はや)” の例文
高橋たかはしは、はや父親ちちおやわかれたけれど、母親ははおやがあるのでした。正吉しょうきちだけは、両親りょうしんがそろっていて、いちばん幸福こうふくうえであったのです。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
はやがさめても何時いつまでもるのがいゝか、おそがさめてもむつくりきるのがいゝか、そのことで兄弟きやうだいあらそつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
近頃ちかごろ唐鍬たうぐは使つけほねおれつからつて仕事しごとしまつちや一がふぐれえけてつちやあんだつちけが、それ今日けふはやくからてたんだつちきや
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
夕涼ゆふすゞみにはあしあかかにで、ひかたこあらはる。撫子なでしこはまだはやし。山百合やまゆりめつ。月見草つきみさうつゆながらおほくは別莊べつさうかこはれたり。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
それからまたどく』としるしてあるびんから澤山たくさんめば、それが屹度きつとおそかれはやかれからだがいになるものだとふことをけつしてわすれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「いや、そういうわけなら、すこしでもはやれておいでなさい。ここから美作国みまさかのくにまで行くのでは、たっぷり二日ふつかみちのりだから。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
一二月いちにがつころのような小枝こえだに、黄色きいろはなけたり、また蝋梅ろうばいのようにもっとはやゆきなかかをりたかくほこるものもあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
はややくにもたたぬ現世げんせ執着しゅうちゃくからはなれるよう、しっかりと修行しゅぎょうをしてもらいますぞ! 執着しゅうじゃくのこっているかぎ何事なにごともだめじゃ……。
ドクトルは其後そのあとにらめてゐたが、匆卒ゆきなりブローミウム加里カリびんるよりはやく、發矢はつしばか其處そこなげつける、びん微塵みぢん粉碎ふんさいしてしまふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
サア、みな水兵ものどもた/\、大佐閣下たいさかくかのおかへりだよ、それに、めづらしい賓人おきやくさんと、可愛かあいらしい少年せうねんとが御坐ござつた、はや御挨拶ごあいさつまうせ/\。
ヂュリ おゝ、はやめて、そしてしめてまうたら、わたしと一しょにいてくだされ。もう絶望だめぢゃ! 絶望だめぢゃ、絶望だめぢゃ!
と書きて贈りしその花にさふらふ。奥村氏の前庭ぜんてい紅木槿垣べにむくげがきひまつはりしもその花にさふらふ。翌日ははやほろほろと船室の中にべにこぼさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
どう大動搖だいどうえうはじめた。はやなかたいからである。けれどもなが密閉みつぺいせられてある岩窟がんくつ内部ないぶには、惡瓦斯あくぐわす發生はつせいしてるに相違さうゐない。
はやだねとおきやうさとせば、そんならおめかけくをめにしなさるかとふりかへられて、れもねがふてところではいけれど
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
手持てもち品物しなものならばなるたけはやこれさばかう、また手持てもち品物しなものなるたけすくなくしよう、ふことは當然たうぜん結果けつくわはなくてはならぬ。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
従来は附木つけぎだけはあったが「はや」なる形容詞をかぶせて通用させようとしても通用しなかった。「ランプ」を行燈あんどんとも手燭てしょくとも翻訳ほんやくしない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
大井おほゐ中津川なかつがはの諸驛を過ぎて、次第に木曾の翠微すゐびちかづけるは、九月もはや盡きんとして、秋風しうふう客衣かくいあまねく、虫聲路傍に喞々しよく/\たるの頃なりき。
秋の岐蘇路 (旧字旧仮名) / 田山花袋(著)
川沿かはぞひ公園こうゑん真暗まつくら入口いりぐちあたりから吾妻橋あづまばしはしだもと。電車通でんしやどほりでありながらはやくからみせめる鼻緒屋はなをやちつゞく軒下のきした
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それにはこたえずに、藤吉とうきちから羽織はおりを、ひったくるように受取うけとった春信はるのぶあしは、はやくも敷居しきいをまたいで、縁先えんさきへおりていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
宗助そうすけきよめいじたとほりを、小六ころくかへして、はやくしてれとてた。小六ころく外套マントがずに、すぐ玄關げんくわんつてかへした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かりはたらかせしが其の夜はおそなりしかば翌朝かへしけるにはや辰刻頃いつゝごろなるに隱居所の裏口うらぐちしまり居て未だ起ざる樣子なれば大いにあやし何時いつも早く目を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はやりっ気で思い立つと足元から火の燃えだした様にせかせかだす癖が有るので始めの一週間ばかりはもうすっかりそれに気を奪われて居た。
秋毛 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
刀を執って戸を開いて見るに、そこにははや影も見えず、小屋の前の山をきわめて丈の高い男の下って行く後姿が、遠く月の光で見えたそうだ。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そのうちたけまばらになると、何本なんぼんすぎならんでゐる、——わたしは其處そこるがはやいか、いきなり相手あひてせました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「あそびにははやみたり、姉ぎみと共にいづくへかきたまひし、」と問へば、「見晴らしよき岩角わたりまでゆきしが、この尖塔ピラミッドにはかず、 ...
