あら)” の例文
また、小川おがわれていって、ボンをみずなかれてあらってやったりして、ボンをよろこばせるのをもたのしみの一つとしているのです。
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くはかついで遺跡ゐせきさぐりにあるき、貝塚かひづかどろだらけにつてり、その掘出ほりだしたる土器どき破片はへん背負せおひ、うしていへかへつて井戸端ゐどばたあらふ。
はて、なんだ、とおもひながら、こゑけようとして、ひとしはぶきをすると、これはじめて心着こゝろづいたらしく、あらをんなかほげた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
昨夜ゆうべもすがらしづかねぶりて、今朝けされよりいちはなけにさまし、かほあらかみでつけて着物きものもみづからりしを取出とりいだ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
顔をしかめて向こうずねきずをあらっている者や、水をくんでゆく者や、たわしであらい物をする者などで、井戸いどばたがこみ合っている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小僧はあらたての顔をしてパデレウスキイの前に帰つて来た。音楽家は「よし/\」と言つて銀貨を小僧の濡れた掌面てのひらに載つけてやつた。
Jesuヂェシュー Mariaマリヤ! どれほどにがみづその蒼白あをじろほゝをローザラインのためあらうたことやら? 幾何どれほど鹽辛水しほからみづ無用むだにしたことやら
草刈鎌くさかりがまの一ちやうや二ちやうまへどうするもんぢやない、あつちへまはつてあしでもあらつてさあ」内儀かみさんのくちもとにはかすかなわらひがうかんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
門野かどの寐惚ねぼまなここすりながら、雨戸あまどけにた時、代助ははつとして、此仮睡うたゝねからめた。世界の半面はもう赤いあらはれてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「そんならこれでもおけなんって。……おっとしまった。きのうかかあがあらったんで、まるっきりたもとくそがありゃァしねえ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
あらひ居る者あるに付能々よく/\見るに同長屋の勘太郎と申者なれば怪敷あやしくおもひながら空知そしらふりに罷在し所右の勘太郎きふに二三十兩掛て造作ざうさくを致し道具を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
自分じぶんはこれから修行しゅぎょうんで、んな立派りっぱ神様かみさまのお相手あいてをしてもあまりはずかしくないように、一はやこころあかあらきよめねばならない……。
わたくし昨年さくねんの十二ぐわつ芝愛宕下しばあたごした桜川町さくらがはちやうしまして、此春このはる初湯はつゆはいりたいとぞんじ、つい近辺きんぺん銭湯せんたうにまゐりまして「初湯はつゆにもあらひのこすやへそのあか」
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
賓頭盧尊者びんづるそんじやざうがどれだけたつといものかぞんぜずにいたしたことゝえます。唯今たゞいまではくりや僧共そうども食器しよくきあらはせてをります。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
さてさらしやうはちゞみにもあれ糸にもあれ、一夜灰汁あくひたしおき、あけあした幾度いくたびも水にあらしぼりあげてまへのごとくさらす也。
ことにその泥岩そうは、川の水のすたんび、奇麗きれいあらわれるものですから、何ともえず青白くさっぱりしていました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうだ、そうしてバルブレンのおっかあがさざ波を立てている小川へ出て、いまあらったばかりのぬのを外へしている。
前足まへあしめたり、かほあらつたりしてゐるの——つてれば可愛かあいいものよ——鼠捕ねずみとりの名人めいじんだわ——オヤ、御免ごめんよ!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
若者わかものは、下男げなん姿すがたとおくにえなくなるまで見送みおくりました。それからそこの清水しみずあらいきよめて、長谷寺はせでら観音かんのんさまのほういて手をわせながら
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
たうげくだると『多田御社道ただおんしやみち』の石標せきへう麥畑むぎばたけあぜつて、其處そこまがれば、みちはまた山川やまがはうつくしいみづ石崖せきがいすそあらはれてゐた。かはいてみちはまたまがつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
モイセイカは今日けふ院長ゐんちやうのゐるために、ニキタが遠慮ゑんりよしてなに取返とりかへさぬので、もらつて雜物ざふもつを、自分じぶん寐臺ねだいうへあらざらひろげて、一つ/\ならはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
兼吉かねきち五郎ごろうあらいものをしている。花前はなまえれい毅然きぜんたる態度たいど技師ぎし先生のまえにでた。技師はむろん主人と見たので、いささかていねいに用むきをだんずる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「そうかい。そいつは初耳はつみみだな。よしきた。そのけんもなお念入ねんいりにあらつてみろ。それからきみには、金魚屋きんぎょやとパチンコのことを調しらべてきてもらいたいんだがね」
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
一面のあら砂礫じゃりを敷きつめたその坂下御門前に行きついたのは、冬の陽の冷たい朝まだきの五ツ前である。
老中の眼鏡 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
此事を言ひて地につばきし、唾にて土をき、其泥を瞽者めしひの目にり、彼に曰ひけるは、シロアムの池に往きてあらへ。彼則ち往きて洗ひ、目見ることを得て帰れり。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
