のぼ)” の例文
もう加減かげんあるいてつて、たにがお仕舞しまひになつたかとおも時分じぶんには、またむかふのはう谷間たにま板屋根いたやねからけむりのぼるのがえました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「あのとりは、おれのものだ。わあわあいっちゃいけない。」といって、かれは、すぐとりのとまっているかきののぼりはじめました。
心の芽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
本州ほんしゆう木曾きそ甲州こうしゆう信州等しんしゆうなど高山こうざんのぼつたかたはよくごぞんじでせうが、日光につこう白根山しらねさん男體山なんたいざんやまた富士山ふじさんなどでは偃松はひまつません。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
のきいた運転士うんてんしくるまをつけたところが、はたしてそれであつた、かれ門前もんぜんくるまをおりて、右側みぎがわ坂道さかみち爪先上つまさきあがりにのぼつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
だんだん山道やまみちのぼって、もりけ、たにえて、とうとうおくおく山奥やまおくまで行きました。山の上はしんとして、とりのさわぐおともしません。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
まったく峯にはまっ黒のガツガツした巌がつめたい霧をいてそらうそぶき折角せっかくいっしんにのぼって行ってもまるでよるべもなくさびしいのでした。
マグノリアの木 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この里ちかき白峯といふ所にこそ、二〇新院のみささぎありと聞きて、拝みたてまつらばやと、十月かみなづきはじめつかた、かの山にのぼる。
晩に、炊事場の仕事がすむと、上官に気づかれないように、一人ずつ、別々に、息を切らしながら、雪の丘をのぼった。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
みかどは、てん一番いちばんちかやま駿河するがくににあるときこして、使つかひの役人やくにんをそのやまのぼらせて、不死ふしくすりかしめられました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
わたしみなさんがたゞたかやまなどにのぼるばかりでなく、遠足えんそくのときにはかういふ方面ほうめんへもかけることをおすゝめいたします。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
けゃ、けゃ、さういふやからがあさましい最期さいごぐる。さゝ、豫定通さだめどほり、戀人こひゞともとて、居間ゐまのぼり、はやなぐさめてやりめされ。
その頂上てうじやうにはふるむかしから、大理石だいりせきのやうにかたくて真白ましろゆきこほりついてゐて、かべのやうにそゝりつ、そこまで、まだ誰一人だれひとりのぼつたものがない。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
そういうくせがひどくなると、しまいには、後庭こうていの大きな木によじのぼったり、城壁じょうへきの上にのぼったりするようになりました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と。(一五)なにもつしようせられたる。(一六)太史公たいしこういはく、箕山きざんのぼりしに、其上そのうへけだ許由きよいうつかりとふ。
わたくしだまつて點頭うなづくと夫人ふじんしづか立上たちあがり『皆樣みなさまのおみゝけがほどではありませんが。』とともなはれてピアノだいうへのぼつた。
ジッと見おろしていた伊部熊蔵いのべくまぞうが、こうさけんで待ちうけていると、そこへ小頭こがしら雁六がんろく、どうしたのかさおになって、いきをあえぎながらのぼってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山の傾斜面を利用して少くも十五、六、多くて二十四、五の室を有ったのぼがまを建てる。特に豪奢ごうしゃなのはその屋根である。瓦がお手のものだからである。
雲石紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
うと、それをしたらしました。王子おうじのぼってたが、うえには可愛かわいいラプンツェルのかわりに、魔女まじょが、意地いじのわるい、こわらしいで、にらんでました。
で子供が眼を覺ました時のやうに、眼をひツこすツてゐると、誰かギシ/\音をさせて、せま楷梯はしごのぼつて來る。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
見るに折節をりふし土藏どざう普請ふしんにて足代あししろの掛り居たればこれ僥倖さいはひと其足代よりのぼりしが流石さすが我ながらにおそろしく戰々わな/\慄々ふるへる
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おつぎは足速あしばや臺地だいちはたけから蜀黍もろこしのざわつく小徑こみち低地ていちはたけへおりてやうやくのことで鬼怒川きぬがは土手どてた。おつぎはばひつてしばつかまりながらのぼつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
阿蘇あそ日本につぽん活火山中かつかざんちゆうもつとのぼやすやまであらう。國有鐵道こくゆうてつどう宮地線みやぢせん坊中驛ぼうぢゆうえきまた宮地驛みやぢえきから緩勾配かんこうばい斜面しやめんのぼること一里半いちりはんぐらゐで山頂さんちようたつすることが出來できる。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼らは小山の頂上で狂乱する鹿の群れのしずまるのを見ると、松明たいまつの持ち手の後から頂きへのぼった。明るく輝き出した頂は、散乱した動かぬ鹿の野原であった。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
なにやら由井ゆいはまらしい景色けしきである……。』わたくしはそんなことをかんがえながら、格別かくべつけわしくもないその砂丘すなやまのぼりつめましたが、さてそこから前面ぜんめん見渡みわたしたとき
