使つか)” の例文
かあさんが、お仕事しごとをなさるときに使つかわれた、いくつかのはなやかなおもかべて、せめてものなぐさめとしていたのでした。
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
おのづから智慧ちゑちからそなはつて、おもてに、隱形おんぎやう陰體いんたい魔法まはふ使つかつて、人目ひとめにかくれしのびつゝ、何處いづこへかとほつてくかともおもはれた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
八のふかくしながら、せたまつろう眼先めさきを、ちらとかすめたのは、うぐいすふんをいれて使つかうという、近頃ちかごろはやりの紅色べにいろ糠袋ぬかぶくろだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
其頃そのころ東京とうきやういへたゝむとき、ふところにしてかねは、ほとんど使つかたしてゐた。かれ福岡ふくをか生活せいくわつ前後ぜんごねんつうじて、中々なか/\苦鬪くとうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
海蛇うみへびられたとは、しんめうことだとおもつてりましたが、それがよく隱語いんご使つか伊太利人イタリーじんくせで、その書面しよめんではじめてわかりましたよ。
むかし、大和国やまとのくに貧乏びんぼう若者わかものがありました。一人ひとりぼっちで、ふたおやつま子供こどももない上に、使つかってくれる主人しゅじんもまだありませんでした。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
この老人は応対おうたいのうまいというのが評判ひょうばんの人であったから、ふたりの使つかいがこの人にむかってのびと口上こうじょうはすこぶる大役たいやくであった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
いままでみづんだり、それを保存ほぞんするには椰子やしからのようなものとか、貝類かひるいからとかを使つかふことのほかはなかつたのであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
……畜生ちくしゃう兩方りゃうはう奴等やつらめ!……うぬ! いぬねずみ鼷鼠はつかねずみ猫股ねこまた人間にんげん引掻ひっかいてころしをる! 一二三ひふうみいけん使つか駄法螺吹家だぼらふきめ! 破落戸ごろつき
韓王かんわうはじもちひず、きふなるにおよんですなはりてしん使つかはす。秦王しんわうこれよろこび、いま信用しんようせず。李斯りし姚賈えうかこれこれそしつていは
わたしはお稻荷いなりさまの使つかひですよ。このやしろ番人ばんにんですよ。わたしもこれでわか時分じぶんには隨分ずゐぶんいたずらなきつねでして、諸方はう/″\はたけあらしました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あかりあかるき無料むりょう官宅かんたくに、奴婢ぬひをさえ使つかってんで、そのうえ仕事しごと自分じぶんおもうまま、してもしないでもんでいると位置いち
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ところが、ある朝早く、おかみさんはヤッローの首になわをかけました。そのため、ヤッローはつばさが使つかえなくなりました。
それにんずるに其人をえらめば黜陟ちつちよくあきらかにして刑罰けいばつあたらざるなくまことに百姓をして鼓腹こふく歡呼くわんこせしむことわざに曰其人を知らんと欲すれば其の使つかふ者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たゞこゝにことわりをようすることは噴火ふんかといふ言葉ことば使つかかたである。文字もんじからいへばくとなるけれども、これはえるすのではない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
近所きんじよ女房にようばうれたのをさいはひに自分じぶんあとからはしつてつた。鬼怒川きぬがはわたしふね先刻さつき使つかひと行違ゆきちがひつた。ふねからことば交換かうくわんされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
いままでお菓子かしにつかったおかねを、これからは使つかわずにためておいて、しんたのむねのしたに、人々ひとびとのための井戸いどろうというのでありました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「ああ、ああ、こんな事に使つかお思て揃いの着物こしらえたん違うのんに、……うち何処まで馬鹿にしられてるねんやろか。」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
適塾てきじゅくでねっしんに勉強べんきょうしている諭吉ゆきちのもとへ、とつぜん、江戸えど中津藩奥平家なかつはんおくだいらけのやしきから、使つかいのものがやってきました。
みかどは、てん一番いちばんちかやま駿河するがくににあるときこして、使つかひの役人やくにんをそのやまのぼらせて、不死ふしくすりかしめられました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
うちはういく面白おもしろかつたかれないわ』とつぶやいて、最早もうこれでおほきくもならなければちひさくもなれず、其上そのうへねずみうさぎ使つかはれるんなら。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
大内義弘亡滅の後は堺は細川の家領けりょうになったが、其の怜悧れいりで、機変をく伺うところの、冷酷険峻けんしゅんの、飯綱いづな使つかい魔法使いと恐れられた細川政元が
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『コレコレ、そちなんめに多年たねん精神統一せいしんとういつ修行しゅぎょうをしたのじゃ。統一とういつというものはうした場合ばあい使つかうものじゃ……。』
手紙てがみをおいまに三かわやの御用聞ごようききがるだろうから子僧こぞう使つかひやさんをせるがい、なんひと孃樣ぢようさまではあるまいし御遠慮計ごゑんりよばかりまをしてなるものかな
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
道子みちこ其辺そのへんのアパートをさがして一人暮ひとりぐらしをすることになつたが、郵便局いうびんきよく貯金ちよきんはあらかた使つかはれてしまひ、着物きものまで満足まんぞくにはのこつてゐない始末しまつ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
