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潛
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くゞ
ふりがな文庫
“
潛
(
くゞ
)” の例文
新字:
潜
是
(
これ
)
は
偉
(
えら
)
い!……
畫伯
(
ぐわはく
)
の
自若
(
じじやく
)
たるにも
我折
(
がを
)
つた。が、
御當人
(
ごたうにん
)
の、すまして、これから
又
(
また
)
澁谷
(
しぶや
)
まで
火
(
か
)
を
潛
(
くゞ
)
つて
歸
(
かへ
)
ると
言
(
い
)
ふには
舌
(
した
)
を
卷
(
ま
)
いた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
こんな
事
(
こと
)
を
口
(
くち
)
にする
宗助
(
そうすけ
)
は
別
(
べつ
)
に
不足
(
ふそく
)
らしい
顏
(
かほ
)
もしてゐなかつた。
御米
(
およね
)
も
夫
(
をつと
)
の
鼻
(
はな
)
の
穴
(
あな
)
を
潛
(
くゞ
)
る
烟草
(
たばこ
)
の
煙
(
けむ
)
を
眺
(
なが
)
める
位
(
くらゐ
)
な
氣
(
き
)
で、それを
聞
(
き
)
いてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
丹塗
(
にぬ
)
りの鳥居を
潛
(
くゞ
)
つて、
大銀杏
(
おほいてふ
)
の下に立つた時、小池は
斯
(
か
)
う言つて、お
光
(
みつ
)
の
襟足
(
えりあし
)
を
覗
(
のぞ
)
き込むやうにした。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
私の
手
(
て
)
はいつの
間
(
ま
)
にか
腋
(
わき
)
の
下
(
した
)
に
潛
(
くゞ
)
つてゐました。私は
東明館前
(
とうめいくわんまへ
)
から
右
(
みぎ
)
に
折
(
を
)
れて、
譯
(
わけ
)
もなく
明
(
あか
)
るく
賑
(
にぎや
)
かな
街
(
まち
)
の
片側
(
かたがは
)
を、
店々
(
みせ/\
)
に
添
(
そ
)
うて
神保町
(
じんぼうちやう
)
の
方
(
はう
)
へと歩いて行きました。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
平次は、返事に困つたらしいお徳の顏を見ると、その言ひ
遁
(
のが
)
れを封じるやうに、かう先を
潛
(
くゞ
)
りました。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
▼ もっと見る
言
(
い
)
ふまでもなく
馬
(
うま
)
を
打
(
う
)
つ
策
(
むち
)
は
僕
(
ぼく
)
の
頭上
(
づじやう
)
に
霰
(
あられ
)
の如く
落
(
お
)
ちて來た。
早速
(
さつそく
)
金
(
かね
)
で
傭
(
やと
)
はれた
其邊
(
そこら
)
の
舟子
(
ふなこ
)
共
(
ども
)
幾人
(
いくにん
)
は
魚
(
うを
)
の如く
水底
(
すゐてい
)
を
潛
(
くゞ
)
つて手に
觸
(
ふ
)
れる石といふ石は
悉
(
こと/″\
)
く
岸
(
きし
)
に
拾
(
ひろ
)
ひ
上
(
あげ
)
られた。
石清虚
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
鴨忽ち
潛
(
くゞ
)
り、既に近づける鷹の、怒りくづほれて空にかへるもこれにかはらじ 一三〇—一三二
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
何
(
な
)
にしろ
弱
(
よわ
)
つたらしい。……
舞臺
(
ぶたい
)
の
歸途
(
かへり
)
として、
今
(
いま
)
の
隧道
(
トンネル
)
を
越
(
こ
)
すのは、
芝居
(
しばゐ
)
の
奈落
(
ならく
)
を
潛
(
くゞ
)
るやうなものだ、いや、
眞個
(
まつたく
)
の
奈落
(
ならく
)
だつた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
老師
(
らうし
)
の
此
(
この
)
挨拶
(
あいさつ
)
に
對
(
たい
)
して、
丁寧
(
ていねい
)
に
禮
(
れい
)
を
述
(
の
)
べて、
又
(
また
)
十日
(
とをか
)
前
(
まへ
)
に
潛
(
くゞ
)
つた
山門
(
さんもん
)
を
出
(
