“家(いへ)” の例文
が、道行(みちゆき)にしろ、喧嘩(けんくわ)にしろ、其(そ)の出(で)て来(き)た処(ところ)が、遁(に)げるにも忍(しの)んで出(で)るにも、背後(うしろ)に、村(むら)、里(さと)、松並木(まつなみき)、畷(なはて)も家(いへ)も有(あ)るのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
鍬(くは)を擔(かつ)いで遺跡(ゐせき)さぐりに歩(ある)き、貝塚(かひづか)を泥(どろ)だらけに成(な)つて掘(ほ)り、其(その)掘出(ほりだ)したる土器(どき)の破片(はへん)を背負(せお)ひ、然(さ)うして家(いへ)に歸(かへ)つて井戸端(ゐどばた)で洗(あら)ふ。
さて、屋根(やね)の上(うへ)に千人(せんにん)、家(いへ)のまはりの土手(どて)の上(うへ)に千人(せんにん)といふ風(ふう)に手分(てわ)けして、天(てん)から降(お)りて來(く)る人々(ひと/″\)を撃(う)ち退(しりぞ)ける手(て)はずであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
彼(かれ)は捕(とら)へられて家(いへ)に引返(ひきかへ)されたが、女主人(をんなあるじ)は醫師(いしや)を招(よ)びに遣(や)られ、ドクトル、アンドレイ、エヒミチは來(き)て彼(かれ)を診察(しんさつ)したのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其頃(そのころ)は東京(とうきやう)の家(いへ)を疊(たゝ)むとき、懷(ふところ)にして出(で)た金(かね)は、殆(ほと)んど使(つか)ひ果(は)たしてゐた。彼(かれ)の福岡(ふくをか)生活(せいくわつ)は前後(ぜんご)二年(ねん)を通(つう)じて、中々(なか/\)の苦鬪(くとう)であつた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
神樣(かみさま)、どうかお聽(き)きになつてください。私(わたし)はあなたもよく御承知(ごしやうち)ののんべえ です。私(わたし)がのんべえ なために家(いへ)の生計(くらし)は火(ひ)の車(くるま)です。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
十六ではまだ針(はり)を持(も)たなくつてもいゝといふのはそれは無理(むり)ではない。然(しか)し勘次(かんじ)の家(いへ)でおつぎの一向(かう)針(はり)を知(し)らぬことは不便(ふべん)であつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
着(つけ)られしかば斯の如く後(あと)へ廻されしなり然(さ)れば先(まづ)再び馬鹿子息(ばかむすこ)五郎藏を糺(たゞ)さんと思はれ越前守殿コリヤ五郎藏其方の妻(さい)は何故汝(なんぢ)が家(いへ)を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
靜かな砂道の兩側に、四五軒づゝ並んだ漁夫の家(いへ)の草屋根の上に軟い日光は何とも云へぬ平和な光を投げてゐる。人は一人も通らない。
新帰朝者日記 拾遺 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
塾(じゆく)は家族的(かぞくてき)の組織(そしき)であるから各人(かくじん)共同(きようどう)の物(もの)である、塾生(じゆくせい)は此處(こゝ)を自分(じぶん)の家(いへ)と心得(こゝろえ)て何事(なにごと)も自分(じぶん)に責任(せきにん)を持(も)つて遣(や)らねばなりません。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
家(うち)に居(ゐ)る時(とき)は齋藤(さいとう)の娘(むすめ)、嫁入(よめい)つては原田(はらだ)の奧方(おくがた)ではないか、勇(いさむ)さんの氣(き)に入(い)る樣(やう)にして家(いへ)の内(うち)を納(おさ)めてさへ行(ゆ)けば何(なん)の子細(しさい)は無(な)い
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
起(き)の人(ひと)と爲(な)りや(六二)猜忍(さいにん)の人也(ひとなり)。其少(そのわか)き時(とき)、家(いへ)、千金(きん)を累(かさ)ねしが、(六三)游仕(いうし)遂(と)げず、遂(つひ)に其家(そのいへ)を破(やぶ)る。(六四)郷黨(きやうたう)之(これ)を笑(わら)ふ。
