はぢ)” の例文
ヂュリ そのやうなことをそちしたこそくさりをれ! はぢかしゃる身分みぶんかいの、彼方あのかたひたひにははぢなどははづかしがってすわらぬ。
お近ははぢも外聞も忘れた姿で辛くも喜三郎の手をのがれると、バタバタと椽側を踏み鳴らしながら、平次の羽掻はがいの下に飛び込むのでした。
されば世にては人眠らざるに夢を見つゝ、或はまことをいふと信じ或はしかすと信ぜざるなり、後者は罪もはぢもまさる 八二—八四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
見る時は不便心が彌増いやまほどこすことのすきなる故まうけの無も道理ことわりなり依て六右衞門も心配なしいつそ我弟が渡世とせい先買さきがひとなりはぢ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかるに南方なんぱう文帝ぶんてい元嘉げんか年中ねんちう京洛きやうらく婦女子ふぢよしみなこと/″\愁眉しうび泣粧きふしやう墮馬髻だばきつ折要歩せつえうほ齲齒笑うしせうをなし、貴賤きせん尊卑そんぴたがひおよばざるをはぢとせり。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
けれどもぼく大島小學校おほしませうがくかう出身しゆつしんなることを、諸君しよくんごと立派りつぱ肩書かたがきもつらるるうち公言こうげんしてすこしはぢず、むしほこつて吹聽ふいちやうしたくなるのです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しかるにひとりの男来り、さもはぢらふさまにて人のうしろ欲言ものいはんとしていはず、かしらたれなみだをおとしけり、人々これをみれば同村おなじむらなにがし次男じなん也けり。
しかもれにさけぶのをけば、あなたがぬかをつとぬか、どちらか一人ひとりんでくれ、二人ふたりをとこはぢせるのは、ぬよりもつらいとふのです。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かまれて暖簾のれんはぢれゆゑぞもとたゞせば根分ねわけのきく親子おやこなからぬといふ道理だうりはなしよしらぬにせよるにせよそれは其方そなた御勝手ごかつてなり仇敵かたき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それじきは、いろし、ちからをつけ、いのちぶ。ころもは、さむさをふせぎ、あつさえ、はぢをかくす。人にものをする人は、人のいろをまし、ちからをそへ、いのちぐなり。
はぢらうてやうやおよ程度ていどにカンテラのひかり範圍はんゐからとほざからうとしつゝ西瓜すゐくわの一きれづつをもとめる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
貧窮ひんきゆう友人いうじん扶助たすけあたへぬのをはぢとしてゐたとか、愉快ゆくわい行軍かうぐんや、戰爭せんさうなどのつたこと、面白おもしろ人間にんげん面白おもしろ婦人ふじんつたこと、また高加索カフカズところじつ土地とち
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
公子こうしきうやぶるるや、召忽せうこつこれし、われ(一〇)幽囚いうしうせられてはづかしめく。鮑叔はうしゆくわれもつはぢしとさず。(一一)小節せうせつぢずして・功名こうめいの・天下てんかあらはれざるをづるをればなり
長吉ちやうきちは「まだ」と答へるのが瞬間しゆんかん男のはぢであるやうな気がして黙つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
大儀ぞの一聲を此上なき譽と人も思ひ我れも誇りし日もありしに、如何に末の世とは言ひながら、露忍ぶ木蔭こかげもなく彷徨さまよひ給へる今の痛はしきに、こゝろよき一夜の宿も得せず、のあたり主をはぢしめて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
太刀取たちとりはぢじと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
はぢも人格もない人間だけに、女出入りの怨みを妬刄ねたばを合せた暗討のひと太刀に、人知れず片付けようといふ腹だつたのです。
なげ空敷むなしくなりたりけりあんずるに鬼女の如き面體めんていになりしをはぢて死にけるかたゞし亂心にや一人はすゑに名を上一人はすゑに名をけがせりと世に風聞さたせしとなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
サン うんにゃ、如何どうやがらうとかまふものかえ。おれゆびつめんでくれう、それでだまってゐりゃはぢさらしぢゃ。
ふにもおよばないこと奴隷どれいはぢも、くるしみも、孫一まごいちは、けて、むすめ哥鬱賢こうつけんはなむけした鸚鵡あうむかたゑて。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しにがことして斯々云々かく/\しか/″\とも物語ものがたりなば何處どこまでらるゝはぢならんとおもへば何故なにゆゑ登樓あがりたるか今更いまさらせんなきことしてけりとおもふほどむねさわがれてあしふるひぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にははしらにもなるべき木を惜気をしげもなくたきたつる火影ほかげてらすを見れば、末のむすめは色黒いろくろ肥太こえふとりてみにくし。をり/\すそをまくりあげて虫をひらふは見ぐるしけれどはぢらふさまもせず。
もうかうなつたうへは、あなたと一しよにはられません。わたしは一思ひとおもひに覺悟かくごです。しかし、——しかしあなたもおになすつてください。あなたはわたしのはぢ御覽ごらんになりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
れと打付うちつけてふのも、院長ゐんちやうはぢかせるやうなものと、なんともはずにはゐたが、同僚どうれう院長ゐんちやうアンドレイ、エヒミチを心祕こゝろひそかに、老込おいこみ怠惰者なまけものとして、やつ金計かねばか溜込ためこんでゐるとうらやんでゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さながら、われは零落の身をはぢらひて
あはれ今 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かくの如く遊されて本門寺ほんもんじへ渡し是を御門へ張置はりおくべしと仰渡おほせわたされけりよつて右の狂歌きやうか張置はりおきければ是にはぢかさねてさやうないたづらをばせざりしとかや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ロミオ はて、ぐるしいはぢ駄洒落だじゃるとは足下おぬしのこと。それ、もう、うすっぺらな智慧ちゑそこえるわ!
