こゑ)” の例文
新字:
よる大分だいぶんけてゐた。「遼陽城頭れうやうじやうとうけて‥‥」と、さつきまで先登せんとうの一大隊だいたいはうきこえてゐた軍歌ぐんかこゑももう途絶とだえてしまつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
可愛かはいさうに景氣けいきのよいこゑ肺臟はいざうからこゑいたのは十ねんぶりのやうながして、自分じぶんおもはず立上たちあがつた。れば友人いうじんM君エムくんである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『なあに、柳川君やながはくんには片附かたづけるやうな荷物にもつもないのさ。』と濱島はまじまこゑたかわらつて『さあ。』とすゝめた倚子ゐすによつて、わたくしこの仲間なかまいり
這麼老朽こんならうきうからだんでも時分じぶんだ、とさうおもふと、たちままたなんやらこゝろそここゑがする、氣遣きづかふな、こといとつてるやうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼女かのぢよ小使部屋こづかひべやまへとほりかゝつたときおほきな炭火すみびめうあかえる薄暗うすくらなかから、子供こどもをおぶつた内儀かみさんがあわてゝこゑをかけた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
なんゆゑともらねども正太しようたあきれてひすがりそでとゞめてはあやしがるに、美登利みどりかほのみ打赤うちあかめて、なんでもい、とこゑ理由わけあり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
このうちつぶせ!』とうさぎこゑあいちやんはせい一ぱいおほきなこゑで、『其麽そんなことをすればたまちやんを使嗾けしかけるからいわ!』とさけびました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
あみつたたか竹竿たけざをには鳥籠とりかごかゝつてました。そのなかにはをとりつてありまして、小鳥ことりむれそらとほたびこゑびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あさになるとかさずとほ納豆賣なつとううりこゑが、かはらとざしもいろ連想れんさうせしめた。宗助そうすけとこなかそのこゑきながら、またふゆたとおもした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
段々だん/″\れて來るに從ツて、お房は周三に種々な話を仕掛しかけるやうになツた。而ると其のこゑがまた、周三の心に淡いもやをかけた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
得て早速さつそく阿漕あこぎうらへ到り見ればあんたがはずあみおろす者あり與力こゑをかけ何者なれば禁斷きんだんの場所に於て殺生せつしやういたすや召捕めしとるべしと聲を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
原稿げんかうく、もちよくふではこぶので夢中むちうになつた、その夢中むちうましたこゑねこである、あら座蒲團ざぶとんすはつて、すましてゐる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
さもなかったなら、木魂姫こだまひめてゐるその洞穴ほらあなくるほどに、また、あのひめうつろこゑわしこゑよりもしゃがるゝほどに、ロミオ/\とばうものを。
そのさへづこゑあつらうとしてたがひ身體からだえ飛び越えてるので小勢こぜい雲雀ひばりはすつとおりてむぎすゝきひそんでしまふ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
わたしばうやはね、ひづめが二つにれてゐて、毛色けいろはぶちでつぽもちやんとついてゐて、わたしぶときは、もう/\つて可愛かあいこゑびますよ。」
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
そのあをざめたかほうへには、たけまじつたすぎむらのそらから、西日にしびひとすぢちてゐるのです。わたしはこゑみながら、死骸しがいなはてました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一門の人々、思顧のさむらひは言ふも更なり、都も鄙もおしなべて、いたしまざるはなく、町家は商を休み、農夫は業を廢して哀號あいがうこゑ到る處にちぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
『もツとそばつて、ほんたうに檢死けんしをなさらんと、玄竹げんちく檢案書けんあんしよしたゝめませんぞ。』と、玄竹げんちくおほきなこゑした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
吉野川よしのがはそばにある象山きさやまやまのま、すなはちそらせつしてゐるところのこずゑ見上みあげると、そこには、ひどくたくさんあつまつていてゐるとりこゑ、それがきこえる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「まあなんにも出來できないの。ほんとにあんたはうぐひすのやうなこゑもないし、孔雀くじやくのやうなうつくしいはねももたないんだね」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
まちは、なみだうかんでると、そつとひとみぢた。そして、いつまでもじつとしてゐた。はじめは、兄妹きやうだいたちのこゑとなりしつからきこえてた。そして彼女かれかなしかつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
つひ隊長たいちやうにんりてもつとなへ、其次そのつぎもつ隊長たいちやうす。ここおいこれす。婦人ふじん(九)左右前後跪起さいうぜんごききみな(一〇)規矩繩墨きくじようぼくあたり、あへこゑいだすものし。
これを見送みおくつておきな夫婦ふうふはまたひとしきりこゑをあげてきましたが、なんのかひもありませんでした。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
