ほのほ)” の例文
るな、るな、で、わたしたちは、すぐわき四角よつかどたゝずんで、突通つきとほしにてんひたほのほなみに、人心地ひとごこちもなくつてた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かなり疲れて、ゆき子は、幾度も砂地に立ちどまつて溜息をついた。息苦しく、全身がかつかつとほのほを噴いてゐるやうだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
この死骸もほのほに焼かれた顔は目鼻もわからぬほどまつ黒だつた。が、湯帷子ゆかたを着た体やせ細つた手足などには少しも焼けただれたあとはなかつた。
もちまへ疳癪かんしやくしたるえがたく、智識ちしきぼうさまが御覽ごらんじたらば、ほのほにつゝまれて黒烟くろけふりにこゝろ狂亂きやうらんをりふし、こともいふことかね敵藥てきやくぞかし
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
否、其前逢つた時既に、と思ひした。代助は二人ふたりの過去を順次にさかのぼつて見て、いづれの断面だんめんにも、二人ふたりの間にもえる愛のほのほを見出さない事はなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ロミオ 信仰しんかうかたこのまなこに、かりにも其樣そのやう不信心ふしんじんおこるならば、なみだほのほともかはりをれ! 何度なんどおぼれてもにをらぬこの明透すきとほ異端げだうめ、うそうたとが火刑ひあぶりにせられをれ! なんぢゃ
かけたりける折節をりふし山風はげしくしてほのほは所々へ燃移もえうつれば三十一人の小賊共スハ大變たいへんなりと慌騷あわてさわぐもどく酒に五體のきかざればあはれむべし一人ひとりも殘らず燒燗やけたゞれ死亡しばうに及ぶを強惡がうあくの三人は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それが朝夕出入をして居る儀平とこの親父とつさあの仕業であつたと聞いた時は、驚きも怪みも一つになつて心頭からいきどほりほのほのやうにもえたつた。先刻さつきもお巡査さんの前に散々本人をきめつけた。
夜烏 (新字旧仮名) / 平出修(著)
しばはまたおとしてぜぬ、えあがるほのほのわかさ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うちに靈獸ひそみゐて青きほのほめば
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
ほのほのころも、まとひたるつち熟睡うまい静心しづごころ
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
鶴は鳴く雲のほのほに身を絞り
天の狼 (新字旧仮名) / 富沢赤黄男(著)
いつかはほのほさかりに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ほのほゆる日輪にちりん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
いはけづつて點滴したゝみづは、階子ばしごに、垂々たら/\しづくして、ちながら氷柱つらゝらむ、とひやゝかさのむのみ。何處どこいへほのほがあらう。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ともすれば燃え出でゝ押へ難きほのほに身をも燒くめり、お近が願ひは不二の嶺の上もなく立のぼれるに、身は夢の望に交れる如く、我れ同列の人々より見れば
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかし五銭出しさへすれば、何区でも勝手にかれるのである。けれども屋根のある浮き桟橋は——震災は勿論この浮き桟橋もほのほにして空へ立ちのぼらせたのであらう。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
平和へいわみだ暴人ばうじんども、同胞どうばうもっ刃金はがねけが不埓奴ふらちやつ……きをらぬな?……やア/\、汝等おのれらよこしまなる嗔恚しんにほのほおの血管けっくわんよりながいづむらさきいづみもっさうとこゝろむる獸類けだものども
など、汝はいなむ。これやわが深みのほのほ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ほのほのころもまとひたるつち熟睡うまい靜心しづごゝろ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ほのほ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
黒雲くろくもいて、んでき、いなづまのやうに、てつもんいし唐戸からとにも、さへぎらせず、眞赤まつかむねほのほつゝんで、よわをんなひました。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふうときて取出とりいだせば一尋ひとひろあまりにふでのあやもなく、有難ありがたこと數々かず/\かたじけなきこと山々やま/\おもふ、したふ、わすれがたし、なみだむねほのほ此等これら文字もじ縱横じゆうわうらして
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
軽快なひづめの音、花々しい槍のひらめき、それから毒竜のほのほうちに、毿々さん/\なびいたかぶとの乱れ毛、……
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今こそろふ琺瑯はうろうほのほのころもひきまと
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
はだか飛込とびこんだ、侍方さむらひがたふねりはつたれども、ほのほせぬ。やつとのおもひでふねひつくらかへした時分じぶんには、緋鯉ひごひのやうにしづんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
