なに)” の例文
しるべの燈火ともしびかげゆれて、廊下らうかやみおそろしきをれし我家わがやなにともおもはず、侍女こしもと下婢はしたゆめ最中たゞなかおくさま書生しよせい部屋へやへとおはしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、こまってべそをかきました。するうち、ふとなにおもいついたとみえて、いきなりお重箱じゅうばこをかかえて、本堂ほんどうして行きました。
和尚さんと小僧 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なにをとこころすなぞは、あなたがたおもつてゐるやうに、たいしたことではありません。どうせをんなうばふとなれば、かならずをとこころされるのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
馬鹿野郎ばかやらうなにをしてる。まるで文句もんくわからないから、巖谷いはやくるまけつけて、もううちてゐるんだ。うつそりめ、なにをしてる。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
って、あたりを見𢌞みまわしたとき袖子そでこなにがなしにかなしいおもいにたれた。そのかなしみはおさなわかれをげてかなしみであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかしわたくしは三かわらしいものをわたったおぼえはない……閻魔様えんまさまらしいものにった様子ようすもない……なになにやらさっぱりちない。
でもまあ無事ぶじでよかつた。人間にんげんめ! もうどれほど俺達おれたち仲間なかまころしやがつたか。これを不倶戴天ふぐたいてんてきとゆはねえで、なにふんだ。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
宗助そうすけにも御米およねにもおもけないほどたまきやくなので、二人ふたりともなにようがあつての訪問はうもんだらうとすゐしたが、はたして小六ころくくわんするけんであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御主おんあるじ耶蘇様イエスさま百合ゆりのやうにおしろかつたが、御血おんちいろ真紅しんくである。はて、何故なぜだらう。わからない。きつとなにかの巻物まきものいてあるはずだ。
此女このをんなくにかられてたのではない、江戸えどつたをんなか知れない、それは判然はつきりわからないが、なにしろ薄情はくじやうをんなだから亭主ていしゆおもてき出す。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
められてもうれしくはないぞ。玄竹げんちく、それよりなに面白おもしろはなしでもせんか。』と、但馬守たじまのかみかほには、どうもらぬいろがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
するととほくのはうでパタ/\とちひさな跫音あしおとのするのがきこえました、あいちやんはいそいでいてなにたのだらうかとてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
わたくし元來ぐわんらい膝栗毛的ひざくりげてき旅行りよかうであるから、なに面倒めんだうはない、手提革包てさげかばん一個ひとつ船室キヤビンなか投込なげこんだまゝ春枝夫人等はるえふじんら船室キヤビンおとづれた。
よるのこたァ、こっちがてるうちだから、なにをしてもかまわねえが、お天道様てんとうさまが、あがったら、そのにおいだけにめてもらいてえッてよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
たちまち、なにおそろしいことでもきふおもしたかのやうに、かれかしらかゝへるなり、院長ゐんちやうはうへくるりとけて、寐臺ねだいうへよこになつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ある未亡人びばうじんなどは日本の物事と云へばなにでも愛着して、同じ仲間の婦人と竹刀しなへを執つて撃剣をしたり経を読んだりなんかするさうだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
いいえわし一人の道楽仕事ですから、なにっぽも出来ません。この寺では初代宗長以来片手間に灰吹を拵えて売りました。それに吐月峯と銘を
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
らつたうへうしてひまつぶして、おまけに分署ぶんしよおこられたりなにつかすんぢや、こんなつまんねえこたあ滅多めつたありあんせんかんね
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
郊外生活の地続き、猫の額ほどな空地あきちに十歩の春をたのしまうとする花いぢりも、かういふてあひつてはなにも滅茶苦茶に荒されてしまふ。
それに、月末つきずゑだつてもうちかいんだし、なにもそんなあつてもなくつてもいい壁掛かべかけなんかをいまひになることないぢやありませんか
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
なんゆえ私宅教授したくけふじゆの口がありても錢取道ぜにとるみちかんがへず、下宿屋げしゆくやに、なにるとはれてかんがへることるとおどろかしたるや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
わらごとではい、なにてもころだと、心中しんちういろ/\苦悶くもんしてるが如何どうない、破片はへん獸骨じうこつ、そんなところしか見出みいたさぬ。
だが、私のむねの中からは、なに物もわき上つては来なかつた。私は私の心に詮つてゐるものをふるひ落とすやうに、私の心をたゝいてみた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
大船おほふなはつしてしまへば最早もう國府津こふづくのをほか途中とちゆうなにることは出來できないとおもふと、淺間あさましいことには殘念ざんねんたまらない。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
