
)
。
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
夏
(
なつ
)
になるとコスモスを
一面
(
いちめん
)
に
茂
(
しげ
)
らして、
夫婦
(
ふうふ
)
とも
毎朝
(
まいあさ
)
露
(
つゆ
)
の
深
(
ふか
)
い
景色
(
けしき
)
を
喜
(
よろこ
)
んだ
事
(
こと
)
もあるし、
又
(
また
)
塀
(
へい
)
の
下
(
した
)
へ
細
(
ほそ
)
い
竹
(
たけ
)
を
立
(
た
)
てゝ、それへ
朝顏
(
あさがほ
)
を
絡
(
から
)
ませた
事
(
こと
)
もある。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「やりますとも、おっと
沢山
(
たくさん
)
沢山。けれどもいくらこぼれたところでそこら
一面
(
いちめん
)
チュウリップ
酒
(
しゅ
)
の波だもの。」
チュウリップの幻術
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
は
此時
(
このとき
)
大佐
(
たいさ
)
の
許可
(
ゆるし
)
を
得
(
え
)
て、
次
(
つぎ
)
の
室
(
へや
)
から
一面
(
いちめん
)
の
製圖
(
せいづ
)
を
携
(
たづさ
)
へて
來
(
き
)
て、
卓上
(
たくじやう
)
に
押廣
(
おしひろ
)
げ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
ですから
地球
(
ちきゆう
)
が、かりに
山
(
やま
)
がなくて
一面
(
いちめん
)
の
平地
(
へいち
)
であつたならば、それらの
緑
(
みどり
)
の
地帶
(
ちたい
)
は、
赤道
(
せきどう
)
を
中心
(
ちゆうしん
)
にこれに
並行
(
へいこう
)
して、
北
(
きた
)
と
南
(
みなみ
)
とへ
美
(
うつく
)
しい
環
(
わ
)
をえがいて、
地球
(
ちきゆう
)
を
取
(
と
)
り
卷
(
ま
)
いてゐるはずですが
森林と樹木と動物
(旧字旧仮名)
/
本多静六
(著)
帰
(
かえ
)
って
来
(
く
)
ると、みんなは
待
(
ま
)
ちかまえていて、
綱
(
つな
)
をとりまきました。そして
明
(
あ
)
かりの下へ
集
(
あつ
)
まって
鬼
(
おに
)
の
腕
(
うで
)
をみました。
腕
(
うで
)
は
赤
(
あか
)
さびのした
鉄
(
てつ
)
のように
堅
(
かた
)
くって、
銀
(
ぎん
)
のような
毛
(
け
)
が
一面
(
いちめん
)
にはえていました。
羅生門
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
恐ろしき
一面
(
いちめん
)
の壁の
色
(
いろ
)
。
邪宗門
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
覗
(
のぞ
)
くと、
山
(
やま
)
の
根
(
ね
)
を
境
(
さかひ
)
にした
廣々
(
ひろ/″\
)
とした
庭
(
には
)
らしいのが、
一面
(
いちめん
)
の
雜草
(
ざつさう
)
で、
遠
(
とほ
)
くに
小
(
ちひ
)
さく、
壞
(
こは
)
れた
四阿
(
あづまや
)
らしいものの
屋根
(
やね
)
が
見
(
み
)
える。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
女は黙って
向
(
むこう
)
をむく。
川縁
(
かわべり
)
はいつか、水とすれすれに低く着いて、見渡す田のもは、
一面
(
いちめん
)
のげんげんで
埋
(
うずま
)
っている。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
何の
返事
(
へんじ
)
も聞えません。
黒板
(
こくばん
)
から
降
(
ふ
)
る
白墨
(
はくぼく
)
の
粉
(
こな
)
のような、
暗
(
くら
)
い
冷
(
つめ
)
たい
霧
(
きり
)
の
粒
(
つぶ
)
が、そこら
一面
(
いちめん
)
踊
(
おど
)
りまわり、あたりが俄にシインとして、
陰気
(
いんき
)
に陰気になりました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
銀の光が
一面
(
いちめん
)
に
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
若草
(
わかくさ
)
