かく)” の例文
新字:
「そんぢや、わし蜀黍もろこしかくしてとこ見出めつけあんすから、屹度きつとんにきまつてんだから」といふこゑあとにしてはたけ小徑こみちをうねりつゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
海戰かいせん午前ごぜん三十ぷんはじまつて、東雲しのゝめころまでをはらなかつた。此方こなた忠勇ちうゆう義烈ぎれつ日本軍艦につぽんぐんかんなり、てき世界せかいかくれなき印度洋インドやう大海賊だいかいぞく
ほとんあやふかつたその時、私達は自らすくふために、十ぶんにそのちからうたがひをのこしながらも、愛とその結婚にかくを求めようとしました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「ところで、物事をかくさずに、正直に言つてくれ。お前はお久良と親しくして居たさうだな。近所の衆は皆知つて居るぜ、隱すな」
みなみまはすと、玄關げんくわんからの入口いりぐち半分はんぶんふさいで仕舞しまふし、ひがしすとくらくなる、とつて、のこ一方いつぽうてればとこかくすので、宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
見てひそかもとの座へ立ち歸り彼は正しく此所のあるじさては娘の父ならん然れば山賊のかくにも非ずと安堵あんどして在る所へ彼娘の勝手よりぜん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かツ眞黄色まつきいろひからしたが、ギヤツといて、ひたりと欄干らんかんした刎返はねかへる、とはしつたつてつぶてはしつた宿やどなかかくれたのである。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いくら拷問がうもんにかけられても、らないことまをされますまい。そのうへわたしもかうなれば、卑怯ひけふかくてはしないつもりです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
が、れもれもぢきかれ疲勞つからしてしまふ。かれそこでふとおもいた、自分じぶん位置ゐち安全あんぜんはかるには、女主人をんなあるじ穴藏あなぐらかくれてゐるのが上策じやうさくと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
天照らす大御神いよよあやしと思ほして、やや戸より出でて臨みます時に、そのかくり立てる手力男の神、その御手を取りて引き出だしまつりき。
此處こゝからはるゝは世界せかいからはるゝもおなこと世界せかいからはるゝはころさるゝもおなこと、すれば追放つゐはうとは死罪しざいかくぢゃ。
注意してそつと自分のかくを出た私は、眞直に臺所につゞいてゐる裏梯子うらばしごの方に出た。臺所中は火と騷ぎで一ぱいだつた。
さすがにかくしきれもせずに、をつとがてれくさ顏附かほつきでその壁掛かべかけつつみをほどくと、あんでうつま非難ひなんけながらさうつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なんだか其處そこ可笑をかしくこぐらかりまして、うしても上手じやうずおもひとくこと出來できませんかつた、いまおもふてるとるほどかくしだてもあそばしましたらう
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのそでをおとりになると、かほかくしましたが、はじめにちらと御覽ごらんになつて、いたよりも美人びじんおぼされて
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
しかるに伯夷はくい叔齊しゆくせいこれぢ、しう(三四)ぞくくらはず、首陽山しゆやうざんかくれ、つてこれくらふ。ゑてまさせんとするにおよんでうたつくる。いは
くことも出來できぬところにかくれてしまつてのち、そのひとのゐたいへ訪問ほうもんして一人ひとりかなしんだ名高なだかうたがあります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
それを但馬守たじまのかみられるのが心苦こゝろぐるしさに地方ぢかた與力よりき何某なにがしは、ねこ紙袋かんぶくろかぶせたごと後退あとずさりして、脇差わきざしの目貫めぬきのぼりうくだりう野金やきんは、扇子せんすかざしておほかくした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
坐敷ざしきすわつたまゝこともなく茫然ぼんやりそとながめてたが、ちらとぼくさへぎつてまた隣家もより軒先のきさきかくれてしまつたものがある。それがおきぬらしい。ぼくそとた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それで三にん相談さうだんするやうかほをして、一端いつたん松林まつばやしまで退しりぞき、姿すがた彼等かれら視線しせんからかくれるやいなや、それツとばかり間道かんだう逃出にげだして、うらいけかたから、駒岡こまをかかた韋駄天走ゐだてんばしり。
桃林和尚たうりんをしやうこたへましたので、きつねあたまき/\うらはやしはうへこそ/\かくれてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
主婦おかみつて頼んだのでもなく、矢張普通の女中で、額の狹い、小さい目と小さい鼻をかくして了ふ程頬骨の突出た、土臼の樣な尻の、先づ珍しい許りの醜女ぶをんな肥滿人ふとつちよであつた。
菊池君 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
うかい、さうかい』とつてグリフォンは、自分じぶんばんたとはぬばかりに、これもまた長太息ためいききました、それから二ひき動物どうぶつかほをその前足まへあしおほかくしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
開卷第一かいかんだいゝちに、孤獨幽棲こどくゆうせい一少年いつしようねん紹介しようかいし、その冷笑れいしようその怯懦きようだうつし、さらすゝんでその昏迷こんめいゑがく。襤褸らんるまとひたる一大學生いつだいがくせい大道だいどうひろしとるきながら知友ちゆう手前てまへかくれするだんしめす。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