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さがしたぞ。こんたなどごまで来て。してだまって彼処あそごなぃがった。おじいさんうんと心配しんぱいしてるぞ。さ、はやべ。」
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
軍曹殿ぐんそうどの軍曹殿ぐんそうどのはやはやく、じうはやく‥‥」と、中根なかねきし近寄ちかよらうとしてあせりながらさけんだ。じうはまだ頭上づじやうにまつげられてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
牝虎は二ないし五、六児を一度に産むが三疋が普通だ、その子を愛する事甚だしく最も注意してこれを守る、生れて二年目にはや自分で餌を求める
年がれて春がき、夏がきてまた秋がきた。花前はなまえもここにはや一年おってしまった。このかん、花前の一身上しんじょうには、なんらの変化へんかもみとめえなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「又左どの。——御辺と筑州とは、若年からの、ふたつなき別懇べっこん。戦いかくなるからは、この匠作に義理遠慮ははやり申さぬ。御分別よろしくあれや」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さて、歳月流るる如く、米原氏が出雲言葉丸出しで私の玄関へ参ってから、はや三年になりました。三年という約束だから、或る日、私は米原氏に向い
遠慮を知らぬ金博士のことであるから、あわてるチーア卿を相手にせず、ごろりと横になると、はやぐうぐうと大鼾おおいびき
「さあ、なければないのが不思議ふしぎなのです。おやおやお日樣ひさまやまがけへかくれた。ではおはやくおしまひになさいまし」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
うつくしといもはやねやもけりともわれるべしとひとはなくに 〔巻十一・二三五五〕 柿本人麿歌集
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
流石さすが明治めいぢおん作者さくしや様方さまがたつうつうだけありて俗物ぞくぶつ済度さいどはやくも無二むに本願ほんぐわんとなし俗物ぞくぶつ調子てうし合点がてんして幇間たいこたゝきておひげちりはらふの工風くふう大悟たいご
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
さて金屬きんぞくうち一番いちばんはや發見はつけんされたのはなんであるかとまをしますと、きんどうてつ三種さんしゆであつたようであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
わるいことはわないから、そこにったらかしときなさい。そいではやほか子達こたちおよぎでもおしえたほうがいいよ。
けれどもまちかならずしもなをらないとはおもはなかつた。そしてどうかしてはやくなほしたいといつもかんがへてた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
かいしての、R大使館たいしかんからの招待日せうたいびだつたので、そのかれはかまなどつけて、時刻じこくがまだはやかつたところから、I下宿げしゆくつて一とはなししてからかけた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ではみんなよ、はやおおきくなつて、きみたちも勇敢ゆうかんなプロレタリアの鬪士とうしとなつて、きみたちやきみたちのおとうさんおかあさんをくるしめてゐるやつらをたゝきのめしてくれ!
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
小田原をだはらからさきれい人車鐵道じんしやてつだうぼくは一ときはや湯原ゆがはらきたいのできな小田原をだはら半日はんにちおくるほどのたのしみすてて、電車でんしやからりて晝飯ちうじきをはるや人車じんしやつた。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それにしても君、今年の春ははやかんとするではないか。隣家の黒板塀からのさばり出た桃の枝は敗残の姿痛ましげに、今日も夕闇の空に輪郭をぼかしている。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
さすがの主人も、もはや落ついている訳には行きません。長吉というのは、程近き麓の町の芸妓なのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
引いたのじゃ。辻に唄う盲女にも劣る芸しか持たぬ、其方にははや要はない。それではこれでおさらばじゃ
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その夜、たしかにロボのほえる声が聞こえたというので、わたしは大喜びで翌朝よくちょうはやく結果を見にでかけた。
日本人自ら言うところの不充分なるこの言葉と文章で以てはや千有余年前にこの充分進んだところの哲学……高尚なる仏学を日本人は解釈したのである。えらい力だ。
夕方ゆふがたそらには、いつぱいくもみだれてゐて、あちらこちらにはやまはつてゐるとききおろす山風やまかぜが、あら/\しくいてゐる。そのにもみゝにも、すさまじい景色けしき
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
日本にほん英佛米伊えいふつべいいの四こくとも支那しな勸告くわんこくはつして、はや南北なんほくあらそひをめて『世界改造せかいかいざう偉業ゐげふ參加さんかせよ』とやつたね。支那しなはおかげ南北合同なんほくがふどう大共和國だいきようわこくになるだらう。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
為にはやく人家ある所にいづるの方針ほうしんらざるべからざるを以て、く議論の沸騰ふつたうしたるなり。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
「繁華でがんすとも。銀座でも日本橋でもはやあ話が此処の呉服町を広くして家をいかくしたようなもんさ。賑かなは人通りがしげいからでがんすよ。些っとも驚くことじゃねやあ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)