くゞ)” の例文
新字:
これえらい!……畫伯ぐわはく自若じじやくたるにも我折がをつた。が、御當人ごたうにんの、すまして、これからまた澁谷しぶやまでくゞつてかへるとふにはしたいた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こんなことくちにする宗助そうすけべつ不足ふそくらしいかほもしてゐなかつた。御米およねをつとはなあなくゞ烟草たばこけむながめるくらゐで、それをいてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
丹塗にぬりの鳥居をくゞつて、大銀杏おほいてふの下に立つた時、小池はう言つて、おみつ襟足えりあしのぞき込むやうにした。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
私のはいつのにかわきしたくゞつてゐました。私は東明館前とうめいくわんまへからみぎれて、わけもなくあかるくにぎやかなまち片側かたがはを、店々みせ/\うて神保町じんぼうちやうはうへと歩いて行きました。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
平次は、返事に困つたらしいお徳の顏を見ると、その言ひのがれを封じるやうに、かう先をくゞりました。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
ふまでもなくうまむちぼく頭上づじやうあられの如くちて來た。早速さつそくかねやとはれた其邊そこら舟子ふなこども幾人いくにんうをの如く水底すゐていくゞつて手にれる石といふ石はこと/″\きしひろあげられた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
鴨忽ちくゞり、既に近づける鷹の、怒りくづほれて空にかへるもこれにかはらじ 一三〇—一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
にしろよわつたらしい。……舞臺ぶたい歸途かへりとして、いま隧道トンネルすのは、芝居しばゐ奈落ならくくゞるやうなものだ、いや、眞個まつたく奈落ならくだつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけ老師らうしこの挨拶あいさつたいして、丁寧ていねいれいべて、また十日とをかまへくゞつた山門さんもんた。いらかあつするすぎいろが、ふゆふうじてくろかれうしろそびえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
世間の噂の先をくゞつたやり方は、さすがに俵屋を切つて回す才女の氣の働きです。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
みづあるうへには、よこわたつてはしとなり、がけなすくまには、くさくゞつてみちとなり、いへあるのきには、なゝめにめぐつて暮行くれゆあきおもひる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ其日そのひ役所やくしよかへけに駿河臺下するがだいしたまでて、電車でんしやりて、いものを頬張ほゝばつたやうくち穿すぼめて一二ちやうあるいたのち、ある齒醫者はいしやかどくゞつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
八五郎が先に立つて、中田屋の暖簾のれんくゞると
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
失禮しつれい唯今たゞいま。」とかべなかに、さわやかわかこゑして、くゞもんがキイとくと、てふのやうに飜然ひらりて、ポンと卷莨まきたばこはひおとす。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みづながせば何處どこくゞつて——いけがあります——ひと住居すまひながれてて、なかでもかくさなければらないもののまりさうで身體からだふるへる。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はかますそを、サラ/\といしくゞつて、くさした細流さいりうあり。さかはたら/\としづくしぼつて、がけからみちしたゝるのである。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
もんが、また……貴方あなたおもてでもなければくゞりでもなくつて、土塀どべいへついて一𢌞ひとまは𢌞まはりました、おほきしひがあります、裏門うらもん木戸口きどぐちだつたとまをすんです。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あとでくと、夜汽車よぎしやが、箱根はこね隧道トンネルくゞつて鐵橋てつけうわた刻限こくげんには、うち留守るすをした女中ぢよちうが、女主人をんなしゆじんのためにお題目だいもくとなへると約束やくそくだつたのださうである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
からうじて腕車くるまくゞらしたれば、あみにかゝつたやうに、彼方あなた此方こなたを、すゞめがばら/\、ほら蝙蝠かうもりるやうだつた、と車夫同士くるまやどうしかたりなどして、しばらく澁茶しぶちやいちさかえる。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