で
)
た。
甍
(
いらか
)
を
壓
(
あつ
)
する
杉
(
すぎ
)
の
色
(
いろ
)
が、
冬
(
ふゆ
)
を
封
(
ふう
)
じて
黒
(
くろ
)
く
彼
(
かれ
)
の
後
(
うしろ
)
に
聳
(
そび
)
えた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
世間の噂の先を
潛
(
くゞ
)
つたやり方は、さすがに俵屋を切つて回す才女の氣の働きです。
銭形平次捕物控:311 鬼女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
水
(
みづ
)
ある
上
(
うへ
)
には、
横
(
よこ
)
に
渡
(
わた
)
つて
橋
(
はし
)
となり、
崖
(
がけ
)
なす
隈
(
くま
)
には、
草
(
くさ
)
を
潛
(
くゞ
)
つて
路
(
みち
)
となり、
家
(
いへ
)
ある
軒
(
のき
)
には、
斜
(
なゝ
)
めに
繞
(
めぐ
)
つて
暮行
(
くれゆ
)
く
秋
(
あき
)
の
思
(
おもひ
)
と
成
(
な
)
る。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
彼
(
かれ
)
は
其日
(
そのひ
)
役所
(
やくしよ
)
の
歸
(
かへ
)
り
掛
(
が
)
けに
駿河臺下
(
するがだいした
)
迄
(
まで
)
來
(
き
)
て、
電車
(
でんしや
)
を
下
(
お
)
りて、
酸
(
す
)
いものを
頬張
(
ほゝば
)
つた
樣
(
やう
)
な
口
(
くち
)
を
穿
(
すぼ
)
めて一二
町
(
ちやう
)
歩
(
ある
)
いた
後
(
のち
)
、ある
齒醫者
(
はいしや
)
の
門
(
かど
)
を
潛
(
くゞ
)
つたのである。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
八五郎が先に立つて、中田屋の
暖簾
(
のれん
)
を
潛
(
くゞ
)
ると
銭形平次捕物控:167 毒酒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「
失禮
(
しつれい
)
、
唯今
(
たゞいま
)
。」と
壁
(
かべ
)
の
中
(
なか
)
に、
爽
(
さわやか
)
な
少
(
わか
)
い
聲
(
こゑ
)
して、
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
がキイと
開
(
あ
)
くと、
蝶
(
てふ
)
のやうに
飜然
(
ひらり
)
と
出
(
で
)
て、ポンと
卷莨
(
まきたばこ
)
の
灰
(
はひ
)
を
落
(
おと
)
す。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
水
(
みづ
)
へ
流
(
なが
)
せば
何處
(
どこ
)
を
潛
(
くゞ
)
つて——
池
(
いけ
)
があります——
此
(
こ
)
の
人
(
ひと
)
の
住居
(
すまひ
)
へ
流
(
なが
)
れて
出
(
で
)
て、
中
(
なか
)
でも
祕
(
かく
)
さなければ
成
(
な
)
らないものの
目
(
め
)
に
留
(
と
)
まりさうで
身體
(
からだ
)
が
震
(
ふる
)
へる。
艶書
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と
言
(
い
)
ふ
袴
(
はかま
)
の
裾
(
すそ
)
を、サラ/\と
石
(
いし
)
を
潛
(
くゞ
)
つて、
草
(
くさ
)
の
下
(
した
)
行
(
ゆ
)
く
細流
(
さいりう
)
あり。
坂
(
さか
)
はたら/\と
雫
(
しづく
)
を
絞
(
しぼ
)
つて、
崕
(
がけ
)
から
路
(
みち
)
に
滴
(
したゝ
)
るのである。
月夜車
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
其
(
そ
)
の
門
(
もん
)
が、
又
(
また
)
……
貴方
(
あなた
)
、
表
(
おもて
)
でもなければ
潛
(
くゞ
)
りでもなくつて、
土塀
(
どべい
)
へついて
一𢌞
(
ひとまは
)
り
𢌞
(
まは
)
りました、
大
(
おほき
)
な
椎
(
しひ
)
の
樹
(
き
)
があります、
裏門
(
うらもん
)
で
木戸口
(
きどぐち
)
だつたと
申
(
まを
)
すんです。
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
