はな)” の例文
仕立屋さんはそのつぼをみんなしらべて、いちいちもちあげては、はなをくっつけてみました。そのあげくのはてに、こういいました。
おばあさんは、いい香水こうすいにおいが、少女しょうじょからだにしみているとみえて、こうしてはなしているあいだに、ぷんぷんとはなにくるのをかんじました。
月夜と眼鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ものゝかんかた非常ひじやう鋭敏えいびんで、はなみゝはだなどにれるものをするどることの出來できめづらしい文學者ぶんがくしやであつたことをせてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「ここの山際やまぎわから、彼方かなた、石井山のかわずはなの下まで、筑前が馬を走らすゆえ、その馬蹄のあとを、築堤の縄とりとせい。よろしいか」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さもたり。ちかづくまゝに。にほは。そもかう款貨舖ぐやの。むすめかも。ゆびはさめる。香盆かうばこの。何爲なにことなりや。時々とき/\に。はなかさして。くめるは。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
鄰家となりはと、あなからすこし、はなさきして、のぞくと、おなじやうに、提灯ちやうちん家族みんなそでつゝんでる。たましひなんど守護しゆごするやうに——
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
薯蕷じねんじやう九州きうしゆう山奥やまおくいたるまで石版画せきばんゑ赤本あかほんざるのなしとはなうごめかして文学ぶんがく功徳くどく無量広大むりやうくわうだいなるを当世男たうせいをとこほとんど門並かどなみなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
御相談ごそうだんをおかけになりました。この乳母うばたいそうりこうった女でしたから、相談そうだんをかけられると、とくいらしくはなをうごめかして
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
風呂ふろびてれゆけばつきかけ下駄げたに七五三の着物きもの何屋なにやみせ新妓しんこたか、金杉かなすぎ糸屋いとやむすめう一ばいはながひくいと
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あるひはまた廷臣ていしんはなうへはしる、と叙任ぢょにん嗅出かぎだゆめる、あるひは獻納豚をさめぶた尻尾しっぽ牧師ぼくしはなこそぐると、ばうずめ、寺領じりゃうえたとる。
ジョバンニまでなんだかはなへんになりました。けれどもいつともなくだれともなくその歌は歌い出されだんだんはっきり強くなりました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
此時このときいへいて、おほきなさら歩兵ほへいあたまうへ眞直まつすぐに、それからはなさきかすつて、背後うしろにあつた一ぽんあたつて粉々こな/″\こわれました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
火の中に尾はふたまたなる稀有けうの大ねこきばをならしはなをふきくわんを目がけてとらんとす。人々これを見て棺をすて、こけつまろびつにげまどふ。
裏戸口うらとぐちかきしたゑられた風呂ふろにはうししたしてはなめづつてやうほのほけぶりともにべろ/\とつていぶりつゝえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
二三日前にあたまを刈つたと見えて、かみが甚だみぢかい。ひげはじが濃く出てゐる。はなむかふをひてゐる。鼻の穴がすうすう云ふ。安眠だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おほかぶさつてるまゆ山羊やぎのやうで、あかはな佛頂面ぶつちやうづらたかくはないがせて節塊立ふしくれだつて、何處どこにかう一くせありさうなをとこ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
やせまつろうふたた春重はるしげかおもどったとき春重はるしげはおもむろに、ふところから何物なにものかを取出とりだしてまつろうはなさきにひけらかした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ニールスは、自分の追いかけている犬が、はながとがっていて、しゃがれた、いじわるい声をしているのに気がつくと、びっくりしました。
抽斗ひきだしすかして、そつ背負揚しよいあげ引張出ひつぱりだしてると、白粉おしろいやら香水かうすゐやら、をんな移香うつりがはなかよつて、わたしむねめうにワク/\してた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
はなさきでもえる火を見ては、くまもがまんができなかったのだろう。どしんと大きな音をひびかせて、うしろへとびのいた。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
そしてするどをむきしながら子家鴨こあひるのそばにはなんでみた揚句あげく、それでもかれにはさわらずにどぶんとみずなかんでしまいました。
この長庵から見ますれば、旦那などははなっ垂らし、と云っておこっちゃ不可いけませんぜ、鼻っ垂らしのデクの棒、お話しにも何にもなりゃアしねえ。
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
活東子くわつとうしはなうごめかして『いや、これは、埴輪はにわよりずツとふる時代じだい遺物ゐぶつです。石器時代せききじだい土器どき破片はへんです』と説明せつめいした。
竿と、ビクとをたずさえた漁師の子供が二人——夫婦めどはなの方から、ここへ通りかかって、ふとくだんの滑稽なる持腐れを発見した第一の人となりました。
大菩薩峠:28 Oceanの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
使節が馬車に乗って行くと、両側の子供らがはなの前へ手を当てワイワイいっている。使節はなんのことやら合点が行かぬので、通訳官にだたすと
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