下人げにんは七段ある石段の一番上のだんあらひざらしたこんあをの尻を据ゑて、右の頬に出來た、大きな面皰にきびを氣にしながら、ぼんやり、あめのふるのをながめてゐるのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
せうのおかみさんが河端かわばたいもあらつてをりました。そこをとほりかけた乞食こじきのやうなぼうさんがそのいもをみて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
すると、あちらの壁が無惨にくり抜かれてあつて、あらざらしの浴衣地ゆかたぢをカーテンみたいにしたのが、汚く垂れさがつてゐ、隣家の二階と通じてゐるのが分つたのである。
釜ヶ崎 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
朝日新聞社員あさひしんぶんしやゐん横川勇次氏よこかはゆうじしを送らんと、あさ未明まだきおきいでて、かほあらも心せはしく車をいそがせて向島むかふじまへとむかふ、つねにはあらぬ市中しちうにぎはひ、三々五々いさましげにかたふて
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
世のはて何處いづことも知らざれば、き人のしるしにも萬代よろづよかけし小松殿内府の墳墓ふんぼ、見上ぐるばかりの石の面に彫り刻みたる淨蓮大禪門の五字、金泥きんでいいろあらひし如く猶ほあざやかなり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「目黒の親分、これには深いわけがありさうですぜ。兎に角女の身元をあらつて見て下さい」
緑青ろくしょうがいっぱいついているうえに、いただきほうにはほこりがつもっているので、かなりきたなかった。庵主あんじゅさんと、よく尼寺あまでら世話せわをするおたけばあさんとが、なわをまるめてごしごしとあらった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
朝鮮古渡りの逸品いっぴんだけに、焼きのぐあいがしっとりとおちつき、上薬うわぐすりの流れは、水ぬるむ春の小川……せりの根をあらうそのせせらぎが聞こえるようだと申しましょうか、それとも
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
モンクスは緑のパンツ、富田とみただんあらい清めた柔道着じゅうどうぎ黒帯姿くろおびすがた審判しんぱんのアメリカ人がモンクスのグラブを富田六段にさわらして、グラブの中になんにもはいっていないことをしめす。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
梯子段はしごだんあがると、廊下らうか片側かたがはかほあらなが便所べんじよ杉戸すぎどがあり、片側かたがはには三でふと六でふ座敷ざしき三間みまほど、いづれもきやくがあるらしくつたふすまそとにスリツパがてゝある。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
叔父おぢさん、わたくしはもうかほあらつてましてよ。』と、睡醒ねざめしぶわたくしかほあほいだ。
今ちょッと遊びにでも来た者のような気がした,するとまた娘の姿が自分の目には、あらざらしの針目衣はりめぎぬを着て、茜木綿あかねもめんたすきを掛けて、糸を採ッたりきぬを織ッたり、すすぎ洗濯、きぬた打ち
初恋 (新字新仮名) / 矢崎嵯峨の舎(著)
あらいざらしという五、六尺の布切ぬのぎれを、みちのそばの地蔵さんの前などに張っておいて、通行の人に水をそそぎかけてもらうことは、ほかの地方も同じであるが、この布をまた一夜機いちやばたとしょうして
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すべ肌着はだぎ日々ひゞあらひ、夜着よぎは六七にちごとすべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
ドスはたふされた同志どうしあらふだらう
それをもてあらへば心おどけたくなれり
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
さかづきあらひてちね
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
さかんにえていた、西にしうみほのおが、いつしかなみあらわれて、うすくなったとおもうと、まどからえるそらも、くらくなりかけていました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いや、なにまをうちに、ハヤこれはさゝゆきいてさふらふが、三時さんじすぎにてみせはしまひ、交番かうばんかどについてまがる。このながれひとつどねぎあらへり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おつぎは浴衣ゆかたをとつて襦袢じゆばんひとつにつて、ざるみづつていた糯米もちごめかまどはじめた。勘次かんじはだかうすきねあらうて檐端のきばゑた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ペッ、ペッ、口のつばきをきちらして、こんどは、あらいかけていた焔硝えんしょういぶりの顔のしずくを両方りょうほうそできまわしている……。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
冗談じょうだんじゃねえ。おせんちゃんは、師匠ししょうたのまれて、おいらがびにったんだぜ。——おめえはまだ、かおあらわねえんだの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
倦怠けんたい彼等かれら意識いしきねむりやうまくけて、二人ふたりあいをうつとりかすますことはあつた。けれどもさゝら神經しんけいあらはれる不安ふあんけつしておこなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
乘行のせゆき丑刻過やつどきすぎに歸り候處町内の天水桶にて刄物はものあらふ者あり其形容そのかたち勘太郎に髣髴よくにたりとは存じながら私しども見屆けるにも及ばざる事ゆゑ路次を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。