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絹地
その
娘は、
日がさを
借りてさしてみました。そして、
仰ぎますと、うすい
絹地をとおして
太陽の
光が、まばゆく、
顔の
上に
映るような
気がしました。
私は先年、秋田県の
花輪町の
染め
物屋に
頼んで、
絹地にこの
紫根染めをしてもらったが、なかなかゆかしい
地色ができ、これを娘の
羽織に仕立てた。
態と
慇懃に
應接うて、
先生、
拜見とそゝり
立てると、
未熟ながら、
御覽下さいましとて、
絹地の
大幅を
其へ
展く。
其都度御米は
眞丸な
縁の
燒けた
銀の
月と、
絹地から
殆んど
區別出來ない
樣な
穗芒の
色を
眺めて、
斯んなものを
珍重する
人の
氣が
知れないと
云ふ
樣な
見えをした。