ふる)” の例文
其處そこふるちよツけた能代のしろぜんわんぬり嬰兒あかんぼがしたか、ときたならしいが、さすがに味噌汁みそしるが、ぷんとすきはらをそゝつてにほふ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「ごんごろがねもあの爆弾ばくだんになるんだねえ。あのふるぼけたかねが、むくりむくりとした、ぴかぴかひかった、あたらしい爆弾ばくだんになるんだね。」
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
勘次かんじはそれでも分別ふんべつもないので仕方しかたなしに桑畑くはばたけこえみなみわびたのみにつた。かれふる菅笠すげがさ一寸ちよつとあたまかざしてくびちゞめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
現代いまのよ人達ひとたちから頭脳あたまふるいとおもわれるかぞんじませぬが、ふるいにも、あたらしいにも、それがその時代じだいおんなみちだったのでございます。
ぴらみっとやふるはかからたいろ/\の寶物ほうもついつぱいありまして、いまから四五千年前しごせんねんまへ王樣おうさまのみいらも、そのまゝることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ふるい/\むかしは、この一帶いつたい暖帶林だんたいりん上部じようぶから温帶林おんたいりん下部かぶぞくする樹木じゆもく、すなはち常緑じようりよく濶葉樹かつようじゆ落葉樹らくようじゆでおほはれてゐたのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ほとんど立続たてつづけに口小言くちこごとをいいながら、胡坐あぐらうえにかけたふる浅黄あさぎのきれをはずすと、火口箱ほぐちばこせて、てつ長煙管ながきせるをぐつとくわえた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
切りて迯行にげゆき候と申けるに奧田殿扨々さて/\それをしき事なり然らば切たる袖は後の證據とならん是へとて右の袖を見らるゝに辨慶縞べんけいじま單物ひとへものふるきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その音色ねいろは、さびしい城跡しろあとっている木々きぎながねむりをばさましました。また、ふるつくっている小鳥ことりをばびっくりさせました。
海のかなた (新字新仮名) / 小川未明(著)
細々こま/″\しい臺所だいどころ道具だうぐやうなものはまでもあるまい、ふるいのでければとふので、小人數こにんず必要ひつえうだけ一通ひととほそろえておくつてた。其上そのうへ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
○新撰字鏡うをに鮭(佐介さけ)とあり、和名抄には本字はさけぞくさけの字を用ふるは也といへり。されば鮭の字を用ひしもふるし。
もちろんこれは、ふるくからのいひつたへで、あなたがたが、古代こだいかんがへてゐられる奈良朝ならちようよりも、もつと/\以前いぜんから、さうしんじてゐたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そもそ此所こゝ千鳥窪ちどりくぼが、遺跡ゐせきとしてみとめられたのは、隨分ずゐぶんふることで、明治めいぢ二十一ねんの九ぐわつには、阿部正功あべせいこう若林勝邦わかばやしかつくにの二すで發掘はつくつをしてる。
祖母おばあさんがおよめにときふる長持ながもちから、お前達まへたち祖父おぢいさんのあつめた澤山たくさん本箱ほんばこまで、そのくらの二かいにしまつてりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其れからたヽみの破れを新聞で張つた、はしらゆがんだ居間ゐまを二つとほつて、横手の光琳の梅を書いたふるぼけた大きい襖子ふすまを開けると十畳敷許の内陣ないぢん
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
一體いつたい家屋かおくあたらしいあひだはしら横木よこぎとのあひだめつけてゐるくさびいてゐるけれども、それが段々だん/″\ふるくなつてると、次第しだいゆるみがる。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
すれば、當國このくに風習通ならはしどほりに、かほわざかくさいで、いっち晴衣はれぎせ、柩車ひつぎぐるませて、カピューレット代々だい/\ふる廟舍たまやおくられさッしゃらう。
小はふる郵便券、マッチの貼紙の蒐集家まで、骨董畠が世界各国都鄙とひ到るところに開かれて存在しているようになっている。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あたしは鹿しぼりのひもを首のうしろでチョキンと結んで、緋金巾ひかなきんの腹がけ(金巾は珍らしかったものと見える)、祖母おばあさんのおふるの、の小紋の
旧聞日本橋:02 町の構成 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
その頂上てうじやうにはふるむかしから、大理石だいりせきのやうにかたくて真白ましろゆきこほりついてゐて、かべのやうにそゝりつ、そこまで、まだ誰一人だれひとりのぼつたものがない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
馬鹿らしい独言ひとりごとを云って机の上にらばった原稿紙かみふるペンをながめて、誰か人が来て今の此の私の気持を仕末しまつをつけて呉れたらよかろうと思う。
秋風 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
其日そのひはそれでわかれ、其後そのごたがひさそつてつり出掛でかけたが、ボズさんのうちは一しかないふる茅屋わらや其處そこひとりでわびしげにんでたのである。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『剣をつっていた帯のおふるですか!』と、その娘は首をしゃくって叫びました。『それじゃ、あたし欲しかあないわ!』
一一四刀自とじの君の病み給ふもいとことわりなるものを。そも一一五ふる人は何人にて、家は何地いづちに住ませ給ふや。女いふ。
記録きろくあらはれたものもほとんく、弘仁年間こうにんねんかん藥師寺やくしじそう景戒けいかいあらはした「日本靈異記にほんれいいき」がもつとふるいものであらう。今昔物語こんじやくものがたりにも往々わう/\化物談ばけものだんる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