ながら
廣野
(
ひろの
)
一面
(
いちめん
)
渺茫
(
べうばう
)
として
果
(
はて
)
しなく、
霞
(
かすみ
)
を
分
(
わ
)
けてしろ/″\と
天中
(
そら
)
の
月
(
つき
)
はさし
上
(
のぼ
)
つたが、
葉末
(
はずゑ
)
に
吹
(
ふ
)
かるゝ
我
(
われ
)
ばかり、
狐
(
きつね
)
の
提灯
(
ちやうちん
)
も
見
(
み
)
えないで
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
駅
(
えき
)
のどの家ももう戸を
閉
(
し
)
めてしまって、
一面
(
いちめん
)
の星の下に、
棟々
(
むねむね
)
が黒く
列
(
なら
)
びました。その時童子はふと水の
流
(
なが
)
れる音を聞かれました。そしてしばらく考えてから
雁の童子
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
練兵場の
横
(
よこ
)
を通るとき、
重
(
おも
)
い
雲
(
くも
)
が西で切れて、
梅雨
(
つゆ
)
には
珍
(
めづ
)
らしい
夕
(
せき
)
陽が、
真赤
(
まつか
)
になつて
広
(
ひろ
)
い
原
(
はら
)
一面
(
いちめん
)
を
照
(
て
)
らしてゐた。それが
向
(
むかふ
)
を
行
(
ゆ
)
く
車
(
くるま
)
の
輪
(
わ
)
に
中
(
あた
)
つて、
輪
(
わ
)
が
回
(
まは
)
る
度
(
たび
)
に
鋼鉄
(
はがね
)
の如く
光
(
ひか
)
つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
徐大盡
(
じよだいじん
)
眞前
(
まつさき
)
に、ぞろ/\と
入
(
はひ
)
ると、
目
(
め
)
も
眩
(
くら
)
むやうな
一面
(
いちめん
)
の
櫨
(
はじ
)
の
緋葉
(
もみぢ
)
、
火
(
ひ
)
の
燃
(
もゆ
)
るが
如
(
ごと
)
き
中
(
なか
)
に、
紺青
(
こんじやう
)
の
水
(
みづ
)
あつて、
鴛鴦
(
をしどり
)
がする/\と
白銀
(
しろがね
)
を
流
(
なが
)
して
浮
(
うか
)
ぶ。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
知らない
草穂
(
くさほ
)
が
静
(
しず
)
かにゆらぎ、少し強い風が来る時は、どこかで何かが
合図
(
あいず
)
をしてでもいるように、
一面
(
いちめん
)
の草が、それ来たっとみなからだを
伏
(
ふ
)
せて
避
(
さ
)
けました。
種山ヶ原
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
彼は
生
(
せい
)
の慾望と死の圧迫の間に、わが身を想像して、
未練
(
みれん
)
に両方に往つたり
来
(
き
)
たりする苦悶を心に
描
(
ゑが
)
き出しながら
凝
(
じつ
)
と
坐
(
すは
)
つてゐると、
脊中
(
せなか
)
一面
(
いちめん
)
の
皮
(
かは
)
が
毛穴
(
けあな
)
ごとにむづ/\して
殆
(
ほと
)
んど
堪
(
たま
)
らなくなる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
さて
足駄
(
あしだ
)
を
引摺
(
ひきず
)
つて、つい、
四角
(
よつかど
)
へ
出
(
で
)
て
見
(
み
)
ると、
南寄
(
みなみより
)
の
方
(
はう
)
の
空
(
そら
)
に
濃
(
こ
)
い
集團
(
しふだん
)
が
控
(
ひか
)
へて、
近
(
ちか
)
づくほど
幅
(
はゞ
)
を
擴
(
ひろ
)
げて、
一面
(
いちめん
)
に
群
(
むらが
)
りつゝ、
北
(
きた
)
の
方
(
かた
)
へ
伸
(
の
)
すのである。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
そうかと思うと水色の
焔
(
ほのお
)
が玉の
全体
(
ぜんたい
)
をパッと
占領
(
せんりょう
)
して、
今度
(
こんど
)
はひなげしの花や、黄色のチュウリップ、
薔薇
(
ばら
)
やほたるかずらなどが、
一面
(
いちめん
)
風にゆらいだりしているように見えるのです。
貝の火
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
見
(
み
)
ると……
見渡
(
みわた
)
すと……
東南
(
とうなん
)
に、
芝
(
しば
)
、
品川