あとで
聞
(
き
)
くと、
此
(
こ
)
の
夜汽車
(
よぎしや
)
が、
箱根
(
はこね
)
の
隧道
(
トンネル
)
を
潛
(
くゞ
)
つて
鐵橋
(
てつけう
)
を
渡
(
わた
)
る
刻限
(
こくげん
)
には、
内
(
うち
)
に
留守
(
るす
)
をした
女中
(
ぢよちう
)
が、
女主人
(
をんなしゆじん
)
のためにお
題目
(
だいもく
)
を
稱
(
とな
)
へると
言
(
い
)
ふ
約束
(
やくそく
)
だつたのださうである。
雨ふり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
辛
(
から
)
うじて
腕車
(
くるま
)
を
潛
(
くゞ
)
らしたれば、
網
(
あみ
)
の
目
(
め
)
にかゝつたやうに、
彼方
(
あなた
)
此方
(
こなた
)
を、
雀
(
すゞめ
)
がばら/\、
洞
(
ほら
)
に
蝙蝠
(
かうもり
)
の
居
(
ゐ
)
るやうだつた、と
車夫同士
(
くるまやどうし
)
語
(
かた
)
りなどして、しばらく
澁茶
(
しぶちや
)
に
市
(
いち
)
が
榮
(
さか
)
える。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
月
(
つき
)
ならぬ
眞晝
(
まひる
)
の
緋葉
(
もみぢ
)
を
潛
(
くゞ
)
つて、
仰
(
あふ
)
げば
同
(
おな
)
じ
姿
(
すがた
)
に、
遠
(
とほ
)
く
高
(
たか
)
き
峰
(
みね
)
の
緋葉
(
もみぢ
)
は
蒼空
(
あをぞら
)
を
舞
(
ま
)
つて
海
(
うみ
)
に
散
(
ち
)
る……
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「あい、」といつて
苫
(
とま
)
を
潛
(
くゞ
)
つて
這
(
は
)
ふやうにして
船
(
ふね
)
から
出
(
で
)
た、
與吉
(
よきち
)
はづツと
立
(
た
)
つて
板
(
いた
)
を
渡
(
わた
)
つた。
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
身
(
み
)
を
聳
(
そびや
)
かして
立
(
た
)
つた、と
思
(
おも
)
へば、
畫師
(
ゑし
)
の
身體
(
からだ
)
はするりと
入
(
はひ
)
つて、
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
はぴたりと
閉
(
しま
)
つた。
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
二日
(
ふつか
)
の
日
(
ひ
)
の
午後
(
ごご
)
、
火
(
ひ
)
と
煙
(
けむり
)
を
三方
(
さんぱう
)
に
見
(
み
)
ながら、
秋
(
あき
)
の
暑
(
あつ
)
さは
炎天
(
えんてん
)
より
意地
(
いぢ
)
が
惡
(
わる
)
く、
加
(
くは
)
ふるに
砂煙
(
さえん
)
の
濛々
(
もう/\
)
とした
大地
(
だいち
)
に
茣蓙
(
ござ
)
一枚
(
いちまい
)
の
立退所
(
たちのきじよ
)
から、
軍
(
いくさ
)
のやうな
人
(
ひと
)
ごみを、
拔
(
ぬ
)
けつ、
潛
(
くゞ
)
りつ
間引菜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
上野
(
うへの
)
の
汽車
(
きしや
)
最後
(
さいご
)
の
停車場
(
ステエシヨン
)
に
達
(
たつ
)
すれば、
碓氷峠
(
うすひたうげ
)
の
馬車
(
ばしや
)
に
搖
(
ゆ
)
られ、
再
(
ふたゝ
)
び
汽車
(
きしや
)
にて
直江津
(
なほえつ
)
に
達
(
たつ
)
し、
海路
(
かいろ
)
一文字
(
いちもんじ
)
に
伏木
(
ふしき
)
に
至
(
いた
)
れば、
腕車
(
わんしや
)
十
錢
(
せん
)
富山
(
とやま
)
に
赴
(
おもむ
)
き、
四十物町
(
あへものちやう
)
を
通
(
とほ
)
り
拔
(
ぬ
)
けて、
町盡
(
まちはづれ
)
の
杜
(
もり
)
を
潛
(
くゞ
)
らば
蛇くひ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
……
一人
(
ひとり
)
や
二人
(
ふたり
)
はあつたらうが、
場所
(
ばしよ
)
が
廣
(
ひろ
)
いし、
殆
(
ほとん
)
ど
影
(
かげ
)
もないから
寂寞
(
ひつそり
