)” の例文
居室へやかへつてると、ちやんと整頓かたづいる。とき書物しよもつやら反古ほごやら亂雜らんざつきはまつてたのが、もの各々おの/\ところしづかにぼくまつる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
佐賀錦さがにしき紙入かみいれから、の、ざく/\と銅貨どうくわまじりをあつかつた、岡田夫人をかだふじん八千代やちよさんの紙包かみづつみの、こなしのきれいさをいまでもおぼえてる。
九九九会小記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
檜木ひのきさはら明檜あすひまき𣜌ねず——それを木曾きそはうでは五木ごぼくといひまして、さういふえたもりはやしがあのふか谷間たにあひしげつてるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
だツて紳士程しんしほど金満家きんまんかにもせよ、じつ弁天べんてん男子だんし見立みたてたいのさ。とつてると背後うしろふすまけて。浅「ぼく弁天べんてんです、ぼく弁天べんてんさ。 ...
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
文化ぶんくわ發達はつたつしてれば、自然しぜん何處どこ漠然ばくぜんとして稚氣ちきびてるやうな面白おもしろ化物思想ばけものしさうなどをれる餘地よちくなつてるのである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
曇後晴くもりのちはれ午前ごぜん時頃じごろ瓢箪山ひようたんやま到着たうちやくしてると、發掘はつくつすで進行しんかうして赤鉢卷隊あかはちまきたい活動くわつどうしてるが、一かうかはつたことい。
老人としより子供こどもだから馬鹿ばかにしておもふやうにはうごいてれぬと祖母おばあさんがつてたつけ、れがすこ大人おとなると質屋しちやさして
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あいちやんはたゞちにれが扇子せんすつて所爲せいだとことつていそいで其扇子そのせんすてました、あだかちゞむのをまつたおそれるものゝごとく。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
這麼老朽こんならうきうからだんでも時分じぶんだ、とさうおもふと、たちままたなんやらこゝろそここゑがする、氣遣きづかふな、こといとつてるやうな。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「おや、此所こゝらつしやるの」と云つたが、「一寸ちよいと其所そこいらにわたくしくしが落ちてなくつて」と聞いた。くし長椅子ソーフアあしところにあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おぼえてます。父樣おとつさんわたくしあたまでゝ、おまへ日本人につぽんじんといふことをばどんなときにもわすれてはなりませんよ、とおつしやつたことでせう。
逆手さかてもちまゝうしなひてたふたりしかば是は何事なにごとならんと氣付きつけあたへて樣子やうすきく敵討かたきうちなりと申ゆゑ半左衞門はんざゑもんおほいに驚き早々さう/\町役人ちやうやくにん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すると又或日お神さんは外から帰つて来て、わたし身装みなりは貴婦人よりずつと立派にしてるのにお前さんが仕立屋では困るぢやないの。
金剛石 (新字旧仮名) / 夢野久作(著)
しな天秤てんびんおろした。おしなたけみじか天秤てんびんさきえだこしらへたちひさなかぎをぶらさげてそれで手桶てをけけてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
桟橋さんばしると、がらんとした大桟橋だいさんばし上屋うはやしたに、三つ四つ卓子テーブルならべて、税関ぜいくわん役人やくにん蝋燭らふそくひかり手荷物てにもつ検査けんさをしてる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
阿母さんはもう座敷の拭掃除ふきそうぢも台所の整理事しまひごとませて、三歳みつヽになる娘の子をせなひ乍ら、広い土間へ盥を入れて洗濯物せんたくものをしてる。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
なんゆえ私宅教授したくけふじゆの口がありても錢取道ぜにとるみちかんがへず、下宿屋げしゆくやに、なにるとはれてかんがへることるとおどろかしたるや。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
長吉ちやうきちの時長命寺辺ちやうめいじへんつゝみの上の木立こだちから、他分たぶん旧暦きうれき七月の満月であらう、赤味あかみを帯びた大きな月の昇りかけてるのを認めた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
B あゝ、あれは駄目だめだよ。葉書はがきまいぐらゐの短文たんぶんで、ちよつといた面白おもしろことやう名士めいしいくらもないからな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
地震直後ぢしんちよくごから大正たいしやう十三四ねんごろまでのやうに十ドル以上いじやうさがつたこともあるけれども、平均へいきんしてづ四乃至ないしさがつてると状況じやうきやうである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
平日しめしていはれしは、我雪頽なだれうたれしとき筆をりてたりしは、たふと仏経ぶつきやうなりしゆゑたゞにやはとて一ごと念仏ねんぶつ申て書居かきをれり
みちの角に車夫が五六人、木蔭こかげを選んで客待きやくまちをしてた。其傍そのかたはらに小さな宮があつて、その広場で、子供があつまつて独楽こまを廻してた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
僕はまだ両氏の議論を読んでない。両氏はどの位感覚と意志とを別のものにして、論ずる事が出来たかそれを見る時を楽しみにして居る。
東西問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
新渡戸博士が自分の近眼ちかめと性慾の自己満足を結びつけて、深く後悔してるのはい事だが、世の中には近眼者ちかめといつても沢山たくさんる事だし