(
しながは
)
あたりと
思
(
おも
)
ふあたりから、
北
(
きた
)
に
千住
(
せんぢう
)
淺草
(
あさくさ
)
と
思
(
おも
)
ふあたりまで、
此
(
こ
)
の
大都
(
だいと
)
の
三面
(
さんめん
)
を
弧
(
こ
)
に
包
(
つゝ
)
んで、
一面
(
いちめん
)
の
火
(
ひ
)
の
天
(
てん
)
である。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
いつか
霧
(
きり
)
がすうっとうすくなって、お日さまの光が
黄金色
(
きんいろ
)
に
透
(
すきとお
)
ってきました。やがて風が
霧
(
きり
)
をふっと
払
(
はら
)
いましたので、
露
(
つゆ
)
はきらきら光り、きつねのしっぽのような茶色の
草穂
(
くさぼ
)
は
一面
(
いちめん
)
波
(
なみ
)
を立てました。
虹の絵の具皿:(十力の金剛石)
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
此
(
こ
)
の
樣子
(
やうす
)
では、
其處
(
そこ
)
まで
一面
(
いちめん
)
の
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
だ。
何處
(
どこ
)
を
志
(
こゝろざ
)
して
行
(
ゆ
)
くのであらう。
餘
(
あま
)
りの
事
(
こと
)
に、また
一度
(
いちど
)
外
(
そと
)
へ
出
(
で
)
た。
一時
(
いちじ
)
を
過
(
す
)
ぎた。
爾時
(
そのとき
)
は
最
(
も
)
う
一
(
ひと
)
つも
見
(
み
)
えなかつた。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
その
晩
(
ばん
)
の
夢
(
ゆめ
)
の
奇麗
(
きれい
)
なことは、黄や
緑
(
みどり
)
の火が空で
燃
(
も
)
えたり、
野原
(
のはら
)
が
一面
(
いちめん
)
黄金
(
きん
)
の草に
変
(
かわ
)
ったり、たくさんの小さな風車が
蜂
(
はち
)
のようにかすかにうなって空中を
飛
(
と
)
んであるいたり、
仁義
(
じんぎ
)
をそなえた
鷲
(
わし
)
の
大臣
(
だいじん
)
が
貝の火
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
兩側
(
りやうがは
)
に
大藪
(
おほやぶ
)
があるから、
俗
(
ぞく
)
に
暗
(
くら
)
がり
坂
(
ざか
)
と
稱
(
とな
)
へる
位
(
ぐらゐ
)
、
竹
(
たけ
)
の
葉
(
は
)
の
空
(
そら
)
を
鎖
(
とざ
)
して
眞暗
(
まつくら
)
な
中
(
なか
)
から、
烏瓜
(
からすうり
)
の
花
(
はな
)
が
一面
(
いちめん
)
に、
白
(
しろ
)
い
星
(
ほし
)
のやうな
瓣
(
はなびら
)
を
吐
(
は
)
いて、
東雲
(
しのゝめ
)
の
色
(
いろ
)
が
颯
(
さつ
)
と
射
(
さ
)
す。
山の手小景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「おや、どうしたんだろう。あたり
一面
(
いちめん
)
まっ黒びろうどの夜だ」
シグナルとシグナレス
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
一面
(
いちめん
)
に
草
(
くさ
)
が
茂
(
しげ
)
つて、
曠野
(
あらの
)
と
云
(
い
)
つた
場所
(
ばしよ
)
で、
何故
(
なぜ
)
に
一度
(
いちど
)
は
人家
(
じんか
)
の
庭
(
には
)
だつたか、と
思
(
おも
)
はれたと
云
(
い
)
ふのに、
其
(
そ
)
の
沼
(
ぬま
)
の
眞中
(
まんなか
)
に
拵
(
こしら
)
へたやうな
中島
(
なかじま
)
の
洲
(
す
)
が
一
(
ひと
)
つ
有
(
あ
)
つたからです。
人魚の祠
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
“一面”の意味
《名詞》
物事の一つの側面。局面。
広い範囲の全体。
新聞の最初のページ。
別の見方。反面。副詞的、接続詞的、接続助詞的にも用いる。
(出典:Wiktionary)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
面
常用漢字
小3
部首:⾯
9画
“一面”で始まる語句
一面識
一面物