櫻町さくらまち殿との面影おもかげいまくまでむねうかべん、良人をつと所爲しよゐのをさなきもしひかくさじ、百八ひやくはち煩惱ぼんなうおのづからえばこそ、殊更ことさらなにかはさん、かばほのほえばもえよとて
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
風になびいたマツチのほのほほど無気味ぶきみにも美しい青いろはない。
都会で (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鉛のごとき鹹水しほみづほのほと燃えて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さうたま乳房ちぶさにも、糸一条いとひとすぢあやのこさず、小脇こわきいだくや、彫刻家てうこくか半身はんしんは、かすみのまゝに山椿やまつばきほのほ𤏋ぱつからんだ風情ふぜい
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あゝ、かなし、ほのほよ、よく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ともさぎほのほえて、ふねいたは、ばらりとひらいた。ひとひとつ、幅広はゞひろけむりてゝ、地獄ぢごくそらえてく、くろのやう、——をんなざうかげせた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
視よ、持つはほのほか、はな
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
天井てんじやうくづれて、そこ眞黒まつくろいたには、ちら/\とがからんで、ぱち/\とすゝく、ほのほめる、と一目ひとめた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほのほしろく
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あたまつてつたほのほ大蛇おろちは、黒蛇くろへびへんじてあまつさ胴中どうなかうねらして家々いへ/\きはじめたのである。それからさらつゞけ、ひろがりつゝちかづく。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
上段じやうだんづきの大廣間おほひろま正面しやうめん一段いちだんたかところに、たゝみ二疊にでふもあらうとおもふ、あたかほのほいけごと眞鍮しんちう大火鉢おほひばち炭火たんくわ烈々れつ/\としたのをまへひかへて、たゞ一個いつこ大丈夫だいぢやうぶ
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
間近まぢかかくれ、むねふせつて、かへつて、なゝめそらはるかに、一柱いつちうほのほいて眞直まつすぐつた。つゞいて、地軸ちぢくくだくるかとおもすさまじい爆音ばくおんきこえた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つきのはじめにあきてば、あさ朝顏あさがほつゆはあれど、るゝともなき薄煙うすけむりのきめぐるもひでりかげほのほやまくろそびえて、やがあつさにくづるゝにも、熱砂ねつさみなぎつて大路おほぢはしる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半天はんてんおほうたいまはしき魔鳥まてうつばさて、燒殘やけのこほのほかしらは、そののしたゝるなゝつのくびのやうであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
悲慘ひさんなのもあれば、ふねのがれた御殿女中ごてんぢよちうが、三十幾人さんじふいくにん帆柱ほばしらさきからけて、振袖ふりそでつまも、ほのほとともに三百石積さんびやくこくづみけまはりながら、みづあかつたと凄慘せいさんなのもある。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うるしなかまなこかゞやく、顏面がんめんすべひげなるが、兩腿りやうもゝしたむくぢやら、はりせんぼん大胡坐おほあぐらで、蒋生しやうせいをくわつとにらむ、と黒髯くろひげあかほのほらして、「何奴どいつだ。」と怒鳴どなるのが、ぐわんとひゞいた。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うそまことか、本所ほんじよの、あの被服廠ひふくしやうでは、つむじかぜなかに、荷車にぐるまいたうまが、くるまながらほのほとなつて、そらをきり/\と𢌞まはつたとけば、あゝ、そのうま幽靈いうれいが、くるま亡魂ばうこんとともに
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……ひとみ水晶すゐしやうつたやうで、薄煙うすけむりしつとほして透通すきとほるばかり、つき射添さしそふ、とおもふと、むらさきも、萌黄もえぎも、そでいろ𤏋ぱつえて、姿すがた其處此處そここゝ燃立もえたは、ほのほみだるゝやうであつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
長蟲ながむし苦悶くもんへず蜒轉𢌞のたうちまはり、のがでんといだ纖舌せんぜつほのほよりあかく、ざるより突出つきいだかしらにぎちてぐツとけば、脊骨せぼねかしらきたるまゝ、そと拔出ぬけいづるをてて、しかばねかたへうづたか
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いぬどもの、みゝにはて、きばにはみ、ほのほき、黒煙くろけむりいて、くるまともはず、ひとともはず、ほのほからんで、躍上をどりあがり、飛蒐とびかゝり、狂立くるひたつて地獄ぢごく形相ぎやうさうあらはしたであらう
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
……欄干らんかんむねおさへて、故郷ふるさとそらともかぬ、はるかなやまいたゞきほそけむりくのをれば、あれがほのほかとおもひ、いしはしらもたれて、利鎌とがまつきときは、それもやいばかとおもつたんです。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)