みゝ)” の例文
按摩あんまつゑちからに、かはべりの水除みづよづゝみると、つゑさき両手りやうてをかけて、ズイとこしばし、みゝそばだてゝかんがえて様子やうす、——とふ。
怪力 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ものゝかんかた非常ひじやう鋭敏えいびんで、はなみゝはだなどにれるものをするどることの出來できめづらしい文學者ぶんがくしやであつたことをせてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いま餘波なごりさへもないそのこひあぢつけうために! そなた溜息ためいきはまだ大空おほぞら湯氣ゆげ立昇たちのぼり、そなた先頃さきごろ呻吟聲うなりごゑはまだこのおいみゝってゐる。
三四郎は広田さんの名前を是で三四遍みゝにしてゐる。さうして、水蜜桃の先生と青木堂の先生に、ひそかに広田さんの名を付けてゐる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みゝかたむけると、何處いづくともなく鼕々とう/\なみおときこゆるのは、この削壁かべそとは、怒濤どとう逆卷さかま荒海あらうみで、此處こゝたしか海底かいてい數十すうじふしやくそこであらう。
そのみゝもとでは、『をんな一つで』とか、『よくまああれだけにしあげたものだ』とかいふやうな、かすかな聲々こゑ/″\きこえるやうでもあつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
勘次かんじたゞしなにのみこがれてたのであるが、段々だん/\日數ひかずつて不自由ふじいうかんずるとともみゝそばだてゝさういふはなしくやうにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
べしは重々ぢゆう/\此方こなたわるけれど母上はゝうへとらへてなにいひつたかおみゝれまいとおもへばこそ樣々さま/″\苦勞くらうもするなれさらでもの御病氣ごびやうきにいとゞおもさを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
うしてあいちやんは自問自答じもんじたふつゞけてましたが、しばらくしてそとはうなにこゑがするのをきつけ、はなしめてみゝそばだてました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そこで早速さつそく理髪店とこやつてそのみゝ根元ねもとからぷつりとつてもらひました。おもてへるとゆびさして、ふものごとわらふのです。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
兒玉こだま言々句々げん/\くゝ肺腑はいふよりで、其顏そのかほには熱誠ねつせいいろうごいてるのをて、人々ひと/″\流石さすがみゝかたむけて謹聽きんちやうするやうになつた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
がすりのあはせに、あかおび竪矢たてや背中せなかうた侍女じぢよが、つぎつかへて、キッパリとみゝこゝろよ江戸言葉えどことばつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
むしさら上層じようそうのぼるか、あるひ屋上おくじよう物干場ものほしば避難ひなんすることをすゝめるのであるが、實際じつさいかういふ賢明けんめい處置しよちられたれいしば/\みゝにするところである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
もちたる木鋤こすきにて和尚をほりいだしければ、和尚大にわらうちを見るにいさゝかきずうけず、みゝかけたる眼鏡めかねさへつゝがなく不思議ふしぎの命をたすかり給ひぬ。
たゞさらるいあま見當みあたりませんが、はちつぼ土瓶どびん急須きゆうすのたぐひから香爐型こうろがたのものなどがあつて、それに複雜ふくざつかたち取手とつてや、みゝなどがついてをり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
アンドレイ、エヒミチはいてはゐたが、みゝにもとまらぬふうで、なにかをかんがへながら、ビールをチビリ/\とんでゐる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
みゝづくはとらふづくのるいで、けもののようなかほで、みゝのようなものがつてゐます。しかしこれはみゝたぶではなく、じつつてゐるだけなのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
皺嗄しやがれたほとん聴取きゝとれないほどこゑで、うたふのが何處どこともなくきこえた。わたしおもはずすこあゆみゆるくしてみゝかたむけた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
嘉十かじふはにはかにみゝがきいんとりました。そしてがたがたふるえました。鹿しかどものかぜにゆれる草穂くさぼのやうなもちが、なみになつてつたはつてたのでした。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
見る者さてこそうはさのある公方樣くばうさまの御落胤の天一坊樣といふ御方なるぞ無禮せばとがめも有んと恐れざるものもなく此段早くも町奉行まちぶぎやう大岡越前守殿のみゝに入り彼所かしこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのSHがしばらくすると、つて彼方あなたたくまえつて、和服姿わふくすがた東洋人とうようじんらしい憂鬱ゆううつはじらひの表情へうぜうで、自作じさくうたひだした。みなれにみゝかたむけた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
このことがみかどのおみゝたつしましたので、お使つかひをくだされてお見舞みまひがありました。おきな委細いさいをおはなしして
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
法華經云、諸法實相しよほふじつさう天台云てんだいにいはく聲爲佛事等云々せいゐぶつじとううんぬん。日蓮又かくの如く推したてまつる。たとへばいかづちおとみゝしい(つんぼ)の爲に聞くことなく、日月の光り目くらのためにことなし。
それがまたあたりがあたりだけに如何いかにも支那風しなふうこのましいかんじでみゝひゞいたものだつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