こびるやうな、なぶるやうな、そしてなにかにあこがれてゐるやうな其の眼……私は少女せうぢよの其の眼容まなざし壓付おしつけられて、我にもなく下を向いて了つた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ンガオド何歳ナンボだバ。ワイのナ今歳コドシ二十六だネ。なにわらふんダバ。ンガ阿母オガあねダテ二十歳ハダヂしたヲドゴたけアせ。だけアそれほどチガはねエネ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
曾て帰省した時の服装を見ると、地方では奏任官には大丈夫踏める素晴しい服装なりで、なにしても金の時計をぶらげていたと云う。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「だからヨ、一てえその十七の首はどこの誰で、また、なにやつがなんのために、十七の首をころがそうてえのか、それから聞こう」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
むかしひとは、今日こんにち田舍ゐなかきこり農夫のうふやまときに、かまをのこしけてゐるように、きっとなに刃物はものつてゐたものとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
なにしろ、いまは頭がへんになって、なにが何やらさっぱりわからないものですから、それを見ても、そんなにびっくりはしませんでした。
遊ばされ候はゞ然るべく私し兄の儀を申もいかゞに候へどもなにごとによらずこれかうだといふ時は是までも隨分ずゐぶん他人さまの御世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
なにさまこれは負傷したのに相違ないが、それにしても重傷おもで擦創かすりかと、傷所いたみしょへ手をってみれば、右も左もべッとりとしたのり
だれ戦争せんそうまうけ、だれなんうらみもない俺達おれたちころひをさせるか、だれして俺達おれたちのためにたたかひ、なに俺達おれたち解放かいほうするかを
いかにもはれるとほりで、その頭痛づつうのために出立しゆつたつばさうかとおもつてゐますが、どうしてなほしてくれられるつもりか。なに藥方やくはうでも御存ごぞんじか。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
きたにはゴビの大沙漠だいさばくがあつて、これにもなに怪物くわいぶつるだらうとかんがへた。彼等かれらはゴビの沙漠さばくからかぜ惡魔あくま吐息といきだとかんがへたのであらう。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
「うん、あそこなら、ようて、まえやま清水しみずくくらいだから、あのしたならみずようが、あんなところへ井戸いどってなににするや。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
まちは、いつまでもいつまでもたれなにはなかつたら、その青白あをしろほそ川柳かはやなぎつめてゐたかもしれない。この川柳かはやなぎ古郷こきやうおほい。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
A どうも永々なが/\御馳走樣ごちそうさま葉書はがきはじまつた御縁ごえんだから毎日まいにちまいづつの往復わうふくぐらゐあたまへだね。しかなにしろ葉書はがきといふやつ面白おもしろいものだね。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
こもりますに因りて、天の原おのづからくらく、葦原の中つ國も皆闇けむと思ふを、なにとかも天の宇受賣うずめあそびし、また八百萬の神もろもろわらふ」
つまはおみつつて、今歳ことし二十になる。なにかとふものゝ、綺緻きりやうまづ不足ふそくのないはうで、からだ発育はついく申分まをしぶんなく、どうや四釣合つりあひほとん理想りさうちかい。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
こんな事は、畑ちがいの僕にさえ、常識として判っているが、大阪町人の幾人が、この事実に対してなにう考えているか?
大阪を歩く (新字新仮名) / 直木三十五(著)
モン妻 おゝ、ロミオは何處どこに?(ベンヺーリオーに)今日けふそなたはしましたか? この騷動さうどう關係かゝりあうてゐなんだは、ま、なによりもよろこばしい。
いづれも有益ゆうえき資料しりようであつて、今日こんにちでも地震學ぢしんがくについてなに研究けんきゆうでもこゝろみんとするものゝ、かなら參考さんこうすべき古典書こてんしよである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
つきゆきはなおろいぬんだとては一句いつくつくねこさかなぬすんだとては一杯いつぱいなにかにつけて途方とはうもなくうれしがる事おかめが甘酒あまざけふとおなじ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
福井 なに言うんだよ。これッきり別れると言うんじゃない。おれも一緒に行かれるようなら、一緒に行きたいんだが……。
なにしろこりゃおとこだもの、きりょうなんかたいしたことじゃないさ。いまつよくなって、しっかり自分じぶんをまもるようになる。」
うた表面ひようめん一種いつしゆたとへで、なにべつのことがいつてあるのだらうといふ心持こゝろもちが、おこりませんか。きっとおこるとおもひます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
くさなか半身はんしんぼつして、二人ふたりはいひあらそつてゐた。をとこはげしくなにかいひながら、すぶるやうにをんなかた幾度いくど小突こづいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
と。(一五)なにもつしようせられたる。(一六)太史公たいしこういはく、箕山きざんのぼりしに、其上そのうへけだ許由きよいうつかりとふ。
しやくにさわるけれど、だれ仲間なかまさそつてやらう。仲間なかまぶなららくなもんだ、なに饒舌しやべつてるうちにはくだらうし。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)