ズル/\ツと扱出こきだしたは御納戸おなんどだかむらさきだか色気いろけわからぬやうになつたふる胴巻どうまきやうなもの取出とりだしクツ/\とくとなかから反古紙ほごがみつつんだかたまりました。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ふるいもあたらしいも、愚老ぐらう洒落しやれなんぞをまをすことはきらひでございます。江戸えどのよくやります、洒落しやれとかいふ言葉ことばあそびは、いやでございます。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
摂津せっつ大阪おおさかにある四天王寺してんのうじ大和やまと奈良ならちか法隆寺ほうりゅうじなどは、みな太子たいしのおてになったふるふるいおてらでございます。
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
刈谷音吉かりやおときちは、最近さいきんのことだが、だいぶたくさんに金塊きんかいいこんでいたそうですよ。ふる小判こばんなどもあるそうで、これは地金屋ぢがねやからの聞込ききこみですが」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
お庄はふるこびれたようなその顔を横から見ながら、時々わきを向いて何やら思い出し笑いをしていた。するうちに叔母ににらまれて奥の方へ逃げ込んで行った。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
こうして、このふるぼけた小舟が、湖の上でゆられているうちに、小舟のあちこちにあるけめがだんだん大きくなって、水がますますしみこんできました。
頃日けいじつたまたま書林の店頭に、数冊のふる雑誌を見る。題して紅潮社こうていしや発兌はつだ紅潮第何号と云ふ。知らずや、漢語に紅潮と云ふは女子の月経にほかならざるを。(四月十六日)
部屋へやがだいなしになっている。わらくずがちらかり、ふるトランクがなげだされ、空籠あきかごがほうりだされてある。
大祝賀會だいしゆくがくわいもようすとのことその仕度したく帆木綿ほもめんや、ほばしらふるいのや、倚子いすや、テーブルをかつして、大騷おほさわぎの最中さいちう
ふるカードや、ワックスの鑵や、こわれた八かく手風琴てふうきんや、兎耳うさぎみみや、ちぎれたノルウェー・バンドの切れっぱしは、みなひとまとめにして戸棚のなかに押し込まれ
三田の文科ぶんくわ生になつてからは、さすがに寫眞熱しやしんねつもさめてしまつたが、りよ行の時だけは、もうなりふるびた上に舊式きうしきになつたその寫眞器しやしんきを相かはらず伴侶はんりよにしてゐた。
ふる草津くさつかくれて、冬籠ふゆごもにも、遙々はる/″\高原かうげんゆきけて、うらゝかなつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
そのなかでもこと日当ひあたりのいい場所ばしょに、かわちかく、気持きもちのいいふる百姓家ひゃくしょうやっていました。そしてそのいえからずっと水際みずぎわあたりまで、おおきな牛蒡ごぼうしげっているのです。
「いまさら、将門謀叛などと、上訴に及ぶも、ことふるしです。事態は、そんなどころか、もう天下の大乱で、駿河以東には、朝廷も中央の命もあったものではありません」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
病犬は、そこにころがっているふる材木の下にこごまって、苦しそうに腹でいきをしていました。
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
チャンと自分に説をめてあるから、男女夜行くときはともしびを照らすとか、物を受授するに手より手にせずとか、アンなふるめかしい教訓は、私の眼から見るとただ可笑おかしいばかり。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
れはかれふるくから病院びやうゐんにゐるためか、まち子供等こどもらや、いぬかこまれてゐても、けつして何等なんらがいをもくはへぬとことまちひとられてゐるためか、かくかれまち名物男めいぶつをとことして
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
その風流男の前に立って恥じらう風情もなしに心易げに物をいう女子おなごは、人間の色も恋もとうに忘れ果てたふる女房か、但しは色も風情も彼に劣らぬという自信をもった風流乙女みやびおとめ
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
尤も肖古王を近肖古王に對して古肖古王といつたとすれば、滿洲でもふるをフオと申しますから、古關は古肖古王だとして、一つの王として手數がかゝらぬ片付方をしてもよいのです。
近畿地方に於ける神社 (旧字旧仮名) / 内藤湖南(著)
受身うけみの立場からいうたら、目上めうえの人から受けたおんよりも、目下めしたの者から受けたおんのほうが大きいこともある。自分の君公くんこうからおふるかみしも頂戴ちょうだいするのは、昔では非常の恩誼おんぎとみなした。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そして自分じぶん部屋へやはひると、ふるびたあをいビロードの椅子いすこしをおろして、そのひざをもんだり、いたさをこらへてすこしでもげやうとしたり、または罨法あんはふしてそつとのばしたりなどした。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
粕谷八幡はさしてふるくもないので、大木と云う程の大木は無い。御神木と云うのはうられた杉の木で、此はやしろうしろで高処だけに諸方から目標めじるしになる。烏がよく其枯れた木末こずえにとまる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
長崎のいにしふるごとあきらむる君ぞたふときあはれたふとき(古賀十二郎翁に)
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
曲げてまがらぬ柳に受けるもややふるなれどどうも言われぬ取廻しに俊雄は成仏延引し父が奥殿深く秘めおいたるとらの子をぽつりぽつり背負しょって出て皆この真葛原下まくずはらしたいありくのら猫の児へ割歩わりぶ
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)