)
して
居
(
ゐ
)
た。
柄
(
え
)
を
持
(
も
)
つた
手許
(
てもと
)
をスツと
潛
(
くゞ
)
つて、
目
(
め
)
の
前
(
まへ
)
へ、
恐
(
おそ
)
らく
鼻
(
はな
)
と
並
(
なら
)
ぶくらゐに
衝
(
つ
)
と
鮮
(
あざや
)
かな
色彩
(
しきさい
)
を
見
(
み
)
せた
蟲
(
むし
)
がある。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「
御免
(
ごめん
)
。」と
衝
(
つ
)
と
膝
(
ひざ
)
を
進
(
すゝ
)
めて、
畫
(
ゑ
)
の
面
(
おもて
)
にひたと
向
(
むか
)
うて、
熟
(
じつ
)
と
見
(
み
)
るや、
眞晝
(
まひる
)
の
柳
(
やなぎ
)
に
風
(
かぜ
)
も
無
(
な
)
く、
寂
(
しん
)
として
眠
(
ねむ
)
れる
如
(
ごと
)
き、
丹塗
(
にぬり
)
の
門
(
もん
)
の
傍
(
かたはら
)
なる、
其
(
そ
)
の
柳
(
やなぎ
)
の
下
(
もと
)
の
潛
(
くゞ
)
り
門
(
もん
)
、
絹地
(
きぬぢ
)
を
拔
(
ぬ
)
けて、するりと
開
(
あ
)
くと
画の裡
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
冷
(
ひやつ
)
こく、
宛然
(
さながら
)
網
(
あみ
)
の
下
(
した
)
を、
水
(
みづ
)
が
潛
(
くゞ
)
つて
寄
(
よ
)
せ
來
(
く
)
るやう、
砂地
(
すなぢ
)
に
立
(
た
)
つてても
身體
(
からだ
)
が
搖
(
ゆら
)
ぎさうに
思
(
おも
)
はれて、
不安心
(
ふあんしん
)
でならぬから、
浪
(
なみ
)
が
襲
(
おそ
)
ふとすた/\と
後
(
あと
)
へ
退
(
の
)
き、
浪
(
なみ
)
が
返
(
かへ
)
るとすた/\と
前
(
まへ
)
へ
進
(
すゝ
)
んで
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
尤
(
もつと
)
も、二
時
(
じ
)
過
(
す
)
ぎに
參
(
まゐ
)
つたんですから、
門
(
もん
)
も
潛
(
くゞ
)
りも
閉
(
しま
)
つて
居
(
ゐ
)
て、
裏
(
うら
)
へ
𢌞
(
まは
)
つたも
分
(
わか
)
りましたが、
後
(
のち
)
に
聞
(
き
)
けば
何
(
ど
)
うでせう……
其
(
そ
)
の
木戸
(
きど
)
は、
病院
(
びやうゐん
)
で、
死
(
し
)
にました
死骸
(
しがい
)
ばかりを、
密
(
そつ
)
と
内證
(
ないしよう
)
で
出
(
だ
)
します
浅茅生
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
此
(
こ
)
の
景色
(
けしき
)
の
中
(
なか
)
を、しばらくして、
門
(
もん
)
の
柳
(
やなぎ
)
を
潛
(
くゞ
)
り、
帳場
(
ちやうば
)
の
入
(
い
)
らつしやい——を
横
(
よこ
)
に
聞
(
き
)
いて、
深
(
ふか
)
い
中庭
(
なかには
)
の
青葉
(
あをば
)
を
潛
(
くゞ
)
つて、
別
(
べつ
)
にはなれに
構
(
かま
)
へた
奧玄關
(
おくげんくわん
)
に
俥
(
くるま
)
が
着
(
つ
)
いた。
旅館
(
りよくわん
)
の
名
(
な
)
の
合羽屋
(
かつぱや
)
もおもしろい。
城崎を憶ふ
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
清々
(
すが/\
)
しいのは、かけ
湯
(
ゆ
)
の
樋
(
ひ
)
の
口
(
くち
)
をちら/\と、こぼれ
出
(
で
)
て、
山
(
やま
)
の
香
(
か
)
の
芬
(
ぷん
)
と
薫
(
かを
)
る、
檜
(
ひのき
)
、
槇
(
まき
)
など
新緑
(
しんりよく
)
の
木
(
き
)
の
芽
(
め
)
である。
松葉
(
まつば
)
もすら/\と
交
(
まじ
)
つて、
浴槽
(
よくさう
)
に
浮
(
う
)
いて、
潛
(
くゞ
)
つて、
湯
(
ゆ
)
の
搖
(
ゆ
)
るゝがまゝに
舞
(
ま
)
ふ。
飯坂ゆき
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
村
(
むら
)
へ
掛
(
かゝ
)
ると、
降積
(
ふりつも
)
つた
大竹藪
(
おほたけやぶ
)
を
弓形
(
ゆみなり