頭から顔じゅうをほうたいでぐるぐるき、ほうたいの白い中からはなだけが赤くのぞいていて、そのぶきみさは、全身ぜんしんの毛がそうけ立つほどだった。
流して頼みけれども女房お粂ははな會釋あしらひあれも孝行是も孝行と其たびごとに金を貸ては私どものあご干上ひあがる元々神田に居られし時は不自由もなき身代しんだい成しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
びっこで、はなくたの、薄気味悪いお客さまだ。しかし、仕立卸したておろしのあいトンビを初め、服装が仲々なかなか立派なので、少々片輪者でも、宿の者は鄭重ていちょうに取扱った。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「もし母さんが、僕を可愛かわいくって食べちまうっていうんだったら、きっとさきに、はなぱしらかじりつくだろう」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ずつと以前いぜんさかのぼつて、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつ當時たうじ實况じつけう小端艇せうたんてい漂流中へうりうちうのさま/″\の辛苦しんく驟雨にわかあめこと沙魚ふかりの奇談きだんくさつた魚肉さかな日出雄少年ひでをせうねんはなつまんだはなし
りくはうると、いつしかふねみなと目近まぢかすゝんで、桑港さうかう町々まち/\はついはなさきえる。我等われらとまるべきフェアモント・ホテルはたかをかうへつてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
その娘は非常にみにくくて青いはな汁をグスグスいはせてゐるが、××樣があたしをくどくのなんのと書いたかみを捨ておいて、いつもあたしを困らせてゐるのだつた。
お灸 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
つぎ綺麗きれい首筋くびすじ、形の好いはな、ふツくりしたほゝ丸味まるみのあるあご、それから生際はえぎはの好いのと頭髪かみのけつやのあるのと何うかすると口元くちもと笑靨ゑくぼが出來るのに目が付いた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
わたくしただちにこれが天狗てんぐさんの頭目かしらであるな、とさとりましたが、かねて想像そうぞうしてたのとはちがって、格別かくべつはなたかわけでもなく、ただ体格たいかく普通人ふつうじんよりすこおおきく
この辺の、のでん賭博というのは、数人寄ってさいを転がしているはなぱりが、田舎者を釣りよせては巻き上げるのですが、賭博場の景物には、皆春画を並べてある。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
もちとほつたか……おや/\貴方あなたきましたな。乞「ひましたが、はなんなになりました。 ...
わたしはまたなにかの小言こごとでもくのかとおもつて、軍曹ぐんそうはなしたにチヨツピリえた口髭くちひげながめてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
こゑとほくから、はなまみつゝ檢死けんし模樣もやうたがつてゐる群衆ぐんしうみゝまでひゞくほどたかかつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
はなの下だの、眉毛まゆげの辺だのには、たくましいむく茫々ぼう/\と生えて、人間の顔のような感じはしない。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
いかにそゝツかしい山家やまがねずみでも、そこにをんなひとはな間違まちがへて、おいもかなんかのやうにべようとしたなんて、そんなことはめつたにかない惡戯いたづらですから。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
みなさんは、人間の身体からだは右と左とまったく同じだと、思っていますでしょう。右と左とにそれぞれ、が一つ、耳が一つ、はなが半分、口が半分、手が一つ、足が一つ……。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
へとへとになった馬のからだからも、あついきをはく馬のはなからも、こおった湯気ゆげがふうふうたっている。かさかさした雪をふみしだく蹄鉄ていてつが、敷石しきいしにあたってりわたる。
までたかくはないが、骨太ほねぶと肉附にくづきい、丸顏まるがほあたまおほきなひとまなじりながれ、はなたかくちしまり、柔和にうわなか威嚴ゐげんのある容貌かほつきで、生徒せいとしたしんでました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何れも面部の周圍しうゐ沿そふて横長き橢圓形だえんけいの隆まり有り。且つ額の部には輪廓の上縁より多少たせうしたの方に向ひてのびたる隆まり有り。一けんはなの如くなれど其位置そのゐち上部じやうぶに寄り過ぎたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ハハハ その通りぢや それからニャン子はあしをなめたり 耳やはなを何も洗ふときがあるね
元就はそういう家臣の反対を押切って、今の要害はなに城を築いた。現在連絡船で厳島へ渡ると、その船着場の後の小高い山がこの城址である。城は弘治元年六月頃に完成した。
厳島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
山田やまだ書斎しよさいは八ぢやうでしたが、それつくゑ相対さしむかひゑて、北向きたむきさむ武者窓むしやまど薄暗うすぐら立籠たてこもつて、毎日まいにち文学の話です、こゝ二人ふたりはなならべてるから石橋いしばししげく訪ねて来る
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ほとけつく真朱まそほらずはみづたまる池田いけだ朝臣あそはなうへ穿れ 〔巻十六・三八四一〕 大神朝臣
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一休いっきゅうさんは、幼時ようじから、からはなけるような、りこうな子供こどもでしたが、そのりこうさが、仏門ぶつもんはいってみがきをかけられ、後世こうせいにのこるような英僧えいそうにとなったわけでしょう。
先生と父兄の皆さまへ (新字新仮名) / 五十公野清一(著)