あさ須原峠のけんのぼる、偶々たま/\行者三人のきたるにふ、身には幾日か風雨ふううさらされてけがれたる白衣をちやくし、かたにはなが珠数じゆづ懸垂けんすゐし、三個の鈴声れいせいに従ふてひびきた
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
親爺おやぢの云ふ所によると、かれと同時代の少年は、胆力修養のめ、夜半やはん結束けつそくして、たつた一人ひとり、御しろきた一里にあるつるぎみね天頂てつぺんのぼつて、其所そこの辻堂で夜明よあかしをして
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
其夜そのよからぼくねつ今日けふ三日みつかになるが快然はつきりしない。やまのぼつて風邪かぜいたのであらう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
何時いつでももりなかの一ばんたかのぼつて』とつてはとは、金切聲かなきりごゑ張上はりあげて、『これなら大丈夫だいじやうぶだとおもつてると屹度きつと彼奴あいつちうからぶらりとさがつてる!ソラ、へびだ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
薩軍、軍をのぼする前に隆盛の弟西郷小兵衛が策戦を論じた。曰く「軍を三道に分って、一は熊本を囲み、一は豊前豊後に出でて沿海を制し、一は軍艦に乗じて長崎を襲う」
田原坂合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
これより鳳山亭ののぼりみち、いづみある処に近き荼毘所とびじょあとを見る。石を二行にぎょうに積みて、其間の土をりてかまどとし、その上にけたの如く薪をし、これをかんするところとす。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
されど命のをしきにやおの/\おのこしなはをつけこれを岩のとがりなどにくゝしおく。こゝに往来ゆきゝするには岩に足のかゝるべき所をわづかに作り、岩にとりつきてのぼくだりをなす。
そして本くわ二三年の時分には百五十てんにまでせりのぼつて、球突塲たまつきば常連ぜうれんでも大關格せきかくぐらゐになつたが、何としてもそのをり々の分に左右され勝ちな分の本せいあらそへなかつた。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
それから、私は、高くのぼつたまゝ、そこにゐた。曾てはこの室の眞中まんなかに自分の足で立たせられる恥辱ちじよくさへ堪へ得ないと云ひ放つた私が、今は汚名をめいの臺上に衆目を集めてさらされてゐた。
たなからちる牡丹ぼたもちものよ、唐様からやうたくみなる三代目さんだいめよ、浮木ふぼくをさがす盲目めくらかめよ、人参にんじんんでくびく〻らんとする白痴たはけものよ、いわしあたま信心しん/″\するお怜悧りこうれんよ、くものぼるをねが蚯蚓み〻ずともがら
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
しか大概たいがい蛇窪へびくぼ踏切ふみきりだい二のせんして、ぐと土手どてのぼつてくのである。
藻岩山さうがんざん紫色しゝよくになつてえるだらうとおもひますの、いまころはね、そして落葉松からまつ黄色きいろくなつて、もうちかけてるときですわね。わたしあの、藻岩山さうがんざんに三のぼつたことがあるんですわ。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
たう/\わらべ、まつどきなたん、果報かほ時のなたん、いそのぼれ、御祭おまつりよすらに
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
「いや、ここまではのぼってこられませんよ。ねんのために、ぶっぱなしたのです」
いきほひよく引入ひきいれしがきやくろしてさておもへばはづかしゝ、記憶きおくのこみせがまへいまには往昔むかしながらひと昨日きのふといふ去年きよねん一昨年をとゝし同商中どうしやうちゆう組合曾議くみあひくわいぎあるひ何某なにがし懇親曾こんしんくわいのぼりなれし梯子はしごなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それぢや わたしがかはつてのぼつてあげるわ
こしより(?)森のぼせて
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
つる/\のぼつて山猿やまざる
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
仙者せんじやたけのぼりしが
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
こういうと、善吉ぜんきちは、しました。そして、するするとたかのぼって、なかへ、がらすをもとのとおりにいれてりました。
高い木と子供の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それにほかのおうちかきへはのぼらうとおもつてものぼれませんでしたが、自分じぶんのおうちかきばかりはわるかほもせずにのぼらせてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
うらの山へくと、あまんじゃくはするするとかきの木によじのぼって、になったかきを、おいしそうにってはべ、ってはべしました。
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
よき事なりてやが三〇五ちなみをなしける。かくて都へもむかひの人をのぼせしかば、此の采女富子とみこなるもの、よろこびて帰り来る。
かように、高山こうざんのぼるにしたがひ、植物しよくぶつかはつてくことや、高山植物こうざんしよくぶつのことなどはのちにあらためてくはしくおはなしをします。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
にわあそんでいると、大きな庭石にわいしの上にのぼってよろこんでいますし、へやの中にいると、つくえ卓子テイブルの上にすわりこんでいます。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
井楼せいろう梯子はしごのぼってみると、そこにも、眼を光らしていなければならないはずの見張役みはりやくが、やぐらばしらの根もとに、つめを立ったまま、いきえていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)