そのくらゐですからえだもおそろしくしげりひろがつてゐてあさ杵島岳きしまだけかくし、夕方ゆふがた阿蘇山あそさんおほつて、あたりはひるも、ほのぐらく、九州きゆうしゆう半分程はんぶんほど日蔭ひかげとなり、百姓ひやくしようこまいてゐたといひますが
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
火こそみえけれ、其さを閻浮提金えんぶだごんかくれたる。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
かなしかりきな、さあれ、またしたかくるる
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
かくるゝ風情ふぜいあはれなり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
野路にかくれて
蛇苺 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
さういふ伴侶なかまことをんな人目ひとめすくな黄昏たそがれ小徑こみちにつやゝかな青物あをものるとつひした料簡れうけんからそれを拗切ちぎつて前垂まへだれかくしてることがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かくさんと云るをきゝ共に涙にくれたりしがやがてお文は父母ふたおやの前にたり兩手をつきたゞ今お兩方樣ふたかたさまのおはなしを承まはり候に父樣は何方いづかたへかお身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
其處そこ町屋まちやを、うま沓形くつがた一廻ひとまはりして、振返ふりかへつたかほると、ひたひかくれてくぼんだ、あごのこけたのが、かれこれ四十ぐらゐなとしであつた。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鋼索こうさく化學用くわがくようしよ劇藥げきやく其他そのほか世人せじん到底たうてい豫想よさうがた幾多いくた材料ざいりよう蒐集中しうしふちうなりしが、何時いつとも吾人われら氣付きづかぬその姿すがたかくしぬ。
すれば、當國このくに風習通ならはしどほりに、かほわざかくさいで、いっち晴衣はれぎせ、柩車ひつぎぐるませて、カピューレット代々だい/\ふる廟舍たまやおくられさッしゃらう。
ふとさうつぶやきながら、私はひとみを返して遠くなつた修道院の方を振り返つた。が、その時ポプラの林を背景にした建物の姿はもう岬のかげかくれてゐた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
かれ坂井さかゐいへそばつて、むかふれずに、ひとうかがやう便利べんり場所ばしよはあるまいかとかんがへた。不幸ふかうにして、かくすべきところをおもなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
老子らうし(一一)道徳だうとくをさむ、其學そのがくみづかかくしてきをもつつとめせり。しうることこれひさしうして、しうおとろふるをすなはつひつて、(一二)くわんいたる。
れははづかしさにおもてあかみて此膝これなるふみとりかくすべきか、づるはこゝろやましければなり、なにかはかくさん。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼女かのぢよいままでのくゐは、ともすればわけたてかくれて、正面まとも非難ひなんふせいでゐたのをつた。彼女かのぢよいま自分じぶん假面かめん引剥ひきはぎ、そのみにくさにおどろかなければならなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ところが、このうたんだゞけで、べつ氣持きもちがうかびませんか。それはなんだか、このうたのうちに、ちがつた氣持きもちがかくされてゐる、といふ氣分きぶんおこることであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
役向の事で怨を買つたらしいことをも直觀ちよくくわんしてしまつた平次は、それから三日經たないうちに、獨特の探索で奉公人の全部の身許を洗ひ上げ、かくしに隱して居るが
かくて天皇がおかくれになつてから、オケの命が、帝位におきになりました。御年三十八歳、八年間天下をお治めなさいました。御陵は片岡の石坏いわつきの岡の上にあります。
屋根やねうへかくして、そらとほ小鳥ことりにつかないやうにしてあります。その小屋こや周圍まはりに、ほそ丈夫ぢやうぶいとんだ鳥網とりあみおほきなのが二つも三つもつてあるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
まくらしたや、寐臺ねだい何處どこかに、なにかをそツとかくしてく、れはぬすまれるとか、うばはれるとか、氣遣きづかひめではなくひとられるのがはづかしいのでさうしてかくしてものがある。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
盜人ぬすびとつまつたのち太刀たち弓矢ゆみやげると、一箇所かしよだけおれのなはつた。「今度こんどはおれのうへだ。」——おれは盜人ぬすびとやぶそとへ、姿すがたかくしてしまうときに、かうつぶやいたのをおぼえてゐる。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
居間ゐまかくして置いた石が何時いつにか客間のとこすゑてあつた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うなると、打石斧だせきふかくしてくわけにもかず。
なよびかのひめかくれて、ただひとり
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
他人ひとかくした秘密ひみつ
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
きゝしばし思案して申ける樣和尚は何とおもはるゝや拙者せつしや大言たいげんはくに似たれども伊賀亮ほどの大才ある者久しく山中にかくれてある黄金こがね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)