つきならぬ眞晝まひる緋葉もみぢくゞつて、あふげばおな姿すがたに、とほたかみね緋葉もみぢ蒼空あをぞらつてうみる……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「あい、」といつてとまくゞつてふやうにしてふねからた、與吉よきちはづツとつていたわたつた。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そびやかしてつた、とおもへば、畫師ゑし身體からだはするりとはひつて、くゞもんはぴたりとしまつた。
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
二日ふつか午後ごごけむり三方さんぱうながら、あきあつさは炎天えんてんより意地いぢわるく、くはふるに砂煙さえん濛々もう/\とした大地だいち茣蓙ござ一枚いちまい立退所たちのきじよから、いくさのやうなひとごみを、けつ、くゞりつ
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上野うへの汽車きしや最後さいご停車場ステエシヨンたつすれば、碓氷峠うすひたうげ馬車ばしやられ、ふたゝ汽車きしやにて直江津なほえつたつし、海路かいろ一文字いちもんじ伏木ふしきいたれば、腕車わんしやせん富山とやまおもむき、四十物町あへものちやうとほけて、町盡まちはづれもりくゞらば
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……一人ひとり二人ふたりはあつたらうが、場所ばしよひろいし、ほとんかげもないから寂寞ひつそりしてた。つた手許てもとをスツとくゞつて、まへへ、おそらくはなならぶくらゐにあざやかな色彩しきさいせたむしがある。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
御免ごめん。」とひざすゝめて、おもてにひたとむかうて、じつるや、眞晝まひるやなぎかぜく、しんとしてねむれるごとき、丹塗にぬりもんかたはらなる、やなぎもとくゞもん絹地きぬぢけて、するりとくと
画の裡 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ひやつこく、宛然さながらあみしたを、みづくゞつてるやう、砂地すなぢつてても身體からだゆらぎさうにおもはれて、不安心ふあんしんでならぬから、なみおそふとすた/\とあと退き、なみかへるとすた/\とまへすゝんで
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もつとも、二ぎにまゐつたんですから、もんくゞりもしまつてて、うら𢌞まはつたもわかりましたが、のちけばうでせう……木戸きどは、病院びやうゐんで、にました死骸しがいばかりを、そつ内證ないしようします
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
景色けしきなかを、しばらくして、もんやなぎくゞり、帳場ちやうばらつしやい——をよこいて、ふか中庭なかには青葉あをばくゞつて、べつにはなれにかまへた奧玄關おくげんくわんくるまいた。旅館りよくわん合羽屋かつぱやもおもしろい。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
清々すが/\しいのは、かけくちをちら/\と、こぼれて、やまぷんかをる、ひのきまきなど新緑しんりよくである。松葉まつばもすら/\とまじつて、浴槽よくさういて、くゞつて、るゝがまゝにふ。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むらかゝると、降積ふりつもつた大竹藪おほたけやぶ弓形ゆみなりあつしたので、眞白まつしろ隧道トンネルくゞときすゞめが、ばら/\と千鳥ちどり兩方りやうはう飛交とびかはして小蓑こみのみだつばさに、あゐ萌黄もえぎくれなゐの、おぼろ蝋燭らふそくみだれたのは、ひわ山雀やまがらうそ
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この水草みづくさはまたとしひさしく、ふねそこふなばたからいて、あたかいはほ苔蒸こけむしたかのやう、與吉よきちいへをしつかりとゆはへてはなしさうにもしないが、大川おほかはからしほがさしてれば、きししげつたやなぎえだみづくゞ
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
いづれ美人びじんにはえんなき衆生しゆじやうそれうれしく、外廓そとぐるわみぎに、やがてちひさき鳥居とりゐくゞれば、まる石垣いしがききふたかく、したたちまほりふかく、みづはやゝれたりといへども、枯蘆かれあしかやたぐひ細路ほそみちをかけて、しもよろ
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じつひとみさだめると、其處そこ此處こゝに、それ彼處あすこに、かずおびたゞしさ、したつたものは、赤蜻蛉あかとんぼ隧道トンネルくゞるのである。往來ゆききはあるが、だれがつかないらしい。ひとふたつはかへつてこぼれてかう。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
むやうに、門外もんそとやなぎくゞつて、格子戸かうしどまへうめのぞくと、二疊にでふ一人ひとりつくゑひかへてた書生しよせいて、はじめてつた、春葉しゆんえふである。十七だから、ひげなんかやさない、五分刈ごぶがりながかほで、仰向あふむいた。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おほいなる蝙蝠かうもりのやうに、けむりがむら/\と隙間すきまくゞつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)