此時(このとき)家(いへ)の戸(と)が開(あ)いて、大(おほ)きな皿(さら)が歩兵(ほへい)の頭(あたま)の上(うへ)を眞直(まつすぐ)に、それから鼻(はな)の尖(さき)を掠(かす)つて、背後(うしろ)にあつた一本(ぽん)の木(き)に當(あた)つて粉々(こな/″\)に破(こわ)れました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
自分(じぶん)の馬(うま)はのろくてとても叶(かな)ひませんので、その馬(うま)をほしく思(おも)ひ、いろ/\話(はなし)をして馬(うま)を取(と)りかへてもらひ、喜(よろこ)んで家(いへ)へかへりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
もともと奴(やつこ)といふ名からして、大昔から貶(いやし)められ、罵しられた卑稱で、あやつ、こやつ、やつ、やつこ、家(いへ)の子、家(や)ツ子だといふことだ。
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
火事(かじ)の時(とき)には防火樹(ぼうかじゆ)として非常(ひじよう)に役(やく)に立(た)ち家(いへ)も燒(や)かずに濟(す)み、時(とき)には人(ひと)の命(いのち)すら救(すく)はれることがあることも忘(わす)れてはなりません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
勿論彼は密送前(みつそうまへ)から本葬にかゝるまで十日(か)の余(よ)も、嫂(あによめ)の弟に当(あた)る人の家(いへ)の二階(かい)の離(はな)れに閉籠(とぢこも)つてゐて叮重(ていちやう)にされゝばされるほど気が痛んだ。
閾 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『私(わたし)は是非(ぜひ)怠惰屋(なまけや)になるのだ、是非(ぜひ)なるのだ』と言張(いひは)つて聽(き)かない。櫻(さくら)の皮(かは)を剥(む)くどころか、家(いへ)の隅(すみ)の方(はう)へすつこんで了(しま)つて茫然(ぼんやり)して居る。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
預(あづ)かつた覚(おぼ)えはないと云(い)ふのは酷(ひど)い奴(やつ)だ、塩原(しほばら)の家(いへ)へ草を生(は)やさずに置くべきか、と云(い)つて吾妻橋(あづまばし)からドンブリと身を投げた。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
あれは子ープルスの家(いへ)の三階(がい)から見(み)へるエリノ島(しま)にその儘(まんま)です事(こと)、此方(こなた)のは頭(あたま)の禿(は)げた老爺(おぢい)さんが魚(さかな)を釣(つ)つて居(を)る形(かたち)によく似(に)て居(ゐ)ますねえ。
友(とも)と二人(ふたり)でブラリと家(いへ)を出(で)た。固(もと)より何處(どこ)へ行(ゆ)かうといふ、的(あて)もないのだが、話(はなし)にも厭(あ)きが來(き)たので、所在なさに散歩(さんぽ)と出掛(でか)けたのであツた。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「お城と言はないのが見付けものさ、——いづれお家(いへ)の重寶友切丸(ともきりまる)かなんか紛失して、易者(えきしや)の代りに俺のところへ來ると言つた寸法だらうよ」
いづれも「家(いへ)」に生命を感じた古(いにし)へびとの面目(めんもく)を見るやうである。かう云ふ感情は我我の中にもとうの昔に死んでしまつた。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
毎年(まいねん)、田(た)の穫(と)り入(い)れがすむと、やはり家(いへ)を作(つく)りかへ、或(あるひ)は屋根(やね)を葺(ふ)き替(か)へたりして、おなじく、新室(にひむろ)のうたげを行(おこな)ひました。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