)
に
壓
(
あつ
)
したので、
眞白
(
まつしろ
)
な
隧道
(
トンネル
)
を
潛
(
くゞ
)
る
時
(
とき
)
、
雀
(
すゞめ
)
が、ばら/\と
千鳥
(
ちどり
)
に
兩方
(
りやうはう
)
へ
飛交
(
とびかは
)
して
小蓑
(
こみの
)
を
亂
(
みだ
)
す
其
(
そ
)
の
翼
(
つばさ
)
に、
藍
(
あゐ
)
と
萌黄
(
もえぎ
)
と
紅
(
くれなゐ
)
の、
朧
(
おぼろ
)
に
蝋燭
(
らふそく
)
に
亂
(
みだ
)
れたのは、
鶸
(
ひわ
)
、
山雀
(
やまがら
)
、
鸞
(
うそ
)
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
この
水草
(
みづくさ
)
はまた
年
(
とし
)
久
(
ひさ
)
しく、
船
(
ふね
)
の
底
(
そこ
)
、
舷
(
ふなばた
)
に
搦
(
から
)
み
附
(
つ
)
いて、
恰
(
あたか
)
も
巖
(
いはほ
)
に
苔蒸
(
こけむ
)
したかのやう、
與吉
(
よきち
)
の
家
(
いへ
)
をしつかりと
結
(
ゆは
)
へて
放
(
はな
)
しさうにもしないが、
大川
(
おほかは
)
から
汐
(
しほ
)
がさして
來
(
く
)
れば、
岸
(
きし
)
に
茂
(
しげ
)
つた
柳
(
やなぎ
)
の
枝
(
えだ
)
が
水
(
みづ
)
に
潛
(
くゞ
)
り
三尺角
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
いづれ
美人
(
びじん
)
には
縁
(
えん
)
なき
衆生
(
しゆじやう
)
、
其
(
それ
)
も
嬉
(
うれ
)
しく、
外廓
(
そとぐるわ
)
を
右
(
みぎ
)
に、やがて
小
(
ちひ
)
さき
鳥居
(
とりゐ
)
を
潛
(
くゞ
)
れば、
二
(
に
)
の
丸
(
まる
)
の
石垣
(
いしがき
)
、
急
(
きふ
)
に
高
(
たか
)
く、
目
(
め
)
の
下
(
した
)
忽
(
たちま
)
ち
濠
(
ほり
)
深
(
ふか
)
く、
水
(
みづ
)
はやゝ
涸
(
か
)
れたりと
雖
(
いへど
)
も、
枯蘆
(
かれあし
)
萱
(
かや
)
の
類
(
たぐひ
)
、
細路
(
ほそみち
)
をかけて、
霜
(
しも
)
を
鎧
(
よろ
)
ひ
城の石垣
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
熟
(
じつ
)
と
瞳
(
ひとみ
)
を
定
(
さだ
)
めると、
其處
(
そこ
)
に
此處
(
こゝ
)
に、それ
彼處
(
あすこ
)
に、
其
(
そ
)
の
數
(
かず
)
の
夥
(
おびたゞ
)
しさ、
下
(
した
)
に
立
(
た
)
つたものは、
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
の
隧道
(
トンネル
)
を
潛
(
くゞ
)
るのである。
往來
(
ゆきき
)
はあるが、
誰
(
だれ
)
も
氣
(
き
)
がつかないらしい。
一
(
ひと
)
つ
二
(
ふた
)
つは
却
(
かへ
)
つてこぼれて
目
(
め
)
に
着
(
つ
)
かう。
番茶話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
駈
(
か
)
け
込
(
こ
)
むやうに、
門外
(
もんそと
)
の
柳
(
やなぎ
)
を
潛
(
くゞ
)
つて、
格子戸
(
かうしど
)
の
前
(
まへ
)
の
梅
(
うめ
)
を
覗
(
のぞ
)
くと、
二疊
(
にでふ
)
に
一人
(
ひとり
)
机
(
つくゑ
)
を
控
(
ひか
)
へてた
書生
(
しよせい
)
が
居
(
ゐ
)
て、はじめて
逢
(
あ
)
つた、
春葉
(
しゆんえふ
)
である。十七だから、
髯
(
ひげ
)
なんか
生
(
は
)
やさない、
五分刈
(
ごぶがり
)
の
長
(
なが
)
い
顏
(
かほ
)
で、
仰向
(
あふむ
)
いた。
麻を刈る
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
大
(
おほい
)
なる
蝙蝠
(
かうもり
)
のやうに、
煙
(
けむり
)
がむら/\と
隙間
(
すきま
)
を
潛
(
くゞ
)
つた。
魔法罎
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
潛
部首:⽔
15画
“潛”を含む語句
潛戸
潛込
掻潛
水潛
潛伏
潛女
潛門
潛龍沙魚