こゝくだんむすめたるや、いまもおはなししたとほり、吉原よしはらことはぢとし、待合まちあひこといやだとつた心懸こゝろがけなんだから、まあはたからすゝめても、結綿いひわたなんぞにはうよりは
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
笑ひ上戸じやうごの七平は、しりを端折ると、手拭をすつとこ冠りに四十男のはぢも外聞もなく踊り狂ふのでした。
かへれ、何處どこへでもかへれ、此家このやはぢするなとてちゝ奧深おくふか這入はいりて、かね石之助いしのすけ懷中ふところりぬ。
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しらざるにはあるまじけれども、事をはぢていはざるならん。
くにも人目ひとめはぢれば二かい座敷ざしきとこなげふしてしのなみだ、これをばとも朋輩ほうばいにもらさじとつゝむに根生こんぜうのしつかりした、のつよいといふものはあれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝ、したじめよ、おびよ、えてまたひかかげむなり。きみはだたしかゆき。ソロモンと榮華えいぐわきそへりとか、白百合しらゆりはなづべきかないなはぢらへるは夫人ふじんなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
打明けると家のはぢだが、隣に住んで居る總領そうりやうの又五郎、やくざな野郎には相違ありませんが、近頃は幾らか固くもなつたやうだし、自分から進んで親の側へ來る位だから
おほかみ/\おそれざらんやはぢざらんや。
よわものいぢめは此方こつちはぢになるから三五らう美登利みどり相手あひてにしても仕方しかたい、正太しようた末社まつしやがついたら其時そのときのこと、けつして此方こつちから手出てだしをしてはならないととゞめて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
島五六郎、川前市助の二人は、身分もはぢも忘れて飛び附きました。それを冷やかに見た平次は
わたしかへして、裏窓うらまど障子しやうじけた。こゝで、一寸ちよつとはぢはねばきこえない迷信めいしんがある。わたし表二階おもてにかいそらながめて、そのあしすぐ裏窓うらまどのぞくのを不斷ふだんからはゞかるのである。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「やあ、あの、ものはぢをするひとが、裸身はだかみなんぞ、こんな姿すがたを、ひとせるわけはない。」
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
打水うちみづのあとかろ庭下駄にはげたにふんで、もすそとる片手かたてはすかしぼね塗柄ぬりえ團扇うちわはらひつ、ながれにのぞんでたつたる姿すがたに、そらつきはぢらひてか不圖ふとかゝるくもすゑあたりにわかくらくなるをりしも
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ると、外聞ぐわいぶんなんぞかまつてはられない。つままれたかたぶらかされたか、山路やまみち夢中むちゆう歩行あるいたこと言出いひだすと、みなまではぢはぬうちに……わかをとこ半分はんぶん合点がつてんしたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わたひとりしかほ女中ぢよちゆうならばなにとせんことばがけられなばなにといはんはぢ上塗うはぬりはえうなきことなり車代しやだいといふもれたものけずともよしこのまゝにかへらんかいなしければこそゆき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
段々だん/\べへらして天秤てんびんまで仕義しぎになれば、表店おもてだな活計くらしたちがたく、つき五十せん裏屋うらや人目ひとめはぢいとふべきならず、また時節じせつらばとて引越ひきこしも無慘むざんくるまするは病人びやうほんばかり
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一歩いちぶに、のかはをかれたために、最惜いとしや、おあき繼母まゝはゝには手酷てひど折檻せつかんける、垣根かきねそとしたで、晝中ひるなかおびいたわ、と村中むらぢう是沙汰これざたは、わかをんな堪忍たへしのばれるはぢではない。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
貴孃あなた齋藤さいとう阿關おせきさん、面目めんもく此樣こん姿なりで、背後うしろければなんもつかずにました、れでも音聲ものごゑにもこゝろづくべきはづなるに、わたし餘程よつぽどどんりましたとしたいてはぢれば
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さあ、うまではぢ外聞ぐわいぶんわすれて、げます……次第しだいによつてはまた打明うちあけて、うへに、あらためておたのやうもありませうから、なかの文句もんくたならたとつたかしてください。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あまりの無分別むふんべつひとふところでもねらうやうにならば、はぢが一だいにとゞまらず、おもしといふとも身代しんだいは二のつぎ親兄弟おやけうだいはぢするな、貴樣きさまにいふとも甲斐かひけれど尋常なみ/\ならば山村やまむら若旦那わかだんなとて
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)