にく)” の例文
そうすればきもは、あのたび薬屋くすりやたかれるし、にくは、むらじゅうのものでたべられるし、かわかわで、おかねにすることができるのだ。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かへるにくべにはちをくはへてはうんできますが、そのちひさなかへるにくについたかみきれ行衛ゆくゑ見定みさだめるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そしてだんだん十字架じゅうじかまど正面しょうめんになり、あの苹果りんごにくのような青じろいの雲も、ゆるやかにゆるやかにめぐっているのが見えました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
けつして安泰あんたいではない。まさつめぎ、しぼり、にくむしほねけづるやうな大苦艱だいくかんけてる、さかさまられてる。…………………
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
酒呑童子しゅてんどうじ頼光らいこうたちがわるびれもしないで、のおさけでも、にくのおさかなでも、けてくれたので、るから上機嫌じょうきげんになって
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
上當年五十三歳に相成候と云たるてい顏色がんしよくことほか痩衰やせおとろにくおちほねあらはれこゑ皺枯しわがれて高くあげず何樣數日手強てづよき拷問に掛りし樣子なり大岡殿此體このてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
で、武田伊那丸たけだいなまるは、いやがうえにも、希望きぼうをもった。武者むしゃぶるいとでもいうような、全霊ぜんれいの血とにくとのおどりたつのがじぶんでもわかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
貝塚の貝殼層中には鳥骨てうこつ有り獸骨じうこつ有り、コロボックルが鳥獸のにくしよくとせし事は明かなるが、如何なる方法を以て是等を捕獲ほくわくせしならんか。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
初鮏は光り銀のごとくにしてすこしあをみあり、にくの色べにをぬりたるがごとし。仲冬の頃にいたればまだらさびいで、にくくれなうすし。あぢもやゝおとれり。
其時そのとき宗助そうすけこれはならんとおもつた。けれどもはたして刄物はものもちひて、かたにくいていものやら、わるいものやら、けつしかねた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いさ、おれもそりや何方どつちだツていさ。雖然けれどもこれだけは自白じはくして置く。俺はお前のにく吟味ぎんみしたが、心は吟味ぎんみしなかツた。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「よくまあ、ほねおしみをせずにふとったもんだ。もうずいぶんまえから、にくにされるのをっていたんだな。」
一片いつぺんのパンも一塊いつくわいにくもなきこのみじめな艇中ていちう見廻みまわして、ふたゝわたくしかほながめた姿すがたは、不憫ふびんともなんともはれなかつた。
それで狩獵しゆりようでとつてけだものにくは、つぼなか鹽漬しほづけとして保存ほぞんされるし、みづやその流動物りゆうどうぶつかめれて、自由じゆうはこぶことも出來できるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
このおれがあいつらのにくを食うことができないんなら、せめてあいつらがくたばってしまえばいい。キツネはこう思うほど、むちゅうになってきました。
わたしの父親がこの話をしているあいだに、かれらは晩餐ばんさん食卓しょくたくをこしらえた。にくの大きな一節ひとふしにばれいしょをそえたものが、食卓のまん中にかれた。
また小食の人も健啖家けんたんかも、にくを注文すれば同じ分量をさずけられる。ほとんど個性を無視しておとこぴき食物しょくもつ何合なんごう、衣類は何尺なんじゃくと、一人前なる分量が定まっている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かはやぶれ、にくたゞれて、膿汁うみしるのやうなものが、どろ/\してゐた。内臟ないざうはまるで松魚かつを酒盜しほからごとく、まはされて、ぽかんといた脇腹わきばら創口きずぐちからながしてゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
醫者いしやうちからは注射器ちうしやきわたしてくれた。ほか病家びやうか醫者いしや夕刻ゆふこくた。醫者いしやはおしな大腿部だいたいぶしめしたガーゼでぬぐつてぎつとにくつまげてはりをぷつりとした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
食物たべものもとめてにくけたがよい。……(行きかけて藥瓶を見て)どくではない興奮劑きつけぐすりよ、さア一しょに、ヂュリエットのはかい、あそこでそち使つかはにゃならぬ。
アイヌ人は、そんな縁故えんこから、くまのにくを、よく、わたしの家へ持ってきてくれたものでした。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ふねよりふねわたりて、其祝意そのしゆくいをうけらるゝは、当時そのかみ源廷尉げんていゐ宛然えんぜんなり、にくうごきて横川氏よこかわしとも千島ちしまかばやとまでくるひたり、ふね大尉たいゐ萬歳ばんざい歓呼くわんこのうちにいかりげて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
服装ふくそうをすっかりととのえおわり、からだがあたたまってくると、こんどは地下室ちかしつ食堂しょくどうにおりていって、そこに残っていたにくやパンやチーズを、いやというほどつめこんだんだ。
晏平仲嬰あんぺいちうえいは、(三六)らい夷維いゐひとなりせい靈公れいこう莊公さうこう景公けいこうつかへ、節儉力行せつけんりよくかうもつせいおもんぜらる。すでせいしやうとして、(三七)しよくにくかさねず、せふ(三八)きぬず。
いはばわたしにとつてはじつこうてき手だつたのだが、先生今や東北青ぜう下につて久しくあひ見ゆるない。時々おもひ出すと、わたしには脾にくたんへないものがあるのである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