其時そのときは、俵形たはらがた土器どき兩手りやうてつて、眞先まつさきにあなから飛出とびだすと、高等野次馬かうとうやじうまこゑそろへて。
じひしんちょう(慈悲心鳥じひしんちよう)のこゑ山中さんちゆうでなければかれません。これは灰黒色かいこくしよくむねはら淡赤茶色うすあかちやいろで、おなじその部分ぶぶんしろいほとゝぎすやかっこうと區別くべつすることが出來できます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
荒野あれのの吐息まじり、夕されば風そよ高木かうぼくゆるぎも加はるそのこゑよりも繁きは
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
胸に縮めて寒げにかぢけ行くのみなくこゑはなし涙は雨に洗はれしなるべし此の母の心は如何ならん夫は死せしかやみて破屋の中に臥すかいづれに行かんとし又何をなさんとするや胸に飮む熱き涙に雨を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
彼等かれらいはゆる『世界改造せかいかいざう偉業ゐげふ』に參加さんかすべき責任せきにんいうしているんぢやないか。國内政治機關こくないせいぢきくわん改造かいざう要求えうきうする人民じんみんこゑ無視むしするわけくまいぢやないか。どうだいきみきみはサウおもはないんか。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
露國ロコク政治上せいぢぜうたち世界せかい雄視ゆうしすといへどもその版圖はんと彊大きようだいにして軍備ぐんび充實じゆうじつせるだけに、民人みんじん幸福こうふくゆたかならず、貴族きぞく小民せうみんとのあいだ鐵柵てつさくもうけらるゝありて、おのづからに平等びようどう苦叫くけうする平民へいみんこゑおこ
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
わがせいの奧深く、微かなるこゑのわれを呼ぶを感ず。
(旧字旧仮名) / アダ・ネグリ(著)
「大きなこゑでは申されぬが、津輕つがる越中守樣ぢや」
哀れなる臨終いまはこゑは、血の波のみづうみの岸
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
折節をりふしあへこゑ。口にづるを
ときこゑあげてかこみさふらふとも
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
こゑするかたまもつた。
鸚鵡:(フランス) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
こゑ夢ごこちほそきとき
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
をんながく、かへりこゑ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
脊向そがひにて囁くこゑ
あはれ今 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
こゑてずに
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
火事くわじをみて、火事くわじのことを、あゝ火事くわじく、火事くわじく、とさけぶなり。彌次馬やじうまけながら、たがひこゑはせて、ひだりひだりひだりひだり
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『おまへ亞尼アンニーとかつたねえ、なんようかね。』とわたくししづかにふた。老女らうぢよむしのやうなこゑで『賓人まれびとよ。』と暫時しばしわたくしかほながめてつたが
いやだよ。御父おとつちやんべい。おほきい御馬おむまつてれなくつちや、彼方あつちかないよ」とこたへた。こゑちひさいをとここゑであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とまつとつちやいかん。ようのないものはずんずん前進ぜんしんする‥‥」と、さわぎの最中さいちう小隊長せうたいちやう大島少尉おほしませうゐががみがみしたこゑ呶鳴どなつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
きやううちるより洋燈らんぷうつして、火鉢ひばちきおこし、きつちやんやおあたりよとこゑをかけるにれはいやだとつて柱際はしらぎはつてるを
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
梅子うめこさん!梅子うめこさん!ぐに手套てぶくろつて頂戴てうだい!』とこゑがして、やがてパタ/\と梯子段はしごだんのぼちひさな跫音あしおとがしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たか羽音はおとでもあるやうにうなつておとは、その竹竿たけざをにしたひと口端くちばたとがらせてプウ/\なに眞似まねをしてせたこゑでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
上當年五十三歳に相成候と云たるてい顏色がんしよくことほか痩衰やせおとろにくおちほねあらはれこゑ皺枯しわがれて高くあげず何樣數日手強てづよき拷問に掛りし樣子なり大岡殿此體このてい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おどろいてめたが、たしかにねここゑがする、ゆめかいか、はねきてたらまくらもとにはれい兒猫こねこすはつてゐた、どこからしのんでたのやら。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
頸筋くびすぢぶたこゑまでがそれらしい老人らうじん辨當べんたうをむしやつき、すこ上方辯かみがたべんぜた五十幾歳位いくさいぐらゐ老婦人らうふじんはすしを頬張ほゝばりはじめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)