いろ)” の例文
そして、コップのなかにはいった、みどりあおあか、いろいろのさけいろに、ぼんやりとれていますと、うとうとと居眠いねむりをしたのでした。
銀のつえ (新字新仮名) / 小川未明(著)
いろひ、またゆき越路こしぢゆきほどに、られたとまを意味いみではないので——これ後言くりごとであつたのです。……不具かたはだとふのです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのころ良人おっとはまだわこうございました。たしか二十五さい横縦よこたてそろった、筋骨きんこつたくまましい大柄おおがら男子おとこで、いろあましろほうではありません。
ぶときはそのはねじつうつくしいいろひらめきます。このとりはね綺麗きれいですが、ごゑうつくしく、「ぶっ、ぽう、そう」ときつゞけます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
紫ははとの胸毛の如くに美しくもいろめたるもの、また緑は流るる水の緑なるが如く、藍は藍めの布の裏地を見る心地ここちにもたとへんか。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
しばらく黙然もくねんとして三千代の顔を見てゐるうちに、女のほゝからいろが次第に退しりぞいてつて、普通よりはに付く程蒼白あをしろくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御主おんあるじ耶蘇様イエスさま百合ゆりのやうにおしろかつたが、御血おんちいろ真紅しんくである。はて、何故なぜだらう。わからない。きつとなにかの巻物まきものいてあるはずだ。
李克りこくいはく、『たんにしていろこのむ。しかれどもへいもちふるは、司馬穰苴しばじやうしよぐるあたはざるなり』と。ここおい文矦ぶんこうもつしやうす。
められてもうれしくはないぞ。玄竹げんちく、それよりなに面白おもしろはなしでもせんか。』と、但馬守たじまのかみかほには、どうもらぬいろがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
シューラはおいおいいた。あたりのものがばらいろもやつつまれて、ふわふわうごした。ものくるおしい屈辱感くつじょくかんに気がとおくなったのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
なんというよいはなだろう。しろべんがふかぶかとかさなりあい、べんのかげがべつのべんにうつって、ちょっとクリームいろえる。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
やまがたといひして、土地とち樣子ようすからその性質せいしつべて、そこに青々あを/\した野菜やさいいろを、印象深いんしようぶかくつかんで、しめしてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いちごいろ薔薇ばらの花、可笑をかしな罪の恥と赤面せきめんいちごの色の薔薇ばらの花、おまへの上衣うはぎを、ひとがみくちやにした、僞善ぎぜんの花よ、無言むごんの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
いろよい返事へんじしたためたおせんのふみを、せろせないのいさかいに、しばしこころみだしていたが、このうえあらそいは無駄むださっしたのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
重治は、いつかやまいも忘れたように、耳朶じだをほの紅くしながら、秀吉のために説き来り説き去って、ほとんどいろも見えなかった。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しよめしなぞべると、かれはいつでもこゝろ空虚くうきようつたへるやうな調子てうしでありながら、さうつてさびしいかほ興奮こうふんいろうかべてゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
おんなにもしてみたいほどのいろしろで、やさしいまゆ、すこしひらいたくちびるみじかいうぶのままのかみ子供こどもらしいおでこ——すべてあいらしかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
やゝしばらくすると大きな無花果の少年こどもほゝの上にちた。るからしてすみれいろつやゝかにみつのやうなかほりがして如何いかにも甘味うまさうである。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
また心き事はべりき、その大臣の娘おわしき、いろかたちめでたく世に双人ならぶひとなかりき、鑑真がんじん和尚の、この人千人の男に逢ひ給ふ相おわすとのたまはせしを
奥村氏の家は青銅いろに塗られしものにて、突出つきだされたる楼上ろうじやう八方はつぱうは支那すだれに囲はれ、一けんけんそれの掲げられたるより
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
花前はいろも動きはしない。もとより一ごんものをいうのでない。主人しゅじん細君さいくんとはなんらの交渉こうしょうもないふうで、つぎの黒白まだらの牛にかかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
私はくさの中へこしを降ろすと煙草たばこを取り出した。つまも私のよこすわつて落ちついたらしく、くれて行く空のいろながめてゐた。——
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
畢竟ひつきやうにんいろで、けつして一りつにはかぬものでしよく本義ほんぎとか理想りそうとかをいてところ實際問題じつさいもんだいとしてはあまやくたぬ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
美しくえがかれた梅や牡丹ぼたんや菊や紅葉もみじの花ガルタは、その晩から一雄の六いろの色鉛筆で惜しげもなくいろどられてしまいました。
祖母 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
だれ自分じぶんところたのではいか、自分じぶんたづねてゐるのではいかとおもつて、かほにはふべからざる不安ふあんいろあらはれる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
喜怒色に顕わさず或時あるとき私が何か漢書を読む中に、喜怨いろあらわさずと云う一句をよんで、その時にハット思うておおいに自分で安心決定あんしんけつじょうしたことがある。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