○さるほどに妻(つま)は家(いへ)にかへり炉(ろ)に火を焼(たき)たて、あたゝかなるものくはせんとさま/″\にしつらへ待居(まちゐ)たりしに、時うつれども皈(かへ)りきたらず。
否(いな)、一代(だい)のうちでも、家(いへ)に死者(ししや)が出來(でき)れば、その家(いへ)は汚(けが)れたものと考(かんが)へ、屍(しかばね)を放棄(はうき)して、別(べつ)に新(あたら)しい家(いへ)を作(つく)つたのである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
村の人達は、富江を淡白(きさく)な、さばけた、面白い女(ひと)として心置なく待遇(あしら)つてゐる。殊にも小川の母——お柳にはお贔負(きにいり)で、よく其(その)家(いへ)にも出入する。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「わたくし、日本詞(ことば)、よく、駄目です。——あなた、わたくし、家(いへ)、來て下さい……」と、婦人は覺束ない詞で云つた。
ハルピンの一夜 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
二人(ふたり)の少年(せうねん)が泊(とま)つた家(いへ)は、隣村(りんそん)にも名(な)だたる豪家(がうか)であつた。門(もん)のわきには大(おほ)きな柊(ひいらぎ)の木(き)が、青(あを)い空(そら)にそヽりたつてゐた。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
そして彼(かれ)と彼女(かれ)とは、子供(こども)を抱(だ)いて家(いへ)を出(で)るのであつた。けれども、どこと云(い)つてあてもないので、二人(ふたり)はやはり電車(でんしや)にのつて銀座(ぎんざ)に出(で)てしまつた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
山(やま)を切(き)り崩(くづ)して、それに引添(ひきそ)ふやうに建(た)てられたこの家(いへ)の二階(かい)からは、丁度(ちやうど)迫(せま)らぬ程度(ていど)にその斜面(しやめん)と空(そら)の一部(ぶ)とが、仰臥(ぎやうぐわ)してゐる私(わたし)の目(め)に入(はい)つて來(く)る。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
子に見せながら、この子をもう一人かうして出れば後(あと)には心残りがない。家(うち)へ帰りたい帰りたいと思つた家(いへ)と云ふものは実はこんなものなのかと思つた。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
形容詞(けいやうし)=世界主義(せかいしゆぎ)の。宇宙的(うちうてき)。非地方的(ひちはうてき)。四海(かい)を家(いへ)とする。一所不住(しよふぢう)の。一視同仁(しどうじん)の。國家的觀念(こくかてきくわんねん)を超脱(てうだつ)せる。
そして其(その)向ふに、同じつくりの二階屋がずらりと幾軒(いくけん)も並んで、其(そ)の裏を見せて居(ゐ)る。二階屋の裏! 其処(そこ)には蚊帳(かや)が釣つたまゝになつて居(を)る家(いへ)もあつた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
斗滿川(とまむがは)は余(よ)が家(いへ)を去(さ)る半町餘(はんちやうよ)の處(ところ)に在(あ)り。朝夕(あさゆふ)灌水(くわんすゐ)に赴(おもむ)くに、如何(いか)なる嚴寒(げんかん)大雪(おほゆき)の候(こう)と雖(いへど)も、浴衣(ゆかた)を纒(まと)ひ、草履(ざうり)を穿(うが)つのみにて、他(た)に何等(なんら)の防寒具(ばうかんぐ)を用(もち)ゐず。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
さうして家(いへ)の潰(つぶ)れ方(かた)が圖(ず)に示(しめ)された通(とほ)りであつたならば、生徒中(せいとちゆう)に一人(ひとり)の負傷者(ふしようしや)も出來(でき)ず、「しやがんだまゝ外(そと)へ出(で)よ」との第二號令(だいにごうれい)で、全員(ぜんいん)秩序(ちつじよ)を亂(みだ)さず
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