すべての文学者ぶんがくしや消費せうひする筆墨料ひつぼくれう徴収ちようしうすれば慈善じぜん病院びやうゐん三ツ四ツをつくる事けつしてかたきにあらず、すべての文学者ぶんがくしや喰潰くひつぶこめにく蓄積ちくせきすれば百度ひやくたび饑饉ききんきたるともさらおそるゝにらざるべく
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
此手紙以外このてがみいぐわいに、をんなにくには、如何どん秘密ひみつあとつけられてあるか、それは一さいわからぬ。こゝろおくに、如何どんこひふうめてあるか、それもとよりわからぬ。わたし想像さうぞう可恐おそろしくするどくなつてた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
遠くへ旅行する時にはサンドウィッチの外に食品屋からポテットミートと申してくだにくの料理した極く小さい鑵詰を買って途中でそれをパンへ塗って即席のサンドウィッチを作ります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
いたいも、かゆいも、口惜くやしいも、かなしいも、それはたましいがまだしっかりとからだ内部なかっているときのこと、臨終りんじゅうちかづいて、たましいにくのおみやたり、はいったり、うろうろするようになりましては
おそれあたりて、わがにくあらたなるべし。」みんなあとから、かみあかい、血色けつしよく一人ひとりとほる。こいつにけていたのだから、きふ飛付とびついてやつた。この気味きみわるで、そのくちおさへた。
山岳さんがく溪流けいりゆうにはあまりにふれませんが、やはり特有とくゆううをがゐます。いはな、やまめ、うぐひ、あゆなどはそのなかおもうをで、高山こうざんみづきよみきつてるように、そのにくも、くさみがなく、あぢがいゝ。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
それは新宿で、床屋の亭主が、弟と密通した妻と弟とを剃刀かみそりで殺害した事を、彼女は何処どこからか聞いたのである。「余りだと思います」と彼女は剃刀の刃をにくにうけたかの様に切ない声で云った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
すべりよく、白く、つめたきにくづきを、ぎんのうぶ毛を。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
へう外皮かはやら、にくやら、肉汁スープ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
にくをやつても いイや いや
人のにくえびすのように。
くちにはへどむづかしかるべしとは十指じつしのさすところあはれや一日ひとひばかりのほどせもせたり片靨かたゑくぼあいらしかりしほうにくいたくちてしろきおもてはいとゞとほほどりかかる幾筋いくすぢ黒髪くろかみみどりもとみどりながらあぶらけもなきいた/\しさよわれならぬひとるとてもたれかは
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのばん伯父をぢさんも友伯父ともをぢさんもばれてきましたが、『押飯おうはん』とつてとりにくのおつゆあぢをつけた御飯ごはん御馳走ごちさうがありましたつけ。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
みぎひだりうで釣合つりあひわるかつたんべい。ほつぺたのにくが、どつちかちがへば、かたがりべいと不具かたわぢや、それではうつくしいをんなでねえだよ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と女はいって、うしうま生々なまなましいにくってしてやりますと、おにはふうふういいながら、のこらずがつがつしてべたあと
人馬 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「これは、くじらにくだな。そうだ、南極なんきょくからきた冷凍肉れいとうにくだ。人間にんげんとおなじく、あかちゃんをかわいがる哺乳動物ほにゅうどうぶつにくなんだ。」
太陽と星の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
日出雄ひでをさん、あんまりやるとそんじますよ。』と氣遣きづかひがほわたくしさへ、その生臭なまくさにく口中こうちう充滿いつぱい頬張ほうばつてつたのである。
月目つきめぎると、杜松ねずかたく、にくづいてましたが、おんなはただじっとしてました。七つきになると、おんな杜松ねずおとして、しきりにべました。
おもふに此山なかばより上は岩をほねとしてにくつちうす地脉ちみやく気をつうじて破隙われめをなすにや、天地妙々の奇工きこう思量はかりしるべからず。
「きさまたちは、羊のにくってふとりすぎたな。やい、キツネめ。ガチョウさえつかまえられないじゃないか。」
こりはしですよ。蒙古人もうこじん始終しじゆうこれこしへぶらげてゐて、いざ御馳走ごちそうといふだんになると、このかたないてにくつて、さうしてこのはしそばからうんださうです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのするどい金輪かなわの火が一つコツンと頭にふれたらさいご、にくほねも持ってゆかれるのはうけあいである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのつど友人の心事や性格を疑うごときは不見識のはなはだしきものなれば、つねづね、なにものにもおもてうらと、そとうちと、かわにくとの別あるを心得ておきたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かれ例年いつになく身體からだやつれがえた。かさ/\と乾燥かんさうした肌膚はだへが一ぱん老衰者らうすゐしや通有つういうあはれさをせてるばかりでなく、そのおほきな身體からだにくおちてげつそりとかたがこけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
けだものかはにくとのあひだにある脂肪あぶらをごし/\とかきつて、かはいでくのです。(第四十圖だいしじゆうず
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)