そうしてみると、昨日きのうあの大きな石を用もないのにうごかそうとしたのもその浮標のおもりに使つか心組こころぐみからだったのです。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
通船楼のおかみさんは笑ったが、秀八の金の使つかみちを聞いてみると、清吉は、あの女が、確かに自分の心意気を受け取っているものという感じがした。
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だん/\と人口じんこうがふえ、みんなの智慧ちえひらけてるにしたがつて、やうやくといふものを使つかふことをり、ものたりいたりしてべるようになり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
きみきらひだつたいぬ寢室しんしつにはれないでくから。いぬへばきみは、犬好いぬずきのぼつちやんの名前なまへぼく使つかつたね。
「三つの宝」序に代へて (旧字旧仮名) / 佐藤春夫(著)
「おや、ここにびわだけある。が、法一はいない。へんじのないのもむりはない。が、耳だけがあるぞ。使つかいに来たしょうこに、これを持っていこう。」
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
いくらかわらまじりにこたへられながらも、さすがにばくちきな支那人しなじんだ、おそろしくつた、洒落しやれもの使つかふなアぐらゐにほとほと感心かんしんしてゐたやうな程度ていど
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ただわたしはころときに、こし太刀たち使つかふのですが、あなたがた太刀たち使つかはない、ただ權力けんりよくころす、かねころす、どうかするとおためごかしの言葉ことばだけでもころすでせう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
山田にては土葬どそうするもの少く、多くは荼毘するゆえ、今も死人しにんあれば此竈を使つかうなり。村はずれの薬師堂の前にて、いわなの大なるをいて宿やどの婢にわらわる。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
八十近くなって眼液めしるたらしてへっついの下をいたり、海老えびの様な腰をしてホウ/\云いながら庭をいたり、杖にすがってよめの命のまに/\使つかいあるきをしたり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今では小学校の読本とくほんは、日本中どこへいっても同じのを使つかっておりますが、その当時とうじは、北海道用という特別とくべつのがあって、わたしたちは、それをならったものです。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
使つかいのものは、ねむっている仕立屋さんのそばに立って、っていました。やがて、ようやくのことで、仕立屋さんが、うんとひとつのびをして、目をあけました。
大隈侯おほくまこうひとりのぶんがそれだけあるとすれば、日本全國にほんぜんこく使つかはれる年始ねんし葉書はがき大變たいへんかずだらうなア。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
それは、耳食じしよくといふ言葉ことばで、ひとがおいしいといふのをくとおいしいとおもふのは、くちべるのではなくて、みゝべるのだ。見識けんしきがないといふ意味いみ使つかつてゐます。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
江戸えどからあたらしく町奉行まちぶぎやうとして來任らいにんしてから丁度ちやうど五ヶげつるもの、くもの、しやくさはることだらけのなかに、町醫まちい中田玄竹なかだげんちく水道すゐだうみづ産湯うぶゆ使つかはない人間にんげんとして
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
村人の為に使つかあるきや物の取片付けや、火の番や、うでぷしの強いものならば泥棒に対する警固やなどの如き、村人のいやがる職務を引受けて、生活の資を求めて行くに至るのは
老人ろうじん毒殺どくさつもちいられた青酸加里せいさんかりが、うちの工場こうじょうにもあるつてことを、わたしくちからわせようとしているんでしよう。ハッハッハ、たしかにあります。しよつちゆう使つかつていますよ。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
まあなん上手じょうずあし使つかことったら! それにからだもちゃんとぐにててるしさ。ありゃ間違まちがいなしにあたしさ。よくりゃ、あれだってまんざら、そうっともなくないんだ。
ふのは、おぢさんにまへ約束やくそくをきつとまもらすためには、きみたちはこのほんをよくんで、そしてそのうちの一ばんきなうたとか、きらひなうたとか、このうたはこんなとき使つかつたらどうだつたとか
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
まアおまへ結構けつこう建水こぼしだが此建水このこぼしをおまへは、なに麪桶めんつうかはりに使つかふのか。
周三しうざうは、畫架ぐわかむかツて、どうやらボンヤリ考込かんがへこむでゐた。モデルに使つかツてゐるかれ所謂いわゆる平民へいみんむすめ』は、時間じかんまへかへツてツたといふに、周三はだ畫架の前をうごかずに考へてゐる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
といえば、もちろん弱いという意味にも用いらるるが、またしばしば柔和にゅうわで従順で廉潔れんけつなるの意を含ませて使つかわるることもある。漢字を見ても好(このむ)、妥(しずか)などは善い意味である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
春日かすがみや使つかひめあきふたして
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
『どうかお使つかくださいまし。』
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
黒蛇くろへびよ、あゝ使つかひ。——
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
聖母マリヤの使つか
第二海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)