夫れ台所だいどころに於けるねづみ勢力せいりよく法外はふぐわいなる飯焚男めしたきをとこ升落ますおとしの計略けいりやくも更に討滅たうめつしがたきを思へば、社会問題しやくわいもんだいみゝかたむくる人いかで此一町内いつちやうない百「ダース」の文学者ぶんがくしや等閑なほざりにするをべき。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
その時、そののどから、からすの啼くやうな聲が、喘ぎ喘ぎ、下人のみゝへ傳はつて來た。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一葉女史いちえふぢよしはおのれとおな園生そのふにありてはぎつゆにおほしたてられし下葉したはなりはぎ中島なかじまつねにいにしへぶりのしなたかきををしへさとしたまへれど性來せいらいのすきこゝろによのみゝちかくぞく今樣いまやう情態じやうたい
うもれ木:01 序 (旧字旧仮名) / 田辺竜子(著)
は、コロボツクルのは、かつみゝれてた。同時どうじ人類學者じんるゐがくしやとして坪井博士つぼゐはかせられることつてた。けれども、日本にほんける石器時代せききじだいついては、まつた注意ちういはらはずにたのであつた。
朝夕みゝにせしものは名ある武士が先陣拔懸ぬけがけのほまれれある功名談こうみやうばなしにあらざれば、弓箭甲冑の故實こじつもとどりれし幼時よりつるぎの光、ゆづるの響の裡に人と爲りて、浮きたる世の雜事ざれごとは刀のつかの塵程も知らず
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
背後はいごにひゞく萬国ばんこく資本家しほんか哄笑こうせふがおまへみゝたないのか
夫人ふじん病人びやうにんみゝもとにくちせてさゝやくやうにたづねた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
今は申上げられませんよ、かべみゝですもの、くはしいことを
邪魔じやまなおみゝはぴよこぴよこするし
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たけぎててんりやうみゝのそよぎ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
廊下は冠まつみゝモトで言ふのだ
冠松次郎氏におくる詩 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)
みゝをひつぱる、ひつぱたく
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
「ぢやあそのきくやうとおもつて学校がくかうへおいで。はなにはね、ものをいはないからみゝこえないでも、そのかはりにはうつくしいよ。」
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
る前に一寸ちよつとさそつて呉れ。君に話す事がある」と云ふ。みゝうしろ洋筆軸ペンじくはさんでゐる。何となく得意である。三四郎は承知した。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
春枝はるえ大分だいぶん愚痴ぐちます。をんなはあれだからいかんです。はゝゝゝゝ。けれどわたくしも、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつみゝにしたときにはじつおどろきました。
院長ゐんちやうなにがしなかだちをしたのだといふうはさもあつた。人々ひと/″\はたゞ彼女かのぢよよわをんなであるといふことのために、おほみゝおほうて彼女かのぢよゆるした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
マーキュ なんぢゃ、調子てうしあはせて? 吾等われら樂人扱がくにんあつかひにするのか? 樂人扱がくにんあつかひにりゃ、みゝ顛覆でんぐりかへらする音樂おんがくきかす。準備よういせい。
山中さんちゆうといふだいです。山中さんちゆうみゝきこえるものをいつとほりならべて、そしてものしづかなやま樣子ようすかんがへさせようとしたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かれすぐ自分じぶんちか手拭てぬぐひかぶつたおつぎの姿すがたおもむろにうごいてるのをた。それ同時どうじひそか草履ざうりおと勘次かんじみゝひゞいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ある午後ごゞ。ぱちツと不思議ふしぎをとがしました。さやけたのです。まめみゝをおさえたなり、べたにころげだしました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
良久やゝあつちひさな二輪車りんしやひゞきがしたとおもふと、みんなで一しよはなしをする澤山たくさんこゑが一みゝりました、あいちやんは其言葉そのことばけました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
と、れかられへとはなしつゞけていきひまい、ドクトルはみゝがガンとして、心臟しんざう鼓動こどうさへはげしくなつてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
このついでにほか裝飾品そうしよくひんについてべますが、この時分じぶんひとみゝにもいしつちつくつたおほきな耳飾みゝかざりをつけたのでした。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
正太しようたふでやのみせこしをかけて、のつれ/″\にしの戀路こひぢ小聲こゞゑにうたへば、あれ由斷ゆだんがならぬと内儀かみさまにわらはれて、なにがなしにみゝあかく
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あざむとりしといふ事家内の者のみゝいり見世にても取々とり/″\うはさありけるを吾助は聞て心に思ふやう此事もしも宅兵衞がきかば事むづかしかるべし夫のみならず見世の者にも顏を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
加之空氣も沈靜ちんせいなら光もしんめりしてゐて、自分の鼓動こどう、自分の呼吸こきふさへかすかみゝに響く………だから、眼前にゑて置く生暖なまあたたかい女の氣もヤンワリ周三の胸に通ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)