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兒玉
兒玉は
先程來、
多く
口を
開かず、
微笑して
人々の
氣焔を
聽て
居たが、
今突然出身の
學校を
問はれたので、
一寸口を
開き
得なかつたのである。
兒玉の
言々句々、
肺腑より
出で、
其顏には
熱誠の
色動いて
居るのを
見て、
人々は
流石に
耳を
傾むけて
謹聽するやうになつた。
『さうです、
故郷の
小學校です、
私立小學です』と
言つた
時の
兒玉の
顏は
眞面目であつたけれど、
人々は
笑ひ
出した。