父は午後の二時頃から自分を連れて平七の家(いへ)へ行つた。村の南の外れの明神の森から、北の端の平七の家へ行くには、村の眞ん中を突き切らねばならなかつた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
そこには父(とう)さんのお家(いへ)の御先祖(ごせんぞ)さま達(たち)も、紅(あか)い椿(つばき)の花(はな)なぞの咲(さ)くところで靜(しづ)かに眠(ねむ)つて居(を)りました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
お母様も家(いへ)が貧乏な丈(だ)けにこれを聞くにつけてもお玉の美しいのがいぢらしくてなりませぬ。
金銀の衣裳 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
其頃(そのころ)私(わたし)は山田(やまだ)の家(うち)を出て四番町(よんばんちやう)の親戚(しんせき)に寄寓(きぐう)して居(ゐ)ましたから、石橋(いしばし)と計(はか)つて、同益社(どうえきしや)の真向(まむかう)に一軒(いつけん)の家(いへ)を借(か)りて、之(これ)に我楽多文庫(がらくたぶんこ)発行所(はつかうしよ)硯友社(けんいうしや)なる看板(かんばん)を上げたのでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ともしびの明石(あかし)大門(おほと)に入(い)らむ日(ひ)や榜(こ)ぎ別(わか)れなむ家(いへ)のあたり見(み)ず 〔巻三・二五四〕 柿本人麿
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
さては此家(いへ)あるじこそは、土地に匹儔(たぐひ)なき美人なりしなれ、疲れたる旅人二人に、一杯(ひとつき)の飮(のみもの)を惠み給はんやと云へば、いと易き程の御事なり、戸外に持ち出でてまゐらせん
生(い)ける銃架(じうか)。おう家(いへ)を離(はな)れて野(の)に結(むす)ぶ眠(ねむ)りの裡(うち)に、風(かぜ)は故郷(こきやう)のたよりをお前(まへ)に伝(つた)へないのか
夜更けて帰つて来た某君の話に由(よ)ると日本の公娼を抱へた家(いへ)は二十戸以上もあると云ふ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛、与謝野晶子(著)
旦那様(だんなさま)が鹿児島の戦争で討死(うちじに)をなされた後は、賃機(ちんはた)織つて一人の御子息を教育なされたのが、愈々(いよ/\)学校卒業と云ふ時に肺結核で御亡(おなく)なり、——大和君の家(いへ)は元(も)と越後の豪農です
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ロミオ 二度(ど)と問(と)はれいでも話(はな)しませう。仇敵(かたき)の家(いへ)で酒宴(しゅえん)の最中(さいちゅう)、だまし撃(うち)に予(わし)に創(きず)を負(お)はした者(もの)があったを、此方(こち)からも手(て)を負(お)はした。二人(ふたり)の受(う)けた創(きず)は貴僧(こなた)の藥力(やくりき)を借(か)れば治(なほ)る。
宿と云つても、幾竈(いくかまど)もあるおほ家(いへ)の入口の戸を、邪魔になる大鍵で開けて、三階か四階へ、蝋(らふ)マッチを擦(す)り擦(す)り登つて行つて、やうやう chambre(シヤンブル) garnie(ガルニイ) の前に来るのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
御覧(ごらん)よ、まだあの小父(おぢ)さんが居(ゐ)るよと小守娘(こもりむすめ)の指を差し候(そろ)によれば其(その)時の小生(せうせい)は小父(おぢ)さんに候(そろ)。猶(なほ)こゝに附記(ふき)すべき要件(えうけん)有之(これあり)兄(あに)さんの帰りは必ずよその家(いへ)に飲めもせぬ一抔の熱燗(あつかん)を呼び候(そろ)へども。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
わが家(いへ)の遠(とほ)つ代(よ)にひとり美しき娘ありしといふ雨夜(あまよ)夜ざくら
桜 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
しみじみと酒を控へて涼しきはこの大き家(いへ)の葦原の映(はえ)
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)