其故それゆゑわたくしじゆくではこの規則きそく精神せいしん規則きそく根本こんぽんかへつて、各個人かくこじん都合つがふといふところを十ぶん了解れうかいせしむるといふ方針はうしんとつるのであります。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
ばしの夢にやすんでられるかと思へば、君、其の細きランプの光が僕の胸中の悪念を一字々々に読み揚げる様におそれるのだ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
つぎ硯友社けんいうしやるにいて、第二の動機だうきとなつたのは、思案外史しあんがいし予備門よびもん同時どうじ入学生にふがくせい相識あいしつたのです、其頃そのころ石橋雨香いしばしうかうつてました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
あるひはラブがなかつたせいかもれぬ。つましんからわたしれてるほど、夫婦ふうふ愛情あいじやうあぶらつてないせいかもれぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
なんといふやまひやらもらない、度々たび/″\病院びやうゐんかよつたけれども、いつも、おなじやうな漠然ばくぜんとしたことばかりはれてる。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
「さちよのどころは、僕は、知つてゐる。」三木は、落ちつきを見せるためか、煙草をとりだし、マツチをすつた。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
こまごまと濡れかかるのみ、漂渺と煙曳くのみ。しづかなり、唯安らなり。顔出してつくづくれば、笹子啼き、目白寄り来る、笹葉揺り揺りて又去る。
はかか? いや/\、こりゃはかではない、あかまどぢゃ、なア、足下きみ。はて、ヂュリエットがるゆゑに、その艶麗あてやかさで、このあなむろひかかゞや宴席えんせきともゆるわい。
「しかし、獨りは堪らないと思ふでせう? あなたの背後うしろにあるその小さな家は陰氣でがらんとしてゐる。」
各々おの/\つてゐるだらう、御城與力おしろよりき同心どうしんは、御城代ごじやうだい勤役中きんやくちうあづけおく、といふ上意じやういだが、町奉行まちぶぎやうへは與力よりき同心どうしん勤役中きんやくちうくだされおくといふ上意じやういになつてる。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
斯くて風月ふうげつならで訪ふ人もなき嵯峨野の奧に、世を隔てて安らけき朝夕あさゆふを樂しみしに、世に在りし時は弓矢のほまれ打捨うちすてて、狂ひじにに死なんまでこがれし横笛。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
あなたがたはほんとうに、あいすまいとしても愛せずにはられないやうなものをつていらつしやいます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
また諸所しよしよ修道院しうだうゐんともらつて、もはや此世このよない会友くわいいうためいのりげ、其名そのな巻物まきものきとめて、てらからてらへと其過去帳そのくわこちやう持回もちまはつたなら、みんなさぞよろこことであらうが、だい
さういふ時にかういふ格構かくかうでヒゲをかうしてゆかにさはつて歩いて鼠のさうな所をさがすのです
はつと思つて見ると弟である、今朝の手紙で下女と弟とがわれを迎ひにたのであつた
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
黒縮くろちりつくりでうらから出て来たのは、豈斗あにはからんや車夫くるまやの女房、一てうばかりくと亭主ていしが待つてて、そらよと梶棒かぢぼう引寄ひきよすれば、衣紋えもんもつんと他人行儀たにんぎようぎまし返りて急いでおくれ。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
やまわた秋沙あきさきてむそのかはなみつなゆめ 〔巻七・一一二二〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
たまらないのは馬ぢや。痛いのとがなられるのとで、一所懸命の力で歩かうとするのぢやが、どうしたつて動けない。もう自分の力で自分を動かすことが出来なくなつてしまつてたのぢや。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
また何處いづこにかほかる事能はずして苦む目付めつきあり、げにあはれむに堪へたるかな。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
貴き言葉ことばも疑はるるなれ——(伊留満喜三郎俄に油売の服装を脱ぎて緑の地に金糸の縁飾をとりたる邪宗門僧侶の職服にかはる。右手に高く金色の十字架像をかざす。)今までは包みこそ
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
仮成かなりに渡世相送り候に付、見懸人みかけにんに被仰付、年々に両度見懸銀少々宛上納奉仕居申所、此度戸籍マヽ製御取調に付、何卒百姓ひやくしように被仰付下候得者、重畳難有仕合に奉存候。
畝傍山うねびやま ひるくも、ゆふされば、かぜかむとぞ さやげる
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
さやさやと竹さやぐからにでて見ればしんと桜が咲きたるかも
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
一人ながめしよりは海人あまの住むかたを書きてぞ見るべかりける
源氏物語:17 絵合 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わたし其時分そのじぶんなんにもらないでたけれども、母様おつかさん二人ふたりぐらしは、この橋銭はしせんつてつたので、一人前ひとりまへ幾于宛いくらかづゝつてわたしました。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ひろうちでないから、ついとなり部屋へやぐらゐにゐたのだらうけれども、ないのとまるちがはなかつた。このかげやうしづかなをんな御米およねであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)