あの嫉妬家やきもちやき奉公ほうこうするのはよしゃれ。彼奴あいつ制服しきせ青白あをじろ可嫌いやいろぢゃゆゑ、阿呆あはうほかれもぬ、いでしまや。……おゝ、ありゃひめぢゃ。
栄玄は来て饗を受けたが、いろ悦ばざるものの如く、遂に「客にこんな馳走ちそうをすることは、わたしのうちではない」といった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
加之いろなら圖柄づがらなら、ただあつたかく見せる側の繪といふことがわかるだけで、何處に新機軸しんきじゆくを出したといふ點が無い。周三の覗ツたまとはすツかりはづれた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
されど世にあらせ給ふほどは孝信かうしんをまもりて、六〇ゆめいろにも出さざりしを、かくれさせ給ひてはいつまでありなんと、たけきこころざしをおこせしなり。
これによつても、この時分じぶんからすでにいろがらすがつくられたことがよくわかりますが、無色透明むしよくとうめいいたがらすはまだ世界中せかいじゆうどこにもありませんでした。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
それにしてもどういう風に三十六品の献立をしましょうか、それがなかなか大変です。エート、やっぱり支那料理にならって四いろずつとしましょうか。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
吾等われらまへつて、武村兵曹たけむらへいそうわたくしとのかほながめたが、左迄さまでおどろいろがない、目禮もくれいをもつてかたはら倚子ゐすこしけ、鼻髯びぜんひねつてしづかに此方こなた向直むきなをつた。
それは下町したまち相場さうばとてをりかへしてるはなかりき、さるほどにこのほどのあさまだき四十しじふちかかるべき年輩としごろをとこ紡績織ばうせきおり浴衣ゆかたすこいろのさめたるを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等かれらみな、この曇天どんてんしすくめられたかとおもほどそろつてせいひくかつた。さうしてまたこのまちはづれの陰慘いんさんたる風物ふうぶつおなじやうないろ著物きものてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
嬋娟哥妓うつくしきげいしや袖をつらね、素手そしゆ弄糸いとをろうし朱唇しゆしん謡曲きよくをうたふ迦陵頻伽かりやうびんがこゑ外面如𦬇げめんによぼさついろきやうそゆれば、地獄谷ぢごくだに遽然たちまち極楽世界ごくらくせかいとなれり。
案じぬとは人非人とも無義道むぎだうともたとへがたき者なりと心の内には思へ共いろにも出さず只一しんかせぎけれど燒石やけいしへ水のたとへの如くなればやせんかくやとひとり心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それじきは、いろし、ちからをつけ、いのちぶ。ころもは、さむさをふせぎ、あつさえ、はぢをかくす。人にものをする人は、人のいろをまし、ちからをそへ、いのちぐなり。
耳剽じひょう口衒こうげんし、いろいつわことばいんにし、聖賢にあらずして、しかも自立し、果敢かかん大言して、以て人に高ぶり、而して理の是非を顧みず、これを名を務むるのという。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
彼女かのぢよはレースいと編物あみものなかいろめたをつと寫眞しやしんながめた。あたかもそのくちびるが、感謝かんしやいたはりの言葉ことばによつてひらかれるのをまもるやうに、彼女かのぢよこゝろをごつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
しわのよった小さな顔は赤みがかって、人のよさそうなあおいろのさめかけた瑠璃草るりそうのような色合いろあいだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
見ると、新いろでも出來たか。——人の戀路を邪魔する氣はねえが、お前のお膝もとの土手に陣を敷いてるのは止せよ。鼻を取拂はれたひにや、好い男の恰好が付かねえ
〔評〕十年のえき、私學校の彈藥製造所だんやくせいざうじよかすむ。南洲時に兎を大隈おほすみ山中にふ。之を聞いてにはかいろへて曰ふ、しまつたと。爾後じご肥後日向に轉戰して、神色夷然いぜんたり。
並木のように立ち並んでいる浅緑のいろあざやかな落葉松の木立を、東沢の深い谷間に瞰下みおろして、まだ探らなければならない境地の秘められているのを知って喜んだのであった。
思い出す儘に (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
世のはて何處いづことも知らざれば、き人のしるしにも萬代よろづよかけし小松殿内府の墳墓ふんぼ、見上ぐるばかりの石の面に彫り刻みたる淨蓮大禪門の五字、金泥きんでいいろあらひし如く猶ほあざやかなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
竹敷たかしきのうへかたやまくれなゐ八入やしほいろになりにけるかも 〔巻十五・三七〇三〕 新羅使(大蔵麿)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
源氏の再版のいはひだと云つて煙草たばこを十二いろ交ぜて持つて来てくれた。嬉しくてならなく思つた。
六日間:(日記) (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
かつとよこかけひかりすごくもいろやゝやはらげて天鵞絨びろうどのやうななめらかなかんじをあたへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
えたのぢやアありアしない、当然あたりまへな話だよ。亭「其様そんないろんな事をつちやアそばから忘れちまあア。妻「お赤飯せきはん有難ありがたぞんじますつて、一ばんしまひ女房にようばうよろしくとふんだよ。 ...
八百屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのお葉という女は小娘のときからいろぱやい奴で、十六の春から千住の煙草屋に奉公しているうちに、そこの甥の元吉と出来合ったことが知れて、その年のくれに暇を出され
半七捕物帳:36 冬の金魚 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)